絶望と興味
木野 楼絵は最近、色々な出来事が重なって自暴自棄になっていた。彼女はこの世界に居場所が無いと思い始め、無意識に閉ざされた自分の中の世界に囚われていく。そしてそこから価値観は変わっていった―
「死にたい。」
いつものように少女は呟く。
それは本心では無いのだろう。ただ虚ろな音は、燻る木蓮の香と共に部屋に満ちていく。
この部屋には彼女ただ1人。
むせるような甘くも儚い白い花弁の香りは、四方を囲む透けた壁に圧縮され、凝固な匂いとなった。
少女は軽く、その通った鼻筋を摘む。
「死にたいんだよ。」
宵闇の制服を手繰り寄せるように、膝を抱えて左の肩に小さな頭を乗せる。肩にかかる濃黒の髪束がそっと顔を覆った。
それだけで少女は安心する。
なにかに包まれている安心感。それは産前母親の体内で羊水に包まれていたせいか、はたまた日常衣類に包まれ体を周囲から隠しているせいか。そんなどうでもいいことをぼんやりと煙に混ぜる。
どうでもいいことをなぜ考えるのか。
それでさえも、この部屋の中では煙同様存在自体が不安定な疑問。
少女はそっと、髪の隙間から天上を見上げる。そろそろこの空間を出ないといけなかった。
手で体を持ち上げて立ち上がる。
「待っててね。」
空を押し上げるように腕を伸ばして、そして少女は消えた。木蓮の香は寂しげに何も無い空間を漂った。
生きてさえいればいいことはある。
そんなの綺麗事。
この世界そんなにうまく綺麗に出来ていない。
人が多く溢れ、物が溢れ、そして感情が溢れている。
それにより上手く事が運ぶ傍ら、多彩な程に害が生じる。そう言葉通り彩鮮やかな害だ。優しさに溢れた害。家族へ、愛する人へ、国へ、そして自分への優しさ。それは決して愛と呼べるほど美しくない。所謂自己満足の具現化した世界。
そんな中でどれほど生きようが、いいことなど僅かに過ぎず、その倍以上に傷付いてしまう。それはかなり世界の理に近く、そして互いに傷つけ会うことは自然の摂理に等しかった。そんな不条理な世界がここには存在していた。
「面白いね!この世界!」
淡い紅の長い髪が揺れる。髪に隠れていない左目が、無邪気な色できょろりと動いた。その瞳は、隣の濃藍の少年を捉える。ここは六畳の子供部屋。
「そうだね。」
少年は少女に笑い返す。少女と対称に、髪に隠れていない右目が優しく微笑む。紅い少女と蒼い少年は同じ笑い方をした。
とても似ている二人は、また目の前に広がる穴を覗く。ごちゃごちゃした二人のおもちゃの中で、1人の少女が奇妙で当たり前のことをしていた。
両手にたくさんのものを抱えている。それを持っていることを、少女は嘆いている。そして抱きしめる。いらないから捨てたいのに、愛着によって手元から無くせない。まるで小さな子供のようで、または本能のようで。相反する感情に支配されている。
それを見た二人は無邪気に、静かに笑う。
人間らしい少女がどう悩み生きるのか、二人は近くで見たかった。
「行こうよ!蒼無!」
長い髪で寝転がる床に輪を置きながら、少女はニコニコと笑う。それを見た蒼い少年はくすりと笑った。
「分かったよ。行こう。無紅」
二人は立ち上がり、穴に飛び降りた。すとんと二人が、穴の向こうにいなくなる。
二人の消えた部屋の床に、コルク栓がひとつコロリと落ちた。
初めましての人は初めまして。お久しぶりの人はお久しぶりです。あけましての人はあけましておめでとうございます。どの時間でも、こんばんわ。裏夢です。
今回小説家になろう初挑戦で、内容については2時間ちょっとの適当なものとなりました…笑
片目瞑って、鼻で笑いながら読んで頂けると幸いです……笑
今回、これ自分かな、あの人かなと思うようなキャラが数人出てくると思いますが、多分その人です!勝手ながら使わせて頂いています!(文句のある方どうぞ!土下座します!弟が笑)
ちょこちょここっちでも活動したいので、何卒裏夢を、宜しくお願い致します。