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79 しゅっぱつの・・・ 4ページ目








「それにしても、ダグリジュの雛とは珍しいですね。」

「あぁそうだな。」

「空から落ちてきたので、何かから攻撃を受けた所を逃げてきたのだと思うのですが・・・。」


アスラさんは救援に来た騎士さん達に状況の説明をしています。




みなさんこんばんは。もうそろそろ夜の7刻になる所です。

この時間でもまだ明るく感じるので、日の高い季節になっているんだなぁ・・・。何て実感が浮かびます。






アスラさんの出した救援連絡によって出動したのは、所謂「治療部隊」と言われる第5師団第2部隊の隊員さんです。第5師団は7つある師団の中で唯一、武器を持たない魔法専門の師団なんだそうです。何かあった時に治療が出来ないと困るので、今回の長期休暇では師団ごとのお休みでは無い事を聞きました。




こちらの皆さんが到着したのが、今から1刻程前です。それよりも前に雛さんは意識を回復させていたのですが、その時には雛さんはお腹いっぱいになっていて元気に騎士さん達をお出迎えしていましたよ。


・・・それと言うのも・・・。


目覚めたばかりの雛さんは、翼の傷が塞がってはいましたが力無く「みゅっ!」「みゅ~っ・・・。」と切なそうに鳴いていました。


「空腹なのかも知れません。」

そんな雛さんの様子を見てアスラさんがそう言った事に驚きましたが、確かに雛さんは何も口にしていませんからお腹が空いているのかも知れません。そうしてアスラさんはネコさんに「エサを獲ってくるように」と指示を出して送り出しました。


雛さんは「雛」って言う割に大きな体をしていますから、私達の持っている食料では足りませんよね。ダグリジュって何を食べるのでしょうか?お魚ですかねぇ・・・?私はそんな事を思いながら、アスラさんが作ってくれたテントにネコさんから下ろした荷物を入れていたのです。




暫くして、とても優秀なハンターであるネコさんは(私の見慣れていたモノとは大きさがだいぶ違うのですが)可愛らしいチムリス(エサ)を咥えて帰ってきました。




・・・私には絶望しかありませんでした。




私の様子を察知したアスラさんが「フィーナはテントの中にいてください。ソールの事もお願いします。」と言って私達をテントに誘導します。そう言えば、ネコさんのご飯も現地調達ですよね・・・。そうですよ、すっかり忘れていました!ネコさんは「肉食」でした。



・・・前世的な記憶の作品に差はあれど「グリフォン」と呼ばれていたモンスターは大抵は美味しそうにお肉をモグモグしていたので、もしやダグリジュという種族も肉食なのでしょうか?


私はソールさんと一緒にテントの中でソッとしていましたが、テントの中にいても色々な音がしていたので私はソールさんの両耳を押さえている事しか出来ませんでしたよ・・・。



音声的には「アウト!」な音を消す規制音が必要でした。(主に私用に。)




今、お腹いっぱいで満足そうにコロコロしているネコさんは、ソールさんの相手をしています。そんなネコさんとソールさんを雛さんがジッと見ています。


・・・良かったら仲間に入れてあげてくださいね?





今回派遣された第2部隊の皆さんは、到着した時に雛さんを珍しそうに見ていました。何でも「空を飛ぶ魔獣の雛は珍しい。」とのことです。



私達の所に到着してすぐに、騎士さん達は周辺に防御魔法やら魔獣避けを掛けていました。空を拠点としている魔獣が地上で弱くなる事は無いのですが、やっぱり「武器が当たらない」事が1番大変なんだそうです。だから、騎士さん達にとって暗くなってからの空からの奇襲は死活問題なんだそうです。もし空から襲撃されたら私は確実に足手まといなので、その時には真っ先に隠れますよ!


間近での魔法にワクワクしたのですが、最初の時に少しキラキラと光っただけだったのでちょっぴり残念な気持ちになったのは内緒です。



「フィーネリオンさん。夕食はどうしますか?」

私は、救援部隊の女性隊員であるスーラさんと食事の準備をしています。


初めは「食材をたくさん持ってきたのでどうぞ。」と言われたので材料を分けて貰おうとしたのですが、救援として派遣された騎士さん達は8人いました。普通の家庭で7人分の食事を準備するだけでも大変なを知っています。私は3人分なので楽ですが、材料を分けて貰えるのでしたら一緒に作ってしまった方がお互い楽が出来ますよね?そう思って「良かったら一緒に作りませんか?」と声を掛けたのです。



「そうですねぇ・・・。」

そう言いながら騎士さん達の持ってきた食材を確認します。そこに私達が準備してきた物をヒッソリと忍び込ませますよ。


まず、1番目に付くのがお肉です。

そうですよね、タンパク質はしっかりと摂らないといけませんよね。


・・・野菜類が少なめなのが気になりますが、メイの粉があるのでパンを焼きましょう。




お肉はしっかりと下味を付けて漬け込みます。

先にパンを焼いていたので、パンの粗熱を摂る為に焼き上がったパンをお鍋から出しておきます。

その後に、下味を付けたお肉と一緒に野菜を炒めていきます。お肉と野菜を炒めていたお鍋にトマトを投入した時にスーラさんが「えぇっ!?」と言っていましたが、トマトは炒めても美味しいですよ?私のイチ押しです。


もう一つのお鍋でお芋を茹でていたので、夕食の様子を見に来ていた部隊長さんであるフェイスさんに手伝って貰ってマヨネーズを作って貰いました。お礼にキュウリの浅漬けを差し上げたら、ソールさんが反応していました。

・・・ただ、ソールさんの「人見知り」と「私が調理中」と言う事が合わさって、こっちを見ているだけですが。


お芋を潰してマヨネーズを混ぜ合わせて「なんちゃってマッシュポテト」の完成です。


パンをスライスして千切りにしたレタス(こちらではターンと呼ばれています)と炒めたお肉を挟んで、マッシュポテトとキュウリの浅漬けをお皿に乗せて、スープを器に入れたら夕食の完成です。


パンとお肉を炒めた物はたくさんあるので、食事の量が足りない時には各自取って貰うようにしました。







夕食は、時間も時間だったので手早く終わりました。


スーラさんが頻りに同僚の方を見ていましたが、食事が終わった時に私に向かって「ありがとうございました!」と言って抱き付いてきたので驚きました。


理由を聞いてみたら、スーラさんが先程見ていた方はスーラさんの弟さんでアルトさんと言うそうです。そのアルトさん、実はトマトが大嫌いなんだそうです。それは、お皿にトマトが入っていたら、もうそこで食事を諦めてしまう程のトマト嫌いで、食堂でも「マニエ(トマト)抜きで。」と言って食べているくらいなんだそうです。



私の記憶の中では、確かお代わりをしていましたよ?スーラさんはとても嬉しそうに「良かった!」と言っていました。その後、スーラさんは余程嬉しかったのか、そのまま走ってアルトさんを追いかけます。姉弟の仲が良いのは良い事ですよね!



「フィーナ、どうかしたのですか?」

ソールさんを抱えたアスラさんが私の所にやってきました。


「ふふふっ。仲が良い事は良い事ですね。って改めて思ったのですよ。」


私の言葉にアスラさんは「?」と首を傾げていますが、ソールさんは「あい。」と言って頷いてくれます。



「アスラさんも、何かあったのですか?」


「あぁ、そうでした。そろそろテントに入った方が良いと思ったので、声を掛けに来たのです。」

私の言葉にアスラさんがそう言います。


アスラさんに言われて、今いる所が「外」だったと言う事を思い出しました。




「今日は、初めてのテントです!何だかワクワクしてきますね!」

私の言葉にアスラさんが「楽しんで貰えれば良いのですが。」と言って、テントの方に誘導してくれます。



今日は綺麗な星空ですよ!















おまけ




ソール(ダグリジュの雛の綿毛に埋もれる)「おかしゃん!そーる、ここにはいれるの!」


フィーナ「雛さんの綿毛に埋もれるソールさん!可愛い!」


アスライール(そんな様子の2人を見て満足そう)


フィーナ「それならば、私はネコさんに!」(ネコさんにダイブです!)


ねこ「なぁ~。」


アスライール(フィーナは相変わらず可愛らしいですね。)


ソール「(はっ!)そーるも!」(雛から飛び出す)


雛「みゃっ!!!」(ショックを受けている!)


ソール・フィーナ「モフモフ・・・」


ねこ「(勝ち誇ったように)にゃ!」


アスライール(とても満足そうに頷いている)



隊員A「何だろう、俺の心が血の涙を流している気がする・・・。」

隊員B「安心しろ、俺の心も同じだ・・・。」


フェイス「あ~~・・・。嫁さん元気かなぁ~・・・。」


A・B「!!!!(ここにも!)」


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