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60 だれもしらないおはなし


残酷な表現があります。










奇蹟が起きた時には、2つの月に感謝の祈りを捧げるように。







むかしむかし、ずっと昔のお話です。


小さな妖精達と暮らしていた女神さまは、自身が育てていた木に不思議な扉がある事に気が付きました。

女神さまはその扉が気になったのですが、それは木の洞の中にあるので女神さまは入る事が出来ません。



それで、小さな木が大きくなるのを待つ事にしたのです。



たくさんなのか少しなのか分からないけれど時が過ぎて、小さかった木は大きくなって女神さまよりも大きくなりました。




・・・だけど、女神さまが覗き込んだ木の洞は小さいまま。扉を開く事は出来ません。



女神さまは気を落とします。



そんな時、女神さまの傍に小さな妖精が飛んできて「ボクが扉の先を見てくるよ!」と言います。



女神さまは迷いました。



小さな妖精ならば扉をくぐる事が出来ます。だけど、小さな扉のその先に何があるのか女神さまにも分からないのです。



それでも扉の先が気になった女神さまは、迷った末に小さな妖精に石を渡します。

それは、ただの石ではありません。何かあったら女神さまに繋がる石です。



小さな妖精は扉を開けて驚きます。



扉の先は真っ暗で何も見えません。



女神さまは自身の力で扉の先に光をそそぎます。



小さな妖精は「行ってきます!」と元気に扉の先に飛び立ちます。

女神さまと小さな妖精達は「気を付けて。」と小さな妖精を見送りました。






扉をくぐった小さな妖精は明るく照らされた扉の先で見る物に驚きます。



どこまでも続く大地は褪せていて緑の祝福は見当たらず、大地を走る水の通りは黒く濁り、何者も寄せ付けない異臭を放っていました。



小さな妖精は女神さまと過ごす世界が恋しくなり、女神さまから渡された石を使って女神さまの元に帰ります。





無事に帰った小さな妖精に女神さまは安堵しました。


女神さまが小さな妖精達と過ごしている所は緑が溢れ、水は清らかです。

扉の先の危険な場所は女神さま達には必要ありませんでした。小さな妖精の話を聞いた女神さまは、木の洞の扉を閉じました。




その日の夜、女神さま達が眠りについた真夜中に恐ろしい事が起きました。



女神さまが育てていた木から恐ろしい獣が現れたのです。


獣は女神さまが育てていた木をなぎ倒し、花を蹴散らしてしまいました。

小さな妖精達もたくさんケガをしました。



女神さまは悲しみます。





「世界が眩しくなったせいで、多くの生き物が動けなくなってしまった!私の住んでいた世界は死に絶えようとしている!」

と獣は言って女神さまに怒りをぶつけます。



女神さまは獣の言葉に驚きます。

確かに女神さまは扉の先の暗闇に光を与えました。



「誰もが焼かれ、大地の木々も草花も焼けてしまった!水も濁り何者をも癒やさなくなってしまった!これらをどうしてくれる!」

獣の言葉に小さな妖精も驚きます。



獣の言葉が正しければ、暗闇の世界は緑溢れる大地と全てを潤す水があったことになるから・・・。



「そなたの放った明かりは我らには強過ぎたのだ!」

獣と思っていたモノはヒトの姿をした男だった。



「そなたらにとっては好奇心だったのかも知れないが、私の国は一瞬で死に絶えた!我らが何をしたというのだ!

我らはただ静かな夜を過ごしていただけだろう!」

男は1国の王だった。王自身は「城」という堅剛な場所の1番護りの堅い場所にいたので無事だったのだ。

だから、自身の国の変化に気づいた時には全てが遅かった。



小さな妖精が扉を開けた時、それは男の世界では夜の時間だった。

国民は眠りにつき、日々の疲れを癒やしていた時間だった。



王と呼ばれていた男が違和感を感じた時には、既に国と呼べる所は無く守るべき者達が死に絶えていた。



男は、夜が明けたら幸せな結婚をするはずだったのだ。夜にそそがれた強い光は男の国を焼き、愛しい婚約者をも焼いてしまった。あるのは、お城と焼けた大地のみ。


国に残ったのは、男だけ。



男は怒った。


強く怒った。



だから男は、空を飛ぶ羽虫が突然現れた大きな月に帰るのを見て、その月が隠れようとする寸前に飛び込んだのだ。



飛び込んだ先で強い光に男は目を焼かれたが、その場所がかつての自身の国のように緑豊かな事は分かった。





・・・私の国が失ったモノで溢れているこの場所が憎い!





男は持っていた剣と自身の魔法で辺りを焼き払いました。




そして出会ったのです。


全ての根源である「女神」と「妖精」に




何も映さないはずの瞳でその姿をハッキリと捉えます。


そして男は声を張り上げて叫んだ!



男の言葉に「女神」は驚いたようにしていましたが、男はその思いを言葉にしてぶつけます。




女神さまは涙を流して男に謝罪しました。



妖精達も女神さまに続いて謝罪します。




それでも男の怒りは収まりません。


それでも、強い光に耐えられなかった男はそのまま死んでしまいました。








この出来事は天に住む者の間を駆け巡り、女神さまは父なる王神によって裁かれました。


男の住んでいた国は、女神さまのその姉姫によって癒やされて再生します。



姉姫様はこの世界の「女神さま」となり大きな月のレティスに宮殿を構えてヒトを見守ります。


妹姫の好奇心によって「憎しみ」を抱いた男は、その死後に怒りで獣の姿に変わりました。

その後、獣の姿になった男は姉姫によって小さな月のテティスに連れられたのですが、獣となった男は男の愛した国を癒やしてくれた姉姫にその怒りを向けないように眠りにつきます。

そうやって、眠る事で怒りを抑える男の心から「幻獣」が生まれているのです。それは長い時間を経た今でも変わる事が無いそうで、男の心によって様々な姿の幻獣が生まれていきます。



大きな月のレティスと小さな月のテティスが同じ空に並ぶ時には不思議な事が起きるそうです。




ヒトは妖精にはなり得ないので、天に続く道を渡るのは余程の覚悟を持たないといけません。

ヒトは簡単に獣になる事が出来ます。なので、心と言葉を信じるようにしないといけません。



ヒトはヒトです。それを忘れてはいけません。



男が獣となったのは「心」に「強い」憎しみが宿ったからです。

獣となった男がヒトに戻れるのかは女神さまにも分かりません。



女神さまは月の宮殿からヒトが穏やかに生活できるように見守っています。

幻獣の主は自身の国の子孫を今でも大切に思っています。



いつでも空に浮かぶ2つの月は地上を見守っています。










・・・・いったい、どなたへのお手紙だったのでしょう?


このお手紙は、アスラさんがお昼過ぎの出勤だったのでソールさんと一緒に見送った時に、門の横に挟まれていたのです。

放置されていた期間が長かったのか、少しヨレヨレになっていましたが宛先が無かったので開くのを躊躇っていましたが、少し目を離した隙にソールさんが封筒を開いてしまいました。


開いてしまった物は仕方がありませんし、どなた宛ての物なのか書いてあるかも知れないので読んでみたのですが、ソールさんは「おとしゃん!」と言っているのでアスラさん宛なのでしょう。・・・決して、考えるのが面倒だからとアスラさんに丸投げした訳ではありませんよ!内容が内容なので本当にアスラさん宛なのかは分かりませんが、アスラさんが帰ってきたらお渡ししましょう。




・・・それにしても、お手紙の中には書かれていなかったのですが、結局、妹姫と呼ばれた前女神さまはどうなったのでしょうか?一緒にいた妖精さん達の事も分かりません。



そんな事を思っていたのですが似たようなお話はたくさんあります。



手紙を開けてしまったので、アスラさんには後で謝らないといけませんね・・・。




・・・取り敢えず、ソールさんとはお話をしないといけませんね!



差出人の書いていないお手紙を開けてはダメですよ?














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