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53 まっしろの・・・









気が付いたら一面真っ白な空間でした。



白って見分けが付かないのかな?何て思っていたけれどそんな事は無くて、目の前に広がるこの場所は「色」が無いだけのようです。



足元には石畳のような道が目の前に見える町の中まで続いています。

町の中に入れば何か分かるかも知れません。



私がそちらに進もうとしたら、町の入り口からこちらに向かってヒトが来ます。



「そっちは、だめだよ」

不意に手を引かれて驚きました。












「・・・夢?」

何だかとてもリアルな夢を見ました。



カーテンの向こうが明るくなっているので、お部屋の時計を確認します。時間は朝の6刻を過ぎたところでした。

着替えて、カーテンを開けます。




「何だか、とても不思議な夢を見た気がするのですが・・・。」

どんな夢だったのか思い出せません。起きたばかりの時には憶えていたような気がしたのですが・・・。


「まぁ、良くありますよ。それよりも、朝食の準備をしましょう。」

そう言ってお部屋から出ます。後2刻もすればアスラさんもお仕事から帰ってきますから、準備を始めましょう。ソールさんも朝食はしっかりと食べるので、朝食の準備のしがいがあります。





「おかしゃ~ん!!」



朝食を何にしようか考えていたら、ソールさんが慌てた様に階段を下りて来ます。



「ソールさん、おはようございます。今日は早起きですね。」

ソールさんがぽてぽてと私に近付いてくる様子はとても可愛らしいのですが、何かあったのでしょうか?


「おかしゃん。だいじょぶでしか!・・・おはよ!」

ソールさんが私の無事を確認して来ましたが、何かあったのでしょうか?挨拶を忘れないのは流石です。


「ふふふっ。私は大丈夫ですよ?ソールさん。」

ソールさんに目線を合わせて屈んでいるので、ソールさんが一生懸命私の無事を確認している様子が見れます。



ソールさんの夢の中で、私に何かおきたのでしょうか?



一頻り確認して満足したソールさんは、お腹が空いたのかそのまま食事用のテーブルの椅子に座ろうとします。


「ソールさん、先ずはお着替えをして来ましょうか。」

私の言葉に衝撃を受けた様にしていますが、これからアスラさんが帰ってきます。ソールさんがこのままの姿で出迎えたら、怒られてしまいますよ?


ソールさんは「きゅるる~」と鳴っているお腹を押さえて「きがえてきましゅ。」と2階のお部屋に戻って行きました。

ソールさんの毎日のお着替えは、お部屋のクロゼットの横に置いているチェストの上に準備して置いているので、余程の事が無ければその服を来て来ます。最近、大きなボタンを閉める事が出来るようになったので、1人でのお着替えが出来るようになりました。


ソールさんは、褒めて褒めて褒めまくったら何でも出来るようになりそうなので、少しずつ覚えて貰えればいいなぁと思っています。






「きがえました~。」

着替えて来たソールさんは、私に報告をします。

シャツの襟と穿いているハーフ丈のパンツの色を水色で合わせたのが良かったのでしょう!そこには、とても可愛らしいソールさんがいました。

ソールさんくらいの大きさの男の子であれば、ハーフ丈くらいのパンツは問題無く普段着に出来るので、思い切って作ってしまいました!ソールさんには少し大きい感じがしますが、これから大きくなるので大丈夫でしょう。これから暑くなるので、セーラーカラーのデザインで上下を合わせて作ったのです。


髪の毛に寝癖が付いていたので、食事の後に直しましょうね。


・・・日々常々思うのです。カメラの存在意義を!

誰か画像保存技術を編み出してくれないかと、本気で思うのです。

カメラの原理は解るのですが、フィルムの代わりになる物が分からないのです。


・・・魔術師の塔に行ったら、何かありますかね?




今日の朝ご飯はフレンチトーストですよ。







アスラさんが帰って来た時には私とソールさんの朝食は終わっていたのですが、アスラさんの朝食の時にソールさんは「そーるも!」と言ってアスラさんと一緒に2回目の朝食(少なめ)を取りましたが、お腹は大丈夫なのでしょうか?デザートのゼリーも完食したのには驚きました。


本当にあの小さな体の何処に入っていくのでしょうか?





「そう言えば、今日はララニーでした。」

食後の紅茶を飲んでいたアスラさんがそう言います。



・・・?

ララニーはウサギの様な可愛い動物です。本当に「見た目」は可愛いのです。


・・・可愛らしい見た目に反して、肉食でとても獰猛なので皆さん騙されてしまうみたいなのです。ギルドでも討伐の対象になっていて、退治したら報奨金が出るそうですよ?




「昨日は模様の入ったカリャンでした。最近は、クロゼットを開けるのが楽しみなのですよ。」

私の様子にアスラさんはそう言います。


そうでした。アスラさんのクロゼットに洗濯物を入れる時、十二支縛りでぬいぐるみを入れているのです。



「今日、ソールが来ている服も初めて見ました。もしかして、あちらもフィーナが作ったのですか?」


朝食を食べて満足したソールさんは鉢植えにお水をあげています。アスラさんはソールさんが来ている衣服が私製作の物であるとドコで気が付いてしまったのでしょうか?



「気が付いてしまいましたか!・・・ドコか変な感じですか?」

アスラさんとソールさんの来ている服は、お義母さんが用意してくれた物なのでとても良い物ばかりなのです。手作り感満載の服はやめた方が良いのでしょうか・・・。



「いえ、少し変わった形ですが良いと思いますよ?フィーナは器用ですね。」

アスラさんはそう言って、戻って来たソールさんにお茶の入ったコップを渡します。


「アスラさん、今日はどうしたのですか?何かあったのですか?」

今日のアスラさんはいろいろな事に気が付きますし、朝食の時から私を褒めすぎです!どうしたのでしょう?いつもの感じで良いのですよ?


「これまでも、手巾や手袋に刺繍をしてあるのを見てそう思っていたのです。」

「あい」

お茶を飲んでいたソールさんも相槌を打ってくれますが、お話の内容を聞いていたのでしょうか?



「ふふふっ。そうだったのですね。ここ最近は雨の日が続いたので刺繍をしていただけですよ?これから晴れの日が続いたら刺繍は出来ないかもしれないので、そんなに気にしないで下さい。」

これから暑くなって来たら、何もしたくなくなりますからね。



「?晴れると何かあるのですか?」

アスラさんが気になったように聞いてきました。



「・・・実は私、暑いのが苦手なのです。」


「・・・?」


「暑い日は、針仕事をしたくないのですよ?ほら、針仕事は細かい作業になりますからね?」


「!・・・解ります!私も書類整理などが捗らなくなります!」


私の切り出しに「?」状態だったアスラさんは、私の言いたい事を理解してくれたようです。

・・・私の訴えにアスラさんも同意してくれていますが、アスラさんのは何だか違うような気がします。

あえてツッコミは入れませんが、暑いのは確かに「ヤル気」を削いでしまいますよね。





アスラさんがお休みしている間に、ソールさんと一緒にお買い物に出掛けました。




アスラさんは「一緒に行きます」と言っていましたが、これから出勤を控えているのでお留守番をお願いしました。次のお休みの時に一緒に出掛けましょうね?



私も自分用に白いワンピースを作っているので、出来上がったらソールさんとお揃いで着てみようと思います!



アスラさんのはもう少し待って下さいね!












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