61 きんだんの・・・ 1ページ目
突然ですが、私、フィーネリオンは甘い物が大好きです。
そのまま食べても美味しい果物やカスタードがたっぷりと使われたタルトやパイ、とろける様なプリンやこちらではとても珍しいショコラが大好きです。
・・・ですが、何よりも大好きなのは、生クリームがたくさん使われている生菓子なのです。
ピンポイントで行くならば「生クリーム」そのものが大好きなのです!
実家に居た時は家族に隠れて1人で「生クリームパーティー」を開いていたくらい大好きなのです。
「発注を間違ってしまって、生クリームを大量に仕入れてしまったの・・・。
大きな値引きは出来ないのだけど、誰か知り合いに買ってくれる様な人はいないかしら・・・?」
いつも紅茶の茶葉を買っているお店のお姉さんがお会計の時にそう言っておつりを渡して来ました。
「ほら、今の季節だとクリームは傷むのが早いでしょう?返品も受け付けて貰えなかったから、何とか捌かないといけないのだけれど、生クリームなんてそんなにたくさん使わないでしょう?だから困っちゃって。」
お姉さんはそう言って私を見ますが・・・。
・・・そうなのです。生クリームは嗜好品の中では結構いいお値段なので、一般的には少しだけの量を紅茶に入れて飲むのが贅沢となっています。
その生クリームをたっぷり使えるのが貴族さまで、ヴァレンタ家で振舞われるお菓子を食べている時が私史上最高の至福の時となっています。
生クリームを「おはようからおやすみ」まで口に出来ると知った時に、初めて「貴族の身分っていいものだったのですね!」と思ったのは記憶に新しい事です。
ヴァレンタ家に遊びに行った時にアスラさんが生菓子系を優先的に私の所に持って来てくれているので、私の生クリーム愛がアスラさんにはバレバレなのでしょう。
そして、常に生菓子が準備されているという事は、義両親にもバレバレという事ですよね・・・。
「おかしゃん?だいじょぶでしか?」
ソールさんが心配そうに私を見上げます。
お買い物から帰って来た私は、目の前に置いた真っ白な生クリームを見て自分に良い訳をしていましたが、後悔なんてしていません!ですが、今日の手持ちで買えるだけ買って来たので、持って帰ってくるのが結構大変でした。お財布も大分軽くなってしましましたし・・・。
騎士であるアスラさんの収入はとても素晴らしいのでコレくらいのお買い物では家計に響かないのですが、そちらの収入とソールさん手当(帝国支給)があるのでついつい余計な物を買ってしまいがちです。
・・・アスラさんごめんなさい・・・。
とりあえず、今日の夜ご飯を作って冷蔵庫にこの生クリームを入れるスペースを作らないといけませんね!
冷蔵庫を開けて中に入っている物をチェックしていきましょう!
アスラさんがお休みの時に一緒にお買い物に行くので重いお肉なんかはその時に纏めて買ってくるようにしています。私の胸くらいの高さの冷蔵庫ですが、上部に氷を入れてその下に冷蔵保存する食品を入れる仕組みになっています。我が家の冷蔵庫の中に入っている食料品の半分は、みんな大好きお肉です。残りのスペースに傷みやすいお野菜や作り置きのおかず類が入っています。この状態では私の生クリームを入れるスペースはありません。
特に重要性の少ない物を夕食に使ってしまえば入る場所が出来ると思うのですが・・・。
・・・1度冷蔵庫の扉を閉めて考えましょう。
「おかしゃん。おわりましたか?」
私が冷蔵庫の前で考え込んでしまってので、ソールさんに心配をかけてしまったようです。
「ソールさん、今日の夕食は何が食べたいですか?」
決して丸投げではありませんよ?心配を掛けたみたいなので、そのお礼を兼ねて聞いてみたのですよ?
「!そーるね、そーるね!『はんばーぐ』がいいでし!」
両手を挙げてピョンピョンと飛び跳ねながらソールさんのリクエストです。その様子がとても可愛らしいので、少し奮発して大きめに作りましょう。・・・お肉消費の目的もありますけどね!
ハンバーグに使うお肉をミンチにする道具を出して、ハンバーグを作る為の挽肉を準備します。
挽肉が準備できたら、刻んだタマネギを炒めていきます。
タマネギがしんなりとしてきたら挽肉と軽く混ぜあわせます。いつもでしたら私はココでパン粉とミルクを入れて味を調えるのですが、今日は冷蔵庫の中に残っていたご飯を代わりに使います。
ソールさんは驚いたように私の作業を見ていますが、夕食用にご飯を炊くので心配しなくても大丈夫ですよ?
後は良く混ぜ合わせて形を整えます。
ご飯を炊いたら直ぐに夕食にする事が出来るのですが、まだ時間的には早いのでちょっとしたデザートを作ってみようと思います。
準備する物は、ミルクと生クリーム、卵とお砂糖とバニラエッセンス代わりのニニガのスティックです。
・・・そう、私が作ろうとしているのは、暑い時こそ食べたくなる「アイスクリーム」ですよ!
卵を卵黄と白身に分けて砂糖と混ぜます。砂糖がきれいに溶けるように湯煎で混ぜても良いのですが、私は火の魔法を使えるのでボウルに熱を加えながら混ぜていきます。・・・魔法って使い方1つで生活が豊かになりますね!
砂糖が溶けて底がザラザラしなくなったらミルクを加えていきます。ココで注意なのは、ここから先は「氷で冷やしながら」作業する事でしょうか?
・・・皆さん安心して下さい!我が家にはアスラさんという「氷」属性の魔法を使える素敵な方が、いらっしゃるのです。毎日お水を入れている水瓶にたくさんの氷を作ってくれているので、今年は氷に困る事がありません!
少し大きめのお鍋に氷とお水を入れて、その上に材料の入ったボウルを乗せて冷やしていきますよ!
ほどよく冷えてきたらニニガを入れて生クリームを入れます。後はひたすら混ぜてアイスクリームの種が完成です!
お家の中は甘い匂いがしているのでしょう、ソールさんは楽しそうにテーブルから身を乗り出して私の作業を見ています。
少し大きめのボウルに氷を入れます。お水はボウルの3分の1位までにしてお塩を投入します。
ソールさんは何が起きるのかワクワクしたように私の行動を見ています。
ココで氷をかき混ぜるのですが、このまま手を入れるのはキケンなのでトングを使って氷を混ぜていきますよ。
アイスクリームの種を密閉容器に入れて氷の中に投入した所でソールさん大興奮!
「そーるも!」「そーるも!」と容器を氷の中で回すのをやりたがったのでバトンタッチです。
ソールさんは楽しそうにトングを使って「くるくる~」って言いながら密閉容器を回しています。
アイスクリームが出来上がるまでにはまだまだ時間が掛かるので、まだまだ残っている生クリームを密閉容器に移して冷蔵庫に入れます。少し強引に入れて閉めたたので、冷蔵庫の扉に「飛び出し注意!」とメモ用紙に書いて貼り付けます。「これで良し!」とソールさんの所に戻ります。
その後暫くの間ソールさんがクルクルと密閉容器を回していたのですが、ソールさんが飽きてきた頃に確認したら丁度良いくらいの固さに固まっていました。
準備していた器に取り出したら、それは見事なアイスクリームの完成です!
考えてみたら、使っている材料と出来上がりまでの工程を考えると、アイスクリームはこの世界では「超高級品」扱いになるのでしょうね・・・。
「ちゅめたい!」
受け取った容器が冷えていたのでしょう。ソールさんはそう言ってアイスクリームをスプーンで掬って食べます。
「!!おかしゃん!おいしいでし!」
1口食べて大興奮のソールさんはそう言って私を見ます。
「良かったです!また今度作りましょうね。」
そう言って私も1口食べてみますが、間違いなくアイスクリームです。
前世で食べたような味では無いのですが、手作りだからこその味と言えます。
初めて口にしたであろうアイスクリームを「おいしい」「おいしい」と言いながら食べていたソールさんは、密閉容器の中に残っているであろうアイスクリームを狙っていましたが、それほどたくさん作った訳ではないので残っていない事を確認して残念そうにしています。
そうしてハッとした様に「たいへんでし!」と言って来ました。
「おとしゃんのぶんがないでし!」
ソールさんは、まるで「世界の終わり」を知ってしまったかのように言っていますが、こちらの世界の冷凍技術はヒヨコさんなので、この時間(夜の6刻)からアスラさんの帰ってくる夜の11刻までアイスクリームが凍った状態は維持できません。
・・・いえ、アスラさんがこの場に居るのであれば凍ったままの状態を維持できるのでしょうが、今の状態では無理です。
「ソールさん、アスラさんが帰ってくるまでには融けてしまいますから大丈夫ですよ?」
「おとしゃんがたべていないでしよ?」
私の言葉にソールさんはビックリしています。
・・・もしや、この状態はお父さん大好きっ子のソールさんからしたら大事件なのでしょうか。
切なそうにアイスクリームの入っていた密閉容器を持っているソールさんに心が痛みます・・・。
・・・ですが、その中に入っていたアイスクリームを半分以上食べたのはソールさんですよ?
「それならば、明日アスラさんがいる時にもう1度作ってみんなで食べましょうか?」
「!あいっ!」
私の言葉にソールさんは元気なお返事をくれました。
・・・アスラさんが居るのであれば、たくさん作れそうですね。
夕食はソールさんリクエストのハンバーグでしたが、深夜に帰って来たアスラさんもシッカリと食べています。お2人のお腹がどうなっているのか、やっぱり気になります!
次の日にアスライールと一緒に作ったアイスクリームはソールがたくさん食べていたけれど、アスライールは戦闘以外に自分の魔法がフィーネリオンの役に立っているので心密かに感動していました。
フィーネリオンの作ったアイスクリームはヴァレンタ家でも好評でした。
レシピを高額で買い取って貰えたのでフィーネリオンも「作って良かった!」と思っていたとかいないとか・・・。




