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第三章6 魔女 中

 ナナの魔法により気絶するカズト。

そのカズトをかばうアリスの前に現れたのは、仲間を呼ぶモンスター、アリ兵隊であった。

 一方ナナの後を追うレイラは、カズトが傷つけられた事により、バーサーカーモードになっていたのだが、カズトも知らないモンスター、アリ女王が姿を現すのであった。

 レイラから追われていたナナは昔を思い出して・・・。


 誰かが呼んでいる?

カズトは目を開けようとするが力が入らない。

もう少しだけ寝ていようかとまぶたを閉じかける。

(ナナ!!)

カズトは今の状況を思い出して目をあけた。

(俺は・・ナナの魔法をくらってしまい、気絶させられた)

目をあけたカズトを呼ぶ声。

カズトの目の前に見えたのは、アンアンと吠えているゴン太の姿であった。

(・・俺を呼んだのは・・ゴン太か?少し大きくなっているような?)

カズトがぼんやり眺めていると、ゴン太がカズトの鼻を甘嚙みしてきた。

「な、何をする」

カズトが上体を起こす。

「・・・!?」

(何だこれは・・)

カズトは驚愕する。

辺り一面をアリ、アリ、アリ。アリの残骸の光景が広がっている。

(・・アリス!レイラ!)

カズトが後ろを振り向くと、血だらけのアリスの背中が見えた。

「アリス!」

「・・・・!?」

アリスがカズトの方を向こうとした瞬間に、アリ騎士がアリスに襲い掛かる。

間一髪で攻撃をかわしたのだが、アリ騎士の攻撃によって生じた風圧に、アリスは吹き飛ばされてしまう。

(アリスがやったのか・・この数を・・1人で!?)

軽く50匹をこえるアリ兵隊やアリ団体、アリ軍隊、アリ軍隊の所でアリ騎士を呼ばれてしまったのだろう。

カズトが周りに気をとられていると、アリスに襲い掛かったアリ騎士が、カズトに襲い掛かる。

「・・クッ・・まずい」

カズトは剣で防御しようと試みるが、防御が間に合わないことを悟る。

ゴン太を懐に抱いて、カズトはいちかばちか右に大きくジャンプする。

一回転しながら転がるカズトの後ろで大きな破壊音が鳴る。

アリ騎士に隙ができたと、アリスが仕掛ける。

「ハァ、ハァ、くらぇぇぇぇえええ」

アリスの両手に黒い霧が集まっていく。

アリ騎士の頭上を飛んだアリスが、アリ騎士に向け両手を向けて叫ぶ。

「ヘルズクラッシュ」

アリ騎士を黒いレーザービームが襲う。

激しい爆音を鳴り響かせ、アリ騎士がいた地面がどんどんへこんでいく。

「はあぁぁぁぁぁあ・・ハァ・ハァ」

黒いレーザービームが消えると、アリ騎士の姿も消えていた。

アリ騎士を倒したアリスは、着地に失敗して地面に寝転んでしまう。

「ア、アリス!?」

カズトが急いでアリスの元に駆け寄る。

今の攻撃で全てを出し切ったのか、カズトが目を覚ましたからなのか、アリスは気絶してしまった。

(おそらくは・・俺が目を覚ましたからだろう)

アリスの状態を見てカズトは確信する。

アリスはずっと前から限界だったのであろうことを。

きっとカズトとゴン太の為にと奮闘していたアリス。

「くそ。どうなっている・・レイラは・・ナナを追ったのか」

レイラとナナの姿が見えない。

「アリス。しっかりしろ」

カズトの呼びかけに、返事はなくアリスは眠っている。

その時、カズトの背後で、大きな音が鳴り響き地面が揺れる。

(う・嘘だろ)

嫌な予感がして後ろを振り向くと、王冠を被り赤いマントをしているアリが立っていた。

他のアリとは違い、特徴的な部分として説明するのであれば、とにかくでかい。

カズトの前に現れたのは、アリ王様(キング)であった。


 カズトがアリ王様と対峙する数十分前、レイラはアリ女王と戦闘になっていた。

無数の手足に槍を持っており、レイラ目掛けて繰り出される槍の嵐。

しかし、レイラはそれをものともせず、ひらりひらりとかわしていく。

「・・つ、強い」

遠くから魔法でのぞいていたナナは息をのむ。

「・・これなら・・きっと」

アリ女王の隙をついて、レイラが攻撃をしかける。

「あ!・・レイラさんでも・・ダメ・・なの」

レイラがアリ女王の頭部をかかと落とししているが、アリ女王は少し体がよろめいたぐらいだ。

そして再びレイラ目掛けて無数の槍を振るう。

「・・レイラさんがダメだったら・・私は・・一体・・何の・・為に」

ナナは唇を噛み、胸元を硬く握りしめ、震えるのであった。


 ナナがそんな事を考えているとは知らず、レイラは焦っていた。

敵が強いからではない。

ナナを見失ってしまった以上、ここには用がない。

はやくテトの元に戻りたい。

レイラが、そんな事を考えながら戦っていたその時だった。

アリ女王の背後から、赤いマントを羽織った巨大なアリが、姿を現わした。

そびえ立つ木よりもデカいアリ。

「・・・テト」

ナナを追わず、テトの側にいるべきだったと、後悔するレイラ。

バーサーカーモードに入ると、頭に血が昇りカッとなってしまう事が、レイラは嫌いである。

戦う事も好きじゃない。

それでも、テトを傷つけようとするのであれば、自分は戦う事を望む。

ずっと隣に立っていたいから・・。

レイラは2匹のアリを倒すべく、腰を深く落とした。


 ナナは焦っていた。

突如現れたアリをナナも目撃する。

いくらあのレイラといえども、負けてしまうのではないだろうか?

自分もあの場に行って、少しでもレイラの助太刀をするべきでは、ないだろうか。

しかし、自分が行った所で役に立つのか。

「・・・おねぇちゃん」

どうするべきなのか、ナナは自分の心に深く問いかけていた。


 カズトは焦っていた。

頭をフル回転させるが、どの答えも”死”という答えが導かれる。

右手に剣をかまえ、左手でアリスが背中から落ちないように、固定する。

木から頭がはみ出しているアリ。

もしかしたら、気づかれていないかもしれない。

しかしカズトは、かもしれないという言葉が嫌いであった。

やるなら完璧に、徹底的に、完膚無きまで叩く。

哲学と聞かれたらこう答える。

大丈夫かもしれないで、行動して大丈夫じゃなかった場合、命を落とす。

これは、ゲームの世界であっても、ゲームではない。

「どうすればいい」

そんな事を考えているカズトに、無数の斧が降り落とされた。

「く、クソ」

斧をかわすが、斧が地面にあたったさいに生じる風圧によって、砕かれた無数の石つぶてならぬ、岩つぶてが襲ってくる。

剣でガードを試みるが何発か、かすってしまう。

「ぐわっ」

カズトはそれでも、アリスを落とさないように、踏ん張るのだが、剣が折れてしまった。

このままではマズイ。

心の中で呟くが、どうしようもないのが現状である。

レイラがこの場にいれば、戦況は変えられるのに。

そんなカズトに、再度無数の斧が降り落とされるのであった。

「・・頼む・・来てくれ・・レイラァァ!!」

カズトが叫ぶと同時に、カズトの背後から無数の光の雨が、アリ王様に降り注ぐ。

「テトを傷つけるなぁぁあ」

鬼の形相で、レイラが叫ぶ。

カウンターをもらう形で、アリ王様は後退した。

「た、助かったレイラ。ありがとう」

カズトは安堵する。

テトからそう言われ、レイラの頬が赤く染まる。

「レイラ。ナナはどうした?」

「すいませんテト。見失ってしまいました」

「そうか。仕方ない」

レイラに探索魔法は備わっていない。

それにここは魔女の森であり、見失ってしまってもおかしくない。


レイラとそんな会話をしていると、アリ王様が態勢を立て直し、無数の斧を一つの斧に束ねて、カズト達に降り落とされた。

アリ王様が、斧を束ねると同時にレイラが動く。

「ルミナスブレイク」

かかと落としでアリ王様の頭部を蹴り落とす。

蹴り落とした衝撃で、レイラはアリ王様の頭上をとる。

「ルミナスレイン」

ここぞとばかりに、レイラは魔法を連発する。

無数の光の雨が、アリ王様に降り注ぐ。

(魔法の威力が落ちている・・時間切れか)

バーサーカーモードは無敵ではない。

一定の時間が経つと消える。

また、テトの状態やレイラの心理状態にもよる。

テトがかすり傷程度なら5分も続かない。

今回は、気絶するぐらいのダメージを、()()()という形で受けた。

そしてテトの姿を見て、安心したという事も大きい。

「レイラ!!ここは撤退する」

アリ王様に魔法を放ったレイラが、着地する所を見計らって声をかけた。

うなずくレイラの瞳は、いつもの色に戻っていた。


カズトがアリスをおんぶして、後方からレイラ、前方をゴン太が走る。

遠くの方から()()()()()()()()()()()が、後ろを振り向く余裕が今はない。

しばらく走ると、レイラから声がかけられた。

「テト?様子が変です」

レイラにそう言われたカズトは、スピードを緩めてレイラに並ぶ。

「何かおかしいのか?」

「はい。追ってきません」

そう言われてカズトは、立ち止まって後ろを振り返る。

レイラの言うように、カズト達に追っては来ていなかった。

「アン」

ゴン太に呼ばれ、ゴン太を見るとうっすら消えかかっている。

「ここまでありがとなゴン太!今度美味しいものを食べさせてやる」

「アン」

アリスの召喚魔法が切れたようだ。

ゴン太が、消えたその時であった。

突如遠くの方から爆音が鳴り響き、地面が揺れる。

いくつもの木が倒れたのか、遠くから土煙りが舞っていた。

「どうやら、向こうで戦闘がおこなわれているようです」

レイラが確認してきます、と言って木を駆け上がる。

「・・・戦闘?・・・まさか?」

木から降りてきたレイラが、言いづらそうに告げる。

「さっきのアリが遠くの方へ見えました。また・・・槍を持ったアリもおり、2匹が共に誰かと戦闘中かと思われます」

カズトの顔が青ざめる。

さっきの巨大なアリが、違う武器を持って2匹暴れている。

そしておそらく戦っているのは、ナナだ。


 カズトの予想は当たっていた。

レイラの前に現れた2匹のアリだったのだが、赤いマントを羽織ったアリが、突如どこかへ行ってしまった。

レイラとナナは赤いマントを羽織ったアリが向かう方角に、カズト達がいる事を悟る。

「・・・テト!」

レイラが突如アリ女王との戦闘をやめて、赤いマントを羽織ったアリを追う。

しかし、レイラを足止めするかのように、無数の槍がレイラに降り注ぐ。

その光景を魔法で見たナナは焦った。

レイラをひき連れて行きたかったのに、急にいなくなろうとしているからである。

「・・・待って・・行かないで・・私は・・くっ」

大急ぎで持っていた杖を、レイラに向けて魔法を唱える。

「ダークフレイイム」

ダークフレイムと言わないといけない所を、慌てたせいで呪文を噛んでしまい、噛んだ事によって更に慌ててしまい、杖をアリ女王に向けてしまった。

魔法は不発に終わったのだが、攻撃を向けられた事によって、アリ女王がナナに気付く。

ナナに気付くと、アリ女王はでかい羽をはばたかせてナナに近づいてきた。

アリ女王がいなくなった事を確認する暇を惜しんで、レイラはカズト達の元へ急ぐ。


 突然こっちに向かって、飛んでくるアリを見て、ナナはパニックになる。

「・・ひっ!!」

ナナは急いで木から飛び降りて、逃走を試みる。

「ダーク、クウィンド」

地面にぶつかる寸前で唱えた魔法も噛んでしまい、着地に失敗したナナ。

「・・ハァ・・ハァ・・イタ・・い」

直接地面に激突していたら、死んでいただろう事を悟ったナナは冷静になる。

そんなナナに、無数の槍が降り注がれた。

「・・きゃっ!!」

直撃だけは避けるべく、かわす事だけに全神経を集中させるのだが、攻撃によって生じる風圧や、岩の破片など計算できるわけもなくナナは吹き飛ばされ、地面を転がされる。

よろよろと立ち上がるナナ。

「わ・・わたしは・・死ねない・・死ねない!!」

杖を地面に突き立て、それを柱がわりにして、よろよろ立ち上がる。

「我は最強魔法の使い手ナナである!!」

杖を右手で持ってアリ女王に向ける。

左手は額にあてて。

両足を広げて自信満々に、声を大きくあげて自分に気合をいれる。

真っ黒なローブが若干赤く染まりつつあり、所々破けてしまっている。

ボロボロなナナはここで勝負をしかけた。

「ダーク」

杖を地面に突きたてる。

すると、突き刺した地面から黒い煙があがった。

目くらましをしたナナは直ぐその場を離れる。

煙があがった所に槍が突き刺さる。

突き刺さった槍が抜けないのか、槍がその場にとどまっている。

その光景を見たナナは好機と見て、最強魔法を放つ準備をする。

「ダークバースト」

杖に強力な電気と風が集まる。

「もっと・・もっと・・もっと!!」

ナナの持つ杖に集まる風が強くなり、小さな竜巻ができる。

その竜巻に電気が絡み、バチバチバチと音をたてる。

どんどん大きくなる竜巻。

ダークの効力が切れると同時に槍が抜け、アリ女王が槍を束ね天高くあげる。

アリ女王が槍をあげる光景をみたナナは、目をカッっと開きここだ!!と杖を相手に向ける。

「ダークバーストショット」

杖から放たれるナナの最強魔法。

アリ女王にぶつかると同時に空から雷が落ちる。

風で体を切り刻まれ、切り刻まれてできた傷口を電気が襲う。

そして、大きな雷が空から降ってくる。

「・・ハァ・・ハァ・・や・・た」

大きな穴があいた地面を見て、ナナは再び倒れそうになった。

何とか杖で体を支える。

「お姉ちゃん・・私・・!?」

空を見上げ、深呼吸すると遠くから何かが近づいてくる足音。

さらに、遠くからこっちに向かってくるさっきのアリ。

「ま・・まさか」

ナナの前に現れたのは、赤いマントを羽織ったアリと羽を生やしたアリ。

アリ王様とアリ女王であった。


 カズトは走り出した。

「・・ナナを助けるのですか?」

走っていると後ろから声がかけられた。

「あぁ」

短くそう伝える。

「・・行かないでほしいと・・言ったら私を嫌いになってしまいますか?」

最後の方は、震えているような声であった。

「レイラ!嫌いになる事だけは絶対にない」

レイラを元気付けるように、力強く、怒っているように聞こえてしまうかもしれないが、大きく。

「では・・なぜ・・?」

今度は走りながらではなく、立ち止まってレイラを見る。

カズトを見上げるレイラの目をきちんと見て、カズトは答える。



「俺は”勇者”だからさ」


その言葉にレイラは頬を赤く染め上げて、嬉しそうに微笑えむのであった。


次回第3章6 魔女 下


※ここまで読んで頂きありがとうございます。

さて、今回はいかがだったでしょうか?

いつもより長くなってしまいましたが、読み応えはあったのではないでしょうか。

技名がちょっと迷ってしまいますね・・アニメや漫画、ラノベやゲーム好きだと被らないように考えるのが非常に難しいのです。

なので、パッと浮かんだのをつけております。

おそらく被らないというのは、不可能だからです。

あまり長くなってはあれなので・・この辺で。

では、次回もお楽しみに。


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