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第四章 ボステム洞窟 下

現在改稿作業中です。

第四章から第二章になる予定ですが、内容は変わらない予定です。

 

 奥へと続く洞窟内。

 不思議とモンスターは現れない。

 その為、間違いなくニワトリンはもうすぐ近くにいると確信するカズト達。


 しばらく歩いていると、とある看板が目に入った。


「…罠か?」


「…念のため、気をつけましょう」


 看板には、ニワトリン様の部屋と書かれていたのだった。

 当然、むやみに突入したりせず、部屋の中の様子をうかがうカズトであったが、中は暗くて何も見えない。


「おいアリス。悪いんだが、中を覗いてくれないか?」


 たいまつで照らすわけにもいかない為、暗闇でも大丈夫だと言っていたアリスに声をかけた。


「ったく、しょうがないわねー」


 面倒くさいなぁっと態度で表すアリスであったが、頼られたのが嬉しかったのか、その表情はとても嬉しそうであった。


「どれどれ……!?」


 部屋の中を覗いたアリスの動きが、ピタリと止まる。上体だけをゆっくり後ろの方に動かすアリス。何かあったのか?と、カズトが声をかけようとした時であった。



「ひっっ、くしゅんーー!!」


「バ、バカ!?」


 サッとアリスを壁の外に引っ張り出し、口元を押さえるカズトであったが、時すでに遅し、部屋の中の明かりが点いてしまう。


「しょ、しょうがな、な、ひっくしゅん」


 思わず頭を抱えたい衝動に駆られるカズトであったが、それ所ではない。

 部屋の明かりが点いたということは、当然、ニワトリンに気付かれてしまったということである。


「ど、どうせ倒すんだから一緒よ!ほら、行くわよ」


 その通りと言えばその通りなのだが、何だか釈然としない。しかし、ここで口論して何になる。

 説教は、この洞窟を出た後でゆっくりする事にして、カズトはアリスの後に続くのであった。


 ーーーーーーーーーーー


 明かりの点いた部屋に入るカズト達。

 そこは、とても奇妙な光景が広がっていた。


「カ、カズトさん!?あ、あれがニワトリン何ですか?」


「…だと思うが」


 ナナからの質問に対し、カズトは自信なさげに答えた。カズト達はニワトリンの姿を知らない。

 しかし大体の想像は、先ほどの休憩の時にしていた。ニワトリみたいなモンスターか、あるいは違う形をしたモンスターか、と。


「ちょ、ちょっと!どう見ても人間じゃない」


「う、うん…」


 アリスの言う通りであった。

 カズト達が部屋に入ると、目の前には温泉があり、その中には男性が入浴しているという、奇妙な光景が広がっていたのであった。


「おぉ!良く我が城に参られたな人間…ふー熱い」


 温泉の中からゆっくりと上がる男。

 思わず身構えるカズト達。


「よっこっいショータイム」


 勢い良く温泉から上がる男は、タオルを持っていないからなのか、その場でくるくると回り始めた。


「…どうしますか?こちらから仕掛けますか?」


「い、いや、まずはアイツがニワトリンなのかを確かめる必要がある」


 油断している時に叩くのは、戦術の基本ではあるのだが、相手が敵なのかを知らないと使えない戦術である。間違えましたではすまないからだ。


「キテます!キテます!どんどんキテます」


 くるくる回転する男。

 片足をくの字にし、両腕は真っ直ぐ横に伸ばしている。


「ハイ!!乾きましたー」


「………」


 どうやら自然乾燥をしていたようだ。

 ピタリと止まった男は、ニッコリと微笑んでいる。

 それを無言で見つめるカズト達。


「おいおいおい!ノリが悪いなぁえぇ?」


 パンっと、自分の右ふくらはぎを叩きながら男はカズト達に注意する。


「ちょっとアンタ!!アンタがニワトリンなの?」


 しびれを切らしたアリスが、男に質問をする。

 質問された男は、両腕を組み、両足を軽く開く、いわいる仁王立ちのポーズをとりながら、アリスの質問に答えた。


「いかにもその通りだ!私こそが、魔王軍幹部の一人、ニワトリン様であ〜る」


 白い全身タイツに、ズボンなのかパンツなのかわからないニワトリのズボンを履いている男。


(白鳥じゃなくてニワトリなのか?)


 そんな事に気をとられていたカズトは、重要なセリフに、いま、気づいた。


「お、おい!お前!い、いま何て言った?」


「ニワトリン様であ〜る」


「違う。その前だ!」


「恋人募集中だと言った!!」


「嘘をつくな!嘘を…ったく」


 本当にコイツがニワトリンなのか?

 カズトは半信半疑になってしまった。

 そんなカズトの心中を知ってか、知らずか、アリスはカズトの肩を叩いた。


「ここは私に任せなさい」


 自信たっぷりのアリス。

 彼女はカズト達の前に立つと、ニワトリンと同じように仁王立ちになり、声をかけるのであった。


「アンタ?魔王軍の幹部って言ったわね」


「いかにも!!」


 自信たっぷりの男。

 アリスの口元がニヤリとする。


「ならアンタ!私が誰だか分かるわよね?」


 そう、魔王軍の幹部であるのであれば、アリスの部下ということになる。

 正直にいえば、アリスはこの男を知らない。

 これだけの変態…いや、ユニークなキャラクターを、忘れるはずがないとアリスは考えている。

 つまり、自分が知らないということは、この男が嘘をついている可能性が高いという事であった。


 また、仮に自分が忘れていて、本当に魔王軍の幹部なら幹部で(変態なのはともかく)アリスにとっては部下になるので、それはそれで良いと考えていた。


 嘘をついていて、自らを魔王軍の幹部と名乗るのであれば、魔王軍に入りたいと考えている、つまり、自分の部下になりたいと考えているということだ。


 ならば話しは早い。

 戦わずに勝つとはこの事をいうのだろうか。

 思わず笑みがこぼれるアリスであった。


「お前が何なのかだと?恋人候補か?」


「違うわよ!この変態!いい、良く聞きなさい。私は魔王よ!魔王アリス!覚えておきなさい」


 右手を胸にあて、左手は腰にあてながら、アリスはニワトリンに向かって言い放った。

 魔王軍の幹部なら魔王に従えと、間接的に伝えたのだが、中々返事が返ってこない。


 あれ?と、思ったアリスは、閉じていた両目を開いた。


「やっとか…やっと現れたか」


 何故かプルプルと震えている男。

 それを見たカズトが叫ぶ。


「マズイ!何かくるぞ!?下がれ!!!」


 男は両手を真っ直ぐ上に伸ばし、こう叫ぶのであった。


 下克上だぁぁぁぁあっと。

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