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番外編 ぷーるぷーるぷーる!







「あついでし・・・。」




みなさんこんにちは!今日もお空にはピカピカ太陽が昇っています。


こんなに暑い日は洗濯物が捗るのですが、如何せん(ほぼ)毎日続く快晴に、いつも元気なソールさんは暑さで動く気力が出ないみたいです。そう言う私も、日の高い時刻には外に出たいとは思いません。



・・・あぁ、クーラー・・・。本当に素敵な「文明の利器」だったのですね。



クーラーとまでは行かなくても、せめて扇風機が欲しい所です。



・・・いいえ、扇風機はダメです。先日の事件を忘れたのですか!フィーネリオン!


私は、暑がっているソールさんに向けて「そよ風」レベルの風魔法を起こしたら、ソールさんは何を思ったのかご自身の周りに「暴風」レベルの竜巻を発生させたのです。驚いてソールさんを止めたのですが、リビングは悲惨な状態になっていました。その後の片付けが全然終わらなかったので、お仕事から帰ってきたアスラさんに2人で怒られました。



ソールさんも今の時期は「クッションの上が暑い」という事を覚えて、お昼寝の時にはクッションから離れる様になりました。ソールさんはゴロ寝スペースの範囲内で涼しい所を求めて、コロコロ転がりながらのお昼寝(?)をしています。ソファーのカバーも涼しげな色の物に変えましたが、ソールさんは相変わらずゴロ寝スペースがお気に入りのようです。床を転がるのは許しませんよ?



私は商業都市以外では初めてこの時期を過ごす事になったのですが、帝都は商業都市に比べると「暑い」です。今年が異常気温でなければ、これから毎年、この時期はこの暑さになるのでしょう。



・・・。



アスラさん、この時期だけ商業都市に帰ってもいいですか?




おぉっと・・・。この暑さで、考えが危なくなってしまいました。アブナイアブナイ・・・。







ダラリとしているソールさんが可哀想になってきたので、扇でそっと煽ぎましょうか。



このお家は、このリビングの窓から外が丸見えになってしまうので、カーテンを全開にして窓を開けた事は(今の所)ありません。視界が気になって、ずっと薄地のカーテンは閉じたままなのです。


何か、外との「視界」を遮ってくれる物があれば良いのですが・・・。






「ソール君もなの?ステイ君も暑さには弱いみたいなの。」

「リープもだな。」

アメリアさんとリンカーラさんが遊びに来た時に、やっぱりこのお話になりました。


「去年はまだ平気そうだったんだが・・・、今年は見ての通りの大きさだから、暑さに対応できていないのだろう。」

リンカーラさんがそう言って「ここは涼しいから元気そうだが」と続けます。


「リンカーラさんもそう思います?私もアスライールさんのお家は涼しいと思ったの!」



リンカーラさんとアメリアさんの言葉に私は首を傾げます。そんな私を見て、お2人も首を傾げています。



「あっ!もしかして!」

私は「1つ」思い当たる節があります。私の様子にリンカーラさんとアメリアさんが「期待の眼差し」で見てきました。



「私、毎日アスラさんに氷を作って貰っているんです。水瓶に氷をたくさん入れて貰っているので、お家の中が涼しいのかも知れません。」


そう、最近の暑さにソールさんが参っている事をアスラさんに伝えたら、アスラさんは氷をたくさん作ってくれるようになったのです。ただ、氷の入っている水瓶が台所にあるので、ソールさんの「行動範囲外」な事にアスラさんは気付いていないみたいなのですが。


「・・・あぁ、そうか、そう言われてみれば、アスライ-ルは『氷』の属性持ちだったね。」

リンカーラさんはそう言って冷たいお茶で喉を潤します。



お2人のテンションが一気に下がってガッカリした感じになりましたが、ご期待に添えなくてすみません。



「ステイ君も大変そうなのだけれど・・・、私、自分が住んでいた農園集落以外で過ごすのが初めてで・・・、帝都の暑さに参ってきているの・・・。」

アメリアさんは困ったように私達に言います。


「・・・そうだね、帝都の今の時期は、まず、暑い。私も学生時代は帝都に居たが、だいぶ前の事だからすっかり忘れていたよ。リープの事が無ければ基本的に辺境伯領からは出ていなかったから、帝都で過ごした始めの1年は大変だった。」

リンカーラさんもそう言って苦笑いをしています。


「私も商業都市からは出た事がありませんでした。商業都市は帝都よりも涼しかったと思います。」



私達は顔を見合わせて「地元は過ごしやすかったね。」と笑ってしまいました。










夕方にアスラさんが帰ってきて、リンカーラさんとアメリアさんにはお迎えが来たので「氷」のお裾分けをしました。アスラさんの魔法で作られた氷なので、明日の朝までは溶ける事は無いでしょう。


夕食の前にアスラさんとソールさんはお風呂に入ったのですが、ソールさんはお風呂に入っている時はとても生き生きしています。



何よりも不思議なのは、夏バテ風のソールさんの食欲が「落ちない」事でしょうか?この暑さでもアスラさんとソールさんは食事をとても美味しそうに食べてくれるので、食卓にはいつも通りの食事量が並んでいますよ。


・・・なぜか、食事量が落ちているのは、私だけなのです。






「ソールさん、お風呂に入っている時は楽しそうですよね?」

「えぇ、私もそう思います。」

アスラさんとのお話の話題は、最近のソールさんについてです。


「リープさんとステイさんも暑さには弱いみたいなので、精霊さまは暑さに弱いのでしょうか?」

ここ最近のソールさんの様子に私がそう言いますが、アスラさんは「体が小さくなったからだと思います。」とリンカーラさんと同じ事を言います。

確かに「地面からの照り返しで暑い」というのもあるのでしょうが、ソールさんはネコさんに触るのも躊躇いがちになってきました。ネコさんは寂しそうです。


「せめて、日陰になる所があれば良いのですが・・・。」

私の言葉にアスラさんが首を傾げます。


「お家の窓を全開にして風を入れるのですが、薄い生地のカーテンを閉めているので思った以上の風が入ってこないのです。それと、窓の傍だと日が入るので、ソールさんは暖炉の前でお昼寝しているのです。さすがに暖炉は付けていませんが、『暖炉の前』と言うだけで何だか暑そうな気分になりませんか?」

私の言葉を聞いて、アスラさんは暖炉前に移動しているゴロ寝スペースを見て「合点がいきました」と頷きます。ゴロ寝スペースがその場所にあると、少し邪魔なのですよね。


「庭に天幕を張ってみますか?多少は日を遮れると思うのですが・・・?」

アスラさんの言葉に驚きました。



「えぇっ!天幕ってお庭に作れるのですか!?」

「えぇ、あまり大きく作る事は出来ませんが、ここの庭くらいでしたら天幕を張る事は出来そうです。明日、朝にでも作りましょうか?」

私はアスラさんの言葉に気持ちが舞い上がってしまいましたが、明日もアスラさんはお仕事です。


「いえいえいえ!アスラさんの次のお休みの時で大丈夫ですよ!それに、アスラさんが一緒だったらソールさんもきっと喜びますよ!何なら、リンカーラさんとアメリアさん達もお呼びしましょう!」


何だか楽しそうな事になりそうです!








「・・・涼しい・・・!」

「本当!」


今日はリビングの窓に面して天幕が張られているので、窓を全開にしています。


何より涼しく感じているのは、天幕の中に置いた盥の中に氷が張られているからかも知れません。

アスラさんに天幕を張って貰った後、盥の水を凍らせて貰ったのです。この氷の盥はソールさん達にも好評でした。今、ソールさん達は天幕の下に設置した水の入った大きな盥で遊んでいます。リープさんとステイさんにも着替えを準備しているので、3人ともとても楽しそうに水の掛け合いをしています。



「リープが楽しそうだ。それに、日差しが入らないだけでこんなに違うなんて、驚いた。」

「えぇ。ステイ君も久し振りに楽しそうな顔をしているわ。」


「俺の家より涼しい!」

「えぇ、とても過ごしやすいです。」



どうやら、皆さん暑さに参っていたみたいです。そう言われてみれば、私たちの中に「帝都出身」って誰も居ませんね。キールさんはリンカーラさんと同じ辺境伯領出身ですし、アスラさんも「実家の領地の方が涼しいです。」って言っていました。ローラントさんの出身地である工業都市は帝都からずっと西にあって、カラッとした暑さなんだそうです。

今の時期、港湾都市に旅行に行くヒトが多いのは、海が近くにあるからなのでしょう。そうそう、前世で「海」って言ったら「水着」を連想するのですが、こちらの世界に「水着」はありません。


・・・まぁ、普段の私たちが着ている衣服の露出度を考えると、水着の露出は「あり得ない」上に、衣服としては見て貰えません。そんな格好をしているヒトがいたら、兵士さんや騎士さんに捕まってお説教を受けるレベルの「問題服」なのです。


だから、こちらの世界での「海」は、波打ち際でキャッキャとはしゃぐくらいしか出来ないのです。



港湾都市・・・。一度も行った事はありませんが、学園と学院で習った事はあります。港湾都市は、急峻なアガニス海岸に面して築かれた都市で、帝国の南側に広がる海に面した都市なんです。今では帝国と大陸との貿易の要となっている貿易都市なのですが「海の近く」という立地の良さから、4月頃から暑くなってくるとたくさんのヒトがバカンスを過ごすみたいなのです。商業都市育ちの私たちには「バカンス」と言われてもピンと来なかったのですが、お義母さんが「今年は6月に行ってみようかしら?」なんて言っていたので、どうやら私にも「バカンス」のチャンスがあるかも知れません。





「おかしゃん。そーる、おやつ。」

全身びしょ濡れのソールさん達がお家の中に入ってきた事で、私の意識は一気に現実に戻ってきました。



ソールさん達は心行くまで「水遊び」を楽しんだのでしょう。大きな盥の中に、水は残っていませんでした。ソールさん達も頭のてっぺんから全身びしょ濡れです。



みなさん、そんな状態でお家に入ってきてしまったのですね・・・。



少し現実逃避をしてしまいましたが、私もソールさん達を見ていなかったのでタオルを渡すタイミングを逃してしまったのです。アスラさん達にソールさん達の着替えをお願いして、びしょ濡れのリビングの床を拭きます。



アメリアさんが一緒に床を拭いてくれたので直ぐに終わりましたが、次からは気を付けないと!






後日、リンカーラさんとローラントさんのお家のお庭に天幕が張られたみたいです。








実は、この天幕が張られて1番嬉しそうにしているのはネコさんなのです。

ネコさんのお家は風通しはいいのですが、日を遮る壁が低い位置なので差し込む日光で地面がとても熱くなります。その上、お庭も照り返しがキツいみたいで、コロコロ出来なくなってしまったのです。「涼しくなるかな?」と思ってお庭に水を撒いたりしていたのですが、雑草さんの育成の手助けにしかなりませんでした。


なので、ネコさんがお家にいる時にはこの天幕がとても役に立っています。




ソールさんとネコさんが一緒にお昼寝をしている姿に、思わずアスラさんを呼んでしまいました。













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