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4 はじまりの4ページ目







みなさん、こんにちは。お母さんの『奇跡のトス』のお陰で、お父さんの精神攻撃から離れる事が出来たフィーネリオンです。





小応接間から出て店舗ブースまで降りてきたら、お店の中は良く分からない人だかりが出来ていました。



えっ?何か事件ですか?


それなら、兵士さんを呼ばないと!って言うか、この店舗で事件とか勘弁して欲しいのですが・・・。




そんな事を考えていたら、お兄ちゃんに声をかけられました。



「フィーナ、話は終わったのかい?」

「お兄ちゃん。今日は何かありましたっけ?こんなに人が居るなんて、セールの時くらいしか見た事ないですよ?」


「いや、『せーる』以外の時にもお客さんは来てくれているからな?」

「そうだけど・・・。お昼の時間に、こんなにたくさんのお客さんがいるのは珍しいから、何か事件でもあったのかなぁって思ったのです。」

お兄ちゃんとそんな話をしながらお店の中に居る「お客さま」を見てみると、あきらかに私の上を見ている人が多い事に気が付いたのです。



あれ?と思って視線の先を見てみると、そこにはイケメンの騎士さまのお姿が・・・。




なるほど。階段を下りてくる騎士さまは、ソールさんを抱えていますが(お父さんの話の途中で眠ってしまいました)お話に出てくる王子様のようです。



思わず、「この姿絵は一体いくらで売れるのでしょうか?」と考えてしまいましたよ。



それと同時に「ミュー商店で、騎士さまと握手!」そんなキャッチフレーズが頭の中に浮かびました。


・・・あれ?これはいけそうな気がしますよ!騎士さまを目玉にして、ちょいちょい小物類を値下げして・・・。



「お兄ちゃ「駄目だからな!?今、何か変な事を考えただろう!?それは絶対に許可しないよ!」

私の言葉を遮って、お兄ちゃんが私の案を却下してきます。



えぇーー!絶対にいけると思ったのに!



お兄ちゃんったら、言葉の切り返しが早すぎです!もっと話の内容を良く聞いて吟味したら、この案の良さが理解できると思うのです・・・。



「フィーナ。今の顔はダメだ、絶対に何か企んでいただろう?

商売で行える範囲なら話を聞くが、よそ様を・・・。まして、騎士様を巻き込むのは止めてくれ。さすがに、オレでも庇えなくなるからな。」

お兄ちゃんの言葉に思わずむぅっとしてしまいましたが、変な顔なんてしていませんよ!



・・・でも、お兄ちゃんにそう言われたら強く言えません。それに、確かに騎士さまを商売の商品(?)みたいな感じで扱って不敬罪で訴えられたら、お店としては困りますからね。止めて貰えて良かったのかもしれません。・・・残念ですが・・・。




「ちょっと!フィーナ!」

少し考え込んでいたら、聞き覚えのある声が聞こえました。あれ?ケイト?(ケイトは私の幼馴染なのです)



「アナタ一体何をしたのよ!騎士様が名指しであなたを探していたってお母さんに聞いて、お昼時なのに来ちゃったわよ!いつか何かやらかすんじゃないかと思っていたけど、まさか騎士様が出動するような事件を起こしたんじゃないわよね!もう!『変な事をする時には、行動に移す前に相談して』って、何時も言っていたでしょう?!何か起きてからでは遅いんだからね!!」

ケイトはもの凄い勢いで私に詰め寄ります。



お兄ちゃん、そんな残念な子を見るような優しい目で私を見ないでください!・・・でも、もっと頭を撫でてくれていいですよ。



「騎士様!この子は・・・、フィーナは少し変わっていますが、事件を起こすような子じゃありません!

・・・そりゃあ、急に空を飛んでみよう!とか言って屋根から飛び降りようとしたり、『ちょっとお散歩してきます』って書き置きをその辺に貼って出て行って、夕方に小父さんたちが探し回っていた時もありましたけど、大抵の事は周りのヒト達が見ていれば何とかできる可愛いものなんです!

・・・確かに、犯罪とかはやったら出来るんだろうけど、本人は『怒られるのが嫌だから』って言う理由でやらない子なんです!本当です!」

私に詰め寄ったケイトはそのまま向きを変え、騎士さまに掴み掛かる勢いで「いかに私が無害(?)」かを訴えています。



・・・ですが、どうしましょう。



ケイトが一生懸命訴えている事は、私の小さな時の(かわいい)失敗談です。私には、ケイトが(とても必死に)私の恥ずかしい過去を騎士さまに晒しているようにしか聞こえませよ?一生懸命なケイトには悪いのですが、今ケイトが言っている事は、全然私のフォローになっていませんからね!?むしろ、何も知らなかった他のヒトにまで私の黒歴史が知られてしまいましたよ!?



あれ?心配されている方向が違うような・・・。何だか、言葉の捉え方によっては攻撃を受けている気がするのですが・・・。主に、精神面の方に・・・。




「・・・なので、騎士様の所に事件の首謀者として名前が上がったのは、何かの間違いです!」

ケイトの中で、私は一体何をした事になっているのでしょう?ちょっと聞いてみたい気もします。



今日はケイトが私の事をどう思っているのかが、思いがけず分かってしまいました。あれ?私、泣いちゃってもいいのかなぁ・・・。

お兄ちゃん。そろそろ本気で撫でてください!せっかく回復してきたライフゲージがゴリゴリと減っていますよ。



あぁ・・・、この世界にプライバシーの保護を求めるのは難しいのかもしれません。周りのお客さま(仮)に優しい目で見られながらお兄ちゃんに撫でられている私は、プライバシーが保護されている遠い世界を懐かしく思いました。






「大丈夫ですよ。フィーネリオン嬢には何の疑いもありませんから、安心してください。」

騎士さまが声を出した時に小さく「きゃあ!」なんて声が店内から上がりましたが、分かります。見た目と同じイケメンボイスですからね。



「あっ。お兄ちゃんもイケメンですよ?」


「お・・・、おぉう。ありがとう?」



うむ。お兄ちゃんはまだまだ伸び代がありますからね!縦にも横にも。横は少し控えて欲しいけど、ひょろひょろなのは嫌なので、程よいバランスで成長を続けて欲しいものです。




「それならば、どうして騎士様がフィーナ個人を探していたのですか?」

ケイトは首を傾げて騎士さまを見ます。


「そちらについては任務中なので詳しくはお答えする事は出来ないのですが、私はフィーネリオン嬢を害するためにこちらに来た訳ではありません。ですので、安心してください。」

そんな騎士さまの言葉に、お店の中にいるお客さま(仮)も首を傾げます。




・・・あの令状は口外してはいけないのですね、危ない危ない。








「あらあら。今日はたくさんお客様がいらっしゃるのね!嬉しいわ!」

のんびりとした声が店内に響いて、あれほど賑やかだった店内が静かになりました。



お母さんはお客さま(仮)で溢れている店内を見て嬉しそうにしています。後ろに居るお父さんの顔が泣きそうなのですが、どうしたのでしょう?


あの後、お父さんとお母さんの間に何かあったのでしょうか?お父さんは、私を見てますます泣きそうに顔を歪めています。良く分からないけれど、耐えて!今は耐えるのよ!



隣のお兄ちゃんが不思議そうに私を見ていますが、私にも分からないので首を横に振ってみました。



「・・・ですが、申し訳ございません。

本日は、今から少し早目の閉店となります。お買い物の済んでいる方はお帰りを、まだお済みで無い方は少しだけ急いで頂いてもよろしいでしょうか?」

お母さんが店内に居たお客さまをテキパキと捌いていきます。ですが、好奇心でお店に来ていた方は何も買っていきませんでした。



ケイトは心配そうに私を見て帰って行きました。

あんなにたくさんいたお客さま(仮)もアッと言う間にお店から居なくなったのです。お母さんのお客さまを捌く手腕に惚れ惚れしてしまいましたよ!ケイトには後で会いに行こう。







「すみませんでした。」



最後のお客さまがお帰りになって入り口のカギを閉めて閉店確認を始めようとした時、不意に騎士様の声が店内に響きました。



今、ここに居るのは私たちと閉店作業をしている従業員だけですので、みんなビックリしました。



お父さんが従業員に店舗から事務所に行くように指示を出しました。



「営業の邪魔をしてしまって、このような時間に来るべきではなかったのですね。また後日、違う時間を選んで来ます。」


なんと、騎士さまは私たちに向かって頭を下げられたのです!



「!・・・騎士様!どうか頭をあげてください。」



近くに居たお兄ちゃんが騎士さまに声を掛けて、頭を上げてもらいました。



「私は帝都を出る時、フィーネリオン嬢の父君とフィーネリオン嬢に令状を渡したら直ぐに帝都に戻れるだろうと考えていました。ですが、令状を受け取った父君に『令状を読んで、娘の反応によっては請願書を書くから待ってくれ』と言われ、それからフィーネリオン嬢にもう一通の令状を渡す為に呼んで貰ったのです。」



今、騎士さまと私たち家族はまっすぐ向かい合っているので、騎士さまの声はとてもよく聞こえます。



「そして姿を現したフィーネリオン嬢に、もう一通の令状を渡したのです。その時の私が見たフィーネリオン嬢は、普通のお嬢さんでした。ですが、令状に書かれている文面を何度も読み反し顔を青褪めさせる姿を見て、私に『一度父に相談しようと思う』と言われて、そこで思ったのです。


私たち騎士や兵士それこそ貴族でも、ただ渡された手紙であれば内容を確認してその場で受けるなり断るなりすれば良い。ですが、そうはできない人物から渡された手紙には、迂闊に返事をする事が出来ません。何か問題が起きないか上司や一家の家長の指示を仰ぐよう教育を受けます。

何かしらの商売をしているならば尚更、返事をする事に慎重になるのは当然です。ですから、お2人がそういった判断をする事は容易に考えられたはずなのです。


ですから、『令状を読んで、娘の反応によっては請願書を書くから待ってくれ』と言う父君と、『一度父に相談しようと思う』と言うフィーネリオン嬢。2人がこの令状に対して真摯に向き合っている姿を見て見て、この任務について私は『簡単に済むだろう』と思っていた事が恥ずかしくなったのです。」



・・・騎士さまのお話は、聞いていてとても恥ずかしいです。



騎士さまの言っているその言葉を口にした時、私の心の中は物凄く荒んでいた筈ですから・・・。騎士さまのこの言葉は、純粋に私の胸が痛いです。



「お恥ずかしいのですが、私はこの令状の内容を2人が見たら直ぐに帝都に向かうかどうかの話し合いが行われると思っていました。

それで、お2人と話をして考えが変わりまして、後日ご両親とフィーネリオン嬢との話し合い時にフィーネリオン嬢の帝都行きを皆さんが望まないなら、私はこのまま帝都に帰ろうと思ったのです。」

なので、騎士さまのこの言葉に、みんなビックリしまてしまいました。



「えぇ!!それは1番ダメでしょう!?」

私も、思わず声に出してしまいましたよ。



騎士さまは、少し困ったように私を見て「大丈夫です。元よりこの勅令は、宰相閣下より渡された時点で効果がないのです」と言いました。




???





騎士さまの言葉が、その場に居た人達に理解されなかったのが分かったのでしょう



「例外はありますが、本来の勅令は皇帝陛下から勅令の書かれた礼状を騎士が直接受け取り、相手に渡すことで勅令の効力が発揮されます。

今回は、『勅令かな?と思われる令状』が宰相閣下から発行されて私達に渡されました。こちらに来たのが私だったので皆さんを混乱させてしまいましたが、他の所には騎士以外の人物が向かっています。なので、今回私がフィーネリオン嬢に渡した令状は『宰相閣下からの私信』という扱いになります。

ですから、私がフィーネリオン嬢を帝都にお連れしなくても問題はないのです。」



と騎士さまが続けて補足してくださいました。



・・・・なんですって!色々と初耳です!








空気のような幼児さま・・・。

今は眠っているので、騎士さまに抱えられています。


少し区切りが悪いのですが、ここで区切らせていただきます。

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