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3 はじまりの3ページ目






みなさんこんにちは。



少し混乱状態のフィーネリオンが小応接間からお届けしています。





突然ですが、いきなりの急展開です!





騎士さまとは、のんびり「それではまた明日、お話ですね」なんて会話で話を纏めたのです。そして、お宿の案内とお見送りしようと小応接間を出ようとしたのです。



そんな時に、ちょうどお父さんとお母さんが小応接間にやって来ました。






先程までは感じなかった緊張感が、この小応接間を支配しています。



その発信源が、何と!



お父さんです。




あれ?お父さん、そんなキャラでしたっけ?

もっとのんびりとした「ゆるキャラ」ポジションでしたよね?


あれれ?朝までのゆるゆるっぷりは何処に行ったのですか?

美味しそうにハニートーストを食べていましたよね?



少し混乱気味の私には、今の状況がまったく分かりません。



「あらあら・・」何て言いながら、お父さんの横に座っているお母さんにも少し言いたい。



「お母さん。みんなの昼食の準備は大丈夫?今始めないと、みんなお昼に食事が食べれなくなっちゃうよ?」

反対側に座っているお母さんに声を潜めて、今1番気掛かりな事を言います。



「あらあら・・・。フィーナったら心配するのはそこなの?大丈夫よ、リューイには『従業員のみんなに昼食休憩はニリアの所で交代で取るようにして』って言っておいたから。心配しなくても大丈夫よ。」


こそこそっとお母さんに声をかけてみたら、安心できる返事にホッとしました。



あ!リューイって言うのがお兄ちゃんです。我がミュー商店の跡取りであって、私が胸を張って自慢できるお兄ちゃんなんです。小さい時はお兄ちゃんの存在が本当に嬉しくてストーカー並みに朝から晩までくっついていましたよ。お兄ちゃんが6歳で学園に入学するってなった時、本気で衝撃を受けましたからね。



・・・でも良かった。私が今、思いつく中で1番の心配事が解消しました。



ニリアさんって言うのは、お母さんのお姉さんで、我が家の斜向かいの宿泊施設を兼ねた食堂を営業している女将さんです。お母さんと双子なので、とてもよく似ています。「伯母さん」って呼ばれるのはあまり好きでは無いみたいなので、私達は「ニリアさん」と呼んでいます。


今、従業員の皆さんはお弁当持参のヒトが多いのですが、ここミュー商店では(希望者には)昼食を有料で提供しています。コレは私やお母さんが作っているのですが、私が小さい時や学園に通っていた時は、ほぼ毎日の昼食をニリアさんの所に食べに行っていました。斜向かいという事もあって、近いから何かとお世話になっているのです。ありがたや。


私が学院に進学した時には、時間がある時に軽食を作り置きしていました。それが皆さんに喜んで貰えたので、学院がお休みの時とかに昼食を振る舞い始めたのが今でも続いているのです。



なんて思い出に浸っていたら、お父さんと騎士様のお話が終わりそうな気配になりました。



「とりあえず、この令状の内容に付いて私の方から言う事は何もない。」

「はい。」



おぉ!何だか穏便にいきそうですね。



お父さんは少し思い込みが激しいので、少しでも嫌な事があったり嫌いなものが入っている食べ物とかは、自分の範囲に入れたがらないから心配だったのです。



良かった良かった。








「・・・だがしかし!私個人としては納得がいかないのだよ!」

お父さんが、急に語気を強めて騎士さまに言い寄ります。



あれ?



「娘は去年学院を卒業してね。これからようやく家族である私たちと生活できるようになったというのに、なぜ騎士殿と帝都に向かわねばならないのだ?」

お父さんは右手を強く握りしめ、さらに強い言葉で騎士さまに言い寄ります。



あれれ?



「これは親の贔屓目なのかもしれませんが。フィーナは私たちとは変わった考え方で、思いもよらない行動をする時があるが、とても賢い。それに変わった動きをする時もあるが、その動きも込みで可愛いのだ。これだけは断言できる。フィーナは、ここ商業都市・・・、いや、帝国?

・・・待ってくれ!・・・・そうだな、大陸中探しても見つけられないくらい、とても可愛い!」

お父さんは騎士様に向かって、熱心にそんな事を言っています。



・・・もう、心が痛すぎてどんなツッコミをすれば良いのか分からなくなってきました・・・。



恐る恐る伺った騎士さまのお顔は、「どんな返事をしていいのか分からないから、取りあえず笑顔」っていう表情でした。精巧なお人形ってこんな感じなのかもしれません。少し怖いです・・・。


お隣に座っているソールさんはお父さんのお話に興味が無いようで、うつらうつらと眠たそうに目元を擦っています。何ていう癒しの存在でしょう!今、私が泣かないでいられるのは、ソールさんの存在のおかげかも知れません。



それでも、お父さんの親バカな話は止まりません・・・。






やめて!私のライフゲージは、ほぼゼロに近い状態になっていますよ!



誉めてるの?貶しているの?どっちなのよ!



それに私、17年間ずっとお家に居ましたよ!?確かに6歳から11歳までは学園に通って、12歳から16歳までは学院に通っていましたが、ずっとお家から通っていましたからね!


学院には寮があるので寮生活にあこがれてたのです。でも、合格発表の時に貰った「新入学生案内」の中から「寮」に関する資料がまるっと無くなっていたのです。お兄ちゃんはお「家から通う方が楽」って言っていましたが、絶対に寮の方が楽しかったと、今でも思いますよ!



・・・まぁ、確かにお家も楽しかったのですが・・・。



学院に在学中は、よく寮に住んでいた子の所に遊びに行ったりしていたのですが、最初の頃はホームシックだった子も学年を重ねるごとに「家に帰りたくない」って言ってたっけ。みんな元気かなぁ・・・。




お父さんのお話を聞いていた騎士さまは、相槌を打つ事を完全に失敗しているけど、今のお父さんは気にしていないみたい。延々と私の小さい時からの(ほぼ)失敗談を騎士さまに語っていますから・・・・。



・・・そろそろ本気で泣きたい。



「フィーナは昔から、わた「さぁ、そろそろフィーナが帝都に向けて出発できるように、準備をしなくてはいけませんね。」



!?



何という事でしょう!


いつもは、ぽやぽやして料理の時にお砂糖とお塩を間違えるようなお母さんが、奇跡のトスを上げてくださいましたよ!



「いや、まだ「まさか、『騎士様にお話を聞かせていてフィーナが帝都に行く準備が出来なかった』なんて事を狙っていませんよね?」そんなことはない!だがな・・・?」



この時のお母さんが私には、女神さまのように見えていました!お父さんが一生懸命言い訳をしながら、お母さんにまだまだ話し足りないと訴えています。



「騎士様は、本日はどちらかのお宿に宿泊予定なのでしょうか?騎士さまもお連れの方も本日はお疲れでしょうから、明日フィーナと私とでお話しいたしましょう?残念ですが、主人はお店の事もあって忙しいので主人抜きでの話し合いになりますわ。」

まだまだ話し足りないお父さんを抑えたお母さんのターン、これはチャンスです!



「なっ!それは!「そう言えば、今日の宿泊のお宿を探していましたよね!どんな所が良いですか?」

何かお父さんが言いかけていましたが、回り込んで華麗に私のレシーブです!



「あ・・・あぁ!特に希望は無いのだが、この子が一緒でも大丈夫な所が良い。」

騎士さまも会話の流れに乗ってくださいました。流石騎士さま!良く分からない感心をしてしまいましたが、私は騎士さまとソールさんのお宿の条件を聞きますよ!



「・・・それだけですか?

ご飯が美味しい所、とか。景色の良い所、とか。お部屋が綺麗だったり、広かったり、とか?そんな感じのお宿にご案内しますよ?」

騎士さまの言葉に驚いて、色々なお宿の「売り」を聞いてみたのですが、騎士さまの「いえ、この辺りに来たのは初めてでして・・・、この子もいるので、こちらから遠くない所がいいです」の言葉に不思議と納得してしまいました。



でも、本当に素晴らしい騎士さまです!私だったら、他人の都合で行った旅行だったとしても、絶対に「食事が美味しいお宿を取って欲しい」と思いますからね。幼児であるソールさんの事をさり気なく気遣えるイケメンは、やっぱり考え方もイケメンですね!



それなら、お話はとても早いのです。



「それなら、とても良いお宿がありますよ!」



騎士さまと幼児さま、お宿にご案内です!











フィーネリオンは、会話の中で常にツッコミ所を探しています。

そして、心の中でツッコミを入れたり、ちょっぴりカワイイ毒舌を披露しています。

心の中は、無法地帯となっていますので、やさしい心で作品を読んで頂けると嬉しいです。


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