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さーちゃんとぼく  作者: 伊達またむね
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負け犬編①

ある日、僕は負け犬になった。




24才の時、東日本大震災で当時勤めていた会社が壊滅的な状況になった。

元々ブラックな会社だったので同僚は次々と会社を辞めていった、僕も同じく会社を辞めた。


当時付き合っていた彼女は東京に住んでいて、僕は上京して彼女と結婚をする事を真面目に考え始めるようになった。

震災応援雇用という名で、東京の不動山会社が東北から雇用を行っていたので僕は簡単に上京する事が出来た。



『給料1ヶ月分先払いで支給します!寮の家賃も最初の1ヶ月は無料です!2年勤めたらそれらは返済しなくてOK』



なんて優しい会社なんだろうと思った。

上京が決まると、彼女はとても喜んだ。結婚を考えてるから、ちゃんとしたかったと言えば彼女は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。



でも、僕はもっと真剣に考えるべきだった。

そんな甘い話があるわけないと言うことを




僕が上京して入った会社は、ブラック企業なんて優しい言葉で済まされるようなものじゃなかった。


毎日終電で帰るのは当たり前、成績が出せなければ『役立たずのゴミ』と罵られ怒鳴り付けられネクタイを捕まれ蹴り飛ばされる。『これは罰だ』とイスを使うことを禁止され延々と立ち続ける。休憩時間も昼休みも、お客との電話が長引けば当たり前に潰され、成績が出せてないから、と休憩時間は半分に削られた上に僕は上司の昼飯や先輩社員のお使いでコンビニに行かされる。

それらをこなして短い休憩時間も休んでれば『いいご身分だな』と嫌味を言われる。


お使いに行かされる時にほんの数分、会社のビルの間にあった小さい隙間に隠れて100円ショップのおにぎりを食べるのが僕の短い昼休みだった。


見つかれば何を言われるか分からないから

誰にも見つからないようにこっそりと急いでおにぎりを食べた



あの時のみじめな感覚はもう何年も経つのに全く消えることはない



最も嫌だったのが、強制的な飲み会だった。

いくら帰って休みたくとも上司や先輩が「今日は飲みに行くぞ」と言えば断ることは絶対に許されない。こういう上司や先輩が楽しい飲み会なんてさせてくれるはずもなく、飲みたくない酒を飲まされ朝方まで付き合い二日酔いで死にそうになりながら数時間後には出社する


おそらくあれは飴と鞭のつもりだったんだと思う。

飲み会の費用は全て上司が出してたしタクシー代までくれた。月に数十万はかかってたと思う。つまり、こんなにお前らに金を使ってやったんだから、お前らは死ぬ気で恩返ししろ、契約をとれ、そんな意図だったんだと思う。



問題はぼくは酒をたらふく呑ませてもらったから頑張ろう!と思えるようなタイプの人間じゃなかったから、鞭と鞭でしかなかったこと。


彼女が、料理を作って待っててくれても家に帰る事は出来なかった。


彼女はその事で酷く傷ついたとケンカになった。


せっかく作って待ってたのに食べてもくれないの!

そんな事言ったってしょうがないだろ!



彼女はあまり料理を作ってくれなくなった。



ぼくが入社して数ヵ月、国交省から業界に規制がかかった。

元々のやり方が異常だったし、入ってすぐの頃に「これっていいんでしょうか」と上司に聞いたことがある。上司は「どこもこんなもんだ」と言った。ぼくは黙って従った。


規制がかかると、それまでの強引なやり方が出来なくなり会社全体の業績が悪くなった。


成績を取れというプレッシャーは更に強くなり暴力の頻度が増した。



毎月数人、新しい後輩が入ったがすぐにいなくなる。

いつまでも僕はしたっぱで雑用をやらされる。



会社に行くのが怖くて仕方なかった。

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