88 ひさしぶりの、のその後ろでは・・・ 2ページ目
皆さん初めまして、ジジッタです。
最近は暑くなってきたから東の農耕地帯に行くのも良いかな、と思っている。港湾都市?あそこはコレから人が増えるから絶対に近寄らないぞ。
・・・まぁ、アイツ等がもっとしっかりしない内は無理だろうな・・・。
俺達は商業都市に拠点を作っているから「変わり者旅団」なんて言われているが、商業都市は帝都が近い事もあって、なかなかに居心地が良い。逆に常に移動している方が効率が悪いと思う。
どうやら、最近は俺達のように拠点を持つ旅団も増えてきているみたいで、冒険者ギルドにそういった申請が増えているようだ。
この商業都市は他の都市と違って、必要な物は全て揃える事が出来る珍しい都市だ。帝都で乗り換える事無く全ての都市に行ける事も拠点としては大きな利点だと思う。・・・まぁ、ほぼ反対側の港湾都市は「安全面」を考えて帝都を経由して行く事を勧めるが、護衛の付いている港湾都市行きの直通の馬車も出ているから、好きな方を選べば良い。
そんな商業都市には、俺達「冒険者」にとって「ご用達」と言っても良いくらいに利用する店がある。
それが「ミュー商店」だ。
驚く事に、この店は「生活雑貨」を扱う店だ。本来なら、俺達「冒険者」には全く縁の無い店なんだけど、俺達の旅団で使う物の大抵の品物はこの店で揃えている。この店があるから、拠点をこの商業都市にしたと言っても良いくらいだ。
この店には変わった娘がいて、この娘が縁となって今の俺達がいるようなものだ。
10年以上前、今では「看板娘」と言われているフィーナ嬢がまだ小さかった時に、駆け出しから頭を出し始めた俺達は出会ったんだ。・・・その時の事は今でも覚えている。
「今度はどこに行くの?」
「そうだな・・・。」
「工業都市の方に向かってみないか?武器を見に。」
「えぇ~~!アタシ港湾都市の方が良い!」
当時一緒の旅団にいた団員と次の目的地を決めようと、こんな話をしながら冒険者ギルドに向かっていたのだが、前を歩いていた団員が「女の子だ」と言っていきなり走り出した。
他の団員達はその団員の行動に驚いたように立ち止まってしまったけれど、街路に面した建物の横に座り込んでいる少女に駆け寄った団員が俺を呼んだ。
「えっ。アイツ少女趣味だったの・・・!?」
後ろからそんな声が聞こえたが、それは違うだろ!・・・断言は出来ないけどな。
傍に近付いた俺が見たのは、変わった色合いの「幼女」だった。
何でだろう。その幼女を見た時に、何だか、犯罪の臭いがしたんだ。
「ふぃーな、お薬をかいにきたのよ。」
俺を見た幼女はそう言った。
「・・・薬関係は『西区』だろう?ココは北区だから場所が違うぞ。」
「ぴぃ!?」
俺の言葉に幼女は驚いたように声を上げていた。
・・・同じくらいの歳であろう俺の姪とは大違いだな。何だろう、幼女を可愛がる大人の気持ちが何となく分かりそうな気がする。・・・いや、俺は「幼女趣味」では、ない!断じてない!
「あれれ~~?もしかして迷子?」
後ろを付いてきていた団員がそう言うが、確かに周りに「保護者」の気配が無い。
「ふぃーな、迷子じゃありませんよ!お薬やさんが迷子なのよ。」
座り込んでいるが、幼女は両手を握って力強く俺達に言ってくる。
・・・迷子だ。どこからどう見ても、この幼女は迷子だ。
俺達の思った事は完全に一致していたのだろう。不意に見た団員が「何とも言えない顔」で幼女を見ていた。
「じゃあ、フィーナちゃん?お家はドコかな?お姉ちゃん達が送っていくよ?」
団員の言葉に、幼女・・・フィーナは「お薬をかうの!」と譲らなかった。
「それなら、お薬を買いに行ったらお家に帰ろうか。何のお薬を買いに来たの?」
違う団員の言葉に、フィーナは「しあーよ!」と元気に答えた。
フィーナの言う「シアー」は、西区の門から出た所に群生している「魔草」の一種で、薬草なんかに加工されて売られている。大抵のヒトはシアーなんて欲しがらない。欲しがるのは・・・。
「いもうとが元気になるのにひつようなのよ!」
フィーナはとても力強く俺達に言ってきた。シアーが必要と言う事は、フィーナの妹は魔力過多なんだろう。魔力過多の症状は「とても」苦しいと聞く。
「たの~~も~~~!」
そう言ってギルドに入ったフィーナをギルド職員と冒険者は驚いたように見ていたが、一緒に入ってきた俺達を疑いの目で見るのは止めて欲しい。
「5歳くらい。女の子で、名前はフィーナ。北区の大通り横に座り込んでいたんだ。」
「わかりました。北区の各ギルドに連絡が来ているか確認を取ってみますね。」
あの後、「シアー」はここでは買えない事を説明したら、フィーナはガッカリしたように「そうなのですか。」と言っていたが、家までの帰り道を覚えていなかったので送るに送れず冒険者ギルドに連れてきた。
職員に「捜索」を頼む間、フィーナは他の冒険者達に食べる物を貰っていたみたいだ。俺達「冒険者」は小さい子、特に「女の子」と触れ合う事は殆ど無い。だから、物怖じしないフィーナが傍を動き回っている事が嬉しいのだろう。
その時に驚きの「水の確保」方法を聞いてしまった。
フィーナの迎えを待っている間、他の旅団の冒険者達と色々な話をして「水の確保がたいへん!」って話をしていたら、フィーナの「どろ水を『ろか』して『しゃふつ』すれば、お水を飲めますよ?」の言葉に周りが静かになった。
・・・「ろか」「しゃふつ」って何だ?
ギルドの職員を見るが、職員達も首を横に振っている。
「ふぃーなちゃんのじっけんきょうしつですよ~~!」
フィーナの言葉に興味を持った俺達は、フィーナに「水の作り方」を聞いた。
・・・だけど、俺達にはサッパリ理解できなかったんだ。
だから、フィーナの言っている事を理解できずに首を傾げる俺達は、フィーナの「じつえんしますか?」の言葉に1も2も無く頷いた。相手は幼女だが、良く見れば知性の欠片が見えるような・・・、みえないような・・・。
後ろの方から「パチパチ・・・」と聞こえてくるんだが、良いのか?
「木のおけが1番さいてきです。さいしょに小石を入れます。つぎに、すみを入れます。」
ギルドの職員に準備して貰った材料(?)を説明しながら、小さなフィーナが「よいしょ。」「よいしょ。」と言い、手を黒くしながら手桶に石や炭を入れていく。
「すきまは、作らないようにしてね!」
思い出したように俺達に注意してくるフィーナに、他の冒険者達が「頑張れ!」と声援を送っている。
「そうしたら、この上にもっと小さい小石を入れて、砂を入れます。」
フィーナは「すきまはダメよ!」と言っているけれど、砂遊びをしている訳では無いんだよな?後、声援を送っている奴、落ち着け!
「これで、上になにか布を・・・」
ゴソゴソと小さなカバンから出したのは、綺麗な手巾・・・。まさか!
「コレを「!待て!・・・使うならコレを使え!」・・・?」
俺以外にも手巾を出した冒険者がいた!フィーナは「ありがとう?」と言って桶の上にその手巾を折って乗せた。
「ココに、この『どろのお水』を入れるのです!」
フィーナは泥水を入れる前に桶の下に穴を開けて貰って、上から泥水を入れた。
俺達は、桶の下に開けた穴から出てきた水が透明だった事に驚いた!
フィーナは「出てきたお水はふっとうさせて飲むのよ!」と言っていたが、このままでも飲めそうだ。
「お腹をいたくするから、ふっとうさせないと、ダメなの!」
フィーナがそう言って、その水をギルドの職員に沸騰して貰っていた。
・・・そうか、生水は腹を壊すから、火にかけるのか。知らなかった・・・。
結構長い時間沸騰させていたが「見た目」は普通の「湯」だ。その湯に茶葉を入れた物が俺達に振る舞われたんだが、普通に飲めた。
・・・泥臭くない!・・・待ってくれ!泥水が水になった!
渡されたお茶に「あちゅっ!」と言いながらカップに「ふぅふぅ」と息を吹きかけているフィーナを、俺達はマジマジと見てしまった。
「・・・ねぇ、コレって『普通』なの?」
初めからフィーナの「水の作り方」を見ていた冒険者と、途中から見ていた冒険者達がフィーナを見ながら話をしている。
「いえ、少なくとも『私は』この方法を初めて見ました。」
ギルドの職員がお茶を飲みながら言う。こんな方法は、俺も初めて見た。
水は「水魔法」か「氷魔法」からしか作れないと言われている。・・・いや、俺達は川や湖から水を汲んでいたのだから、そう思い込んでいたのかも知れない。
夜の6刻近くになってもフィーナの迎えが来る気配は無くて、「おかしい」と思ったギルドの職員が商業都市中のギルドと通信して、そこでようやくフィーナの身元が判明した。
「フィーナ」は愛称で、本名は「フィーネリオン」。そして、フィーナの出身が「東区」と言う事に俺達が驚いた。何より、東区はフィーナがいなくなった事で大騒ぎだったらしい。「誘拐」も視野に入れた捜索が行われていたみたいだぞ。
・・・おいおいフィーナ。良く北区まで来れたな。
ここにいる俺達の思った事は完全に一致していたのだろう。何とも言えない空気がギルド内に漂っていた。
フィーナはギルドの職員が通信機で確認を取っている後ろから「たいちょさーーん!ふぃーなですよ~~!」と手を振っている。通信機の向こうから「お嬢ちゃんか!何でまた北区に行っているんだ!」何て驚いている声が聞こえているが、フィーナの「おさんぽですよ~~。」の言葉に脱力したようだった。
・・・後、どんなに手を振っても、相手には見えないからな?
その後、東区の兵士団の隊長が迎えに来て、フィーナは「またね~~。」と、手を振って帰って行った。
・・・「また」があるのか・・・。
俺達は手を振って帰っていくフィーナを見てそう思ったけれど、それも悪い気はしなかった。
そして、その場に残っていた俺達は、すぐに有志を募った。
「水」が有るか無いかは、俺達のように旅団を組んでいる冒険者には死活問題だ。
飲める「水」は、奪い合いになる。フィーナの教えてくれた方法は、水辺から離れた時の雨水で「生き残る」方法になる。貴族や騎士達のように水の魔道具を持っていたとしても、俺達は余程の事が無ければあんな使い捨てに大金は使えない。だから、コレは本当に俺達向けだろう。
・・・だから、その「水の確保の方法」の「対価」になり得る「シアー」の確保だ。
西区の扉は「冒険者証」を持っていれば通る事が出来る。
だが、その先は魔獣の生息地だ。一般の市民が生半可な気持ちで入らない様に封鎖されているんだ。
魔力過多は大人になるにつれて落ち着いていくと聞くが、幼い子供の命を奪う原因にもなっている。
小さなフィーナの妹だ、シアーはたくさんあった方が良いだろう。
今回のこの依頼の「報酬」は、フィーナが教えてくれた「水の作り方」だ。
初めから見ていた冒険者達は「しょうがねえな。」と良いながら、有志に名乗りを上げてくれた。途中から見ていた冒険者達も「結果を見ちゃったから、初めの方が気になるわ。」と言って名乗り出てくれた。
ギルドの職員が「参加者には、コレの作り方を紙に書いた物を渡しますね。」と石の詰まった桶を指さして言った事で、かなりの人数が集まった。
そうして、次の日の早朝に西門に俺達は集合したんだが、今回の目的は魔獣退治では無く「フィーナの妹の為」のシアー採取なので、ついでにギルドの依頼にあった「治療院」のシアー採取も一緒に行う事にした。
・・・まぁ、集まった人数が人数だったから、サックリ終わらせる事が出来た。
ギルド依頼の方のシアーは他の冒険者に任せて、俺達はフィーナの家に向かった。
ギルドの職員に聞いていたから、フィーナの家にはすぐに着いた。
驚いたのは、フィーナの「家」だ。
「店を経営しているようだ。」とは聞いていたが、結構でかい。一緒に来た団員達と看板を確認したら、教えられた「ミュー商店」と書いてある。
・・・フィーナよ。お前、それなりに「お嬢様」だったんだな。
女の団員達は「やっぱりね~~。」何て言いながら「着ている服とか、持っている物が良い物だったもの。良く見れば分かるよ?」と他の団員に言っている。・・・そうか、着ている服か・・・。
店の中に入ると、フィーナがいた。
俺達に気付いたからか、フィーナは「いらっしゃいませ~~。」と言いながら俺達に近付いてきた。フィーナは少し離れた所にいた美人なご婦人に「おかあさん、たいちょさんです!」と紹介してくれた。
それから「シアー」をフィーナの母さんに渡して、ふと目に付いたのが「欲しい商品を確保します。」と書かれた看板だった。
「納品に5日くらいの時間が掛かりますが、こちらの項目の商品を確保できますよ。」
フィーナの母さんが取り扱いが出来る項目の書いてある紙を渡してきた。その書いてある内容に、俺達は驚いた!
鍋や皿、食器類と言った物だけで無く、干し肉や乾パンと言った携帯食も扱っていたのだ。それ以外にも、掛布や敷物、修繕用の針と糸もあった。
「・・・凄いな。」
思わず言葉が出た。付いてきた団員も俺の手元の紙を覗き込んでくる。
「・・・・やだ!干し肉とか安いわ!」
「おいおい!・・・この辺り、値段がヤバいぞ!」
「食料はたくさんあっても良いと思います!お肉とか!」
「着替えとかもあるのね~。」
「テントにも補修用品なんてあるんだな・・・。」
「ちょっと!水筒とか食器があるわよ!」
皆、思った事は同じで、興奮気味に言ってくる。
「・・・ちなみに、これだけの商品を揃えるとなると、どれ位の料金になるのでしょう?」
「・・・そうですね、少し場所を変えましょうか。」
振り向いたらさっきまで離れた所にいた男がいた。・・・フィーナの父さんか。
通された場所は小綺麗な場所で内心驚いたが、俺達が「欲しい」と思った物は案外早く集める事が出来るみたいで、3日くらいでミュー商店に届けられると言われた。
品物のそれぞれの値段も、今までの購入金額とは段違いとまでは行かないけれど、大分安い。
品物の質が落ちるのか?そんな考えが浮かぶが、「どうせ次の依頼に向かう時に必要な物だから、1度だけ利用してみよう。」と思って、注文をしてみた。
3日後に商品を受け取って、品物の良さに驚いた。注文した時に付いてきていたフィーナが「干した果物がいちおしよ!」と言っていたから、思わず頼んでしまったけれど、女性陣には今でも好評の1品だ。
今では何か入り用の時は、必ずミュー商店を利用している。他の冒険者達も入り用の時は利用していると聞くから、俺達はだいぶ貢献しているんじゃ無いか?
フィーナ嬢は周りに流される事無く、本当に伸びやかに成長していった。
フィーナ嬢が学園に通っていた時の誘拐騒ぎの時は捜索に俺達冒険者も駆り出され事があったし、学院に通っていた時も何回か危ない時があった。フィーナ嬢の兄が機転を利かせていた時があったけど、あそこの兄妹は何だって優秀だな。将来安泰じゃないか。
先日、たまたま冒険者ギルドに行く用事があって外に出たら、そこでフィーナ嬢とその旦那と子供(?)にあったんだ。
フィーナ嬢が結婚するのはどんなヒトかと思ったが、まさか「騎士」で「貴族」を捕まえるとは思わなかった。・・・いや、薄々、フィーナ嬢なら「やれるんじゃ無いか?」と思ってはいたが、商業都市には駐留しない騎士と交流を持つのは流石に難しいだろう?
・・・ウチの旅団にもフィーナ嬢を狙っていたのがいたが、フィーナ嬢だけはやめた方が良い。あの娘は、普通のヒトには手に余る。狙うなら、妹のジスリニア嬢の方が良い。本気で勧めるぞ?
フィーナ嬢が結婚したから、この商業都市では縁談がどんどん纏まっていくんじゃ無いか?来年は商業都市の跡取りであるユーレイン殿の結婚が控えているからな。暫くの間、商業都市は賑わうだろう。俺の姪も漸く結婚だしな。めでたいめでたい。
ただ、フィーナ嬢の旦那と一緒にいたあの子供。アレは本当に子供か?
思わず「小さい時のフィーネリオン嬢にそっくりだな。」と言ってしまったが、フィーナ嬢の小さい時の方が大分可愛かったぞ?
・・・俺が気にした所でどうにもなら無いんだろうが、「金」の色持ちは魔物が多い。まぁ、フィーナ嬢も「金」色の髪の毛だし、フィーナ嬢と一緒にいるなら大丈夫だろう。それに、あの旦那もフィーナ嬢の事は守るだろうからな。
俺は、気にしないでおこう。
幼かったフィーナは自分が住んでいるのが「東区」だと知りませんでした。「とりあえず」大きな道を歩いて薬屋を目指していました。フィーナ自身は記憶力は良いけれど、初めて来た場所だったので帰り道が分かりませんでした。
ジジッタのフィーネリオンの呼び方は、「少女」から「幼女」に変わり、「フィーナ」から「フィーナ嬢」へ変わります。一応、フィーナの実家「ミュー商店」は商業都市では有名なので、フィーナにも「お嬢様」が適応されます。
ジジッタは、対外的には「大きなネコ」を被っているので言葉遣いも丁寧です。
アスライールの前で「フィーネリオン嬢」と言ったのは、銀色の髪を持つ旦那のアスライールに対して「念の為」です。
わざわざ「貴族」に睨まれたくはありません。
ジジッタは結構優秀な冒険者で、魔獣だけでは無く魔物も見た事があります。なので、ソールの「金色」の瞳に疑問を持ちました。ただ、ソールがフィーネリオンと手を繋いでいた事と、ジジッタがたまたま持っていたアメをソールに渡したら美味しそうに食べていたので、ジジッタの疑問はフィーネリオンに丸投げされました。
ジジッタは「強運」の持ち主。




