表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/163

番外編 フィーネリオン失踪事件


何か良く分からないけれど、思い付いたので・・・。

いつもこんな感じに「お話の神様」が降りてくれれば良いのに・・・。









今でも私達の会話に上る事なのですが・・・。



私が3女のティアーナを出産した時に、私とラルフは体の弱かったティアーナに付きっ切りになってしまって、リューイとフィーナ、ジスリニアを少し放置気味にしてしまったの。でも、みんな大人しくしていたからすっかり安心してしまったのよ。






だから、スッカリと忘れていたのよ!あの子、・・・フィーナは私達が忘れた頃に問題を起こすという事を!







その日はティアーナの状態が安定していたから、久し振りにお昼をフィーナとジスリニアを連れてニリアの所に食べに行こうとしたの。私は2人がいつも遊んでいる部屋を覗いても2人が居なかったので、1階のリビングを覗いてみたのですがそこにも2人はいませんでした。

あれ?おかしいな?と思ってラルフの居る店舗の方に行ったらジスリニアは居ました。「フィーナは?」って私が聞いたら、2人とも「知らない。」って言ってきたから驚いたわ。今度はラルフと一緒にお店の中と家の方を探したのだけど、フィーナを見つける事が出来ませんでした。


探しても探しても見つからないフィーナに、私達の頭には「誘拐」の言葉がちらついて来ました。

珍しい「金色」の髪の毛を目当てにフィーナへの「養女」打診は良く来ていました。ラルフが首を縦に振らないので、何回か強引に連れ去ろうとしたヒトもいます。この事に東区の兵士団の隊長さんが領主様に掛け合ってくれて、近所に新しい兵士団の詰所が出来たのです。


ラルフは私とジスリニアをリビングのソファーに座らせて「学園にリューイを迎えに行ってくる。」と言って出て行きました。「おかあしゃん、だいじょうぶ?」と言ってジスリニアが私に寄り添っています。何て優しい子なのかしら!ジスリニアを抱きしめてフィーナの行きそうな所を紙に書いてみました。フィーナは5歳の子供です、行ける所なんてそれこそ近所くらいです。そうしている内にラルフがリューイを連れて帰ってきました。


「学園に行く途中とかを見た限りではフィーナは居なかった。帰りも違う道を通って来たのだがソコにも居なかった・・・。」



一体何処に行ってしまったのでしょう・・・。



重い空気が私達の周りに漂っていたのでしょう。私とは違うソファーに座っていたリューイにジスリニアが何か書かれた「紙」を渡したのです。すぐ傍に立っていたラルフはそこに書かれていた内容を読んで「兵士団の所に行ってくる!」と言って家を出て行きました。リューイに紙に書かれた内容を見せて貰ったのですが・・・。




『ちょっと、おさんぽいってきます。ふぃーにゃ』




・・・机の脚だなんて・・・。フィーナ、そんな所に貼り紙しても誰も気が付かないわよ!書かれているその内容に、安堵からか涙が出てきました。リューイとジスリニアに慰められましたが、何て優しい子達なのかしら!


兵士団の所に行ったラルフの帰りを待つ間、お腹が空いてきたのでご飯を作ろうと思ったら、リューイが「ニリアさんの所で何か作って貰ってくる!」って言ったので、私も「気を付けてね?」って送り出しました。リューイは本当に気が利くわね。・・・でも、私も料理くらい出来ますよ?




暫く経ってお店の閉店時間になったので、従業員の皆さんには帰って貰いました。皆さん心配そうに「大丈夫ですか?」って言いましたが、私は「また明日、よろしくお願いしますね。」と従業員の皆さんに声を掛けて見送りました。






すっかりと日が落ちた頃にラルフと一緒にフィーナが帰って来た時には、その元気そうな姿にまた涙が出てきました。



フィーナは「ただいまです~。」何て言いながらニコニコしていますが、ラルフも困ったように「北区に居たみたいなんだ。」何て言うからもう本当に驚きました!


「フィーナが北区にいた所を親切な冒険者の旅団で保護してくれていたみたいで、冒険者ギルド経由で商業ギルドと生活ギルド、兵士団へ連絡が行ったようなのだが・・・。まぁ『小さな女の子が1人で違う区域を歩いているハズが無い』と大抵のヒトは思うだろう?だからフィーナが東区から来た事が分かるまで、時間が掛かったんだ・・・。だけど、ネリア?あまりフィーナを怒らないでくれないか?」

ラルフは少し言い辛そうに私にそう言います。


「ラルフったらナニを言うのかしら?私達だけで無く従業員にも心配を掛けたのよ?」

フィーナに甘いラルフがそんな事を言うものだから、私は強く言い返してしまいました。



「いや、そうなのだが・・・・。

・・・フィーナが今回『おさんぽ』に出たのは『シアー』を買いに行こうとしていたみたいなんだ。確かに今回の行動は『おさんぽ』としては認められないかもしれない。それでも、君やティアの為に『シアー』を買いに行こうとしての行動だと聞いてしまったからね。私からは怒れそうに無いのだよ?」

ラルフはリューイとジスリニアの所にいるフィーナを見て、私に言います。



何て言う事でしょう!「シアー」の入手は「西区」に行かないと手に入りません。加工されて「解熱剤」や「薬草」になっているものはこの辺でも手に入りますが、シアーはそのままの無加工の状態で使う事で「魔力過多」の症状を和らげる薬になるのです。ティアーナが「魔力過多」だと分かった時に私達も入手を試みたのですが、無加工のシアーは手に入らなかったのです。治療院にはそのままの状態で卸しているみたいなのですが、加工前の状態で市場に回る事はあまり無いようでした。ラルフは、フィーナが北区に向かったのは、西区に入れる「冒険者」の方に「シアー採取の依頼」を出しに行く為だったのかも・・・とフィーナを迎えに行った兵士団の隊長さんに言われたそうです。



「・・・・だけど、私達にきちんと言ってくれれば「ここ最近のティアの状態で、私達が店舗を見ながらティアの傍を離れる事は出来なかっただろう?」・・・そうですが・・・。」

確かにここ最近はティアーナに付きっ切りで上の子たちに構っている時間はありませんでした。



「でも、『心配を掛けた事』はしっかり言わないとね。」

ラルフがそう言ったのでフィーナへの説教が少し長くなったけれど、それは仕方が無いわよね?

途中からフィーナがリューイの所に逃げて行ったのでリューイも一緒に怒ってしまったけれど、不可抗力よ?あの子もラルフと一緒でフィーナを庇うから言える時に言っておかないと、フィーナが勘違いして変な方向に進んでしまうかもしれませんからね!









次の日にフィーナの事を心配して少し早目に出勤した従業員の皆さんに「おはよう!」ってフィーナが挨拶したら「良かったですね!」って皆に言われました。私は本当に周りの人に恵まれています。



その日の午後に前日にフィーナを保護して下さった冒険者の皆さんが来てくれました。



「これを。」

そう言って女性の旅団員の方に渡されたのは「シアー」です。私はビックリして冒険者さん達を見ました。



「お嬢さんの治療に必要な物だと聞いていたのですが?」

その女性の旅団員の方がフィーナを見て言うのです。・・・えぇ、確かに1番下の娘に必要な物です。私はシアーを受け取ったまま戸惑ってしまいます。フィーナはシアーの入った袋を覗き込んで「ほぇ~~。」と言っています。そんなフィーナを見て、女性は「あははっ!」って笑っています。



「こんなに小さいのに、妹さんの為に北区まで足を運んできたんです。私達もお嬢さんから有意義な情報を頂いたので、その対価です。なので、使って下さい。」

そう言うのは少し年配の冒険者の人です。



「『有意義な情報』って・・・?」

私はフィーナを見て首を傾げます。確かにフィーナは幼いながらにとても賢い子で、ラルフがとても可愛がっています。



「知っていると思いますが、私達冒険者には水の確保は必須です。外にいる時は『水属性』か『氷属性』が居無ければ水の確保は難しいのです。この旅団にはそう言った魔法を使えるのが1人いますが、どちらかと言うと治療の方が得意なのです。『水属性』に多いのですが、治療に力を入れてしまい本来の『水』の魔法を使う事を疎かにしてしまう様なのです。なので大抵の旅団は『水属性』が居ても川や湖から水を汲むしかないのです。お嬢さんはとても賢いですね、私達には思いつかない方法でこの問題を解決してました。」

私の疑問に年配の冒険者の人が答えてくれます。私も「水」の属性を持っているけれど、治療の方が得意です。「水」の魔法ってどう使うのか、確かに言われてみれば分からないわ・・・。



「そうそう!それに、こんなに可愛い子と話をするなんて滅多に無いからね!」

「『冒険者』と言うだけで、私達と距離を取る人もいます。」

「そうだよ~!」


冒険者の皆さんが色々と言っていますが、フィーナはラルフに似ているのか「人を見る目」があるようです。



「なので、そちらのシアーは、私達が受け取った情報の『報酬』として受け取って下さい。」

冒険者さんが続けて言います。






ティアーナのような「魔力過多」の子供はきちんと治療すれば治ります。治療師である私は、何回もそういった子供達を見てきました。結婚して仕事を辞めてもそう言った子供が産まれた時などは手伝いに行ったりします。

親がキチンと子供の「魔力過多」の状態を把握して居れば、それ以上悪化する事は無いのです。ティアーナは今の状態が続く様であれば、「治療院」に行かないといけません。

「シアー」があれば、個人でも「魔力過多」の治療が出来ます。ただ、西門を出入り出来るのは「冒険者証」を持つ人だけなのです。以前は「市民証」でも出る事が出来たみたいですが、問題があって今では市民の出入りは出来ません。

何より、治療院への入院となるとたくさんのお金が掛かります。その上「魔力過多」限定での治療は場所が限られてしまうので、治療師も「シアーの入手制限を掛けるのは良いけれど、魔力過多の治療に使う場合に限っては、治療師の診断を受けてからの申請によって、使う分だけ購入可能にしてはどうだろう?」と言っているのです。



「・・・ありがとうございます!!」

私が受け取った袋の中にはシアーがたくさん入っていました。


昨日のフィーナの行動でティアーナの薬が手に入ったのです。フィーナは「ふぃーなをのせて~~!」と、そう言って1番大きな冒険者さんの肩に乗せて貰っています。私の視界の端ではラルフが悔しそうにそちらを見ていました。思わず笑ってしまいましたが、こんな風に笑ったのは久し振りかも知れません。




・・・・大丈夫!私は治療師です。これだけのシアーがあれば、ティアーナは元気になります!






旅団の隊長さんが、少し前に始めた「商品確保」のカウンターを気にしているようなので「納品に5日くらいの時間が掛かりますが、こちらの項目の商品を確保できますよ。」と、取引項目の書いてある用紙をお渡ししたら、冒険者の皆さんは驚いていました。



・・・そうでしょう?私達もフィーナに言われた「おきゃくさんがほしいものを、おみせにとりよせたら?」って言う、冗談のような内容の取引を始めたのだもの。



「・・・凄いな。」

隊長さんがそう言います。



・・・あら?何だか食い付きが良いですね。皆さん隊長さんの手元の用紙を見ていますよ?




「どうしたんだい?」

少し離れた所に居たラルフもこちらの様子に気付いてやってきました。



「・・・・やだ!干し肉とか安いわ!」

「おいおい!・・・この辺り、値段がヤバいぞ!」

「食料はたくさんあっても良いと思います!お肉とか!」

「着替えとかもあるのね~」

「テントとかの補修用品なんかあるんだな・・・」

「ちょっと!水筒とか食器があるわよ!」



皆さんは項目に書かれている内容を読んで、興奮気味に言い合っています。




「・・・ちなみに、これだけの商品を揃えるとなると、どれ位の料金になるのでしょうか?」

「・・・そうですね、少し場所を変えましょうか。」

ラルフが冒険者さん達を連れて応接間に行きました。



・・・まぁ、皆さんシッカリした装備をしていましたからね。小応接間よりも応接間の方が良いでしょうね。フィーナも冒険者さんに付いて行ってしまったので、お茶を持って行くついでに回収しましょうか。



その後、その冒険者さん達と小さな「契約」を結んだ事をラルフに言われて、本当にビックリしました。

今でもその旅団の方とは付き合いがあって、良く利用して貰っています。




その後、治療の甲斐もあってティアーナはどんどん回復していきました。




そして、「魔力過多」の患者に対しては、領主様の公認で治療師の診察を受けた後にシアーの購入が認められるようになりました。ティアーナは時々治療を受けていますが、前のように寝込む事も無くなったので、本当に良かったです。あの時、小さかったフィーナが行動した事によって、少なくともティアーナは元気になりました。



私とラルフは、あの時のフィーナに本当に感謝しているのです。





・・・でも、どうしてフィーナは西区の門からでられるのが「冒険者」だけだと分かったのかしら?ラルフもこの謎には首を傾げているのよね・・・。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ