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第三章4 魔女の森 上

 カズトを呼ぶ2人の少女。

カズトはその2人が高校に興味をもっていると思い、今朝ついていくと言われないように、そ~っと家をでたはずだったのだが・・。

「あれ?カズト君。アリスさんとレイラさんのお知り合いなんですか?」

担任のさおり先生がカズトに質問する。

転校生の2人が、カズトを見て名前を呼んだのだから当然である。

(アリスとレイラがなぜここに??それよりどうする・・なんて説明すれば・・)

カズトが何て答えを返そうか悩んでいると、クラスメイトから声があがる。

「先生!!ここ!ここ!俺の隣あいてますよ!」

お調子者の田中が後ろの席で騒いでいる。

それをきっかけに、他の生徒も騒ぎ出す。

「こ、コラ~静かにしなさい」

騒ぎ出した生徒を注意するさおり。


「アリスさんはカズト君の後ろ。レイラさんはカズト君の前。いいですね!」

左手を腰に当て、右手の人差し指を立ててさおりは指示をだす。

(身長的に逆だろう・・いや、レイラも俺より低いが・・)

カズトがそんな事を考えていると、アリスとレイラがその指示に反論する。

「いやよ!何で私があいつの後ろなわけ?あいつは私の僕!普通、主人である私が前でしょ」

「お断り致します。テトの横がいいです」

アリスは両手を腰に当てて偉そうに、レイラは両手を組んで目を閉じて、さおりに再度指示をだせと訴える。

一瞬レイラがフっと笑ったようにカズトには見えた。

(し、僕ってアリスのやつ・・クラスメイトに誤解されるような事を・・)

「アリスちゃん僕だって・・可愛い」

カズトの心配は杞憂に終わる。

(・・・そうか。アリスの見た目か)

アリスは現在8歳であり身長は110㎝ぐらいなので子供だと思われているみたいだ。

「・・・それならアリスさんはカズト君の前、レイラさんは横で、カズト君の横の前野さん、前の席の小園君は席を田中君の横に移動して下さい。いいですね」

さおりが再度指示をだすと、騒いでいた田中がそんな~っとまた騒ぎ出す。

丁度HRが終わるチャイムがなった為、カズトは2人を渡り廊下へと連れ出した。


 渡り廊下はカズトのクラスをでてすぐの所にある。

「アリス、レイラどうやってここにきた」

カズトは両腕を組み、少しきつめに2人に質問する。

その言葉と態度にレイラがしゅんっとなるが、やはりアリスが反論する。

「どうやってってあんたの後をつけてきたのよ」

「どうやって忍び込んだんだ」

「魔力の力を使ってよ」

「ま、魔力って・・おい!アリス!それは大丈夫なんだろうな」

カズトはさらにきつく質問する。

「全然問題ないわ。私達がここに通えるように手配させただけだから」

「誰にだ」

「カエル伯爵よ」

(カエル伯爵?まさか・・理事長の事か?)

カズトは携帯を取り出し、ネットでこの学園の理事長の顔写真を2人に見せる。

「この人の事か?」

「そう!」

(レイラもうなずいているから間違いないのだろう・・・しかし)

魔力がどのような作用を人間にもたせるのかが解らない以上カズトは不安になる。

「・・・大丈夫です。」

レイラはそう言ってカズトに微笑んだ。

「何かあるなら私がとめています」

レイラにそう言われカズトも、少し冷静になる。

「それならいいんだが・・すまない。少し熱くなってしまったみたいだ」

カズトは2人に謝罪する。

2人は首を横に振って、気にするなとカズトに伝えてきた。

チャイムが鳴り始め3人は、教室に戻って行くのだった。


まぁ大丈夫だろう。と考えていたカズトだったのだがすぐに、間違いだったと頭を抱える事になる。

とにかく授業に集中できないのだ。

問題だったのは言うまでもなく、転校してきた2人。

アリスとレイラだ。


1時間目の授業の事である。

「じゃぁ数学の授業を始めるわね。教科書の26P・・あっ。アリスさんとレイラさんは隣の人に見せてもらって下さいね」

さおりがテキパキと指示を出したのと同時に、レイラが机をカズトの机にくっつけてきた。

(レイラ?)

「教科書ってなんだ?」

アリスが後ろを振り返りながら、カズトに質問するのだが、レイラが机をくっつけて、ニッコリと笑っているのを見てアリスは声をあげる。

「な、何をしてるのよ」

アリスがカズトの机を叩きながら、レイラを睨む。

「何って・・今先生に言われた通り、テトに教科書を見せてもらおうと思って動かしただけです」

レイラは不敵な笑みと共にアリスに反論する。

その態度に見下されたと感じたアリスが、席を立つ。

「言葉と態度に気をつけろよ・・人間」

殺気と共にレイラを威嚇するアリス。


アリスを見ていると忘れがちになってしまうが、アリスは魔界の王女である。

プライドは人一倍強いのだ。

カズトが慌ててアリスをとめようとしたが、アリスをとめたのはカズトではなくさおりであった。

「こーら!アリスさん。授業中に席を立ってはダメじゃないですか」

さおりがアリスをしかるのだが、迫力がまるで感じられない。

まるで メ っと叱って見えるさおりに、アリスが噛み付いた。

「あ、あんたが変な指示を出すからでしょ!」

アリスがさおりを指差して言うと、さおりが怯んだ表情を見せたが、先生としての責務からアリスに立ち向かう。


「先生に向かってあんたとか言っちゃいけません」

(生徒達が不良にならない為には、私が日々頑張っていかなくちゃ)

さおりがが日々掲げている目標である。

アリスはすでに不良ではなく悪魔なのだが、この世界でそれを知っているのはカズトとレイラしかいない。

悪魔が不良なのかはさておき、さおりが奮起する中、援軍が到着する。

「アリス。先生を困らせてはいけません」

さおりの援軍はレイラであった。

「そもそもアリスが前がいいとおっしゃったじゃないですか」

レイラがニッコリ微笑むと、アリスが怯む。

自分が矛盾しているのを突かれて、言葉につまってしまったアリスだったが、すぐに復帰する。

「アレは言い間違いよ!私もカズトの隣にしてもらうわ!」

アリスが両腕を組み、フンっと偉そうにすると、レイラの目つきが鋭くなる。

「・・そうですか。それならテトの隣は窓の外ですので、机を持って外へどうぞ」

レイラが窓のカーテンを開けながらアリスに微笑みかける。

「ま、窓の外って、落ちるじゃない!」

アリスが机を両手で叩きながら、レイラに反論する。

「テトの隣はレイラのものです」

レイラは一歩も怯まず、アリスの前に立ち塞がる。

一触即発の空気に、誰も2人をとめれずにいたのだが、やはり先生としての責任感からさおりが動く。

「2人は仲良くしなきゃダメなようですね。わかりました。アリスさんの隣にレイラさん。異論は認めません」

さおりがアリスとレイラの手を握る。

「喧嘩した後は握手。いいですね?カズト君は後ろで2人が喧嘩したりしたら注意してください」

3人が顔を見渡していると、再度さおりが念をおす。

「い!い!ですね!」

3人は首を縦にふるのであった。


休み時間になりカズトはレイラに質問する。

いや確認と言った方が正しいのかもしれない。

レイラは教科書を忘れたら、隣の人に見せてもらう事を知っているみたいだったからである。

カズトがレイラに確認すると、美姫に教わったそうだ。

昨日の夜、こんな会話があったらしい。


「あぁもぅ!お兄ちゃんと同じクラスだったら良かったのに」

美姫の部屋で、大きなクマのぬいぐるみを、抱きしめながらレイラに話しかけた。

「クラス・・とは強さの事でしょうか?」

レイラがアゴに手を当て、首をかしげる仕草をみせ、美姫に質問する。

「アハハ!レイラちゃんたら面白い事言わないでよ。確かにお兄ちゃんだったら間違いなくS Sランクね」

美姫が右手の人差し指を立てて解説する。

「クラスっていうのは、簡単に説明すると同じ場所で一緒に学べるって事かな」

「・・・テトと一緒」

一緒というワードに反応するレイラ。

「テト?あぁ、お兄ちゃんの事ね。お兄ちゃんと一緒に学べるわよ。でも学べるってだけじゃダメ!お兄ちゃんの隣で学べなきゃダメ!」

「・・・隣」

「くぅ〜せっかく同じ苗字なのに、クラス違ったら意味ないじゃない」

美姫はクマを強く抱きしめながら悔しがっていた。


レイラの話しを聞いたカズトはやっと理解した。

つまり妹の美姫がレイラに教えて、レイラがクラスっていう意味だけをアリスに教え、アリスが理事長に魔力を使ったというわけだ。

理事長にあたったのは単なる偶然ではない。

この学園の理事長は毎朝生徒を出迎える珍しい人だ。

顔がカエルに似ているため、生徒たちからはカエル先生というアダ名で親しまれている。

カエル伯爵というのは、あながち間違いではないのかもしれないなとカズトは心の中で考えいた。

それよりもこの2人に注意しとく事がある。

「いいか2人とも。あんまり先生を怒らせたり、困らせたりばかりしていると、退学になってしまうぞ」

退学という言葉の意味が解らず首をかしげる2人。

学校に来れなくなるという意味だと伝えると、2人は焦った顔を見せるのだった。


夜ごはんを食べ終え、カズトの部屋に集まった、カズト、アリスとレイラは話し合いをはじめる。

美姫はお風呂だ。

話す内容は学校の事ではない、向こうの世界についてだ。

「確認だが、ワープするのは今夜0時でいいんだな?いいか!美姫だけは巻き込むなよ」

「わかってるわよ!」と返すアリスと無言でうなずくレイラ。

「それで何処にワープするんだ?」

最後にいたのは魔王城だから魔王城にワープするのか?という意味ではない。

魔王城はクリフによって無くなっている。

「・・・サタンシティーかしら?」

首をかしげながらアリスが答える。

「大丈夫・・なんだろな?」

その態度にカズトは不安になる。

「大丈夫です。テトは私が守ります」

レイラが優しく微笑む。


夜中になり、美姫を起こさないように集まった3人。

「準備はいいわね?」

アリスが確認をする。

カズトとレイラがうなずくのを見てアリスが唱える


「リゼクト」


カズトは再び向こうの世界にいくのであった。


次回 第三章4 魔女の森 中








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