38 しんりょくの・・・
皆さんこんにちは!お祭りの誘惑は危険な香り・・・。ですよ!
新緑祭が始まって早6日です。
新緑祭が始まって初めの2日間はヴァレンタ家のお屋敷に居たのですが、お家の様子が気になったので3日目からはお家に帰って来ました。義両親と一緒にお義兄さん(に変更です)一家から引きとめて貰いましたが、私はもう限界です!
お屋敷に居ると優秀なメイドさん達が周りの事をしてくれるので、私がする事と言ったら「お菓子を食べる事」くらいです。
・・・気のせいかも知れませんが、私のお腹周りが少し怪しくなってきました。気のせいかも知れませんが!重要な事なので、何回でも言いますよ。気のせいだと思うのです・・・。ワンピースのウエスト周辺のボタンが引っ張られて居るだなんて・・・。
それと、アスラさんの騎獣さんは、私達のお家とヴァレンタ家のお家を「居住場所」として登録したみたいです。それもあってか、ヴァレンタ家のお屋敷にあった獣舎が増築される事になりました。(アスラさん持ちで)
騎獣さんは登録の時に「名前」が付けられるみたいなのです。
アスラさんは空欄で書類を提出しようとしていましたが、私の「折角ですからお名前を付けたらどうでしょう?」との提案に、初めての家族3人の家族会議が開かれたのです。2刻くらい話し合っても結局決まらず、ソールさんが眠たそうに目を擦り始めたのでアスラさんが「空欄でも書類の提出が出来ますから。」と言い、会議はお開きムードとなったのですが、私が「猫さんだってお名前が欲しいはずです!」と言ったらそのまま「ネコ」が名前として採用されました。
そんなこんなでお家に帰ってからは、時間の許す限りお掃除なんかを片手間にダイエット(?)をしながらネコさんと戯れていました。
アスラさんもネコさんに乗って出勤すればいいのに、ネコさんに乗らずに出勤してしまいます。・・・確かにこのお家からだと騎士団へ行くのは徒歩圏内なのですが、どうしてなのでしょう?
・・・アスラさんもダイエットですかね?
ネコさんは私がお掃除している時はお庭で日向ぼっこをしたりしているので、喉が乾いたらお水を飲めるようにお水を盥に出しておきます。お庭でゴロゴロしている姿が可愛らしすぎて、私は何回掃除をする手を止める事か・・・!
お昼を回って日が高くなって来たら、ネコさんはご自身のお家に入るので暑さには弱いのかもしれません。
ネコさんのご飯は朝と夕方の2回なのですが、普通にご飯を準備をしたら家計が大変な事になります。ですが、このファンタジーな世界では騎獣用に「圧縮ご飯」があります。洗面器くらいの大きさの「塊」をご飯用の盥に入れて、水を規定量まで入れるとあら不思議!騎獣さんのご飯の完成!です。初めて見た時は驚きましたよ!
・・・映像規制が入りそうな感じのご飯ですからね、ちょっと見た目的にアウト!です。ですが、ネコさんはとても美味しそうに食べていました。「材料は何でしょうか?」ってアスラさんに聞いたら、「害獣などが使用されています。」との事でした。・・・・つまり、大きなチムリスちゃんもいらっしゃるのですね。・・・何だか、自分で聞いておいて言うのもなんですが、しょっぱい気持ちになりました。
ネコさんのご飯は、真空パックみたいな感じなので長期の保存が出来ます。1つ1つが大きいので、ネコさんのご飯用ストッカーを作っても良いのかなぁと思いました。
そして、今日から5日間アスラさんはお休みです。緊急の時にはスグに騎士団本部に行く事が出来るように帝都から出る事は出来ないみたいです。アスラさんにとっては久し振りのお休みなので、ゆっくりとした朝を過ごしてお昼前にソールさんを迎えにお城に来たのですが、城内は凄いヒトの数です。
本当はソールさんを迎えに行ってからこちらに来る予定だったのですが、城内へ続く門ががあまりにも混雑しているのでソールさんのお迎えの前にお城に併設されている騎士団本部の建物に来ています。こちらからもお城の中に入れるそうなのですが、何だかたくさんの視線を感じます。
私に何処か変な所があるのでしょうか?・・・まさか、私のウエストですか!?
どうやら騎士団本部の建物は、ある程度の場所までであれば一般にも公開されているようなのです。ですから、どんな場所なのか気になった私は「お城に行くのでしたら、折角なのでアスラさんの所属している騎士団に行ってみたいです。」と軽い気持ちで言ってしまいました。アスラさんは快く「明日、師団長と隊長に許可を取ってきます。」と言ってくれたので安心していたのですが、後から思えば「許可を取る」と言った事をもう少し考えるべきでした。
すれ違う騎士の皆さんが驚いたように私を見ます。ですが、アスラさんは私の手を引いてどんどん奥に進んで行きます。もしかしなくても、ココって「一般のヒト」は入れない所なのではないのでしょうか?アスラさん、私はココまで来たいと望んではいませんでしたよ?
ですが、この状況では後に引けそうな気がしません。
アスラさんも途中から私が視線を集めている事に気遣ってくれているのか、建物内を通らずに建物の外をグルっと回って「第3師団本部」の建物に私を連れて来てくれました。
・・・本当に、ココまで来る事は望んでいませんでしたよ!
建物の中に入った私達はそのまま応接室に案内されたのですが、そこには既に4人の男性と1人の女性がいました。
皆さん騎士の制服を着ているので「騎士である」事は分かるのですが、アスラさんで見慣れた騎士服とは少し違うデザインです。女性の方はアスラさんと同じデザインの制服でしたが、何だか違和感があります。
「良く来たね、歓迎するよ。」
壮年の渋い小父さまが、お部屋の中央に設置されているソファーから立ち上がって私に声を掛けます。
「私は第3師団長を任されているアーネストだ、宜しく頼む。コレが補佐官のルイス、ソコに居るのが第5部隊隊長エスターと隣が副隊長のラインだ。」
渋めの小父さまが自己紹介から、今このお部屋に居るメンバーを紹介してくれました。
「アスライールさんと結婚しましたフィーネリオンです。よろしくお願いします。」
と私も自己紹介をしますが、あれ?と思って女性の方を見ます。
私の様子に女性が「リーリアです。」と自己紹介をしてくれました。
「どうも騎士団は男所帯になってしまう。どうしてもむさ苦しい男ばかりになってしまうから、女性騎士であるリーリアにも同席して貰ったのだよ。」
師団長であるアーネストさんがそう言って座るように促してくれました。
・・・いえ、既に帰りたいのですが・・・。
色々な事を体験してきているからなのか、師団長さんのお話はとても面白いです。
補佐官さんが「そろそろお時間です。」と言わなければずっと聞いていられたと思います。
「もうそんな時間か!時間が経つのは早いな・・・。新緑祭が終われば少しは時間もとれるだろうから、その時はアスライールに休暇を出そう。それまでは、もう少し待ってくれ。」
師団長さんはそう言ってお部屋を出て行きました。補佐官さんも「失礼します。」と一礼して扉の向こうへ消えて行きました。
「まぁ、アレだな。アスライールの上司として言うならば、これからよろしく頼む。」
そう言って隊長さんと副隊長さんもお仕事に戻って行きました。
後は・・・。
「・・・握手して貰っても良いですか!」
キラキラとした瞳で私を見るリーリアさんが謎なのですが、どうしたのでしょう。
騎士団の建物からお城に入ります。
皇族の方達の居住区に向かう通路とは違う方を通って、皇城に入りました。騎士団の方から皇城へと続く扉をくぐると、目的地まで真っ直ぐ向かう事が出来ました。アスラさんはお部屋の扉の前に居た男性にお話があるようなので、私は先にお部屋の中に案内されました。
・・・お部屋の中はとても静かで、壁際に立っているメイドさん?達はお部屋に案内されて来た私を少し見て元の姿勢でソールさん達を見ています。
「・・・!おかしゃん!」
久し振りに見たソールさんは、元々大きな目を驚いたように開いて私を見ます。
「ソールさん、お久しぶりです。元気にしていましたか?」
私の登場に驚いたのは、ソールさんだけではありませんでした。ソールさんのお隣にはナゼかステイさんとリープさんがいます。・・・どうしたのでしょう?
ソールさんが私の方に駆け寄ってくると、お2人もその後ろを付いてきます。
・・・雛鳥のようなその可愛らしい様子に、私の心は撃ち抜かれてしまいそうです。
「おかしゃん。そーる、ごめんなしゃい・・・」
ソールさんはそう言って私のスカートにしがみ付いてきます。
ソールさんを抱き上げて「私の怪我は、もう大丈夫ですよ。」と伝えます。
「もう、いたくないでしか?」
ソールさんが心配そうに言ってきます。
「はい。ソールさんがアスラさんを呼んできてくれたので、痛くないですよ。ソールさん、アスラさんを連れてきてくれてありがとうございます。」
そう私が言うと、ソールさんは「ふぇ~~っ!」っと言って泣いてしまいました。
ナゼか、ステイさんとリープさんも私のスカートを掴んで泣いています。この状況にはさすがに私も慌てます。
異変に気付いたアスラさんと侍従さんがお部屋に入って来る頃には、私達の事を遠巻きに見ているメイドさん達のソールさん達に対する扱いがどんな感じだったのかが私にも理解できました。
・・・・・・お城のメイドさんなので「優秀」なのでしょうが、幼い子供への対応は最低です。
メイドさんだか侍女さんだか知りませんが「3人」いらっしゃるという事は、ソールさん達にそれぞれ付いていらっしゃる方達ですよね?幼い子供達が泣いているのですよ?傍に来て落ち着くまで一緒に居てあげるのがお仕事でしょう!私は心の中で憤慨してしまいました。
アスラさんはこの状態に気付いていたのでしょう、侍従さんに何か目配せをしていました。
以前アスラさんにお話を聞いていたので「なんとなく」理解はしていましたが、この状態に少し「イラッ」っとしましたよ!
ですが、私にはこの状態をどうする事も出来ません。
ソールさん用にお土産を持って来たのですが「お世話になった方」が部屋付きの侍女さんやメイドさんでは無く、関係の無い侍従さんと言うのはどういう事なのか!ソールさんやステイさんは良いのかもしれませんが、リープさんは女の子です。同性である女性からこの扱いを受けるなんてどれだけ心細い事でしょうか・・・!
・・・取りあえずこのイライラを抑える為に、甘い物を要求します!
丁度「プリン」を持っていたので、みんなで食べる事にしました。
侍従さんに「食べさせても大丈夫でしょうか?」と聞いたら「大丈夫ですよ」と返って来たので、スプーンだけ用意して貰いました。
・・・さすが皇宮です。気軽に使用出来そうもない銀色のスプーンが用意されました。
ステイさん、リープさん、ソールさん、アスラさん、私。それぞれの前にプリンを置きます。私が持ってきたバスケットにはまだ入っているので「もし夕食の時に出せるのであればお2人の食事に付けてあげてください」と侍従さんに伝えたら快諾して貰えました。
たくさんプリンを持ってきたので「ただ、日持ちはしないのでそれ以外は皆さんで食べて下さい。」と侍従さんに伝えると、侍従さんには驚かれました。でも、みなさんにはソールさんがお世話になったのです。私からの心ばかりのお礼なので受け取って貰いました。
「ぷりん!」
ソールさんは大はしゃぎです。いつか「プリンの歌」を歌ってくれるのではないかと思うのですが、どうでしょう?私はその日を待っていますよ。
ステイさんとリープさんは不思議そうにプリンを見ています。
ただ、ステイさんは私の作ったリリンパイを食べているので、恐る恐るスプーンで掬って一口食べます。
「!?!?!?!?!?」
ステイさんがプリンに衝撃を受けています。
そんな様子のステイさんに触発されたのか、リープさんもプリンを食べます。
「!?!?!!!!!!!!!!」
リープさんもプリンに衝撃を受けたようです。
一口食べてフニャリとしている姿は、本当に「天使」の様です。
「・・・・おかしゃん、めっ!」
ソールさんったらどうしたのでしょう?プリンは1人1つですよ?
その後、暫くお2人と一緒に居たのですが、皇城への滞在可能時間が迫っていたのでお家に帰ってきました。
ステイさんとリープさんには、後2日間頑張って欲しいです。
帰りに露店を見ながらお家に帰って来たのですが、不意に思い出した事があります。
・・・自分のウエスト事情に頭が一杯だったので、義両親用にと刺繍を刺したハンカチを渡すのを忘れていました。
今、目の前で繰り広げられているソールさんとネコさんのモフリあいにアスラさんは和んでいるので、アスラさんには後でハンカチを渡そうと思います。
モフモフは良いものですよ・・・。
義両親はジーナから報告を受けているので、全力待機でハンカチを待っています。