57 わくわくの・・・ 4ページ目
キラキラ眩しいそのフロアを見て私の胸が高鳴ります!
どうしましょう!目の前に広がるこの光景に私の行動がおかしくなっていませんか?店員さんに見られているような気がしますが、優しい心で対応して下さい。
「初めまして、お嬢様。本日はどういった品物をお探しですか?」
私の後ろから声を掛けられたので振り返ってみたら、そこに居たのは栗色の髪の毛の柔和な感じの店員さんでした。
・・・・?あれ?
何だか見覚えが・・・。
「アリアちゃん?ですか?」
「フィーネリオンお嬢様。その様に不審な動きをしていらっしゃいますと、周りの皆様の視線を集めていますよ?」
私に声を掛けて来た店員さんは、去年まで一緒に学院に通っていたアリアちゃんでした。
つい4ヶ月ほど前の学院の卒業以来の再会ですが、とても懐かしく感じます。
「あれ?アリアちゃん、学院卒業後は伯父さんのお家の手伝いをするって言っていませんでしたっけ?」
私の疑問にアリアちゃんは人差し指を唇に当てて答えます。
「いえ。お嬢様が相変わらず可愛らしくいらっしゃるので眺めていようと思っていたのですが、少々障りが出て来ましたので声を掛けさせて頂きました。」
えぇっ!私、そんなに見苦しい感じでしたか?
・・・確かに自分の行動を思い返してみると、危ないヒトの動きだった様な気もします。反省します。
アリアちゃんは視線を泳がせていますが、すぐに私に視線を戻しました。
「お久し振りです。フィーネリオンさん。
お元気そうで良かったです。今日はどなたといらっしゃったのですか?お兄さんと一緒ですか?」
店内をぐるっと見てアリアちゃんが私の疑問に答えてくれました。
「違いますよ?今日はアスラさんと一緒に来たのです。」
・・・多分ですが、お兄ちゃんが一緒だったらこのお店には来ないと思いますよ?
「・・・アスラさん?」
私から出た名前は、アリアちゃんには聞き覚えの無い名前になる事を忘れていました。
「私、1月に結婚したのです。それで、わた「えぇっ!」しの・・・?」
私の言葉をアリアちゃんが遮ります。
その声に周りの皆さんが反応しますが、すぐに何も無かったように談笑しながら商品を選んでいます。
「フィーネリオンさんっ!あの鉄壁の守りを突破した方がいるのですか!?」
私の両手を掴んでアリアちゃんが声を潜めつつも「信じられない!」と言って来ます。
・・・てっぺきのまもり・・・?
良く分からない言葉が入っていましたが、アリアちゃんの驚きは収まる気がしません。
アリアちゃんの口から「信じられない」とか「勇者だわ」なんて言葉が出ていますが、どうしたのでしょう?魔王でも出たのですか?
「それで、その『アスラさん』と言う方はどちらにいらっしゃりのかしら?フィーネリオンさんの学友として挨拶しなくてはいけませんね。」
アリアちゃんはそう言って今居るフロアを見渡します。
「今は別行動をしているので、違う所にいるは・・・ず?ですよ?」
あれ?アリアちゃん?どうしたのですか?お顔が大変な事になっていますよ?
「帝都に来て別行動だなんて信じられません!帝都の治安を舐めているようなので、その方をシメて差し上げますよ!」
アリアちゃんは私の手を取り階段に向かおうとします。
「あ・・・アリアちゃん!待ってください!大丈夫ですよ!」
アリアちゃんの様子に驚きますが、アスラさんに付いて誤解がある様なので訂正をしなくては!とアリアちゃんを必死に止めます。
「何が『大丈夫』ですか!もうすこ「アリアリア?何をしているんだい?」・・し・・・。」
アリアちゃんの動きが止まります。
私が声のした方を見ると、お店に到着した時に出迎えてくれた(!)お店の店主さんが立っていました。
「伯父様!私、用事が出来たので、少しの間フィーネリオンさんを見ていて貰えますか?」
アリアちゃんは「ちょうど良い所に!」と言って店主さんに私を預けようとしますが、店主さんはアリアちゃんの様子にため息を一つ吐いて私に言います。
「フロウズ子爵夫人に対しての謝罪が先です。夫人、この者に対しては再教育を致しますので、無礼は承知ですがお許し下さい。」
店主さんはそう言ってアリアちゃんの頭を押さえながら頭を下げます。
アリアちゃんの頭は「???」状態になっているようで「えっ?」「えっ?」と言いながら店主さんに頭を押さえられています。
『・・・これからフィーナさんは「貴族」となるので、お友達だった方に距離を持たれてしまうかもしれません。ですが、貴族となったからと言って「傲慢」になる事はありません。フィーナさんには今まで通りに過ごして欲しいの。
・・・だけど「気安さ」と「優しさ」を間違えないで欲しいの。お願いね?』
アスラさんが爵位を頂いた時にお義母さんが私に言った言葉です。
『以前の私』と『今の私』違う所は『身分』です。
それを知っているヒトと知らないヒトは同じように扱ってはいけないと思うのです。
「私も説明をしていなかったのでアリアちゃんが知らなかった事ですし、大丈夫ですよ。
ですが、アリアちゃんには以前と同じように仲よくして貰えると嬉しいです。」
私の言葉に店主さんが驚いたようにしますが、アリアちゃんは私の大切なお友達です。確かに『身分』という隔たりはありますが、だからと言って切り捨てる事なんて出来ませんよ?
「えっ?えっ?どういう事?」
アリアちゃんは今も混乱中ですが、店主さんに依って頭を押さえられているので私達の様子は解らないみたいです。
「寛大なお心使い、ありがとうございます。
・・・旦那様が心配していらっしゃるようですが、如何なさいますか?」
「・・・私はもう少し店内を見て回ろうと思います。私の方は大丈夫なので、アスラさんにはゆっくりとお店の商品を見て回って貰いたいです。」
店主さんは私の言葉に「承知いたしました。お伝え致します。」と言ってアリアちゃんの腕を掴んでバックヤードに消えて行きました。店主さんが私の所に来たのはアスラさんが私の様子を気にしてくれたからなのですね。
・・・扉に消える寸前のアリアちゃんが「助けて・・・」と言っていた事が気のせいでありますように。
店主さんがとても良いお顔だったので、きっと大丈夫ですよ!・・・きっと・・・。・・・生きて!
その後、アスラさんとソールさんへの贈り物と小物を選んで会計をしようとしたら綺麗に包装された商品だけ頂いてお会計がありませんでした。
店員さんから「店主からの事付で、お会計は結構です。」と言われて驚きました。
金貨でのお支払いとまでは行きませんが、大銀貨以上のお支払い金額ですよ?大丈夫ですか?
「えぇっと・・・。ありがとう、ございます?」
疑問形にはなってしまいましたが、店員さんも「またのお越しをお待ちいたします。」と言っていますから大丈夫なのでしょう。
階段を下りて入口に向かうと、既に入り口横の待ち合わせ場所でアスラさんとソールさんが待っていました。
「お待たせしました!」
私がそう言うと、アスラさんがこちらを向いて「大丈夫ですよ」と言います。
「ソールさんは眠ってしまったのですね。すみません、商品を見ているのが楽しくなってしまいました・・・。」
アスラさんの腕の中に居るソールさんは、待っているのが退屈だったのか眠っています。私を待っている間、アスラさんやソールさんは退屈だったのかも知れません。失敗しました。
「フィーナ、この店は楽しめましたか?」
アスラさんがそう聞いてきます。どうしたのでしょう?
「はいっ!とても!・・・また今度、来たいと思います。」
大陸からの輸入品を扱っているだけあって、私はとても楽しかったです。
「そうですか、それならば良かった。」
アスラさんもそう言って微笑みます。周囲にいらっしゃるお嬢様方!私の旦那様の笑顔の威力を特と味わうが良いですよ!至近距離だと対応に困りますが・・・。
「アスラさんも楽しかったですか?・・・ソールさんは退屈にしていませんでしたか?」
私の言葉にアスラさんは「楽しかったですよ。ソールも楽しそうにしていましたから大丈夫です。」と返って来ました。アスラさんとソールさんが楽しそうなら私も嬉しいのです。
アスラさんに扉を開けて貰ったので外に出ます。
「お昼も過ぎましたから、何処かで昼食を取りませんか?」
広場の中央にある時計を見たら、なんとお昼の時間が過ぎていてビックリしました。
「そうですね。この付近で食事が出来る所を探しましょう。」
アスラさんのこの言葉で、帝都で初めて(!)の外食に心が弾みます!
何が食べれるのか楽しみです!




