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第三章6 魔女 下

 カズトとゴン太をかばいながら、戦っていたアリスは気を失ってしまう。

目覚めたカズトは、レイラと合流してアリ王様(キング)から逃走を試みる。

一方ナナはアリ女王との戦闘で、限界を使い果たして勝利を収めるのだが、目の前にアリ王様とアリ女王が姿をあらわすのであった。


 カズトはやりすぎたかな?と少し後悔していた。

「俺は”勇者”だからさ」

冗談っぽく、ウィンクしながら言ったはずだが・・。

(まぁレイラが元気になったならいいか)

「レイラ」

「ハ、ハイ!!!」

「先を急ぐぞ!」

「ハイ!!」

(やはり少しやりすぎだったようだ)

ピンっと背筋を伸ばして、今にも敬礼しそうな勢いのレイラをを見て、カズトは少し後悔した。


 先頭をカズトが走り、後ろをアリスをおんぶしたレイラが走る。

アリスの回復も優先だが、ナナの方が最優先だとレイラに告げると、走りながら回復魔法を使ってみるという、レイラの案を受けた形だ。

「レイラ。大丈夫か?」

「大丈夫ですテト」

カズトに心配されたレイラは、嬉しそうに微笑んだ。

「走りながらでいい。聞いてくれ」

レイラがうなずいているのを、背中で感じて続ける。

「ナナは俺を攻撃する瞬間、何かをつぶやいていた」

カズトは気絶する前の記憶を思い出しながら語る。

「そして・・・・・泣いていた」

レイラは無言だった。

「つぶやいた言葉は聞きとれなかったが、おそらくナナは謝っていたんだと思う」

”ごめんなさい”と。

「・・・それでもテトを傷つけたのにかわりありません」

プイっと今にも聴こえてきそうなレイラの返しに、苦笑いをしてしまう。

「ですが。それでこそテトです」

レイラに言われて、顔が熱くなるのを感じたカズト。

(そこまで言われると、さっきの言葉を取り消したい)

カズトは急に恥ずかすくなった。


 恥ずかしさを誤魔化すわけではないのだが、重大な事なので話しを変える。

「これから重大な事を伝える」

レイラを見ながらカズトが語る。

「これから向かう場所におそらくナナがいて、戦っているはずだ」

「おそらくではなく、十中八九そうだと思われます」

「アリスは力を使い果たして動けないし、多分ナナも全力で逃げているはずだ」

レイラは無言で続きをうながした。

「いいか!絶対に戦おうとせず、全力で逃げるんだ」

「・・・ハイ」

返事に少しの間があったレイラ。

いつもは気にしないカズトだが、今は緊急事態だ。

一つのミスが命とりになるかもしれない。

「レイラ。もし俺に何かあったとしても戦うなよ」

バーサーカーモードになるなという意味である。

守れそうにないのか、返事が返ってきそうにないので、カズトはさらにつけくわえる。


「レイラ。俺の側から離れるな」


「ハイ!!!」

離れるなよと言い終わる前の返事にカズトはちゃんと理解してくれたのか不安になった。

「本当にもう・・うるさいわよ」

顔を赤くして、アリスがひょっこり、レイラの肩越しにカズトを見る。

「アリス!良かった・・心配したぞ」

「フン!別に普通よ」

プイっと顔を横に向けるアリス。

「アリス」

「・・何よ」

「ありがとな」

「べべべ別に!主人としての務めって痛いわよ馬鹿レイラ!」

「・・何の事でしょう?」

カズトからは見えなかったが、レイラがおんぶしている手で、アリスのお尻をギュっとつまんでいた。

いつも通りの2人を見て胸をなでおろす。

「アリス。話しは聞いていたか?」

「だいたいわね」

「よし!アリスが目覚めたのなら、作戦を変更する」

当初、カズト1人でナナを救出する予定であったが、助けられる確率は0に等しい。

だが3人で救出できるなら、確率が50%にあがる。

「とりあえず走りながら聞いてくれ」

そう2人に伝えて、再び走りだす。

「アリスには危険な可能性が一番高いが、万が一の場合は敵を攻撃して、ひるませてほしい」

「・・倒すんじゃなくて?」

アリスは不満な目を向ける。

「倒す勢いで攻撃を頼む・・が、無理はするなよ」

「無理なんかしてないわよって痛いわよ馬鹿レイラ!下ろせ!!」

レイラの背中をポカポカ叩くアリス。

カズトはそのやり取りを無視して、レイラに話しかける。

「次にレイラにはナナを救出してほしい」

「ハイ」

「俺が敵の注意を引き付ける」

「それなら私がやります」

レイラがスピードをあげて、カズトに並ぶ。

「いや、俺は今、戦う武器がない。注意を引き付けた所を、可能ならアリスが攻撃。レイラがナナを救出した後回復魔法で治療をしてほしい」

「・・・・」

レイラは納得していないような顔をしていた。

「レイラ。お前だけが頼りだ!頼んだぞ」

「ハイ!!!」

木と木の間をすり抜け、静かな森をひたすら走る。

不思議なことに、モンスターと遭遇がない。

それはいい事なのだが、ここまで出会わないと、逆に不安になってくる。

カズト達はナナを救うべく、走るのであった。


 静かな森の中を、ナナはひたすら逃げ回っていた。

「ハァ・・ハァ・・ダ・・ダーク」

弱々しく杖を地面に突き立てるが、プスっと音をたてて少しの煙があがった。

「キャッ」

地面を巨大な斧が襲い掛かる。

数十m吹き飛ばされたナナは、転がる反動を利用して立ち上がる。

魔力は底をつき、2匹のアリが襲ってくる攻撃をかわしながら逃げるナナ。

どうやら体力も底をつきそうだ・・。

直撃だけは避けていたナナだったが、最強魔法を放った時から限界はとっくにすぎている。

「・・お・・おねえちゃん」

あの夜から、全てを知ったあの夜から、ずっとずっと憧れていた大好きなお姉ちゃん。

もう声を聞くことはできない。

だけど、レイラがいればなんとかなるかもと期待していた。

「私は・・期待を望む事さえ・・許されないと言うのか」

頬を何かが伝っていくのを感じたナナだったのだが、果たしてそれが涙だったのか、頭から流れる血なのかナナには解らなかった。

よろよろと木と木の間を通り、少しでも直撃をさけるナナ。

走りながら大好きな姉を思い出していた。


 全てを知ったあの夜、久しぶりに一緒に寝たいと言った私に”甘えん坊さん”と優しく微笑んでくれたお姉ちゃん。

朝起きて久しぶりに寝顔を見たきがした。

「・・ううん・・おはようナナ。」

「お姉ちゃん、おはよう」

「うん?どうした?」

「あのね・・修行に付き合ってほしいの」

「ああ。いいよ。ナナ、私にだけは遠慮しなくていいんだぞ」

そう言って、ウインクするお姉ちゃんを見て顔が赤くなる。

その日から私は毎日お姉ちゃんと寝て、朝修行に付き合ってもらう。

相変わらず周りの目は冷たい。

けど私にはお姉ちゃんがいるから平気だ。

冷たい目が気になる事が減った。

ずっと一緒にいてほしいといつか言おう。

今はまだ恥ずかしくて言えない。

けどいつかは・・きっと。


 そんな毎日が続くと思われたある日の事だった。

遠くの方から大きな音が鳴り響いた。

「おおおおお姉ちゃん。今のは?」

お姉ちゃんの服の裾を握りしめて私はたずねる。

「あぁ。ボステムの町の方から聞こえたな」

お姉ちゃんは、窓の外を見ながら答えた。

「プルルルル。プルルルル」

お姉ちゃんの部屋に飾ってあった鳥の彫刻が鳴いた。

「ひっ」

私が驚くとお姉ちゃんが頭をなでてきた。

耳元が熱くなるのを感じた私は、顔を見られないように下を向く。

「これは使い魔だよ。ナナもいつか持つ事になるかもな」

「使い魔・・私が・・?」

 使い魔は優秀な魔女にだけ使う事が可能な魔法であり、お姉ちゃんは5歳の時に鳥を使い魔と契約魔法を使っている。

しかし、その使い魔が何の役になるのかだけは、教えてくれなかった。

「ナナすまない。どうやら仕事のようだ」

「こんな夜中に??」

心配そうな顔をしてしまったのか、お姉ちゃんが抱きしめてくれた。

「さっきの音の正体、または原因を調べてこいとの事だ。大丈夫。すぐに戻るさ」

「気を付けて・・ね」

「ああ。行ってくる」

窓を開けて、口笛を吹く。

口笛を吹くと、ほうきがやったきた。

ほうきにまたがって、ボステムへと飛び立っていく。

窓を見ながら私は、胸騒ぎがとまらなっかた。


 こんな時に何で・・?

ナナは地面を転がりながら呟いていた。

攻撃を受けたからではない。

つまづいた場所が坂だったのだ。

坂を転がり落ちて空を見上げる。

アリが空を飛んでいて、目があった気がした。

槍をもったアリが私に向けて槍を向ける。

「ハァ・・ハァ・・た・・助けて」

ナナは大の字で空を見上げて叫ぶ。


「助けてお姉ちゃん!!!」


 ナナが叫ぶと同時に坂の上から人影が飛び出した。

「ヘルズアタック」

アリ女王の頭をアリスが攻撃をあてる。

坂を下ってきたレイラがナナをおんぶする。

「・・・な・・なんで?」

自分は夢を見ているのだろうか?

「ハァ・・ハァ・・痛ッ」

レイラがナナのお尻をつまむ。

「・・・テトの事許したわけではありませんから」

レイラがプイっと横を向く。

回復魔法なのだろうか・・・もうダメ。

ナナはそこで気絶してしまった。


 アリ女王に攻撃をあてたアリスが地上に降り立つと、直ぐ両手を空に向けて叫ぶ。

「ヘルズクラッシュ」

空に向かって黒いレーザービームが放たれる。

アリ女王に直撃したが、完全回復していないため威力が弱い。

「アリス」

「わかっているわよ」

レイラの呼びかけに瞬時に反応して、アリスはレイラの殿(しんがり)を務める。

「カズトは大丈夫かしら?」

「・・・テトは大丈夫です」

「そ、そうよね。とにかく合流しましょう」

アリ王様の注意を引き付けているであろうカズトの元へ走りだすアリスとレイラであった。


次回 第3章7 資格 上


※ここまで読んで頂きありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

自分的にはいい感じに書けたのではないかなと思います。

反省点をあげるなら、ナナについてですかね。

ナナのキャラクターをもう少し上手くお伝えできればな・・

あまり長くなってはあれなのでこの辺で。

では次回もお楽しみに。


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