83 ひさしぶりの・・・ 1ページ目
「姉さん!お帰りなさい!」
「ニアちゃん!ただいまです!」
ニアちゃんと感動の再会を果たした(大げさですか!?)フィーネリオンです。
「アスライールさんも、ソール君もお久し振りです。」
「お久し振りですジスリニア殿。お変わり無さそうで良かった。」
「ぶりでし!」
ニアちゃんはアスラさんとソールさんにも挨拶をしています。
・・・ソールさん、それはこの世界にはいないお魚ですよ。
ニアちゃんは今、ニリアさんのお手伝いをしながら料理を覚えているそうです。
今日も学校から帰ってきてからお手伝いに来ていて、その休憩時間に私達の滞在するお部屋に挨拶に来たのです。ニアちゃんはがんばり屋さんなので、ニリアさんが「ずっとウチで働いて欲しい。」と言っているみたいです。
商業都市に到着した今日は、さすがに疲れたのでしょう。ソールさんは夕食を食べる前から眠たそうにしていました。お部屋に備え付けのお風呂は今日はサービスでお湯が張られていたので、夕食後はアスラさんと一緒に先にお風呂に入って貰ったのですが、ソールさんはお風呂に入っている途中で眠ってしまいました。
お母さんはどれ程の奮発をしたのか、私達の宿泊するお部屋はこのお宿で1番良いお部屋です。
一般的なお宿は本当に簡素にベットとクロゼット、テーブルと椅子が設置している所が殆どです。いえ、ベットだけの所もありますし、知らないヒトと相部屋のお宿もありますよ。
私はこのお部屋に通された時にビックリしました。お手伝いをしている時に何回かこのお部屋に入った事はありましたが、一体1泊いくらなのでしょう?・・・気になります。
だって、このお部屋、本当に広いお部屋なのですよ。
今、私たちがいるお部屋とは別にもう一部屋、寝室とお風呂とトイレが付いているのです。
ベットもとても大きいのです!私たち3人が並んで眠れそうなくらい大きいのですよ。見た感じ、私が帝都のお家で使っているベットより大きいキングサイズ(?)でしょうか?お部屋に入ってベットを見たソールさんが、大興奮してコロコロと転がっていたのでアスラさんが止めていました。
・・・ソールさん、私はその気持ちがわかりますよ。安心してください。
「フィーナも疲れたのではありませんか?」
私がお風呂から上がると、アスラさんから声を掛けられました。
「ふふふっ。そうですね。でも、何だか楽しいです。」
お部屋の窓からは私の実家が見えます。もうお店の明かりは消えているので、ヒトの気配はありません。
「そうですか。それならば良いのですが・・・。」
「アスラさん、どうかしました?」
アスラさんが言いにくそうに「実は、ソールが・・・。」と続けます。
「ソールさんがどうしました?」
先に夢の世界に旅立っていますよね?
「・・・ソールの寝相の悪さを直さないでいた事を、これほど悔やむとは思いませんでした・・・。」
アスラさんはこめかみを押さえながら、私をベットのあるお部屋に誘導します。
「すぴょ~~。」
何て残念な光景なのでしょう。そこには、ベットのど真ん中で横に大の字になって眠っているソールさんがいました。暑くてお布団から出てしまったのですね・・・。
「ソールさん・・・。
・・・アスラさん、私達はこの光景を見てしまった以上、今夜の就寝スペースを確保しないといけません。きっと、コレはソールさんからの『安眠』をかけた挑戦状なのです!」
私はアスラさんを見てこう言います。
「・・・そうですね。そう思う事にしましょうか。」
アスラさんはそう言って頷きます。「『すぺーす』の意味は・・・。」って聞かれましたが、もう気にしません。場所です。私達が寝る場所ですよ。
とりあえずソールさんを掛布で包んでみようとしたのですが、ソールさんはお布団の上をコロコロと転がり私達の手から逃れようと手技と足技を繰り広げて来たので、一時中断して休憩中です。
「アスラさん、どうしましょう?ソールさんがとても手強いです。」
「・・・えぇ。私も驚きました。」
私とアスラさんは寝室を出てこんな事を言っていますが、私の頭の中では「ソファーに寝ても良いかな?」なんて思い始めています。
「・・・フィーナ。取り敢えず、あと一回、試してみませんか?」
アスラさんがそう言って、掛布片手にソファーから立ち上がります。
アスラさんが掛布をクルクルと丸めてソールさんに近付けると、ソレに吸い付くようにソールさんが抱き付きます。その光景に私は感激してしまいました。ベットで眠れますよ!
「アスラさん素敵です!」
「ありがとうございます。」
アスラさんと笑い合いますが、さっきまでの激闘は一体何だったのでしょう。
ソールさんが大人しくなったので、私とアスラさんはそれぞれベットの反対側から入って、ソールさんを挟んだ「川」の字です。
「おやすみなさい。アスラさん。」
「えぇ。良い夢を、フィーナ。」
そうして商業都市の1日目が過ぎたのです。
「あさでしよーーーーー!」
ソールさんは元気いっぱいのお声で朝を告げています。昨日の夜が早かったので、いつもより早く目が覚めてしまったのですね。
その声にうっすらと目を開きます。時計は確認していませんが、まだ「夢の中」にいても良い時間じゃないですかね?
「おとしゃん!あさでしよーーーー!」
ソールさんはアスラさんの方を向いて、ユサユサと起こしに入っています。
「ソール・・・、起きるにはまだ早い・・・。」
そう言ったアスラさんからは起き上がる気配がありません。
「むぅ・・・。」
ソールさんは不満気にアスラさんから離れます。
そうですよ。ソールさん、もう少し眠りましょう・・・?
ですが、ソールさんは私の方にクルリと体の向きを変えます。
あれ?おかしいな。ソールさんとバッチリ目が合ってしまいましたよ。
私と目が合ったソールさんは、満面笑顔で「おかしゃん。おはよでしーー!」と言ってそのまま私の頭に抱き付いてきます。
・・・くっ・・・、苦しい!ソールさん!息が、息ができません!ハメ技は禁止ですよ!止めてください!
「フィーナ!ソール!起きた!起きたから、離れるんだ!」
私の手がベットのマットレスをバンバン叩いたので、アスラさんを起こしてしまいました。
いえ、アスラさんが起きたからこそ、救助して頂けたので本当に助かりました。
「おはようございます。アスラさん。先程は本当に助かりました。」
「おはようございます。フィーナ。いえ、無事で何よりでした。」
私とアスラさんはソファーに座ってお互いに挨拶します。空に太陽は出ていますが、今の時間は朝の5刻です。窓の外からは、ようやくヒトの気配が感じられるようになってきました。
ソールさんは私達を起こして満足そうにしています。ぬいぐるみに囲まれてニコニコ笑顔ですよ。
「まだ少し早い時間ですが、朝食は何刻頃食べに行きますか?」
お部屋に備え付けられているポットに入れたお水を、魔法で沸かします。お水はアスラさんに出して貰いました。「水」魔法と「氷」魔法の使えるアスラさんは本当に素敵です。
「その前に、今日はフィーナの実家に向かうのですが、何刻ぐらいに行きますか?」
「そうですねぇ・・・。」
実は、お母さんには「何刻に来ても大丈夫よ。」と言われているのです。ですが、さすがに今の時間は早すぎますし(多分、誰も起きていませんよ)、お店の開店は朝の8刻です。開店直後はイロイロと忙しいですから、その時間は避けて行った方が良いですよね。
「私の実家には、朝の10刻くらいに行ってみますか?」
「えぇ、そうしましょう。では、朝食は「きゅるるる~~。」・・・・、早めに取りますか・・・。」
「そうですね。」
私の言葉にアスラさんが何とも言えないお顔をしてソールさんを見ます。
ソールさん、無言の催促ですね。
・・・確かに昨日の夜は早いお休みでしたが、夕食の時間はいつもと同じでしたからね?
ソールさんはお腹を押さえながら「えへへ~~。おなかがすいたの。」何て言っていますが、その様子が可愛らしすぎるので荷物の中に入れていた「非常食」を出しますよ。アスラさんも如何ですか?
久しぶりのニリアさんの料理に懐かしさを覚えます。ソールさんは美味しそうに食べていますし、アスラさんも「美味しいです」と言って食べています。
「・・・長い事食堂をやっているけれど、初めて見たよ!朝から気持ち良いくらい食べるのね!」
朝食を運んできたニリアさんにそう言われましたが、アスラさんとソールさんのお腹は体型に左右されないブラックホールなのです。乙女の憧れのお腹なのですよ。
私の前に置いてある「(一般的な)朝食セット」とは比べられない量の朝食セット(?)がアスラさんとソールさんの前に並べられています。ちなみに、食事は私達が支払うようにしてあるので、アスラさんとソールさんには好きなだけ食べて貰いますよ!
カイ兄さんとジェイ兄さんが、遠目に見ても2人の食事量に引いているのが分かります。スタッフさんも興味津々ですよね。
何より目に付くのが、私の朝食よりもソールさんの朝食の方が「多い」と言う事でしょうか?
ソールさんが「あいっ!」と言ってパンを私に渡してきますが、私の分は私の手元にありますよ?
「そうね、フィーナはもっと食べた方が良いわ。」
ニリアさんがそう言います。その言葉にアスラさんが「えぇ、私もそう思います。」と言ってそっと私のプレートにお肉をのせてきた事に驚きました。
「ふえぇぇ。これ以上は私のお腹には入りませんよ!?」
私がそう言うと、ソールさんが「だいじょぶよ!」と言ってきます。
え・・・、まさかの3対1の構図に驚きます。
気付いてニリアさん!アスラさんとソールさんの食事の量の方が「おかしい」という事に!




