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59 わくわくの、のその後で!








「アスラさん!いつもありがとうございます!ソールさんも、お手伝いありがとうございます。」

お家に付いてから一息ついた夕食後に選んだプレゼントをアスラさんとソールさんに渡します。

私がアスラさんに選んだのは「懐中時計」です。


商品棚でそれを見つけた時に「コレです!」と思ったのですが、値段で踏ん切りが付かなくていろいろ見て回ったのですが、やっぱり懐中時計に戻ってしまいました。

アスラさんに預かっていたお金では無くて、自分が貯めていたお金でギリ支払えるくらいだったのですが、思いもよらないお会計だったので私のヘソクリに変化なしです。・・・むしろ、プラスになりました!むふふ~。



「ソールさんにも。」

そう言ってソールさんにはノートとパステルを併せた「お絵かきセット」を渡します。

文字はまだ早いのですが、何もノートに書くのは文字だけではありません。パステルとノートでお絵かき用に使っても良いのですよ!・・・私はそう思います!

まっ白な紙は気安く使えませんが、ソコまで「白い紙」である事を気にしなければ安価なノートはたくさんあります。

たくさん書いて楽しんで貰えれば良いのですよ。


結局アスラさんとソールさんには別の贈り物となりましたが、アスラさんにシンプルな物は渡せても安価な物は渡せません。逆にソールさんにも高価な物を渡しても良いのですが、使って貰えなかったら意味がありませんからね。



「フィーナ、ありがとうございます。」

「おかしゃん!ありがと!」

お2人に喜んで貰えて良かったです。

私が把握している限りアスラさんは懐中時計を2つ持っています。

その2つはとても綺麗な装飾がしてあるので普段使いには向いていなさそうですし、どちらかと言えば「社交界」向けの様な気がしたので普段も使えそうな形の物を選んでみました。(それでもすっごく高かった!)


ソールさんも私が刺繍している時に興味を持ったのか刺繍の絵柄を良く見ています。ソールさんはもしかしたら芸術家の気質があるのかもしれません。

今も楽しそうに何か良く分からない物をグリグリと書いているので将来が楽しみです!




「フィーナ、私からも贈り物をさせて下さい。」

アスラさんの言葉にハッとしたソールさんが「そーるも!」と言ってお絵描きの手を止めます。


「えっ!えっ!?」

突然の事に驚きましたが、アスラさんとソールさんから綺麗に包まれているプレゼントを手渡されます。



「喜んで貰えれば良いのですが・・・。」

アスラさんとソールさんからプレゼントを頂けると思わなかったので、とても驚きました。


「おかしゃん!あけてみて!そーるえらんだの!」

ソールさんは座っている私のお腹に抱きつきながら私にそう言います。



「うわぁ!ありがとうございます!」

ソールさんが期待に満ちた目で私を見てきますが、同じくらいアスラさんも私を見ています。

頂いたプレゼントを開けるのは、とてもワクワクします。


アスラさんとソールさん、お2人から頂いたプレゼントはソールさんからは「多音機」と言って魔力を注ぐと自由に音色を奏でられる楽器で、オルゴールの様な感じの物です。アスラさんからはバレッタとリボンのセットでした。


ソールさんからの贈り物はとても珍しい物ですが、金額でいったらアスラさんからのプレゼントの方が高級品です。お2人からのプレゼントが私が贈った物より高級品だったので驚きましたが、お2人が少しソワソワしたように様子を窺っているのが可愛らしすぎて思わず笑ってしまいました。



「アスラさんも、ソールさんも素敵な贈り物をありがとうございます。」

アスラさんとソールさん、お2人にお礼を伝えます。


帝国の貴族の皆さんはある程度髪の毛を長くしているみたいですが、平民では髪の手入れにお金と時間を掛ける男のヒトは少ないので、平民で長髪の男のヒトは少数派です。女の人の髪の長さにも決まりはありませんが、肩より短くするヒトは少ないです。ですが、結婚が決まると髪を伸ばす女のヒトが多いのも結婚衣装映えするからなのでしょう。私は小さい時から(お父さんの意向で)髪を長くしていたので、記憶の中でも短くした事はありません。

今、髪を縛っているリボンを解いて、アスラさんから頂いたリボンで髪を縛り直します。鏡が無いので出来上がりに自信はありませんが「どうでしょう?」と聞いてみたら、ソールさんから「おかしゃん!にあうでし!かわいいでし!」とぴょっこりと起き上がってパチパチと拍手を頂きました。

アスラさんからも「とてもよく似合っています」と言って貰えたので、嬉しくなりました。

ソールさんが「そーるも!そーるも!」と言ってきたので、私が使っていたリボンで頭のてっぺんにリボンを結んだらとても可愛らしいソールさんの出来上がりです。ソールさんはとても嬉しそうに「おとしゃんも!」と言います。



・・・アスラさんも・・・・?



ソールさんは銀色の髪の毛ですが、フワフワとした柔らかい髪の毛です。隣に座っているアスラさんを見ると、普段は後ろに1つに纏めて括られているので忘れがちですが、それは見事な銀色の髪の毛です。

私の視線に気づいたアスラさんは困惑気味に「どうしました?」と言っていますが、折角のリクエストです。今やらないでいつやるのですか?・・・今でしょう!


私はソールさんに視線を戻して「少し待って下さいね?」と言って、小物入れの所にある櫛を片手にアスラさんの後ろに回ります。


「フィーナ、私は大丈夫ですよ?」

アスラさんは慌てたようにそう言って後ろを振り返ろうとしますが、私は櫛を片手に鼻歌を歌いながら「動かないで下さいね!」とアスラさんに言って前を見ていて貰います。







こんな風に「誰か」の髪を触るのはとても久し振りだったのと、今日の私は絶好調だったのでしょう。

私が行ったのは前世で言う所の「みつあみ」のアレンジです。


完成してアスラさんの前に立ちます。



何て言う事でしょう!目の前にはクールビューティーなアスラさんがいます。



「お義母さんに連絡を!「しないで下さい!」

お義母さんに連絡をしようとしたのですが、アスラさんに腕を掴まれて止められてしまいました・・・。



通信用の魔石が腕輪に付いているので「腕輪を掴まれてしまうと連絡が出来ない」と思いがちですが、そんな事はありません。魔石に魔力を通せれば良いのです。



アスラさんが必死に通信を阻止しようとしているのでお義母さんへの連絡は止めますが・・・。



アスラさん、産まれてくる性別を間違えた訳ではありませんよね?お化粧とかしたら女のヒトと間違えられてしまうのでは?なんて思ってしまいます。・・・やっぱり、身長で引っ掛かりますか?



「おとしゃん・・・?」

ソールさんが困惑気味にアスラさんに声を掛けます。


「ほら、ソールが困惑して「おとしゃんしゅごい!」

ソールさんはパチパチと両手をたたいて喜んでいます。アスラさんの言葉を遮ったソールさんの言葉とその様子にアスラさんが固まります。


「アスラさん、ソールさんが大絶賛ですよ?ぜひお義母さんに見て頂きましょう?」

続いた私の言葉にアスラさんは力無く「止めて下さい・・・。」と言って私を隣に座るように促します。



ソールさんはアスラさんの膝に手を付いて、アスラさんをキラキラした瞳で見上げます。



「フィーナ、どうも落ち着かないので髪を戻しても良いでしょうか?」

アスラさんはソールさんの視線が耐えられないのかそう言って来ます。


「そうですね。時間も時間ですし、解きますね。・・・・・残念ですが・・・。」

アスラさんの髪の毛にリボンを編み込んでいるので慣れていないと解くのは大変ですよね。

また今度、こんな風に髪の毛を触れる日が来るのかは分かりませんが、今日はお休みの時間が迫っているので解きましょう。



私がアスラさんの髪の毛を解いていると、ふとソールさんと視線が合います。

ナゼか、ソールさんは首をフリフリと横に振りながら「そーるはだいじょぶよ?」と言います。

私は「?」と言われた意味が分からなかったのですが、アスラさんが「フィーナのリボンだから返さないと」と言ってその手を伸ばします。


「やーーーーー!」

ソールさんがその手をかわしてテーブルの反対側に行きます。


「ソール!」

「アスラさん、リボンはたくさんありますから大丈夫ですよ。」

アスラさんは私に髪の毛を解いて貰っているので動けません。

ソールさんはテーブルの反対側からこちらを伺っていますが、そこまでリボンを気に入って貰えたのであれば持っていて貰っても良いと思うのです。


「ソールさんが大きくなって、髪の毛を結べるようになったらそのリボンを使って貰いましょう!ね?

ソールさん今日はもう遅い時間ですし、アスラさんもこうやってリボンを解いているでしょう?お風呂に入る時にリボンを付けていたら髪の毛を洗う時にリボンが濡れてしまいますよ?」

私のその言葉にアスラさんとソールさんが私を見ます。


ソールさんは私の言葉を聞いて、それからアスラさんを見ます。そうして「おかしゃんにとってもらいましゅ。」とソファーの後ろを回って私の傍に来たので、アスラさんの髪の毛を櫛で梳かしていた手を止めてソールさんのリボンを解きます。





ソールさんが大きくなったら「かわいい」系の男のヒトに成長するのでしょうか?

アスラさんに似たイケメンさんに成長するのかは分かりませんが、間違っても「男の娘ver.精霊さま」(前世談)にならないように気を付けようと私は決心するのです。



・・・ですが、小さい時は「かわいい」でも良いと思います。だって、「かわいい」は正義ですからね!

そんな事を思いながら、アスラさんとソールさんがお風呂に行くのを見送ります。













その後、フィーナはリボンの存在をマルッと忘れます。



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