86 ひさしぶりの・・・ 4ページ目
話の区切りが見つけられなかったので、いつもより長くなっています。
みなさんこんにちは。
商業都市滞在7日目です。早い物で明日には商業都市出発の日になってしまいました。
明日向かう、お義母さんの待っているヴァレンタ家のご領地では、既に私達のお部屋と身の回りの品が準備されているようで「手ぶらで来てかまいませんわよ。」とお義母さんから連絡を頂きました。なので、ご領地の方には荷物を送っていません。その代わりにソールさんと一緒に書いたお手紙を送りました。私達の商業都市滞在中の荷物は明日の朝、ここ商業都市の生活ギルドから帝都のお家に送る事になっています。
でも、この7日間、本当にたくさんの事がありました。
滞在中のソールさんとスバル君を見ていると、「ネコとネズミが追いかけっこ」をする有名なアニメを思い出します。ただ、日中はスバル君とティアちゃんは学園に行っていたので、スバル君が学園から帰ってきて宿題とおやつが終わった後にゴングが鳴り響いていました。えぇ、とても礼儀正しい追いかけっこでしたよ。ソールさんは、一緒に遊んでくれるスバル君が私の兄妹の中では1番のお気に入りなのでしょう。スバル君が帰ってくるのを「もうすこしでしかね。」とお店の窓から外を見ながら待っていたのです。スバル君も自分より小さなソールさんに対しては「お兄ちゃん」みたいな感じに振舞っていました。
商業都市に帰ってきて3日後には、私が帰ってくる事を事前に知らせていたケイトが、刺繍のされていない「まっさら」な衣装を抱えてお店に飛び込んできました。
ケイトは実家が生地類を扱っている「布問屋」なので、刺繍とか得意そうなのですが、実際はメイドのマリーさんと「どっこい」くらいの腕前です。確かに、刺繍は送る相手へ「気持ち」を込めて刺繍しますが、ケイトの「気持ち」の形は独創的です。「刺繍は心で刺すもの!(名言)」と言って刺繍をしていますが、ケイトの刺した「バラの花」は「威嚇している魔獣」と評価されていました。私は「味があって良いな」と思うのですが、やっぱり「お花」には見えません。ケイトのご両親(特にお母さん)は衣装の刺繍が終わるのか、心配で仕方が無いそうです。アスラさんがお店の倉庫整理のお手伝いをしている時に、私とお母さんとでケイトに刺繍指導をしていました。(ケイトのお母さんはスパルタらしいので、ケイトは我が家に逃げてきたそうです。)
ケイトの婚約者は私も知っている方で、ロートさんと言います。ケイトの2つ上の優しそうなヒトです。
ケイトのお家に昔から縁のある方で、ケイトとは小さい時から顔を合せていたみたいです。結婚後はケイトのお家の経営に携わるようになるので、今はケイトのお兄さんと一緒にお仕事を頑張っているみたいです。ケイトの刺繍の腕には半分くらい「諦め」を浮かべていましたが、ケイトだって「やれば出来る子!」・・・のハズです。優しい気持ちで衣装を待っていて下さい。
披露宴まであと半年、ケイトには無事に衣装への刺繍を仕上げて欲しいです。
それと、何だかんだで日に1度は私の実家に顔を出していたのですが、4日目で事件が起きました。
お店に入る時にアスラさんが持ち前の怪力を如何なく発揮させて「内開き」の入り口扉を外側に開こうと引っ張って扉を壊したのです。その時のアスラさんは唖然としていましたが、お店のスタッフさんとお客さんもビックリしたようにアスラさんを見ていました。そんな中、お店に響いた「そーるでしよ~!」の言葉に私が驚きました。ソールさん、チョットだけ空気を読みましょう?ね?
思い返してみると、帝都では大抵のお家の入り口が「外開き」でした。アスラさんはいつものクセが出てしまったのですね。・・・すみません、アスラさん。商業都市の「入り口扉」は2種類あって、普通のお家は大体「外開き」なのですが、お家が通りに面していたり、お店の扉は「内開き」が多いのです。
私の実家もお家の入り口は外開きなのですが、お店部分の入り口扉は内開きの仕様となっています。
お家の中の扉は、帝都では(1部例外はありますが)どこに行っても内開きとなっています。
扉の修理に来ていた職人さんが「蝶番が壊れているから、新しくしたほうがいいな。」って言ったので、壊した本人であるアスラさんが修理費を出していました。修理が終わった時にお店を覗いて見たら、不思議な事にお店の「入り口扉」が新しくなっていました。お店の入り口扉が新しくなったので、お母さんが嬉しそうにしています。・・・あれ?「蝶番」が壊れたから新しくしたほうが良いっていうお話でしたよね?扉は無事でしたよね!?どうして新しい扉に交換されているのでしょう?
・・・お母さん、ちょっと話し合いましょうか?
私もアスラさんソールさんと一緒にお散歩に行ったりもしていたので、ご近所さんにアスラさんとソールさんを覚えて貰いましたよ。「素敵なヒトね!」って言って貰いました!嬉しい!
アスラさんと北区に言った時に、お店のお客さまで冒険者さん達が作っている旅団の旅団長さんであるジジッタさんにお会いしました。ジジッタさんの旅団は、商業都市では珍しい「拠点」のある旅団で、我が家のお得意様です。実はジジッタさん、私が小さかった時に魔力過多で寝込んでいたティアちゃんのお薬である「シアー」を取ってきてくれた旅団の隊長さんで、その後もお付き合いがあるのです。
アスラさんはジジッタさんを紹介した時に「失礼ですが・・・。」と言って、ルゥちゃんとララちゃん、ホープ君の名前を出します。何故かローラントさんの名前も出てきていますが、どうしてなのでしょう?
私が疑問に首を傾げていると、ジジッタさんも驚いたようにしていました。ですが、アスラさんの「新緑祭の時にはお力を貸して頂き、ありがとうございました。」との言葉に、ジジッタさんは納得したようにしていました。私とソールさんは顔を見合わせて首を傾げます。
・・・私にはサッパリ分からないお話しなのですが、どうしたのでしょう?
ジジッタさんはアスラさんの足元に居るソールさんを見て、「小さい時のフィーネリオン嬢にそっくりだな。」と言いました。・・・ソールさんと私、髪の色とかマルッと違いますよ?あと、種族も。
この1週間、お店の窓から外の通りを見ているソールさんがお客さんを呼び込んでくれたので、売り上げが少しだけ良かったみたいです。なので、お母さんがソールさんに「特別手当」を渡していました。
ソールさんは受け取った特別手当がお菓子だったので、とても嬉しそうにアスラさんに見せていましたよ。
そんなこんなで、とても濃い実家帰省を過ごしていました。
そして、今日の私はニアちゃんティアちゃんと一緒にお菓子作りをしています。
私達が作っているのは、ソールさんも大好きな「キャラメル」です。
私のお家では、7月中頃の「収穫祭」期間中にお店でお買い物をしてくれたお客さんにキャラメルを渡しているのです。
以前、ニアちゃんにはレシピノートを送っていたのですが「なかなか成功しないの。」と言われたので、実際に一緒に作ってみたのですが、なかなかに慌ただしい空間となっています。
「ね、姉さん!どうしよう、なんか溢れてきました!」
「お姉ちゃん、たいへん!ヘラがお皿にくっついちゃった!とって~!」
「ニアちゃん!ティアちゃん!落ち着いてください!」
私達の様子に、いつもは賑やかなソールさんとスバル君が大人しくソファーに座っています。絵本とか、たくさんあるので読んでいて下さいね。あと、机の上にクッキーもありますよ!
今日もアスラさんは両親とお店のスタッフさんに「お願い」されて、倉庫の本格的な片付けを手伝っています。アスラさんは快くお手伝いしていますが、お店の商品にはそれなりに重い物もあります。重い物を動かす時、普段は台車を使って動かすので2~3人駆り出されるのですが、アスラさんは台車を使わずに1人で運んでしまうので、両親とスタッフさんが本当に感心していました。奥の方から出てきた年代物は「セール」行きですか?
「姉さん、どうしよう・・・。」
ニアちゃんはお鍋の底に少しだけの「キツネ色」をもっと濃くしたキャラメルを見て、私を見てきます。
ティアちゃんもお皿にくっついたヘラの対処をしていたら焦がしてしまったみたいです。
ションボリとした2人がとても可愛らしいのですが、お鍋のキャラメルはとても残念な出来上がりでした。
キャラメルの材料はありふれた物ですが、量を作るとなるとイロイロと値が張ります。
「ニアちゃん、ティアちゃん、もう一回作ってみましょう?今度は私と一緒に。」
お家のコンロは2つなので、私は自家発電(火の魔法)で調理しましょう。
「まず、初めにお水と砂糖、水飴とビーネの蜜を火に掛けて、混ぜますよ。」
「はーい。」
「うん。」
ここは大丈夫そうですね。さっきもこの辺りは安心できていました。
「そうです。そして、こんな感じに沸騰してきたらミルクと生クリームを入れて混ぜます。」
「・・・はい。」
「・・・うん。」
だんだんとニアちゃんとティアちゃんの表情と声が硬くなってきました。
「2人とも、肩の力を抜いて、ね?そんなにお鍋を凝視しなくても、お鍋の中身は逃げませんよ?」
「・・・・・はい。」
「・・・・・うん。」
私の言葉に返事はあるのですが、手を動かす事に一生懸命なニアちゃんとティアちゃんの表情に大きな変化はありませんでした。
「・・・また沸騰してきたら、今度はバターを入れます。お鍋の中を掻き混ぜる時にお鍋のフチに沿うようにヘラを動かすと良いですよ。あとはリロマ(栗)の色になるまでひたすら掻き混ぜていくだけです。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
ニアちゃんとティアちゃんは無心でヘラを動かしています。お姉ちゃん、そんな2人がちょっぴり怖いと思っちゃいました。
「あら、良い匂いね。」
私が心の中で涙を流していたら、アスラさんとお兄ちゃんを連れてお母さんがリビングに来ました。倉庫の片付けが終わったのでしょうか?
「きゃらめるなの!」
「姉さんが『きゃらめる』を作っているんだ!」
ソールさんとスバル君がほぼ同時にお母さんにそう言います。
「そうなの?あら、ジスリニアとティアーナは作り方を教えて貰っているのね。」
お母さんはニアちゃんとティアちゃんにそう言いますが、2人はお鍋をかき混ぜるのに一生懸命でお母さんに気付いていないみたいです。
お母さんはシンクの状態を見て、苦笑いしながら「忙しいのね。」と言います。
「あっ!ニアちゃん、ティアちゃん。そろそろかき混ぜるのは大丈夫なので、容器に移しますよ!キャラメルはヘラで均一に均してくださいね。ある程度、キャラメルが冷めたら冷蔵庫で冷やしますよ。」
「はい!」
「はい!」
私の言葉に、ニアちゃんとティアちゃんがアタフタと準備していた容器にキャラメルを移していきます。
「ふう。これで、キャラメルが固まったら大きさを揃えて切って包み紙で包めば、いつも私が作っているキャラメルの完成です。」
アスラさんに氷を作って貰っているので、キャラメルを冷蔵庫に入れて冷やしますよ!
ぐったりとソファに座っているティアちゃんは「やっと終わった~・・・。」と言っていました。その言葉に続けてニアちゃんが「姉さん、尊敬します。」と言ってティアちゃんの隣に座りました。
「・・・きゃらめる・・・。姉さんから送られた作り方を見ると結構簡単そうに思えたのだけど、作ってみたら結構大変で驚いたわ。お母さん、今年の収穫祭で配るお菓子は期待しないで貰えると助かります。
・・・キャラメルを作れなかったら、焼き菓子でも良い?」
ニアちゃんがお母さんにそう言っていますが、キャラメルは何回か作っていれば何とかなりますよ。
その後、出来上がったキャラメルを切り分けたのですが、ニアちゃんとティアちゃんの作ったキャラメルはとても良くできていました。
ティアちゃんの作ったキャラメルは「ほんのり」ビターな感じで、お父さんとアスラさんに好評でした。
ニアちゃんの作ったキャラメルはとても良くかき混ぜていたのが良かったのか、やわらかい「生キャラメル」みたいな口どけで、お母さんとお兄ちゃんに好評でした。
えっ?スバル君とソールさんですか?もちろん、私たちが作ったキャラメルをたくさん食べていましたよ。2人はちょっと食べ過ぎ気味だったので、残りは明日食べましょうね。
そんな中、来客用のベルが鳴ったのでお母さんが応対に出たのですが、困惑気味にアスラさんに「お客様かしら?」と声を掛けます。
「フィーナ、少し良いですか?」
お客様の対応をしていたアスラさんが不意に私を呼びます。どうしたのでしょう?
困惑しているお母さんを横目に応接室に向かうと、ソファーに座っていた方が立ち上がりました。
その方はアスラさんと同じ「銀色の髪」を持っています。・・・よく見れば、アスラさんとも似ている気がします。
「はじめまして、フィーネリオン嬢。私は、アスライール殿の従兄弟のユーレインです。
明日、商業都市を出発すると聞いていますが、その際、私達と一緒に叔父上の領地に向かいませんか?」
私の知っているヒトの中で「ユーレイン」という名前を持つ方は、1人しかいません。
・・・そう、ここ商業都市の領主さまであるスターリング侯爵家の「跡取りさま」ただ1人ですよ。初めて対面したユーレインさまは、雰囲気はお父様であるスターリング侯爵さまと良く似ています。
・・・あれ?前にアスラさんに同じような事を言われた気がするのです。その時に、アスラさんに断って貰ったと思うのですが?ソッと私の隣りに座っているアスラさんを見ます。
「以前、伯父上に声を掛けて頂いた時は断ったのですが、今回は『出発日が一緒のようなのでどうだろう?』と声を掛けて下さったようなのです。」
アスラさんも私を見て困ったように説明してくれました。
「本当に、両親がすみません。」
ユーレインさまは、本当に申し訳無さそうにしています。
・・・ご両親、なのですね・・・。多分、商業都市出発の日にちも私たちに「合わせて」来たのですよね?
困ったように「すみません」と言っているユーレインさまは、本当にアスラさんに良く似ています。
「ネコさんはどうするのですか?」
私がアスラさんに尋ねると、アスラさんは不思議そうに「ねこも連れて行きますよ?」と言ってきます。
?
私とアスラさんは一緒に首を傾げます。
「!『一緒に』って、『同行』って事ですか!?」
ハッと気付いた私にアスラさんは「ええ、そうです。」と言って、ユーレインさまも「すみません」と言います。ユーレインさま、さっきから「すみません」って言葉しか口にしていませんよ?
「フィーナが馬車のほうが「同行って素晴らしいですね!」
アスラさんの言葉を遮ってしまいましたが、私はネコさんがいいです。アスラさんに乗せてもらいますよ!
この際、同じ馬車でなければ気にしないことにします!
「では、一緒に出発して頂ける、と言う事で話を纏めても良いですか?」
そっとユーレインさまが私たちに声を掛けてきました。それにアスラさんが「ええ。」と答えます。
「明日は、朝の9刻の出発を予定しています。間に1泊、野営がありますが、休む場所と食事関係はこちらで準備してありますので、そのまま北の出発門に来てください。
・・・本当に急な声掛けとなりましたが、よろしくお願いします。」
そう言って、ユーレインさまはルシェに乗って帰っていきました。
・・・すでに私たちの移動分も準備されているのですね。私たちが断ったら、どうしていたのでしょう?
「・・・アスラさん、大変です。」
「どうしました?フィーナ。」
「お義母さんには『ネコさんで行くので、夜には着きますよ。』って伝えているのです。なので、何か準備がされていては大変です。お義母さんに、連絡しなくては!」
私の言葉にアスラさんも「確かに大変ですね。」と言ってお義母さんに連絡をしてくれました。
アスラさんの説明がお義母さんに遮られていますが、「伯父上から声を掛けていただいて・・・。」とようやく伝えると、お義母さんは「そういう事ね・・・。」と不穏な言葉と、「気を付けて来るのよ。」とアスラさんに伝えて通信が切られました。
・・・お義母さん、相手からの通信の時には滅多に自分から通信を切らないのに・・・。
「大丈夫だと思います。・・・私達は。」
私を見てアスラさんはそう言います。「私たちは」ですか。アスラさん、その満足そうなドヤ顔が素敵です。でも、相手の方も侯爵さまですから、お義母さんも大きな事はしませんよ。大丈夫ですって。
・・・多分。
明日の出発の時に出発の門が変わった事をお父さんたちに伝えたら、「何だか大変だね・・・。」と労わって貰えました。出発の時間も変わったので、明日の朝もう1度お家に顔を出してから北門に向かう事を伝えたら、みんな喜んでくれました。元々朝の6刻出発の予定だったので、この辺りに関しては良かったと思います。
明日の出発に備えないといけませんね!
今回のお話しは、少し駆け足気味となりました。
ケイトのお家は「布問屋」ですが、希望があれば刺繍を別料金で入れています。なので、フィーネリオンとジスリニア姉妹の事を「刺繍職人」として狙っていました。まさかフィーネリオンが帝都に嫁ぐとは思ってもいなかったので、本当に「残念」と思っています。ジスリニアは学院に行っているので、卒業後の就職先に売り込み中です。
ケイトの婚礼衣装の刺繍が終わらないのは、優秀な「刺繍職人」のお母さんと義姉によって糸が解かれるから。ケイトの下の妹とお店のスタッフ(少女)は「刺繍は最低限でも良いから、キチンと刺せるようになろう。」と心の中で固く誓っています。でも、ケイトの妹はケイトと「どっこい」の腕前。




