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6 はじまりの6ページ目


ブックマークありがとうございます!






皆さんこんにちは。

お父さん宛の令状を改めて読み返して、絶賛フリーズ中のフィーネリオンです。



礼儀とか、作法とか、そんな物は宇宙の彼方に旅行中です!





一、第二子 長女フィーネリオンの早急の登城を命ず。


一、第二子 長女フィーネリオンと騎士アスライールの期間未定の婚姻の承認を命ず。





お父さん用の令状に書かれていた文面は、私の所に書いてあった文面に比べればとても簡単です。


パッと見てサッと読める、おまけに理解しやすい。



・・・私に関係する内容でなければ、とても素晴らしい『理想の』命令文でした。




私 に 関 係 す る 内 容 で な け れ ば !




特に2つ目!『長女フィーネリオンと騎士アスライールの期間未定の婚姻の承認を命ず』って何ですか!騎士さまに対する嫌がらせとしか受け取れません!



『期間未定の婚姻』って契約結婚みたいなものでしょう?騎士さまのように将来有望な方にしてみたら、この先を共にするパートナーって事じゃないですか!


騎士さまに雑貨店の小娘と契約結婚させて、その華々しい道を断たせようとしているのですね!




許すまじ!オレ様参謀の宰相閣下め!毛根よ、死滅してしまえ!





・・・取りあえず、念を送ってみました。


心がスッと軽くなった気がします!何だか、少し良い事をした気分になりました。





「フィーナったらどうしたの?」

「なんか、聞かない方が良い気がする・・・。」


お母さんと遠い目をしたお兄ちゃんは、騎士さんとお父さんの間に立っていきなり唸りだした私を見てそんな事を言っていました。

騎士さまとお父さんの「やっぱり、請願書を・・・」何ていいながら上質紙を探し始めるのを聞いて、我に帰りました。今は、そんな事している場合では無いでしょう!




「大変です!騎士さま、これは陰謀ですよ!」

私は騎士さまに詰め寄って声を掛けます。




「・・・どうしてその様に思ったのかを聞いてもよろしいですか?」

冷静な騎士さまの返事にビックリしました!大変!騎士さまったら、自分が大きな渦の中に居る事に気が付いていないのですね!



「騎士さまの栄光への道が、『契約結婚』によって閉ざされようとしています!今なら、まだ間に合います!どちらかのご令嬢と素敵な結婚を迎えてください!」

私の発言で一気に部屋の中が静かになりました。



「あらあら・・・。」

「なるほど、そう来たか・・・。」

お母さんとお兄ちゃんが、そう言って騎士さまを見ました。


「契約、結婚・・・。・・・契約。」

お父さんは今更気付いたのか、うわ言のように言葉を繰り返しています。・・・大丈夫でしょうか?




「なるほ「『あしゅらいーる』といっしょにきてくれるでしか?」ソール、起きたのか。」

ソールさんお目覚めです。寝起き姿も可愛らしいですねぇ。お母さんが目を輝かせてソールさんを見ていますよ。私もガン見していますけどね!


お兄ちゃんが私達に引いているだなんて、そんな事は間違いだと思うのです。



「『あしゅらいーる』といっしょにきてくれるでしか?」

ソールさんは、とても不安げに私に問いかけます。そんなソールさんの様子に、思わず「はい」と答えそうになります。


・・・危ない危ない。世の中には可愛らしい子がたくさんいますが、こんな可愛く誘惑されたら付いて行きそうになりますよ!(私はね!)



「ソール、もう少し待ってくれ。これ以上は話がややこしくなる。・・・皆さん、すみません。フィーネリオン嬢と私達とで話をしたいのですが、よろしいですか?」


何やら込み入ったお話ですかね?







お母さんとお兄ちゃん、現実に戻ったお父さんは顔を見合わせて部屋から出て行きました。




「誤解させてしまったようで申し訳ありません。「あいっ。」

こちらの文面では、確かにそう受け取れてしまうかもしれません。「あいっ。」

年頃のフィーネリオン嬢には本当に申し訳ない内容となっているのは、理解しています。「あいっ。」

ですが、私はフィーネリオン嬢にしか頼める方がいないのです。」「あいっ。」



騎士さまの会話の合間に入る、ソールさんの合いの手が可愛くてお話が頭に入りません!



ぬるくなった紅茶を交換しようと騎士さまにお出ししていたカップを下げようと手を伸ばしたら、騎士さまはカップに残っていた紅茶を一気に呷って「ありがとうございます」と言ってカップを横に置きました。もう良いのでしょうか?



「フィーネリオン嬢にとっては、私との婚姻の命令は不本意かも知れませんが「あいっ。」

今回、この令状を渡される人物は『渡す者と違う性別の、未婚の異性』となっています。「あいっ。」

・・・ソール。「あいっ。」少し大人しくしてくれ・・・。」「・・・やっ!」


真面目に説明しようとする騎士さまと、お顔をキリリとさせて騎士さまとお話しするソールさんに私の表情筋は緩みっぱなしです。目の保養となるこのやり取りは、ずっと見ていたいですね。

ですが、お話は全く進まないので、何かないかとお部屋をぐるりと見て紅茶の乗っているワゴンに目が留まりました。そうでした、すっかり忘れていましたが、軽食の準備もしていたのです。




「騎士さま、お連れさまも。お腹はすいていませんか?軽食があるので少し休憩いたしましょう?」


私の言葉に騎士さまは驚かれたようですが、騎士さまがお店にいらっしゃったのが開店の時。その後アレコレお話をしてお昼。お店を早く締めたのが、先程・・・。朝食を食べたのは少なくとも6刻前という事になります、もしかしたら、お2人は朝から何も口にしていないのでは・・・?

そんな思いもあって、軽食として準備したサンドイッチと朝の残りのスープ(温めただけ)を勧めたのです。最初は遠慮していた騎士さまも、瞳を輝かせたソールさんの様子を見て「すみません。ありがとうございます」と言って、一緒に軽食を食べました。(ちなみに、一刻は地球の時間的に1時間くらいです)





・・・お2人は、よほどお腹が空いていたのでしょう。

準備しておいた6人分の軽食が2人のお腹に消えていき、結構残っていたスープも、鍋の中身がカラになりました。



「美味しかったです。」

「あいっ。」


「お粗末さまです。」

とても気分のいい食べっぷりに、私も嬉しくなります。

お皿をワゴンに下げて、食後に紅茶をお出ししてソールさんのほっぺ(マシュマロほっぺ)に付いていたパンの欠片を取っていたら、ソールさんは、お腹がいっぱいになって眠たくなったのでしょう。私に寄りかかって(!?)眠ってしまいました。



「あぁ、すみません!」

騎士さまはそう言ってソールさんを自分の方に連れて行こうと、立ち上がろうとしたので「大丈夫ですよ。どうぞゆったりして下さい」と私は言いました。可愛いは正義!この状態は、私へのご褒美です!




「ソールがここまで『他のヒト』に懐くのは、本当に珍しいのです。」

騎士さまがポツリと零した言葉に、私は首を傾げました。



「フィーネリオン嬢は、4年前に帝国中に出されたお触れを覚えていますか?」

騎士さまは、ソールさんから私に視線を移して聞いてきました。



「4年前ですか・・・?

(お触れなんて滅多に出ないから、がっつり覚えていますよ!)・・・内容までは覚えていませんが、皇帝陛下の名前でお触れが出ていたのは記憶にあります。」


「そうですか。お触れの内容は気になりませんでしたか?」

私の言葉を聞いた騎士さまは、そう尋ねて来ました。



あれ?



「4年前は学院に通っていたので・・・。学生と言う事もありましたし、実家はご覧の通り雑貨屋をしています。家族も気にしていませんでしたので、特には気になりませんでした。」


「なるほど。」

そう言って騎士さまは、何かを考え込んでしまいました。何だか、ウソを言った事に気が付いている感じですが・・・。






「4年前、皇帝陛下は帝国領内に1通のお触れをお出しになりました。

それは騎士たちによって帝国中に渡り、お触れを聞いた方達が帝都へと集まりました。それこそ、一家総出で帝都まで来た方達もいらっしゃったようです。

・・・ですが、不思議な事にここ商業都市からは、ほとんど人が来なかったみたいなのです。」


騎士さまが仰りたい事が良く分からないのですが、皇帝陛下からは「商業都市の奴らは、皇帝陛下様であるオレ様の招集に応じなかった!」と認識されているって事なのかしら?私が首を傾げていると



「あの時は、


『帝国領に3体の精霊が発現されたし、精霊は契約者を求めている

 身分は全ての者に、帝国領に居住を構える者であれば全ての者にその権利が与えられる

 帝国領にて生活を行っている事が、今回の精霊との契約の条件である


 精霊の契約者となりし者には、帝国より生活の保障が行われる事を約束しよう』



こちらの内容でお触れが出たのです。このお触れが出た事によって人が雪崩れ込むように帝都へと集中したので、帝国領は一部例外はありましたが混乱に陥りました。帝国領は帝都だけでは無く、他の都市町村まで機能しなくなったのです。」


騎士さまは当時を思い出したのか、曇った瞳で窓の外を見ながら仰いました。




・・・・?


私が当時を思い出してみても、そのような混乱は無かったように思いますが?




「その、一部例外がここ商業都市だったのです。なので、フィーネリオン嬢にはその混乱の様子が思いつかないのかと思います。」

不思議そうに聞いていた私に気が付いたのか、騎士さまは私にそう言います。



「・・・本当に、ここは平和だったのでしょうね。・・・羨ましい限りです。」

深くため息を吐いた騎士さまに、労いを込めてお茶のお代わりを促しました。










もう少し続きます。

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