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第三章4 魔女の森 中

 アリスの呪文により、異世界へとワープする事になったカズトは早くも後悔する事になる。

ワープした場所は高さ700mある上空であった。

「お、おい!ど、どうするんだ」

制服姿のカズトが焦った声をあげる。

「う~ん。やっぱりこっちの世界の方が空気が美味しいわね」

ボンテージ姿のアリスが大きく深呼吸する。

「・・・ならずっとこっちの世界にいればいいです」

ゴスロリ服のレイラが小声で呟く。

レイラの声が聞こえていたらしく、アリスが嚙みつく。

「け、喧嘩してる場合か」

地面が見えてきた所でレイラが唱える。

「ルミナスウインド」

レイラが地面に右手を向けて放たれた風の魔法により、なんとか無事だったカズト達を出迎える者がいた。

「アリス様?」「おい!アリス王女がお戻りになったぞ」「あのお姿は・・力を失っている?」

アリスの部下達だ。その声をきっかけに100名ぐらい集まってきた。


 カズト達の前に現れた鎧武者が、膝まついてアリスに謝罪する。

「ア、アリス様。この度は申し訳ありません。入り口の門番と・・し・・て・・の」

鎧武者が顔をあげレイラと目があう。

「アアア、アリス様。なぜ戦略兵器レイラ、勇者テトと一緒なんで?」

その言葉に集まった部下達も動揺しだした。

「こいつらは、魔王軍に入ったカズトとレイラよ。いい?丁重に扱いなさい」

アリスが親指を立てて、カズトとレイラに向ける。

その言葉にレイラの目つきが鋭くなるが、カズトがとめる。

大勢の部下達がざわつきはじめる。

(先日魔王軍に突撃してきたレイラや、俺を勇者テトと勘違いしている部下に対してそれは・・)

カズトが心の中で心配した通り、部下から反対の声があがろうとしたのだが、アリスがそれをさせなかった。

「我がアリスの名の元に命じるわ」

左手を腰に当て、右手を真っ直ぐ伸ばしてアリスが部下に命じる。

『アリス様の名のもとに』

大勢の部下達がいっせいに膝まつき、右手を胸の当たりにあてて返事を返す。


 アリスは数名の部下を残し、他の部下は解散させた。

「それで。状況はどうなってる?」

カズトとレイラもアリスの後ろでアリス達の話しを聞く。

「はい。現在ご覧の通り城は破壊され、修復作業に入っております」

「人的被害はどう?」

「戦闘不能になった兵は治療中でありますが・・申し訳ございません。突如現れた魔法剣士に数名やられてしまいました」

この言葉にアリスとレイラ、2人は違う意味で苦虫を嚙む。

部下を守れなかった自分、味方をとめれなかった自分への腹ただしさ。

カズトは2人に声をかけられず無言で2人を見守っていた。

「・・ご苦労様。他になにかあるか」

「はい。魔女の森で不穏な動きがあったみたいです」

「魔女の森で?・・まぁいいわ。これより私達はボステムに向かう!留守中はリザード部隊が指揮をとりなさい。以上!解散」

『ハッ』

アリスの命令より、残っていた兵士は各々持ち場へと帰っていった。


 アリスは丘の上から城を見渡しながらレイラに話しかけた。

「・・レイラ。お礼は言わないわ」

カズトとレイラに背を向けている為、表情はうかがえない。

「・・・何の事でしょう」

レイラはとぼけているわけではない。

「・・・!?・・全く嫌な女ね」

それはアリスにも通じたみたいで、カズトは思わず笑いそうになる。

さっき部下は「戦闘不能の兵は」っと言った。

つまりレイラは誰も殺していなかったということだ。

きっとアリスはレイラとの戦闘でもしかしたらと思っていたのであろう。

それでなくては、あんなに仲良くできないであろう。

そんな不器用な2人を微笑ましく思っていたカズトであった。

「これからどうするんだ」

丘の上でアリスとレイラに話しかける。

「とりあえずサタンシティーに行きましょう」

アリスが提案する。

レイラも賛成のようなので、3人は丘を降りてサタンシティーを目指す。


 サタンシティー。

別名、魔界に一番近い町として有名なこの町はとても活気に溢れている。

魔界に帰る者や魔界に挑戦する冒険者などがいる為、武器屋や道具屋など品揃え豊富である。

魔界に近い為か少し暑いこの街を歩く3人。

歩いているだけで色々な悪魔から声をかけられる。

「アリス様!どうですか?新鮮な魔界魚が手に入ったんですよ」

「おぉ!レイラにテトじゃないか。魔界に挑戦するのか」

武器屋や食材屋やら色々な所から声をかけられる3人。

この町では有名な3人なので仕方がないのだが、アリスが悲鳴をあげる。

「あぁぁもう!どうしてこんなに暑いのよ」

「確かに暑いな・・ブレザーだから尚更暑い」

カズトの制服は黒のブレザータイプだ。

女性の制服は紺色だが、カーディガンの方が可愛いと言ってほとんどの生徒がカーディガンである。

レイラはサクラ王国からここまでやってきた為、ここよりも暑い所を経験しているので大丈夫なのだが、流石にノドはかわく。

「あそこに入って何か飲みましょう」

アリスが酒場らしき所を指さしてカズトとレイラに訴える。

「入るのはいいが、お金はあるのか?」

カズトものどが渇いている為入りたいのだがお金がない。

「残念ながら私もありません」

レイラも持っていないみたいだ。

「・・・わかった。私が特別にご馳走するわ」

そう言って店内に入って行くので、アリスの後を追う。

悪魔に奢ってもらう日がくると誰が想像できただろうか・・。


 店内はそれなりに広かった。

カウンター席に丸テーブル席、4人ぐらい座れそうな四角いテーブル席、掲示板がある。

「掲示板・・もしかしてクエストが書いてあるのか?」

カズトは掲示板を指をさしてアリスに聞く。

「クエストと仕事が書いてあるわ・・あっちょっとそこ!スライムソーダ3つ持ってきて」

アリスが手をあげて注文する。

「はいよ~」

獣人の若い女の子が元気よく返事を返す。

 

スライムソーダを待っている間カズトはアリスとレイラに確認する。

「ここから魔女の森に入るが今のLvで大丈夫なのか?」

通常ゲームだと、魔王城の近くのモンスターは手強い。

「この辺は全く問題ないわ」

アリスがソワソワしながら答える。

「本当か?」

「いいカズト!通常私達は生まれてから強いなんて事はないの。みんな外に出て戦って強くなる。この辺の敵が強かったら私達は永遠に弱いままじゃない」

考えたらわかるでしょ?的な態度をとるアリス。

「テト。私が解説致します」

アリスの態度にかなり不満だったのだが、テトが困っているのならアリスの態度は後回しにする。

「ここサタンシティーはサクラ王国の正反対の位置にあり、強い敵は丁度中央の所にひそんでおります」

(そうだったか?)

カズトはゲームの時の事を思い出すが心当たりがない。

しかしこの辺が弱い敵ならそれにこした事はないと考える事をやめた。

レイラにお礼を言うと同時にスライムソーダがでてきた。

「お待ちど~」

獣人の女の子がテーブルにドンっとジョッキを置く。

(これは・・・)

カズトは嫌そうな顔をし、レイラは臭いを嗅いでいる。

「いいカズト!この世界ではマナーという言葉があるの!嫌そうな顔をやめなさい」

(ぐ・・こいつ、それは俺が教えた事だ)

アリスは人差し指を立てて口元をニヤリとさせる。

どうやら先日カズトに言われた事を、根に持っていたみたいだ。

レイラは無言でうなずいている。


 スライムソーダ。

水色で炭酸水なのかシュワシュワっと泡立っている。

アリスによると、スーパー、ハイパー、メガ、ジャイアントと種類があり、それを飲む為にはそれぞれのスライムを倒し、運よく素材がてに入らないと作れないらしい。

素材名を聞いてカズトは更に嫌そうな顔をする。


素材名 「スライムの涙」


 アリスがぷは~っと声をあげて飲んでいるのを見てカズトは意を決して飲む。

ゴク・・ゴク・・・?ゴ・・プー!!!

「お、お酒じゃないか!」

「お酒?スライム・ソー・・じゃ・・・よ」

アリスのほっぺたが赤くなりろれつがまわっていない。

レイラは強いのか顔がほんの少し赤い。

(未成年で飲酒なんて駄目だ)

「アリス!未成年でお酒は禁止って法律をしらないのか」

カズトはアリスからジョッキを取り上げようとして、失敗に終わる。

「この国にそんな物はそんじゃいしにゃい」

(確かにそうだが・・)

「カズトが飲まにゃいにゃら私によきょしにゃしゃい」

「悪かった。のどが渇いているから・・やめろ」

カズトのジョッキを取ろうとするアリスをとめていると、獣人の女の子がやってきた。

「すいませ~ん。お金もらうのわすれてましたぁ」

どうやら前払い方式らしい。

「あ、ハイ!少し待って下さい。・・おいアリス。アリス」

ふにゃ?っと言うアリス。にカズトが申し訳なさそうにお願いする。

「お金を下さいって事だから・・頼む」

カズトにそう言われてふにゅ・・っとお金を探すアリス。

すると急にバ、ババ、バババっと体を調べだし、しばらくしてから顔が青ざめる。

ま、まさか・・。


「お金がないわ」



次回 第三章4 魔女の森 下




























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