72 とっくんです!
ネコさんの上からですみませんが、みなさんこんにちは!
今日はアスラさんがお休みなので、ネコさんに乗る特訓ですよ!お家では手狭なので、騎士団の訓練場の片隅で行われています。・・・注目の的だなんて気のせいですよ!
「フィーナ、集中して下さい。」
アスラさんにそんな事を言われていますが、コレばかりはどうしようもありません。
怖い!
ネコさんに設置された鞍に座ってみて思ったのですが、目線が高くなるのでとても怖いのです!
普段はあんなにも可愛らしいネコさんを、こんなにも「怖い」と感じるなんて!
ネコさんの背中には2人乗り様の鞍が付けられています。鐙はアスラさんが座っている前部分にしかありませんし、手綱もアスラさんの分しかありません。
私にもプリーーーズ!
あり得ない事に、後ろの鞍にはチョロッと申し訳程度に掴む所があるだけなのでとても不安定です。
「おかしゃん!がんばれ~~!」
ソールさんから声援を頂いたので頑張りたい気持ちはあるのですが、如何せん色々な所が問題ばかりです。
アスラさんの「一旦休憩にしましょう」の言葉でネコさんから降りましたが、普段使わない筋肉を使ったせいか足がフラフラします。明日はきっと筋肉痛でしょう。
「うぅ・・・。」
「フィーナ、大丈夫ですか?」
少しフラフラしていたらアスラさんが支えてくれました。
「私がネコさんに乗れる時は出来るのでしょうか・・・。」
以前、足をケガしていたヒースさんもネコさんに乗っていたのでとても気楽に考えていたのですが、私には無理なような気がしてきました。ネコさんはモフモフしたり撫でたり寄り掛かったりするくらいが、私の限界なのでしょう。
「大丈夫ですよ、気弱に考えないで下さい。」
アスラさんの励ましが、随分と遠くに聞こえます。
「励んでいるか?」
こちらに向かって、第3師団の師団長であるアーネストさんが声を掛けてくれました。
「師団長!お疲れ様です。」
アスラさんの言葉に私も「こんにちは。」とあいさつをします。
「あぁ、ご苦労。フィーナ嬢もこんにちは。騎獣には乗れそうかな?」
師団長さんはそう言ってネコさんを見ます。
「ネコさんはとても友好的なのですが、私が高さに慣れないので1歩も動いていないのです。」
私の言葉にアーネストさんは「はっはっはっ!そうか!」と言ってネコさんを撫でます。
「フィーナはネコに乗れてはいるので、大丈夫だと思うのですが・・・。」
アスラさんのその言葉に、師団長さんは「そうだなぁ・・・。」と言って何か考えたようにします。
「あまり深く考えずに乗ってみたら良い。」
師団長さんは、そう言って私達から離れた所に居る隊員さん達の居る方に戻ろうとします。
「あっ、師団長さん。ピアンって食べられますか?」
とっさに声を掛けてしまいましたが、師団長さんは特に気にした風も無く私の行動をみています。
「ピアンか・・・。食べられん事もないが「おいしいよ!」・・・そうか。」
ソールさん、師団長さんの言葉を遮ってはいけませんよ?
「ピアンを使ったお菓子なんです。もし良かったら食べて下さい。」
そう言ってお家で切り分けて来た「桃のケーキ」を包んで師団長さんに渡します。
「ほう、珍しい!」
師団長さんは受け取った桃のケーキを物珍しそうに見ています。
「そーるも!」
私にそう言ってソールさんが抱き付いてきます。
「ソール・・・。フィーナ、そろそろ昼食にしますか?」
ソールさんの様子に、アスラさんが訓練場の時計を見てそう言います。
時間はお昼を過ぎた所なので、訓練していた騎士の皆さんもこの訓練場から出て行く所でした。
「そうですね。そうしましょうか。」
そう言って訓練場から離れようとしたのですが、思いも掛けず師団長さんに昼食に誘われました。
「・・・なる程、そういった流れだったのですね。それならば仕方がありませんね。」
そう言って師団長補佐官であるルイスさんがお茶を準備してくれました。
「ルイス殿、すみません。」
アスラさんがそう言っていますが、ルイスさんは「気にしないで下さい。」と言ってソールさんに焼き菓子を渡します。ソールさんはニコニコしてルイスさんに「ありがと!」って言っていますが、まさかルイスさん秘蔵のお菓子だったのでしょうか?ちょっぴり高級品な包み紙ですよ!?
ソールさんの様子にルイスさんは嬉しそうですから、きっとルイスさんは子供好きなんでしょうね。
今日の昼食は「外で食べる」前提だったので、おにぎりとコッペパン風に焼いたパンでホットドッグを作ってきました。おにぎりは我が家ではもはや「定番」ですね。アスラさんもソールさんも、今では普通に食べていますよ。
「・・・何だか旨そうな匂いがする・・・。」
同じお部屋にいて、そうでは無い空間にいる師団長さんの方から声が聞こえました。
「気のせいですよ。」
その言葉をルイスさんがぶった切っていますが、ソールさんの「おいしいの!」の言葉に師団長さんが「そうか・・・。」と返事をしています。
師団長さんは書類の山となった机と向き合っているので、私達の所とは(視覚的に)分断されています。
・・・お仕事も良いんですけれど、ルイスさんと師団長さんは昼食をとらなくて大丈夫なのでしょうか?
もっちもっちとホットドッグを美味しそうに食べていたソールさんは、傍に来たルイスさんにもお弁当を勧めます。進められたルイスさんは戸惑っていましたが、ルイスさんに助けを求められたアスラさんが私を見てきたので、ルイスさんに「どうぞ。」とお弁当を勧めます。
書類の向こうから「ずるいぞ!」って聞こえてきたので、師団長さんも一緒に昼食をとる事になりました。その書類のタワー、凄いですね。終わりますか?
おにぎりとホットドッグを見たお2人の時が止まってしまいましたが、私は何の技も発動させていませんよ?そんなお2人をソールさんは不思議そうに見ています。
アスラさんがお2人に食べ方をレクチャーしていますが、このお2人の反応は3か月前のお2人ですからね?
食後に桃のケーキを皆で食べたのですが、アーネストさんもルイスさんも1口食べて驚いたようにしています。アーネストさんにさっき渡した分は、お仕事用の机の上に置いたままだったそうで「出来れば今日中に食べて欲しい」と伝えました。
食後にまたネコさんに乗る特訓が始まったのですが、アスラさんが先にネコさんに乗ってから私がその後ろに乗ります。一瞬、グラッとして思わずアスラさんに抱き付いてしまいました。急に背中に抱き付かれてアスラさんもビックリしたのか「フィ・・フィーナ、どうしたのですか!?」っと私を振り返ります。
「すみません。ちょっと、グラッとして・・・。」
私の言葉がココで途切れたので、アスラさんは焦ったように「どうしました!?」「大丈夫ですか!?」としきりに聞いてきます。
そんなアスラさんには申し訳ないのですが、私は今、感動しているのです。
なんて素敵な安定感なのでしょう!
アスラさんに後ろから抱き付いていますが、決して意図的に行った訳ではありませんよ。
ただ、そこに「丁度良い」背中があったので抱き付いただけなのです。
心の中でそんな言い訳をしてしまいます。
「アスラさん!大丈夫です。コレで行きましょう!コレなら大丈夫な気がします!」
心配そうに私を見ているアスラさんにそう言ったら、アスラさんは何とも微妙なお顔でネコさんに指示を出します。
その後、そのまま訓練場の中をグルグルと何周か回って、ネコさんに乗る事に慣れてきた所でネコさんに乗る特訓は終了しました。
訓練場から帰る時に、アスラさんは同僚さん達に捕まっていましたが、皆さん仲が良いのですね。
私はアスラさんが戻ってくるまで、ソールさんと一緒にネコさんをモフモフしていました。
お家に帰って夕食後、アスラさんに「私以外と2人乗りする時は、女性騎士とでお願いします。」と言われてしまいました。背中から抱き付かれたらビックリしてしまいますよね。
・・・でも多分、ネコさん以外には乗れる気がしないので、その心配は大丈夫だと思いますよ?
大きな移動の時は、馬車もありますからね!
アスライールの中では騎獣に「横向きで座る」と言ったドレス姿の女性や一般的な女性の騎獣体勢の考慮はありません。フィーネリオンも騎獣に乗るのは初めてで、前世でも「馬」にしか乗った事が無いので騎獣の乗り方に疑問を持っていません。
アスライールが準備した騎獣用の鞍の後ろのヒトが座る場所に着いている持ち手が短いのは、「騎士は」武器を持ったりするので手綱が邪魔にならないように短くしているだけです。平民用はキチンと手綱も鐙も付いています。周りが騎士の為、誰もその事に疑問を持っていません。
騎獣用のドレスもありますが、フィーネリオンには特注で騎獣用の(可愛い)衣装をマゼンタによって送られています。息子夫婦にはもう少し衣服に興味を持って貰いたい。と心密かに思っています。




