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58 わくわくの・・・ 5ページ目








帝都での食事マナーは少々「厳しめ」です。

ですが、それは「畏まった席」での事となり、平時の時であれば貴族も平民も同じで「無礼講」とまでは行きませんが、よほどの事が無ければある程度スルーされます。





お店に入るまではグッスリと眠っていたソールさんは、先ほど空腹と食べ物の匂いで目を覚ましました。



私達を席に案内してくれた店員さんは最後までアスラさんのお顔を見ていました。

それと同じくらい驚いた事は、カウンターからこちらを見ている店員さんの数の多さに驚きです。




・・・アスラさん、一気にパンダさんですよ!




皆さん、お仕事は大丈夫なのでしょうか?

店員の方と目が合ったので会釈しましたが、アスラさんに呼ばれたので急いで後を付いて行きます。




・・・アスラさん、お顔がとても良いですからね。




だから店員さん、私を睨まないで下さい・・・。さっきまでの笑顔が何処かに旅立ってしまいましたよ。




私達が案内された席は窓際の1番奥の席でした。


奥側に私が座り、反対側にアスラさんとソールさんが座ります。

覗き込むメニューにアスラさんとソールさんと私、3人であれこれ悩みましたが、私はアスラさんとソールさんのお腹を信じていますよ!



注文を取りに来た店員さんは、さっきの女の店員さんでは無く落ち着いた感じの店員さんでした。


最初はアスラさんをガン見していたのですが、アスラさんからのお口から呪文のように紡がれるメニューの品数に最後の方は笑顔が引き攣っていました。・・・1品くらい少なくても気付きませんから!大丈夫ですよ!



・・・考えてみたら、我が家のエンゲル係数ってとても高い気がします。



目の前に座っているお2人からは全くと言って良いほど「大食い」の気配はありません。

私の視線に気付いたアスラさんが「?」と言った感じで私を見ていますが、そのお隣に座ってニコニコしているソールさんの食欲も凄いので、頼んだ品数で問題は無いのでしょう。


・・・あれ?食事の「普通」の量ってどれくらいなのでしょう?

アスラさんとソールさんの毎日の食事は足りているのでしょうか?何だか不安になってきしたよ・・・。



暫くして注文した料理が運ばれてきたのですが、どうやら私は即戦力になれそうにありません。私は私の前に運ばれてきたプレートを食べきる事が出来たら参戦しますね!



テーブルいっぱいに並べられたお皿に周りのお客さんも驚いています。



「さぁ、食べましょう!」

目の前の状況から逃避したい訳では無いのですが、食事を始めないと料理が冷めてしまいます。

せっかく出来たての料理なのですから暖かい内に食べるのが1番ですよね!


「えぇ、そうですね。」

「あいっ!」

お2人が「食事」と言う戦闘態勢に入ったので、私は特等席で応援しますよ。




私が選んだ料理はお魚をカリッと素揚げした料理で、揚げ物なのにサッパリとした味付けでした。

一口食べてそのカリカリ感に驚きましたが、その後に来る甘塩っぱい味付けは今の時期にピッタリな1品です。美味しくてドンドン食が進みます。


アスラさんとソールさんがお肉を焼いたお皿から手を伸ばします。

中央にパンが置いてあるので、ソールさんの分はあらかじめ別にしてあります。


スープは野菜が柔らかく煮込まれていて、ベーコンが良いアクセントになっています。



流石としか言えないのはアスラさんの食事作法です。

お肉をナイフで切る時も、スープを飲む時もほとんど音がしません。


その食事に対する姿勢だけで育ちが分かります。



「おかしゃん、あいっ!」

「?ありがとうございます・・・?」

私がアスラさんの食事している姿を感心しながら眺めていたら、ソールさんが私にパンを渡してきます。


私がパンを受け取った事に満足したソールさんは、ニコニコしながら食事を再開しています。

ソールさんはもっきゅもっきゅとお口いっぱいに頬張っているのですが、そのお顔は「幸せ」を物語っています。



「フィーナ。どうかしましたか?」

私の食事の手が止まった事に気付いたアスラさんが聞いてきます。


「いえ、ソールさんの幸せそうなお顔を見ていたのです。」

「むぅ?」

私の答えにソールさんは私を見ます。ソールさん、お口の中に詰め込み過ぎですよ?


「ふふふっ。美味しそうに食事をしている姿は見ていて気分が良いですね。」

ソールさんの様子に思わず笑ってしまいます。私の方からはソールさんが遠いのでお口を拭いてあげる事が出来ませんが、ソールさんの様子に気付いたアスラさんがソールさんのお口を拭いています。



ソールさんの食事作法は(料理をお口に詰め込み過ぎなければ)小さい子の中では素晴らしい方でしょう。




私もサイドメニューに少しだけ手を伸ばしていましたが、料理を全部食べきるのはやっぱり時間が掛かりました。それでもテーブルの上の料理は確実にアスラさんとソールさんのお腹に入って行ったので、何だか見ているだけで私もお腹いっぱいにの気分になりそうでした。料理の乗っていないお皿から店員さんが片付けてくれていたので、確実にテーブルはスッキリとして行きました。

私は自分が頼んだ料理と少しだけ手を伸ばしたサイドメニューで「戦力外」となったので、お2人の食事を眺めながら食後の紅茶を頂いていましたが、その間にアスラさんとソールさんが料理を勧めてきます。私のお腹に余裕はありませんでしたから断らせて頂きましたが、アスラさんとソールさんのそのお腹がどうなっているのか気になります。



・・・食べても太らない秘訣があるのでしょうか?



そんな事を思いながら食後の紅茶を飲んで一息付いているアスラさんを見ます。

私の視線に気づいたアスラさんが「どうしました?」と聞いてきましたが、「太らない秘訣」について考えていた何ていえません。


「えぇっと・・?この後はどうしますか?」

「そうですね・・・。この辺りを少し見てから帰りますか?」

私の口からは無難な言葉が出てきましたが、アスラさんは気にした風でも無く答えてくれます。





紅茶を飲んでまったりしていたら、ソールさんが眠たそうに目を擦り始めたのでお店から出ました。

お会計の時の金額を聞いて思わず自分の耳を疑ってしまいましたが、良く良く考えてみたらそうですよね。あの量ですもの、それくらいの金額ですよね。


私がソールさんと手を繋いでいるので、アスラさんがお会計をしています。



「そーる、おなかいっぱい。・・・ねむいの。」

私と手を繋いでいるソールさんは、そう言ってお会計を終えたアスラさんに反対の手を伸ばします。



ソールさんはアスラさんに抱き抱えられて安心したのか、アスラさんのジャケットの飾り紐がとても良い位置にあるのでそれをニギニギしながら眠っています。





お店から出て南地区をぐるっと見て回っていたら、目の前に「獣魔商店」(ペットショップ)が見えます。




「寄って行きますか?」

アスラさんは憶えていてくれたのですね!私のチムリスちゃんの事を!



日が延びているので空はまだ明るいです。確認してみたら、今の時間は夕方の5刻になる所でした。





「少しだけ!少しだけ覗いてみても良いですか?」

ちょっぴり興奮気味になってしまいましたが、アスラさんは「どうぞ。」と優しく言ってくれました。



まってて!チムリスちゃん!










「チムリスは人気があって、今は入荷待ちなんです。申し訳ありません。」

店員さんは無情な一言が私に突き刺さります。


帝都では獣魔を買う時に飼い主と契約させているので、前世の時の様に動物が捨てられる事は殆どありません。もし、獣魔に対してそう言った扱いをすると、罰金刑と獣魔ギルドより商店への「立ち入り禁止」が行われるそうです。


なので、獣魔はブリーダーさんによって愛情たっぷりに育てられてから、ギルドの審査を受けて商店の店頭に出てくるみたいです。今、お店の中にはたくさんの獣魔さんがいますが、私の目的のチムリスちゃんは残念な事にお店には居ないようです。


申し訳なさそうにしてくる店員さんに「また来ますね。」と言ってアスラさんとソールさんの居る「触れ合いコーナー」に向かいます。



「あっ!おかしゃーーん!」

ソールさんはキャッキャと楽しそうに獣魔に囲まれています。

ソールさんの傍に居たアスラさんが私に気付きます。そして、私が手ぶらで戻った事に気付いてか首を傾げています。



「お待たせしました。」

「チムリスはどうしたのですか?」

私に隣の席を勧めてアスラさんが聞いてきます。


「どうやら、今はチムリスちゃんの時期では無いそうです。」

私の言った事にアスラさんは納得したようです。さすがアスラさん!

そう。チムリスちゃんは1月から2月の中旬くらいまでがベビーラッシュで、その後、暑くなって来るとぱったりと赤ちゃんが生まれなくなるみたいなのです。



「おかしゃん!そーるね、たのしい!」

もっふもふの猫や前世では見た事の無い「オープス」と言うまん丸な毛玉に囲まれたソールさんは満面の笑みを浮かべています。そんなソールさんを見て荒みかけていた私の心が癒されていきます。


・・・ソールさんがちょっと暑苦しいと思ってしまったのは私だけでは無いはずです。チラリと私の隣に座っているアスラさんを見ると、同じように私を見ていました。・・・同志よ!




その後、獣魔さんに大人気だったソールさんは、帰ろうとする度に獣魔さんに引き止められると言うお店始まって以来の珍事が起きたので、店長さんから「また来てね!」と熱い抱擁を受けていましたが、ソールさんは恥ずかしかったのかアスラさんにしがみ付いてしまいました。




獣魔さん達にはソールさんが『精霊さま』だって言う事が分かったのかな?なんてアスラさんとお話しましたが、私はソールさんが可愛らしかったからじゃないかと思います。




ソールさんは余程、店長さんの暑い抱擁が衝撃的だったのか、お家に着いて出迎えてくれたネコさんにふらふらと近付いてその体に埋もれながら「もふもふ、もふもふ・・・。」と言って癒されていた事にアスラさんと一緒に笑ってしまいました。














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