40 おまつりは・・・ 2ページ目
目的の屋台は「カイナ」といって「お好み焼き」の様な食べ物を扱っていました。
お好み焼きと言っても前世の私が食べていた物とは殆ど違うのですが、材料をザックリと書き出して「あぁ、そうそうコレは入れましょう。」と「最低限」の材料で作られる「塩味」のお好み焼きです。
ですが、私にとって「お好み焼き」と言ったら「ソース」と「マヨネーズ」は絶対に外せません!(異論は認めます。)ので私は自力でこの2つを作りました。なので、私の実家では「カイナ」と言ったらソースとマヨネーズは外せないのです。
・・・ニアちゃんに送る予定のレシピノートに書いておいた方が良いかな?
お隣の屋台では「リップ」という「コロッケ」の様な食べ物を扱っていました。
こちらのコロッケは「丸い」ので食べ辛いのです。私がお家でリップを作る時は形を「小判型」に変えていたので、お昼の忙しい時もパンに挟んで従業員の皆さんに出していました。
これら以外にも、お芋を揚げた物や、鶏肉の唐揚げ、お肉の串焼き・・・・。目ぼしい物は全部買いました!
前世の記憶を思い出した小さい時に、屋台で食べる物は前世と変わらない事が証明された時は安心しましたよ!たくさん買いましたが、今食べ切れなくても帰ってから食べれるので良いのです。今日の夕食はちょっぴり楽をさせて頂きます!
たくさんの種類を買ったので、広場に設置されている机が並んでいる所で食べる事にしました。
私には食べ慣れた物ですが、アスラさんには色々な要素が絡まって(身分とか)口にする機会の無かった食べ物です。ソールさんの視線は「お芋」と「唐揚げ」にロックオンされていますからね。アスラさんはそちらから手を伸ばします。・・・あれ?ソールさん。「卵」が使われているのは「カイナ」ですよ?良いのですか?
そんな事を思いましたが、幸せそうにもっきゅもっきゅとお口いっぱいに唐揚げを頬張る姿を見て「私が」満足したので「良し」としましょう。
目の前に座るアスラさんは(多分)人生初の屋台ご飯を見ています。
・・・食べる気配が見当たらないので心配になって来ました。
「あっ!アスラさん。カイナはそのまま手に持って食べるのですよ。」
そうです。屋台では紙に包まれて渡されますから、そのままガブっと食べるのです。
あっ。ますます怪訝そうにカイナを見始めましたよ!
「こう、手に持って、食べます。」
アスラさんがなかなか口にしないので、私が食べ方のレクチャーをします。
もぐもぐ・・・。うん、絶妙な塩加減です。美味しい!
私がカイナを食べると、アスラさんも恐る恐るカイナを口にします。
「・・・初めて口にしましたが、不思議な味ですね。」
アスラさんはそう言うと、上品に一口ずつ食べて行きます。私とアスラさんが口にしたので、ソールさんもカイナを食べようか迷い中の様です。
・・・やっぱり、こういった物を食べるのは初めてだったのですね。
アスラさんは「リップ」の方もどう食べたらいいのか思案中の様です。
「あのっ!」
???
アスラさんの手元を見ていた私は、その声に顔を上げます。
アスラさんは声のした方を見ていて、私の視線もそちらに向きます。
少年が立っていました。
少年は少し体に合っていない服を着て、お花の入った籠を持っています。
「花を、売っています。一束、大銅貨5枚です。」
少年はこの辺りの出身者ではない様な、不思議なイントネーションで籠の花を見せながらそう言います。
「どうしますか?」
アスラさんが私に聞いてきます。
「お花を見せて貰っても大丈夫ですか?」
私がそう言うと、少年は私の方に籠のお花を見せるように近付いてきました。
『兵士団の方を呼んで欲しいです』
・・・?異国語?
『妹が捕まっていて、売られそうなのです』
・・・古語です!!!
私はアスラさんを見ます。
アスラさんも私を見て頷いています。
「いろいろな種類がありますね!」
私はそう言いながらテーブルを指差します。
少年は「言葉が通じない」事に落胆したように、籠を下げようとしていたので籠を引っ張ります。
私はその籠を食べる物を横に避けたテーブルの上に乗せます。
「ナニを!」
そう言い籠を取ろうとした少年の目には、アスラさんの書いたメモが見えたのでしょう。
「あっ!ルピナス。珍しいです!」
お花は束になって12束、その中からお花を選びます。ソールさんもお花に興味津々で覗き込んできます。
[どこだ]
アスラさんのメモは籠の横に出されています。
その文字に少年は驚いたようにしています。
『もし、貴方を監視をしていらっしゃる方が居るのであれば、視線はお花に。』
私は小さくですが、少年に伝えます。
「・・・っ。」
少年は、そうしてお花を見ます。
[建物の特徴でも良い]
アスラさんのメモの内容が変わりました。
『大きな、白い木が植えられていて・・・・・。』
少年の言葉が止まります。元の建物もこの場所もどの辺なのか理解できないまま連れられて来たのでしょう、少年は悔しそうに震えています。
アスラさんもどうしようか考えているようです。
「おいっ!何をしている!」
少し乱暴な言葉で私達の所に男の人が来ました。
少年が身構えたので、この人が「監視員」なのでしょう。
「こちらのルピナスの仕入れ先を聞いたのですが、こちらの方には解らない事を聞いてしまったみたいなのです。」
私がそう言うと、監視員は少年を見て視線を私に戻します。
「あぁ!そうでしたか!この花は、西の集落で栽培している所があるんですよ。」
男性は、少年を突き飛ばすようにして私の前に立ちます。
「そうでしたか、教えてくれてありがとうございます。迷惑を掛けてしまったようですから、こちらのお花を籠ごと頂きます。」
そう言って少し多めに男性にお金を渡します。
「毎度どうも!」
男性はそう言うと、乱暴に少年を連れて行きました。
「フィーナ、ありがとうございます。それと、申し訳ないのですが、今日はこれから仕事になりそうです。」
アスラさんがそう言って立ち上がります。
「そのようですね。残念な気持ちもありますが、あの子と妹さんが無事である事の方が大切です。」
私もソールさんの方を見て「残念でしたね。」と言います。
「・・・取りあえず、家に一度帰ってから騎士団に向かいます。」
・・・?
「まっすぐ騎士団の方に向かって下さい。私達はもうすこ「今日は家に帰りましょう。」
・・・大丈夫ですよ?」
私はもう少し、このお祭りを楽しみたいのですが・・・。
ソールさんも私と同じ気持ちなのか、しょんぼりした様にアスラさんを見ています。
「・・・フィーナ達に何かあった時に私が傍に居れないのは嫌なので、今日は帰りましょう?」
・・・くっ!
イケメンさまの「お願い」の威力がコレ程だと思いませんでした・・・。
「そーる、もっとみたい・・・。」
ソールさん!
「ソール、先程食べたいと言っていた物を買って帰ろう。」
「あまいの!」
・・・ソールさん!
そうですよね、お団子の誘惑には勝てませんよね。
「ふふっ。それならば、これらを纏めるので少し待って下さい。」
何だかソールさんの様子を見ていたら「まぁ、良いかな。」と思えてくるので不思議ですね。
「本当にすみません。」
アスラさんは帰って来る道中そう言っていましたから、何だか申し訳ない気持ちになって来ました。
「お団子もたくさん買って頂きましたし、お祭りはまた来れますからそんなに気にしないで下さい。」
私はそう言って満足そうにお団子を抱えているソールさんを見ます。
「・・・私、地理には少し疎いのですが・・・。先程の方、ルピナスは『西の集落』で栽培されていると言っていましたよね?ルピナスは暑さに弱いお花なのです。帝都から近い西の集落は北寄りでしたっけ?」
帝国は横に広い国です。商業都市の周辺はある程度憶えていましたが、西側は東の農耕地帯よりも広いので良く分かりません。ですが、ルピナスはお花です。この世界の流通状況を考えると、迅速な運搬は出来ない筈です。ふと、疑問に思った事だったのでアスラさんにそう言ってしまいました。
「あ!ろーらんと!」
ソールさんのその言葉で私とアスラさんはお家の方を見ます。
「よぅ!」
そう言ってローラントさんが挨拶してきます。
「お久しぶりです。」
アメリアさんとステイさんが一緒の様です。ステイさんをお迎えに行って来たのですね。
「ステイを迎えに行った帰りに祭りを見てから、寄ってみたんだが・・・・。」
ローラントさんがそう言って私達を見ます。
「そうでしたか。
・・・ローラント達はこれから何か用事がありますか?」
アスラさんがローラントさんにそう聞きます。
「?・・・いや、ココには顔見せに来たんだが・・・。何かあったのか?」
アスラさんの問いに、ローラントさんは訝しげに答えます。
取りあえず、立ち話もどうかな?と思ったので、お家に入って貰いましょう。
「ありがとうございます。」
アメリアさんとステイさんソールさんと私とで屋台の「お土産」を広げます。
あの後、アスラさんは騎士団から確認の連絡が来たので、広場での事を掻い摘んで説明していました。その内容を聞いていたローラントさんも「手伝う」と言って一緒に出て行ってしまいました。
「ふふっ。カイナもリップも久し振り。」
アメリアさんがそう言ってカイナを見ています。
ステイさんはソールさんと一緒にお団子を食べています。お2人は仲良しさんですね。
「おかしゃん、あい。」
ソールさんがそう言ってお団子を私に差し出してきます。
「良いのですか?ありがとうございます。」
私がお団子を受け取るとソールさんは満足したのか、次のお団子を頬張ります。
「それにしても、随分とたくさんのお花を買って来たのですね。」
アメリアさんが先程買ってきたお花を見ていいます。
「そうなのです。さすが帝都ですよね。色々なお花があって、ルピナスを見て凄いって思ったのです。」
私も籠に入っているお花を見て答えます。
「本当に綺麗に咲いていますね。帝都で育てている所があるのかしら?」
???
「ルピナスは帝都でも育てられるのですか?」私は気になってアメリアさんに聞きます。
「えぇ。育てらるはずよ?だけど、あまり強い日差しに晒さないようにしないといけないの。」
アメリアさんはルピナスを見ながらそう言います。
「フィーナさん。このお花はどこで栽培された物なのでしょう?」
アメリアさんの言葉に「帝都の西の集落で栽培されていると聞きましたよ?」と返したのですが、急にどうしたのでしょうか?
「西ですか?東では無くて?」
アメリアさんが確認するように聞いてきます。私が「そう言っていました。」と言うと、アメリアさんは考え込んでしまいました。
「・・・フィーナさん。それは、無理だと思います。
ルピナスは涼しい所で栽培されるお花です。今の時期は日差しが強くなって来ているから、西の地域では栽培出来ないと思うのです。私の居た東の地域よりも、もっと北寄りの場所で栽培していたはずです。」
アメリアさんがそう言っていますが、そうなるとこのお花を帝都で栽培するのにはそれなりの設備が必要となります。
そんな設備を揃えられるのは、お金のある豪商や貴族くらいです。
「・・・アメリアさん、この時期に『白い木』ってあると思いますか?」
「っえ?」
話の流れとは全く違う質問ですみません。アメリアさんは驚いたように私を見ます。
「白い木ですか?白?・・・白?
葉っぱや木の幹でなくても良いのでしたら、今の時期でしたら白い花の咲く物もありますが・・・。」
・・・!白いお花!
「ちょっと、すみません。」
私はアメリアさんにそう言うと、お義母さんの魔石に魔力を込めます。
お金は
銅板 大きさによって1~5円
銅貨 10円
大銅貨 100円
銀貨 1、000円
大銀貨 10、000円
金貨 100、000円
大金貨 1、000、000円
白銀金貨 10、000、000円
となっています。平民は金貨以上を見る事は無い(ハズ)。基本は銀貨。
貴族も金貨から上のコインは持ち歩かないので、そのままの状態で流通に出回る事は有りません。




