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第四章1 レリス 上

 『主な登場人物』


・輝基 和斗・・本作品の主人公。ゲームをクリアーした所、アリスの魔法により、異世界にワープする事になった。

・アリス・・・勇者軍に倒された魔王サタンの娘であり、現魔王軍を率いる女王である。勇者軍に奪われたブラッククリスタルを取り戻す為、カズトを召喚したが、クリフに力を奪われてしまう。

・レイラ・・・勇者軍の1人。レイラについたあだ名は戦略兵器レイラであり、カズトの事を勇者テトだと思っている。かつて仲間だったクリフをとめるべくカズト達と行動を共にする。(元人間)

・ナナ・・・魔女族。

・輝基 美姫・・カズトの妹で、ブラコン(重症)

・ナナミ・・・ナナの姉。

・クリフ・・勇者軍の1人。クリフについたあだ名は魔法剣士クリフであり、ブラッククリスタルにより性格が変わってしまう。


【本編】


 ナナは焦っていた。

(どどどど、どうしよう)

 カズトを探すように言われ、ゴン太と走り回っていた所を3人の男の人から声をかけられたのである。


「ねぇねぇお嬢ちゃん。俺達と遊ばない?」


 遊ばないかと言われても、今はカズトさんを探さなくてはいけない。

 しかし、4人で遊ぶとなると、かくれんぼか何かなのだろうか?ナナは首を横にふる。

 それどころではないんだから、しっかりしなさいと、ナナは自分に喝を入れる。


「すすすすいません。人を探していいいいるんです」


 ペコペコ頭を下げながら、ナナは何度も男達に謝った。

 しかし、何故か3人の男達はコソコソと話しあい、ニヤニヤし、ナナに話しかけてきた。


「俺達も手伝ってやんよ」


「ほほほ本当ですか?あ、ありがとうございます」


 どうやら、困っている自分を助けてくれる相談をしていたようだ。

 ナナは何だか恥ずかしい気持ちになっていた。


 村では、人間は悪魔だと散々教えられたが、カズトやレイラのように、優しい人間だっているのだと思うと同時に、あの2人が特別で、他の人間は悪魔なのでは?と思う自分がいたのだ。

 ところがどうだ?困っている見ず知らずの自分を、助けてくれると言うのだ。


 ナナは、ニコニコしながら歩きだす。

 そう言えば、まだお名前を聞いていなかったなと思い、後ろを振り返って名前を聞こうとしたのだが、振り返ると男達の姿は消えてしまっていた。


 アンアンと鳴くゴン太の鳴き声を聞いて、我に返ったナナは、不思議に思いながらも、カズトの捜索へと戻るのであった。


「全く。あの子ったら・・あら?お目覚めかしら」


 カズトは、そんな声を聞いて目を覚ます。

 ここはどこだろうと、首を動かしてみるが、森の中だという事だけは解った。

 声がする方へ顔を向け、カズトは固まってしまう。


「ナナ・・じゃない!?誰だ」


 そこに居たのは、ナナに似た少女である。

 カズトは少女の格好を見て、すぐに魔女である事を理解したのだが、この世界に、ナナ以外の魔女がいるという事に固まってしまったのであった。


「初めまして勇者テト。私はナナミ。ナナの姉よ」


 黒いとんがり帽子に、黒いローブ姿、右目にルーペをしたナナに似た少女は、あろう事かナナの姉を名乗ってきた。


「俺を知っているのか?」


「ふふふ。貴方を知らない人はいないわ。魔王を倒した英雄じゃない」


 ナナミは、右手を口元にあてながら、クスクスと笑いだした。

 カズトは警戒しつつ、ナナミから距離をとろうとする。


「命の恩人にたいしてその態度、失礼しちゃうわね。でも仕方がないか・・レイラの事もあるしね」


 命の恩人と聞いて、カズトは自分の身体を見る。

 レイラに似た女の子に、魔法をぶつけられたはずなのに、傷一つ負っていなかったのである。


「・・治療して・・くれたのか?何故?」


 何故には二つの意味がある。

 何故治療をしたのか、何故レイラを殺そうとしたのかの二つの意味である。


 ナナの姉が、レイラを殺すようには思えなかったのもあるが、ナナの話しを聞く限りでは、ナナミは人間を殺すと魔女化する事を知っていたはずなのだ。

 つまりは、レイラを魔女化する必要があったのか、それとも別の目的があったのか。

 カズトに聞かれたナナミは、地面に向かって呪文を唱えた。


「勇者テト。これから貴方にはある物を見ていただきます。しかしこれはここだけの話し、いいですね」


 ナナミの表情は険しいものへと変化していた。

 カズトは深く頷いて、ナナミの指示に従う。


「タブー」


 そう言ってカズトに右手を向け、左手の人差し指を自分の口元につけるナナミ。


「契約は成立しました。貴方はここでの出来事、私と出会った事、一切の口外を禁止致します」


 ナナミはそう言うと、右手を地面に向けて呪文を唱える。


「魔力結界をはりました。外からも鑑賞されないでしょう。では・・あの夜の出来事からお話し致します。勇者テトは魔女の村に入って、アレを見ましたね?」


 ナナミに質問されて、カズトはうなずいた。

 アレとは、魔女の村で見てしまった惨劇であろう事は、確認するまでもない。


「アレは真実です。魔女の村は私が滅ぼしました」


 淡々と告げるナナミを前にしたカズトは、この女は何を言っている?いゃ、自分が聞き間違えているのか?一つの村、人々を潰しておいて、平然としているこの女が本当にナナの姉なのかすら怪しい。


「魔法剣士クリフをご存知ですね?」


 かつて魔王討伐時の、パーティーメンバーである事は、向こうの世界では有名である。

 そこから語られるナナミの話しに、カズトはただただ黙って、驚愕する事しかできなかった。


 一方その頃。


「何で急に飛んでいったのかしら」


「・・解りません。それよりもアリス。()()()はダメですよ」


 レリスと戦っていた、アリスとレイラだったのだが、レリスが突然飛び立ってしまったのだ。

 カズトから、背中の羽を見せないよう注意されているアリスは飛ばずに、レイラとともにレリスの後を追っていた。


 目立つなと言われている事も、関係しての行動だったのだが、家から家までを飛び移って移動している2人。


 これは普通だろうと、アリスとレイラは考えての行動であったが、家から家をぴょんぴょん飛び移る行動は普通ではない。

 しかし、2人のスピードが速い為、下からでは目視できない為、カズトの言いつけを破ってはいなかった。


「それよりもレイラ!」


「・・解っています。しかし、制御できないのです」


 アリスがバーサーカーモードに文句を言おうとしたが、レイラはアリスが何を言おうとしているのかをよんで答えた。

 ナナがカズトを攻撃した時、レイラはカズトに回復魔法を使わずに、ナナの後を追っていった。

 正確には、回復魔法が使えなかったからが正しいのだが、アリスとレイラはその事に関しては触れない。

 必要な時に、必要な事ができないということはあってはならないのだ。

 特に、命をかけた戦闘中であればあるほど、回復魔法は必要不可欠になる。


「あんた・・それって・・いえ。先を急ぎましょう」


 まるで呪いではないか。


 アリスはその事を、面と向かってレイラに言えなかったのであった。

 無論レイラはその事に気づいている。

 人間に気を使う魔王サタンの娘。


 この子は本当に魔法サタンの娘なのだろうか。


 レイラもまた、アリスにその事を言えずにいる。

 その後は、2人は無言でレリスが飛んでいった方へと走るのであった。


 レリスが飛び立つ少し前。

 ナナは立ち止まる。

 忘れもしない、かつて大好きだった姉の魔力を、感知したからである。


「そんなはずは・・でも・・。」


 カズト達に、ここは別の世界だと教えてもらっているナナは戸惑っていた。

 カズト達が、嘘をついているとは思えない。

 何より、辺りを見渡せば、見た事がない物がたくさんあるのが証拠ではないか。

 ナナは首を静かに横に振り、すぅっと深呼吸する。


 間違いない。

 お姉ちゃんが近くにいる。


 お姉ちゃんは私が殺さなきゃダメなんだ。


 ナナは震える手をぎゅっと握りしめ、あの日の事を思い出す。

 レイラを連れていき、レイラと供にお姉ちゃんを止めるつもりだった。

 しかし、止める所かレイラはお姉ちゃんに殺されてしまった。

 レイラより弱い自分が、倒せる相手ではない事ぐらい解っている。

 それでも、やらなくてはならない。

 なぜなら。



 それが私にとっての罪滅ぼしになるのだから。

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