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24話 学生の本分は勉強

 バギランとの戦いから数日後、教室。


「……これも違うよな。あともう少しなんだけどなぁ……」


 席に着いた俺は一人ブツブツと唸っていた。

 この前の戦いで閃いた新しい魔法がもう少しで形になりそうなところまで持ってくることができた。

 だが、そのもう少しのところで進歩が止まってしまったのだ。

 ああでもないこうでもないと唸ってみるが、良い発想は得られない。


「リュート、最近よく考え込んでるね。ボクにも手伝えることがあれば手伝うよ? ボクも君とクラス離れたくないし」

「拙者もでござる」

「ケロケロ~」


 そんな俺を心配したのか、三人が話しかけてきてくれた。

 しかもその内容も俺を後押しするものだ。


「本当!? じゃあ頼むよ、もうちょっとで形になりそうなんだ!」


 俺は勢いよく立ち上がりながら、三人に協力を頼んだ。

 自分から協力してくれるだなんて、なんて優しいんだろうか。

 丁度相談しようかと思っていた矢先だっただけに、本当にありがたい。

 爺ちゃん婆ちゃん、俺はいい友達ができたよ……!


「協力するのはおいらも良いけど……リュート君、勉強は大丈夫ケロ?」


 え、勉強?

 その言葉を聞いた俺の身体は一瞬で冷え切り、鼓動が止まるかと思うほど心臓が縮こまった。


「たしかにリュート殿が魔法以外を勉強している姿を見ていないような……。まさかしてないということはないと思うでござるが」

「……忘れてた」

「え?」

「テストのこと完全に忘れてたよっ!」


 俺は青くなった顔で叫んだ。

 ヤバいって! 試験、よりにもよって今日からじゃないか!

 俺は魔法関係以外の成績よくないんだから、事前に勉強しとかなきゃ絶対駄目だったのに!


「そ、それはドンマイだね……くふっ」

「ルルナ、笑わないで! 俺今本当に焦ってるんだから――」

「テストを始めるぞ。席に着けお前ら」


 扉が開け放たれ、耳に悪霊の怨嗟の声よりも聴きたくない一言が聞こえてきた。

 ヤバいヤバいヤバいヤバい!

 エルギール、君と勝負する以前に特進クラスから落ちちゃうかも……!







 そして数日後。

 今日を最後に学園は一か月の休暇に入る。

 だがその前に、テストが返されるのだ。


「どうだった?」

「どうも何も……散々だよ。『次は無いぞ』って言われた」


 俺は机に突っ伏しながら答える。


「ってことは今回はセーフだったのでござるか?」

「ギリッギリね。あと二、三問間違ってたら本気で危なかったみたい。実技がなかったら間違いなく一般クラス落ちだったよ……」


 職員室まで連れて行かれて言われたもんな……。


「それはケロリンパだケロなー」

「うん、そうだよね」


 意味わからないけど、とりあえず頷いとこ。


 まあ、結果はかなり悪かったけど、これでもうエルギールとの戦いだけに集中できる。


「もうテストのことは考えなくていいんだと思うとなんだかせいせいするや」

「リュートってば、元から考えてなかったじゃんかー。だからあんなに焦ってたんじゃなかったっけ?」

「うぐっ」


 た、たしかにそうだけども!

 それはそれ、これはこれなの!

 ルルナは俺を困らせたいからってそういうこと言うの駄目!


「でも結果的にはこのクラスに残れたし、リュート君の運の強さは凄いケロ。ケロケロケロケロケロケロだケロ」


 ケロ成分強すぎない? 肝心なとこ全く理解できなかったよ。


「それでなんだけどさ、皆、今日から早速付き合ってもらってもいいかな」


 三人は各々首を縦に振ってくれた。

 よっし、これから特訓だ!







 再び修練場へとやってきた俺は、その端で四人で話し始める。

 バギランとの戦いを行った時とは違い、修練場は多数の生徒でにぎわっていた。

 今日はテストが終わったばかりだということもあり、テスト期間の閉塞感を打ち破ろうとした人々が集まってきているのだろう。


「ところで、リュートはエルギール君の使う魔法とか知ってるの?」

「うん、一応それくらいは調べたよ。火魔法だよね」


 五大魔法の一つ、火魔法。

 火、水、雷、土、風の五大魔法の中でも主に攻撃に寄った魔法である。

 型に嵌った時の攻撃力は五大魔法でも随一な分、相手の思い通りにさせないようにしたい。


「火魔法でこの学園の特進クラスに入ったのはエルギール殿が初めてらしいでござる」

「え、そうなの?」


 なんか意外だな。

 五大属性は「五大」と名を冠するだけあって、適正者がとても多い。全人口の約四割は五大属性のいずれかだと授業でもならったはずだ。

 それなのに今まで誰一人特進クラスにはいなかったのか。


「適性が五大属性の人たちは基本的に特進クラスには入れないからね。いわゆる『普通じゃない』人が入るところだから、ボクたちみたいなピーキーな性能の、特進か落ちこぼれかみたいな魔法が適正の魔術師が多いはずなんだ。五大属性で特進クラス入りって、普通じゃないよ」


 俺の疑問をルルナが氷解してくれた。

 なるほど、たしかに五大魔法って誰が使っても安定してる感じがするな。


「……ん? ってことはさ、エルギールって超強いんじゃないの?」

「だからそう言ってるじゃん。頑張ろうねリュート、ボクは友達としてキミを支えるから!」

「ありがとう。皆、よろしく頼むよ」


 それから数日間にわたり、俺はルルナたちと特訓に励んだ。





 そして戦いの日の前日。


「はぁはぁ……やっと完成した……!」


 俺は修練場の床に倒れこむ。

 決闘の直前でやっと形になってくれた。

 これでエルギールとも戦える!


「すごいやリュート! これならエルギールもきっと倒せるよ!」

「きっとエルギール君も驚き桃の木ゲロゲロゲーだケロ」


 皆のおかげでなんとか武器はできた。

 あとはこれでエルギールを倒すだけだ。

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