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90 はじめまして 2ページ目


少しだけ「暴力表現(?)」があります。暴力表現が苦手な方はお気を付け下さい。








みなさんこんにちは!今日は快晴、ピクニック日和ですよ!




「おかしゃ~~~ん!」

アスラさんと一緒にいるソールさんは元気に私に向かって手を振っています。ゼーセス義兄さんを振り回している様に見えるのですが、大丈夫なのでしょうか?



「天気が良くて本当に良かった。」

「私、こんな風に外に出るのは初めてなんです。」

本来ならばギリアムさんとシルミアさんのお茶会に参加しているはずのユーレインさまとラヴィアーネさまが私にそう言って来ます。



・・・どうしてこの3名が私達と一緒にピクニックに来たのかと言われると、今回のお茶会は「15歳」くらいまでの年齢の方がメインのお茶会なんだそうです。

コルネリウス義兄さんはギリアムさんとシルミアさんのお父さんですから「主催者」としてお屋敷にいるのですが、ユーレインさまとラヴィアーネさまは揃って「婚約者」の方がいますし、何よりも15歳以上です。「15歳以上の2人がいると、周りの皆さんが緊張してしまうかも・・・。」とオフェリアさまが心配したらしく、今朝お義母さんから相談されたのです。

私もアスラさんも「貴族さま」のピクニックをした事が無かったのですが「それでも良ければ・・・。」と言った事によって、急遽「お付きのヒトの付いた」ピクニックとなりました。

お付きの皆さんはヴァレンタ家のお屋敷の使用人さんです。何か起きたときの為にゼーセス義兄さんが一緒に来てくれたのです。ただ今のソールさんは大ハッスル中なので、はしゃぎすぎて今日は早めにグッスリと眠ってくれるでしょうか?



明日は帝都に帰る日となります。

私達が今いるヴァレンタ家のご領地から帝都まで、ネコさんに乗っての移動だと1泊2日くらいなんだそうです。こちらのご領地から商業都市を経由して帝都に帰っても良かったのですが、アスラさんが「距離もそこまで変わりませんし、折角なのでヒュンベル湖の反対側を通って帰りませんか?」と提案してくれたので、とても楽しみなのです。ご領地がつまらなかった訳ではありません。少し窮屈には思いましたが(特にドレス)、皆さんとても良くしてくれたのでとても楽しい滞在でした。


お義母さんからも「保養地も良い所だわね。確か、あそこには伯爵家の別荘があったわ。管理人に連絡をしておくので、ぜひ使って頂戴!」と驚きの言葉を頂きました。



・・・ヴァレンタ家の規模の大きさに驚きました。

お義母さん、以前は「港湾都市に別荘が有るのよ。」と言っていましたよね?もしかしてですが、「工業都市」「農耕地帯」にも有ったりします?まさかですよね?




ご領地での滞在は商業都市の私の実家と同じ7日間です。こちらでの滞在中に、お義母さんに相談してリンカーラさんへの披露宴時に渡す贈り物を選んだのです。

私のお母さんには「貴族さまへの贈り物ならば、アスライールさんのお母様に伺った方が良いと思うわ。私が選べるのは、もう1人の方・・・。アメリアさん?の方だわ。」と言われたので、一緒にアメリアさんへの贈り物を選びました。アメリアさんは元が「平民」なので、お母さんと一緒に選んだ物でも障りが無いみたいです。リンカーラさんは元から貴族なので、贈り物はお義母さんと選んだ方が「安全」だと言われてしまいました。


身分の壁って本当に高いのですね・・・。










「そうだ、フィーネリオン嬢。」

ソールさん達を見ていたら、不意にユーレインさまから話し掛けられました。


「はい、どうしました?」

私の返事にラヴィアーネさまもお兄さんであるユーレインさまを見ます。




「妹の・・・。ラヴィアーネのヴェールに刺繍を刺す事を了承してくれてありがとうございます。」

ユーレインさまの言葉に一瞬首を傾げてしまいました。



「ラヴィアーネが嬉しそうに父上に言っていたから、私からもお礼が言いたいと思って。」

「お兄様!?」

ユーレインさまの言葉にラヴィアーネさまが声を出します。



「ラヴィアーネは幼いときから親元を離れて暮らしていました。だからか、1番離れて暮らしていた父上にはよそよそしい態度だったのですが、昨日はそんな事を感じさせないような会話が続いていたのです。

・・・父上があんなに楽しそうにしているのを、私は久し振りに見ました。だから、是非ともお礼が言いたかったのです。」


ユーレインさまの言葉に驚きましたが、よくよく考えてみれば5歳の魔力測定を境にラヴィアーネさまは帝都に移っています。帝都のお屋敷にはオフェリアさまがいらっしゃったけれど、候爵さま自身は商業都市でお仕事をしていました。候爵さまは、娘であるラヴィアーネさまとの「触れ合い」の時間が取れなかったのでは?と今なら分かります。「塔に入るとなかなか帝都を離れられない」とアスラさんが言っていました。

学園と学院へ通っていた時も、長期休暇の時にご実家のある商業都市に帰って来られなかったのかも知れませんね。



「何よりも、ラヴィアーネが同世代の女性と楽しそうにしているのを初めて見たからね。私的にはコレが1番大きいかな?母上もラヴィアーネがフィーネリオン嬢と話している姿に『安心した』と言っていましたから。フィーネリオン嬢、これからもラヴィアーネと仲良くしてやって下さい。」

ユーレインさまの言葉に驚きましたが、「塔」に入ったラヴィアーネさまは「友達作り」をする時間が無かったのでしょう。でも、ユーレインさま大丈夫ですよ!候爵さまを始めとしたスターリング家で、こんなに大切に思われているラヴィアーネさまですもの、コレからお友達なんてすぐに出来ますよ。



「もぅ・・・!お兄様!」



ふと気付いたら、恥ずかしそうにユーレインさまの腕を叩いているラヴィアーネさまを中心に風が巻き起こります。




「ははっ。ほら、フィーネリオン嬢は大丈夫そうだ。」

ユーレインさまの言葉にハッとしたラヴィアーネさまは「恐る恐る」といった感じに私を見ます。



「?」

どうかしたのでしょうか?私はお2人を見ます。



「あ・・・!髪が・・・。」

ラヴィアーネさまは「やってしまった」と言わんばかりの表情で私に手を伸ばそうとします。



「?・・・あぁ!凄い風でしたね!・・・ふふっ。お2人も髪型が凄い事になっていますよ?」

多分、ラヴィアーネさまは「感情」を押さえる事で魔法の制御をしているのでしょう。ですが、私の毎日にはプチ台風を巻き起こしているソールさんがいるのです。プチ台風でお洗濯物の洗い直しが起きないのであれば、優しい心でプチ台風を受け入れていますよ。これくらいは日常茶飯事なので、気にしなくてもいいのですが?


「フィーネリオンさん・・・。」

ラヴィアーネさまが何か言いたそうに口を開きます。ですが、私達から離れた所にいたソールさんが「おかしゃ~~~ん!」とそう言って一生懸命こちらに駆け寄ってきます。


「ラヴィアーネさま、本当に大丈夫ですよ?今日の髪型は『よそ行き』では無いので簡単に縛っているだけです。これくらいならば、私にも簡単に縛り直せますよ?」

私がラヴィアーネさまにそう言った所で、ソールさんが私の傍にやって来ました。



「おかしゃん!そーるのほうがつよいのよ!」

私の傍に駆け寄ってきたソールさんは、一生懸命に走ってきたのでしょう。ほっぺが赤くなっています。

私の傍に来たソールさんはムイッとラヴィアーネさまを見て、その後に「むむむ~~~っ」と両手を握りしめて「何か」を始めます。離れた所でゼーセス義兄さんと一緒にいたアスラさんが「ソール!止めなさい!」と焦ったように声を出しながら駆け寄ってきます。




・・・気のせいでしょうか。ソールさんを中心に「いつもの」とは違う台風が発生しようとしています。




私の反対側に座っていたユーレインさまがラヴィアーネさまを庇う体勢になっています。ユーレインさまの後ろでは、昼食の準備を始めようとしていたお付きの皆さんが慌てたように食器類を片付けていきます。



・・・ソールさん?ちょっと、風の勢いが強すぎる気がするのですが、コレって大丈夫なのでしょうか?



強い風に煽られているので、着ている衣装のスカート部分を押さえるのに両手を使っている私の髪の毛が大変な事になっています。





「そーる、がんばる~~~~~~!」

ピカピカ笑顔のソールさんが両手を掲げようとした「その時」に、駆け寄ってきたアスラさんに「ゴッ」とゲンコツを貰っていました。


「ぴぇっっ!?」

掲げようとした「その両手」はアスラさんのゲンコツを受けた所を押さえています。



「はぁ、はぁ・・・。フィーナ、大丈夫ですか!?ユーレイン様、ラヴィアーネ様、大丈夫ですか!?」

アスラさんは余程焦って走ってきたのでしょう。私、アスラさんが息を切らしている姿を初めて見ました。



「ふっ・・・ふぎゅっ・・・・。そーる、がんばるの・・・・。」

アスラさんのゲンコツは余程痛かったのでしょう。ソールさんは両手で頭を押さえたまま立ち上がれないみたいです。



「え・・・えぇ、大丈夫です。アスライール殿、ありがとうございます。」

「私も驚きましたが、お兄様がいましたから・・・。」

ユーレインさまとラヴィアーネさまはソールさんを見ながらアスラさんにお礼を言っています。




「凄かったな・・・。」

アスラさんの後ろを付いてきたゼーセス義兄さんがソールさんを見ながらそう言います。離れた所からはどんな風に見えたのでしょう?



「う・・・うにゅぅ・・・。」

ソールさんは痛みが治まりそうにないのか、立ち上がりヨロヨロと私の方に来ました。


「ソールさん、大丈夫ですか?」

私は傍に来たソールさんを膝に乗せました。



「・・・そーる、いたい・・・の・・・。」

膝の上に座ったソールさんが私に抱き付いてきたので、ソールさんの頭をソッと撫でてみます。どうやらアスラさんの「一撃」は「たんこぶ」にはなっていないみたいです。なので、私は「ソールさん、聞いて下さい」とソールさんに言います。私の言葉を聞いてソールさんは「なぁに?」と私を見上げました。



「ソールさん、私では今の大きさの『竜巻』には耐えられないので、アスラさんにソールさんを止めて貰えてホッとしています。」

私が言った言葉にソールさんは「ぴぃっ!?」と言っていますが、ここは私(と一緒にいる方)の「生死」に関わる事なので、ぜひとも言わせて頂きましょう!



「いつもの小さな竜巻だったら問題ないのですが、今、ソールさんが大きな竜巻を作っていたら、アスラさん以外の方はソールさんと(物理的に)一緒にいられなくなってしまいます。ソールさんはそれでもいいのですか?」

私の言葉を聞いて、ソールさんはプルプルと震えながら「や~~っ!」と言います。


「そうですよね?私もソールさんと離れるのは心苦しいので、出来れば『余程の事』が無い限りは『いつも通り』の大きさでお願いしますね?」

私の言葉にソールさんは「あいっ!」ととても良いお返事を返してくれました。




「・・・ソール、フィーナの言っている事を理解できたか?」

アスラさんの言葉にソールさんは「そーる、おっきいのは『いまは』つかわない!」と言います。ソールさんの言葉にアスラさんは一つ頷いて、おもむろにソールさんを抱えます。


ソールさんはアスラさんに褒めて貰えると思ったのか、抱き上げられてニコニコしています。



「叩いてしまいましたから、一応、治療をします。」

私が不思議そうに見ていた事に気付いたアスラさんはこう言いましたが、アスラさんの言葉に内心驚いてしまいました。



アスラさん・・・。アスラさんは「叩いた」って言っていますが、私には「殴った」と表現できる一撃でしたよ?私達のメンバーでツッコミを入れる事が出来るのはゼーセス義兄さんだけなのですが・・・。



ソッとゼーセス義兄さんを見ますが、ゼーセス義兄さんはユーレインさまとラヴィアーネさまの対応に回っていました。まさかのツッコミ無しですか!?



あぁ!誰か!誰か、ツッコミを!





・・・仕方がありません。僭越ながら、私がツッコミを入れさせて頂きますよ!





アスラさん、ソールさんの「真名」を呼べば、「叩く」事は無かったのではありませんか!?
















「魔法キャンセル」は物理攻撃で。


アスライールがソールの治療をしたのは、ソールを「叩いた」瞬間にフィーネリオンのツッコミと同じ事に気が付いたからです。アスライールもソールの「対抗心」で総家の跡取りとその妹、何よりも自分の妻に被害が及ぶ事に焦っていました。


フィーネリオンはゼーセスを「ツッコミ役」と思っていますが、強ちその点については間違いはありません。ただ、ゼーセスはソールの「真名」をアスライールが知っている事を知らない上に、「真名を呼ぶ事」はとても非常識な事なので一般常識上は「ありえない」方法です。その辺りを踏まえると、ゼーセスは「常識人」です。


今回、フィーネリオン達のピクニックにユーレインとラヴィアーネが付いてきたのは、親世代の「思惑」があったから。ゼーセスには一応伝えてあるし、アスライールも「何となく」気付いています。(「同世代」の知り合いは縦の力よりも強い事があるので、フィーネリオンの「知識」は何よりの「戦力」と捉えています。)


ちなみに、アスライールとソール以外は誰も「叩いた」という表現では無く、「殴った」と思っています。


みんな、言葉にしないだけ。


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