82 とうちゃくです!
みなさんこんにちは!ようやく商業都市に到着です!
今は入場審査を待っている所なのです。
到着した時にお母さんに連絡を入れているので、お迎えは大丈夫だと思います。でも、連絡から戻ってきたら、ソールさんはネコさんに乗った状態でキリリとしています。
あれ?さっきまでは降りていましたよね?アスラさんには「安全ですし。」と言われてしまいました。
・・・決して、ソールさんがチョロチョロしていて人の波にのまれたからでは無いと思うのです。私がお母さんに連絡をしている間に何があったのでしょう?
定期馬車の乗入れと重なって待っているヒトも多かったので、日が傾いた頃にようやく入場審査を受ける事が出来ました。
商業都市は、その立地条件から騎士団の駐屯はありません。基本的に兵士団が中心になって自警しているのです。他に冒険者の方もいるので、今の所は問題ないそうです。・・・まぁ、候爵さま一家がいるので「護衛」の騎士さまもいらっしゃいますし、大丈夫なのでしょう。
「次!」
そう呼ばれて私達が兵士さんの前に立ちます。その時にはソールさんもネコさんから降りていて、アスラさんの外套を掴んで兵士さんを見上げています。
「・・・問題な・・・し・・・?あれ?確か・・・?」
目の前で通行証を確認していた兵士さんが私を見て、通行証をもう1度見て固まります。
「シーーー!」
私の様子に何かを察したのか、私がポケットから出した用紙を見た兵士さんは1度頷いて「通って良し!」と言ってくれました。
「フィーナ?何かあったのですか?」
通行証を受け取ったアスラさんが首を傾げながら聞いてきます。
「今の兵士さんは私もよく知っている方で、東区2番目の詰所にいる方なのです。ココで私達の帰郷が広まっては計画が崩れてしまうので、口止めをお願いしたのです。」
お父さんに対するビックリドッキリ作戦に「準備万端」な私は、もしもの時に備えて「どっきり作戦」への協力をお願いする書類を準備してきたのです!
・・・私の様子にアスラさんがドン引きしているなんて、気付きたくないです。
「お~~い!フィーナ~~。」
この間の抜けた呼び方は、私の従兄のカイ兄さんですね。
声のした方を見たら、ニリアさんの次男であるカイ兄さんが近付いてきます。
「カイ兄さん!お久し振りです!」
「おう!フィーナも元気そうだな。」
カイ兄さんはまっすぐ私達に近付いてきて、軽く手を振っています。
「おっ、噂の!」
カイ兄さんはそう言うと私と一緒にいたアスラさんを見ます。・・・その下にもう1人いますよ?見えてますよね?
「初めまして、アスライールです。」
「・・・そーるよ!」
アスラさんとソールさんがカイ兄さんに自己紹介をしています。
アスラさんの外套に包まってお顔だけ出している状態のソールさんですが、そんな状態のソールさんの「ナニか」がカイ兄さんに触れたらしく、2人は見つめ合っています。
「・・・フィーナ、コレは不味いかも知れない。」
暫し見つめ合ったソールさんとカイ兄さんですが、カイ兄さんはポツリとそんな事を口にします。
「えっ!どうしたのですか?何かありましたか?」
「何か不都合が起きたのですか?」
私とアスラさんはカイ兄さんの言葉に驚きます。
「あぁ、コレは・・・・、母さんも勘違いするわ。」
「・・・それは、どう言った・・・?」
アスラさんの困惑を浮かべた言葉に、私はハッとしてソールさんを見ます。
カイ兄さんの言葉が私の頭に理解されるまで時間が掛かりましたが、マシュマロほっぺでモチ肌、ふわふわの髪の毛で(超絶)可愛らしいソールさん。
私が緩く笑うと、ソールさんはパァ~~っと笑顔になりました。ソールさん、超可愛い。
「大丈夫です!ソールさんが可愛らしいのは、今に始まった事ではありません!
カイ兄さん、良く見てください。その上に視線をずらせば、ソールさんがどう言った風に成長するのかが目に見えてわかりますよ。」
私の言葉に、カイ兄さんはアスラさんを見て「あぁ、確かに・・・。」と言います。
「ニリアさんとソールさんの顔合わせは済んでいるので、それ程・・・」
「母さんは知っているんだな!
・・・フィーナ、心を強く持て!俺達にはどうする事も出来なかったんだ・・・。」
カイ兄さんは私の言葉に食い入り気味に被せてきました。
心を強く持てって・・・・。
「・・・ソールに何か不都合が・・・?」
アスラさんは心配そうにカイ兄さんに尋ねます。
「・・・一応、一応聞きます。ソール・・・君?で合って・・・いますか?」
「えぇ。合っています。」
どうしたのでしょう?カイ兄さんは神妙な顔付きでアスラさんに聞いています。
「・・・間違っても『女の子』じゃあ無い・・・んですよね?」
「えぇ・・・。『男の子』です。」
アスラさんは自身の外套に包まっているソールさんの両脇に手を差し込んで、カイ兄さんの目線まで抱き上げます。今日のソールさんは、お義母さんが準備した「男の子」用の騎獣用の洋服を着ています。
「そーるよ!」
ソールさんは、ムイッと2度目の挨拶をします。
「おぅ、カイだ。よろしくな。」
カイ兄さんは「だよなぁ・・・。」と言って私を見ます。
「母さん、フィーナ達が連れてくるのはソールって名前の『女の子』だと思ってるんだけど、どうしよう?」
「えぇっ!」
「え・・・。」
カイ兄さんが口にした言葉に私とアスラさんが驚きます。
それでも、ソールさんはキリリっとしながら私達を見ています。
私が商業都市を出発する日、「何かあって挨拶が出来なかったら大変!」と思って、領主館に向かう前に挨拶に行ったのが間違いだったのでしょうか?今思うと、確かに朝の忙しい時間帯でしたよね・・・。
・・・ですが、ソールさんはしっかりと「そーるよ!」と元気に挨拶していました。
あの時のソールさんはスバル君のお下がりの服を着ていましたし、ソールさんは可愛らしいお顔をしていますが、ダンさん(ニリアさんの旦那さん)は「男の子か。」って言っていましたよ?カイ兄さんのお兄さんであるライ兄さんも気付いていたみたいなのですが・・・?
「・・・ソールは・・・、どうしましょう・・・。」
混乱の極みにいるアスラさんは「性別はどうやったら・・・。」と言って、ソールさんを掲げたまま私とカイ兄さんを見ます。
「・・・うん。母さんの『勘違い』は良くある事だから、気にしないで貰えると助かります。」
アスラさんの慌てた様子を見たカイ兄さんは現実に戻ってきたようです。
「取り敢えず、家に戻るか。」
カイ兄さんの言葉でアスラさんも現実に戻ってきました。
「・・・それと、ずっと気になっていたんだけど、・・・まさかと思うが、・・・その、・・・後ろに座っているのが、乗ってきた『騎獣』・・・かな?」
カイ兄さんはアスラさんの後ろに大人しく「お座り」しているネコさんを見て遠い目をしています。
「ねこよ!」
「なぁ~。」
ソールさんが一生懸命紹介して、ネコさんが可愛らしくお返事をしています。
「・・・うん。・・・知ってた。フィーナだもんな・・・。」
カイ兄さんが遙か遠くを見て呟いています。・・・って、えぇ!私ですか!?
「もしかして、ネコさんの可愛らしい姿にメロメ・・」
「うん。違うから。安心して。」
私とカイ兄さんの会話を聞いていたアスラさんが申し訳なさそうに「すみません。」と言っています。大丈夫ですよアスラさん、これはカイ兄さんの「照れ隠し(?)」みたいな感じなのですよ。だから、「ねこは都市外に出しましょうか?」何て言わないでください!
「えっ!そんな、とんでもない!フィーナの旦那さんの騎獣をそんな扱いは出来ません!
いや、本当にすみません。騎獣はルシェ型の騎獣しか見た事が無かったので・・・、カリャン型の騎獣なんて滅多に・・・、あまり・・・、・・・全然見た事が無かったから、驚いただけですよ!」
カイ兄さんはアスラさんの言葉にビックリしたようにしていますが、確かにネコさんタイプの騎獣は珍しいですよね。アスラさんは困ったように「すみません。」と言っていますが、ネコさんは、もっふもふで可愛らしいですよ~。
その後、細い裏道を通って暫くお世話になるニリアさん家族の経営しているお宿に向かいました。
宿泊をするお客様の騎獣預かりもしているので、ネコさんはそちらでお世話になります。獣舎を担当しているヒトに「立派な騎獣だな!」って言って貰ったのが嬉しかったです。
そして・・・。
「そーるでし!おとこのこよ!」
ソールさんは両手を腰に当てて、ドーンとニリアさんに挨拶をしています。
「・・・そんなっ!」
ニリアさんはフリッフリのワンピース片手に崩れ落ちています。ダンさんが「だから言っただろう?」と言ってニリアさんを慰めています。
「・・・まぁ、勘違いって良くありますよね。」
ソールさん達の光景を見て、申し訳なさそうにアスラさんにそう言っているのは、ニリアさんとダンさんの長男でこのお店の跡取りであるライ兄さん(カイ兄さんと双子)です。他にジェイ兄さんと末っ子のジュードと私達を迎えに来てくれたカイ兄さんがいます。
ライ兄さんは一昨年結婚していて、奥さんであるシアさんは出産間近の為、実家に戻っているみたいです。カイ兄さんの奥さんはご実家のお手伝いに行っているみたいです。
「お世話になります。」
「こちらこそ、ゆっくりしてください。」
アスラさんとライ兄さんは大人の会話で挨拶をしていますが、ニリアさんとソールさんはまだ決着が付いていません。
ニリアさん、大丈夫ですよ!そのワンピースは、ライ兄さんとシアさんの赤ちゃんが「女の子」だったら着せられますって!
ソールさんもワンピースを受け取らないの!めっ!ダメですよ!




