第一章5 カズトの部屋
2018/09/10に改稿しています
【7】
ここは紛れもなく、自分の部屋だ。
カズトは見慣れた光景にそう確信をしたいのだが、この光景に見慣れない二人の少女。
「ここがカズトの部屋なのね」
アリスは不思議そうにしながら、色々触っている。
「・・ダンじぃ様」
レイラは先ほど起きた事が信じられないと、落ち込んでいる。レイラの事も心配だが、それよりもアリスだ・・アリス?でいいんだよな?
カズトはアリスを見てそんな事を考えていた。
長かった髪はセミロングになっており、身長も少し縮んでるように見える。
「アリス?だよな」
そう呼ばれたアリスは、触ってた手を止めてカズトを見る。レイラもアリスの姿に驚いている。
「そうだけど・・?あぁこの姿ね。クリフのせいで今は8歳ぐらいかしら」
クリフがブラッククリスタルを使った為、アリスは力を奪われてしまったと説明する。
「そんな・・」
アリスの説明を受け、レイラは更に落ち込んだ。
(無理もない・・パーティーがほぼ壊滅してしまい、その仲間の一人がああなったのだから)
カズトは、落ち込むレイラを励まそうとしたのだが、アリスに話しかけられた。
「それより喉が渇いたわ。カズト!飲み物でも出しなさいよ」
アリスは気がきかないんだからぁと、言いたげな態度であった。もしかしたら、こいつなりにレイラに気を使っているのかと思い、それならばと、飲み物を取りに立つカズト。
「それなら私が・・」
カズトが立ち上がったのを見て、レイラが動く。
「いや。レイラは冷蔵庫とか知らないだろ?俺が取りにいくよ」
カズトにそう言われ、冷蔵庫?と、レイラは首を傾げた。
「なんなら一緒にやるか?」
気分転換にもなるだろうと、カズトが考え提案すると、レイラの身体がピクッと反応する。
(・・テトと一緒に)
是非!っと嬉しそうなレイラを連れて、部屋を出ようとするカズトであったが、アリスに呼び止められた。
「あ~私スライムソーダね」
振り向くカズトに対し、右手を左右に振りながら、アリスが注文してきた。
そんな物はないとだけ告げ、レイラと部屋を出るカズト。本当はレイラに対し、気など使っていないんじゃないか?と考えるカズトであった。
「これが冷蔵庫・・冷たい・・」
冷蔵庫を触ったり、嗅いだり、眺めているレイラ。
「マヨネーズってなんですか?」
「ああ。それは調味料っていって・・?読めるのか?」
文字が読める事に驚いたカズトであったが、ある事に気付く。
(日本で作られたゲームなら当然日本語か・・)
きょとんとしているレイラに何でもないと告げ、アリスが騒ぐから早く戻ろうと提案し、二人でカズトの部屋に戻る。
カズトとレイラが部屋に戻ると、アリスが満面の笑顔を見せながら、カズトの元へと近づいて来た。
「カズト!カズト!これ買ってきて頂戴」
ポスターみたいなのを手渡してきたアリス。そのポスターを見たカズトは、買えないと断るのだが、アリスは納得せず、なんでよ!っと怒り出した。買って・買ってだの、ゴン・ゴンだの、床に寝転がって駄々をこね始めるアリスを見て、カズトは頭を抱える。買えない物は買えない。
何故ならそのポスターには、伝説のFWが写っていたのであった。
しばらくして落ち着いてきたのかこれは?とアリスが聞いてきたので、TVのリモコンだと教えるが、二人はきょとんとしている。
電源ボタンを押してTVをつけてやると、丁度ニュースをやっている所で、二人共TVに興味津々みたいだ。
「お、おぃ。箱の中に人間がいるぞ」
「いぇそれよりこの人・・上半身しかないのでは?」
アリスとレイラは、TV画面をジロジロ眺めながら、そんな会話をしている。カズトの耳にもそんな会話が聞こえてきた。しばらくこれでおとなしくなるだろうと考えたカズトは、部屋を出ようとしたのだが、TVのニュースを聞いて、カズトは二人を押しのけた。
「深夜に何者かによって、ここ東京タワーが爆破されたようです。当時近くには誰もおらず・・」
(ば・爆破?昨日まで普通にたっていたし、あんな大きな物が壊れて被害状況0だと・・)
窓を開け、バルコニーに出るカズト。アリスとレイラも何事かとついてきた。
「あっちの方で魔力の痕跡を感じるわ」
アリスが告げ、指を向ける。
その方角は東京タワーがあった場所であった。
「魔力の痕跡って言ったよな?」
部屋の中に戻り、先ほどのアリスの言葉を確認する。
「えぇ。私のや部下のリザードマン・・それにクリフの魔力の痕跡も感じられるわね」
一体何がどうなっているのか全くわからん・・。
「と、とにかくこれからの事を整理しよう」
そう言ったカズトに対し、アリスは決まっているじゃない!っと言って、カズトとレイラを交互に見ながら、これからの方針を告げる。
「クリフを捕まえるわよ」
その言葉にレイラもカズトも、深くうなずくのであった。




