表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/163

47 あめあめ・・・ 2ページ目








「フィーネリオン嬢やアメリア嬢は、アスライールとローラントそれぞれとの仲が良いだろう?」

リンカーラさんは、私を見てそう言います。




・・・確かに、アメリアさんとローラントさんは仲が良いです。お2人はステイさんと3人で良くお出掛けしています。先日も、帝都の観光巡りをしてきたそうです。



私もソールさんと一緒にお出掛けしようと思うのですが、近くの商店街より先に行くのはアスラさんに止められています。・・・ナゼか、商店街の皆さんにもその先に行く事を止められます。

ヴァレンタ家のお屋敷に行く時は、連絡をするとお迎えの馬車が来るので、徒歩で行った事はありません。(お屋敷へは商店街を抜けないといけないのですが、気付いた方に迎えを呼ぶように言われます。)


私に関して言うならばソールさんが一緒にいる為か、周りの皆さんが「過保護過ぎ」の様な気がします。

私はこう見えて、商業都市では小さい時から「お散歩」と称した探検をしていました。結構ノビノビとした幼少期を過ごしていましたよ?ソールさんも今くらいの年齢が冒険心を育てる機会だと思うのです。


アスラさんに、それとなくそんな事を伝えたら「3月からは普通に休みが取れますから、その時に出掛けましょう。」と言われてしまいました。


・・・言われてみれば帝都は広いですし、私が良く分からない帝都を闇雲に動き回っても、ソールさんと迷子になるだけですからね。最初は場所を把握しているヒトが一緒の方が良いのかもしれません。




それにしても、リンカーラさんとキールさんは仲が悪いのでしょうか?



私は、お2人とはあまり接点が無いので良く分かりません。





「おかあしゃま・・・。」

リープさんが寂しそうにリンカーラさんを見ています。ソールさんも空気を読んでいるのか、静かにしています。





「元々、キールは私の補佐をして・・・、私がサイジェル領を継いだ時に、領主補佐となる予定だったのがキールだったんだ。


だから、私が領主ではなく『精霊殿の契約者』となった時に、弟にそのまま『領主補佐』としてキールも引き継いたんだ。・・・補佐をしていたキールが居なくなって、弟も大変だろうに。」

リンカーラさんが少し悲しそうに言います。



「リンカーラさんは、本来ならば弟さんに引き継いでいたキールさんを帝都に連れてきた事が、引っ掛かっているのですか?」

少し疑問に思った事を我慢できない私のこのお口が、少し憎いです。



質問にチョッとした罪悪感が出てしまいますが、リンカーラさんに視線を向けます。




「・・・・そう、なのだろうか・・・?


そんな風に考えていたわけでは無いのだが、領主の仕事を引き継ぐとなったら、補佐してくれる者が居ないと大変だと思う。私はキールが居たから、仕事を覚える事が出来たんだ。

だから、弟にもキールが付いているならばと、安心して引き継ぎできたんだ。」

私の質問に戸惑うように、リンカーラさんが答えます。



「弟さんは、今すぐに領主さんになるのですか?」

私は、気になって聞いてしまいました。


「いや、父が健在なので、弟が領主になるのはもう少し先になるはずだ。」

リンカーラさんが答えてくれます。



・・・?それならば・・・



「それならば弟さんは、リンカーラさんのお父さんが元気なうちに、お仕事を教えて貰えまよすね?

補佐に入るヒトだって、お父さんの補佐官さんにお仕事を教えて貰えば良いのですよ。2~3人候補を立てて、使えそうな人を弟さんの補佐官さんにしてしまえば良いのです。選ばれたそのヒト以外の方は、補佐官さんの補佐をすればいいのです。」

私がそう言うと、リンカーラさんは驚いたように私を見ます。


「弟さんには、現役で働いているリンカーラさんのお父さんが1番の先生ですよ。

お父さんが領主としてどんな動きをしているのかを傍で見る事が出来れば、弟さんは疑問に思った事を聞く事が出来るでしょう?書類を見るだけよりも、実際に動いている所を見た方が覚えるのではないのでしょうか?」

私はそう続けます。



「まるで、仕事をしている所を・・・、それらを見て来たかのように言っているが・・・?」

リンカーラさんが不思議そうに私を見ます。




「私の実家は大きくは無いのですが、お店を営んでいます。お父さんがお店の店主で、お兄ちゃんが後継ぎです。


リンカーラさんのお家事情とは少し違うと思うかもしれませんが・・・。お店って、店主であるお父さんが領主で、お兄ちゃんが後継ぎって考えると、1つの領地だと思いませんか?


お父さんは、お兄ちゃんが学院を卒業してから一緒にお仕事をするようになりました。


お兄ちゃんは、お父さんと一緒にお店に出たり、取引相手と商談をしたり・・・。失敗した事もあるみたいですが、その時はお父さんが間に入って修正しているみたいです。

お兄ちゃんは仕事で解らない事があっても、お父さんの時間が空いている時に解らない事を聞く事が出来るから『楽しい』そうですよ?


・・・リンカーラさんの弟さんはそのまま同じ様には出来ないと思うのですが、仕事を覚えるのであればこういった形が1番手っ取り早い方法になるのではないかと思うのです。」

お仕事の内容は少し畑違いの内容かもしれませんが、仕事の動きを大きく分けると領主も店主も同じような事をしていると思うのです。


リンカーラさんは呆気にとられた様に私を見ます。




「それに、キールさんも何か思う所があってリンカーラさんに付いて来たのではないのでしょうか?

私はアスライールさんに対しては下心満載で付いて来ましたよ?」

「にょっ!」

リンカーラさんの様子に私はこう続けました。私の言葉にソールさんが驚いています。



「・・・?

キールの事は良く分からないが・・・。フィーネリオン嬢の『下心』の方は気になりますね。

アスライールの見た目かい?それとも身分かな?」

「はわわっ」

リンカーラさんの言葉にリープさんが驚いて私を見ます。




私がアスラさんに抱いた「下心」と言えば・・・。







「それは、私の『結婚』という野望を叶える為の下心ですよ!」

私は両手を握りしめ、気合を入れて答えます。







「・・・・・・は?」

リンカーラさんは「意味が分からない」と目を丸くしています。リープさんもソールさんも「?」と言った感じに私を見ています。





「実は、私、今年で17歳なのです。」


「・・・そう聞いているが・・・・?」

リンカーラさんは戸惑いを隠せていません。



「17歳なのに、縁談の『え』の字も見えない生活を続けていたのですよ!

・・・犯人は確実に実家に居ると思うのですが、証拠が無いので訴える事が出来ませんでした。


そんな中、私に『直接』婚姻を申し込んで来たのがアスラさんなのです!


この流れに乗らないと私が実家から出る事は出来ないと思い、アスラさんと婚姻したのです。」

本当はもっと違う流れでしたが、ソコは私達の秘密です。



リンカーラさんは驚いたように私を見ています。




少し興奮気味に話し過ぎたので、お茶のお代わりを皆さんに勧めます。





「少し良いかな?」

一息ついたリンカーラさんが私に言います。



「フィーネリオン嬢の場合、縁談は引く手数多で相手を選ぶ事も出来そうだが・・・?」

リンカーラさんはおかしな事を言います。

確かに、会うヒトみんなに同じ事を良く言われていましたが、そんな事はありませんよ?



縁談なんて「投げた石が当たれば婚約になる。」って言われているくらいなのに、私の目の届く所には1つも縁談に関係する物がありませんでしたからね。


・・・もしたしたら、縁談は本当に来ていなかったのかも知れません。真実が残酷な時もあるので確認は取っていなかったのです。今でも真実は闇の中ですよ。




「私も、私のすぐ下の妹も、その下の妹の所にも『縁談』なんて影も見せていませんよ?

・・・少し心配なのは、お兄ちゃんにも『恋人さん』の姿が見当たらなかった事ですかね?」

私の言葉にリンカーラさんは驚いています。



「・・・フィーネリオン嬢は、アスライールに『婚姻』を提案された時に抵抗しなかったのか?」

リンカーラさんが尋ねて来ます。




「・・・?だって、アスラさんですよ?

まぁ、いきなり婚姻を申し込んで来た時には、さすがに驚きましたけれど・・・。ですが、婚姻も結婚も一緒に暮らす分には問題ありませんよ。

何より、アスラさんとソールさんは時々不思議な行動をするので見ていて面白いですし。」

「にゅっ?」

ソールさんはご自身の事になるので良く分からないみたいですが、そろそろ「アスラさん基準」が世間から外れている事を教えるべきでしょうか?



「アスライールは、説明が足りない時があるからな。

・・・それでも、それらを『楽しめる』フィーネリオン嬢が羨ましいな。」


リンカーラさんがアスラさんをフォローしていますが、アスラさんの説明不足は前からだったのですね・・・。




「リンカーラさんは、キールさんと一緒に居るのは楽しくないのですか?」


・・・もう、諦めましょう・・・。今日の私のお口は絶好調ですね!




「いや、そうではない・・・。

ただ、キールには『婚約者』がいた筈だったんだ。だから、それを思うと申し訳ない気持ちになるんだよ。」

リンカーラさんの仰った内容に驚きました。



私がアスラさんとの会話で懸念していた事が、まさか起きていたなんて!



皇帝陛下に念を送らなくてはいけませんね!(頭髪関係で!)




リンカーラさんは私の様子に首を傾げていますが、気にしません。




「だから、キールが私に『付いて行く』と言った時は本当に驚いた。

何を言っているんだ?とまで思ったが、そのまま荷作りまでして馬車の手配までしたから、どうすれば良いのか、実は今も混乱中なんだ。」

リンカーラさんはそう言うとソファーに深く座って天井を見ます。




リンカーラさんの「どうすれば良いのかが、分からないんだ・・・。」と続いた言葉は、とても寂しそうでした。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ