表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/163

75 しゅっぱつの・・・ 1ページ目





みなさんこんにちは!ついに明日は商業都市に出発する日になりましたよ!




「ソールさん、今日はいつもより早めに『お休みなさい』するので、これから明日持って行く物の準備をしましょう。」

私のこの言葉にソールさんは「あいっ!」と元気なお返事を返してくれます。


アスラさんは朝番の出勤なので夕方には帰ってきますし、ネコさんに積んでいく荷物のチェックは終わっているのです。ソールさんとのこの最終チェックには、本当に必要な物だけが鞄に入っているのかを確認する目的があります。



「・・・ソールさん、何だか鞄がコロコロしていますよ?」

「だいじょぶなの!」

ソールさんが自分のお部屋から「よいしょ。よいしょ。」と言いながら持ってきた鞄は、ボタンがはち切れそうになっています。しかも、先週準備した鞄と違う気がしますよ?ソールさんはパンッパンに膨らんだ鞄を一生懸命抱き抱えて、何かをやり遂げたようなお顔で私を見ています。



私達がネコさんに乗っていくので大きな荷物は先に商業都市に送ったのですが、何かあった時の為に1日分の着替えと食事は準備していきます。それらはアスラさんの後ろに乗る私の後ろに積む事になるので、あまり大きくならないように気を付けました。移動中に天気が変わる恐れもあるので、明日は外套着用でネコさんに乗ります。なのであまり大きな荷物は抱えないように気を付けたのですが・・・。

(・・・アスラさんは「大丈夫ですよ」と言っていましたが、3人分の荷物もネコさんに運んで貰うなんて私には耐えられません。)




「・・・ソールさん、何が入っているのか見せて貰っても良いですか?」

先週確認した時には、ハンカチとネコさんのぬいぐるみが入ったくらいの大きさだったハズなのに、コロコロと転がせそうな程の大きさになったソールさんの鞄は何が入っているのかとても気になります。


「あい。おかしゃん、どぞ。」

ソールさんはとても素直に鞄を私に見せてくれます。




「あいたっ!」

「ぴっ!!」

限界ギリギリでボタンで留められていた鞄の蓋は、本当にギリギリだったのでしょう。私がボタンから鞄の蓋を外そうとしたら、何かのトラップに引っ掛かった時のようにボタンが私のおでこに飛んできました。ソールさんも驚いているので意図的なトラップでは無さそうです。



「おかしゃん、だいじょぶでしか!」

ソールさんは私に抱き付きながらそう言ってくれますが、「痛さ」よりも「驚き」の方が大きかったのでそれ程の痛さはありません。私が「大丈夫ですよ」と言ったらソールさんはホッとしたようにしていました。



ソールさんは私のおでこに飛んできたボタンを捜索中なので、私はソールさんの鞄の中を覗きます。チョット鞄の中が覗けないくらいたくさんの物が詰められていたので、ソッと鞄から中に入っている物を出しますよ。


1番上にネコさんのぬいぐるみが入っていたのですが、ソールさんの鞄からはこの旅行には関係の無い小物類が次から次へと出てきます。



「ソールさん、スゴいですね。」

鞄の中から出てきた物を見て、思わず感心して声に出してしまいました。


「そーる、がんばった!」

ボタンを見つけてきた事に対してなのか鞄に小物を詰めた事に対しての事なのか分かりませんが、ソールさんはボタン片手に「エヘン!」と胸を張って私に言います。その様子はとても可愛らしいのですが、この状態では明日の出発に障りが出てしまいます。



「ソールさん、このままだとおやつを入れる所がありませんよ?おやつは持っていかなくても大丈夫ですか?」

「ぴゃっ!?」

ソールさんは私の言葉に驚いていますが、明日はネコさんの上にいる時間の方が長いのです。ソールさんのおやつはソールさんの鞄に入れようと思ったのですが・・・。



「そーる、おやつほしいでし!」

ソールさんはとても真剣なお顔をしながら両手を挙げています。




おやつの力は絶大ですね!





「では、ソールさん。持って行く物と持って行かない物を選びましょう。」

私のこの言葉にソールさんは「ぴぇっ!」と言いながら私を見ます。



ソールさんの鞄は先週までのポシェットサイズから2サイズ上の鞄になっているので本当にたくさんの小物が入っていました。


「とりあえず、ソールさんが絶対に持って行きたい物はどれですか?手巾以外で。」

「ねこ!」

ソールさんはネコさんのぬいぐるみを小物を広げたテーブルの上からサッと取ります。



「なるほど・・・。それでは、後は置いていきましょう。」

「ぴゃっ!?」

私の言葉に驚いたようにしていますが、テーブルの上に置いている小物類にはそこまでの重要性が見当たりません。もしかしたらソールさんの「宝物」なのかも知れませんが、ネコさんでの移動中に落としてしまったら大変です。


「お・・・おかしゃん。そーる、これももっていくでし・・・。」

恐る恐るといった感じにソールさんは絵本をソッとたぐり寄せます。


「?絵本はネコさんに乗っている時には読めませんよ?」

私がそう言うと、ソールさんは「だめでしか・・・?」と言って私を見ます。なんてあざと可愛いのでしょう。



「そうですねぇ・・・。ソールさんの鞄はボタンが取れてしまったので、絵本はこっちの大きな荷物の方に入れましょう。でも、こちらの荷物はアスラさんが纏めたので他の小物も一緒に入るかアスラさんに聞いてみましょう。」

私の言葉にソールさんは嬉しそうに「あいっ。」って返事をしてくれました。





結局、ソールさんの鞄は先週準備したポシェットになりました。そこに手巾とネコさんのぬいぐるみ、後はおやつが入ったらいっぱいになる大きさですが大丈夫でしょう。


明日の朝食と昼食も準備しないといけないので、今日の夕食は少し大変です。



その後、夕方に帰ってきたアスラさんに絵本以外を却下されていましたが、ソールさんはめげずにアスラさんに交渉していました。アスラさん、頑張って下さい!



ソールさんが明日着ていく服を準備して、私はお義母さんが準備してくれた騎獣用の服を出します。

ネコさんに乗る時に普段着だと動き辛いので、アスラさんに「着ない服があったら譲って下さい。」と言ったら却下されてしまったのです。この騎獣用の服は何だか可愛らしいデザインなので自分の服をアレンジしたりと色々頑張ったのですが、騎士団での練習の時に動き辛かったのでこの服を着ていく事にしました。

この服を着て試しにネコさんに乗ってみたら、着心地もとても良くて動きやすかったのです!さすが騎獣用の服です。それと、アスラさんとソールさんにも褒めて貰えました。さすがお義母さんの選んだ服です。間違いがありません!



「フィーナ、明日の出発ですが、外への外門の開く時間は朝の5刻だそうです。出発はどうしますか?」

アスラさんは足にしがみついているソールさんそのままに私に話し掛けてきます。


「朝の5刻ですか、門が開いてすぐは混みそうですね。1刻ずらして朝の6刻に出ては商業都市の外門が閉じる時間に間に合わなくなってしまいそうですよね・・・。今日は明日の為に早めの就寝をしましょうか?」

ソールさんが気になりますが、明日の準備も大切なので打ち合わせはしっかりしますよ!



「いえ、朝の6刻出発でも充分間に合いますよ。

そうですね、乗り合いの馬車などで開門の時間帯は混んでいますから、出発は1刻ずらしましょうか。」



「通勤ラッシュ」という感じになるのでしょうか?商業都市の開門の時間も外門の前はたくさんのヒトで溢れかえるのです。交通の要である帝都であればそれ以上のヒトが集まるので、帝都に着いた時は本当に驚きましたよ!




私とアスラさんが話をしている最中、ソールさんの熱意に折れたアスラさんは荷物の紐を解いてソールさんの小物を中に入れていました。ソールさんはとても満足そうにニコニコしています。




ご飯を食べてお風呂に入ったら、今日は『おやすみなさい』の時間ですよ!












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ