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32 おどろきの・・・ 1ページ目







日差しも暖かくなって来て、洗濯物が捗る季節になってきました。




新しいお家に入居して1週間が経ちました。



最初は使うのも恐れ多かった高級家具の皆さんですが、1週間という短い時間の流れで「私仕様」にカスタムされてしまいました。アスラさんにも手伝って頂いたので、アスラさんも立派な「共犯者」ですよ。


それにしても、さすが高級家具です。引き戸の開け閉めや、引き出しの使い心地はとても良いです。

居間に設置してある暖炉なんかはとても立派な作りです。今の時期は使う機会が無いので、使うのが待ち遠しいくらいです。


何よりも台所には、驚きの設備「冷蔵庫」が置いてありました。

この世界での冷蔵庫は「あちら」の世界ではだいぶ古い「氷」を入れて冷やすタイプの冷蔵庫なので、氷の確保が出来ないと「ただの収納庫」状態となります。

私の実家にも置いてありましたが、基本は収納庫状態でした。

冬は氷入れ専用容器に水を入れて外に出しておくと氷になるからいいのですが、夏場になると食べ物の傷みが早いので、どうしても氷の需要が多くなります。しかも、氷は販売している物を買わないと手に入らなかったので大変です。




そんな中、我が家では意外なMVPが決定しました。



そのMVP選手が、空気を読む事が出来無かったとしても!


そして、生活が少し雑だったとしても!


・・・何だか恥ずかしい事を言って来ても・・・!



全て許せてしまえそうです!




まさか、アスラさんが「氷」属性持ちだなんて!




冷蔵庫に思わずはしゃいでしまった私が「氷をどうにか確保できるようにしたいですね。」とアスラさんに言ったら

「こういった事で魔法を使うのは初めてですが、やってみますか?」とアスラさんが言って来た時には本当に驚きました。しかも朝と夜に氷を作ってくれるなんて、ステキ過ぎです。魔力で作った氷は長い間融ける事が無いので、本当に助かります。


私が思わず「凄いですアスラさん!素敵ですアスラさん!ありがとうございます!」と言って抱き付いてしまったのは仕方がない事だと思うのですよ?ソールさんもコップに氷を作って貰って「ちゅめたい!」と言って嬉しそうにはしゃいでいますからね。きっと同じですよ。



その上アスラさんは、毎朝氷を作るのと一緒に飲料用のお水を台所の水瓶に補充してくれます。なので、私の朝のお仕事は本当に楽です。

このお家、井戸はお家の裏側にもありますが、台所から直通で行ける扉があるので水周りは本当に便利な作りとなっています。



裏庭に何か野菜の種を植えてみようかなぁ。なんて考えています。

今度チムリスを見に行く時に、一緒に見て来よう。


何だかんだ言って、未だにチムリスさんを見に行く事が出来ていません。アスラさんはその事を気にしているみたいで「次の休みには」と言ってくれていますが、最近はお仕事が忙しいのかお休みに休日出勤しています。

新年を迎えての2月ですからね温かくなって来ると、浮かれて残念な行動をする人は世界を超えてもいらっしゃいます。商業都市でも今の時期は兵士団の皆さんが見回りを強化しますからね、帝都でも兵士団の方が良く巡回しているのを見ます。騎士団の皆さんも各都市との街道を見回りに出たりとか忙しそうです。


私とソールさんは、お買い物に行く時にご近所さんに「あなたも気を付けるのよ?」と気に掛けて貰っています。

「はい。ありがとうございます。」と言ってソールさんとお買い物に行くのですが、商店街の皆さんも似たような事を言ってきます。アレですか?今の時期に流行る(?)あいさつみたいなモノですかね?




2月も中頃となって、世間では「新緑祭」の話題で賑やかになっています。



商業都市でも毎年新緑祭は行われるのですが、商業都市以外で迎える新緑祭は初めてです。



商業都市では「妖精姫」「妖精の騎士」のペアが2日間「各区」に滞在して、9日目に領主館から商業都市を1周するパレードをして最後に領主館に戻ります。そこで領主さまに「木の枝を模した『杖』と『剣』」を渡して「妖精姫」「妖精の騎士」役の2人はお家に帰ります。10日目の最終日まで居ないのは「女神さまに報告に戻った」という事になっているからみたいですよ。


帝都では8組の「妖精姫」「妖精の騎士」がお祭り期間中の8日間、帝都の広場を日替わりでパレードするようです。そしてお祭り9日目に1番人気のあったペアが皇帝陛下に「木の枝を模した『杖』と『剣』」を渡すようです。

選ばれなかった7組の「妖精姫」「妖精の騎士」の皆さんはどうするのでしょう?


お義母さんに聞いてみたら「妖精さんですもの、妖精さんのお国に帰っているのではないのかしら?」と言われてしまいました。

言われてみれば、確かにそうなので「確かに。」と納得してしまいました。





新緑祭の期間中、アスラさんはお休みの日が有るのでしょうか?

一緒にお祭りを回れるのか聞いてみないといけませんね。





「おかしゃ~ん。きましたよ~。」

ソールさんが玄関から私に来客を伝えます。


どちらさまでしょう?そう思って玄関の扉をあけると、門の所にアメリアさんとローラントさんが居ました。




「突然お邪魔してすみません。」

アメリアさんがこう言ってお土産の焼き菓子を私に差し出しました。



「うわぁ!この焼き菓子は『プルミエール』の焼き菓子ですね!」

アスラさんの御実家で見慣れた包装紙に、私は声を上げます。


「先日リンカーラさんから頂いて、美味しかったのでお土産に持って来たのです。」

「うふふっ。」と笑いながらアメリアさんが言います。



「いやぁ。誰かの家に持って行く手土産なんて、ここ最近『酒』くらいしか準備した事が無いからね。だから何が良いか迷ったんだけど『持って行くなら食べるものが良いです!』ってアメリアが言うから、じゃあ何にする?ってなって思い付いたのがコレだったんだ。」


・・・ローラントさんがお土産の説明をしてくれましたが、私のお兄ちゃんはお土産に「お酒」は選びませんよ?やっぱり年齢詐称ですか?



ジッと疑惑の眼差しを向けてしまいましたが、ローラントさんもアメリアさんも気にした様子はありませんでした。



「お茶の準備をしますので、少し待って下さい。」そう言って席を離れます。


「あっ!大丈夫ですよ。少し挨拶に来ただけですから、すぐ帰ります。」

アメリアさんがそう言って席を立とうとします。


「アメリアさん。私の帝都で初めてのお客さまですから、ぜひお持て成しさせて下さい。」

私の『お客さま』第1号ですよ!








「皆さんは甘い物とかお菓子は大丈夫ですか?」

そう聞きながら、おやつ用に作っておいたリリンの実で作った「リリンパイ」を切り分けます。(リリンはリンゴみたいな感じです。)


「私は大丈夫です。食べれます。」

アメリアさんがワクワクしたように言います。


「甘いのはちょっと・・・。」

ローラントさんがそう言ったので、作り置いているクッキーをパイと一緒に差し出します。パイが無理そうだったらクッキーを食べて貰いましょう。


「・・・?」

ステイさんは「甘い物」がどういった物なのか分からないのか首を傾げています。


「おいしいよ?」

ソールさん、まだ皆さんに配っている所なので食べるのはもう少し待って欲しいです。

ステイさんはそんなソールさんを見て「たべます。」と言ってくれました。


「はい。どうぞ。」

そう言ってステイさんの前にパイを置きます。1つ残ったのはアスラさん用に取っておきましょう。アスラさんは料理もお菓子も「美味しいです。」って言って食べてくれるので、腕の振るい甲斐があります。




「美味しい!」

アメリアさんがそう言ってパイを食べているので、ローラントさんが自分の分をアメリアさんの方に差し出します。


「ローラントも食べてみて!そこまで甘くないからとても食べやすいわよ。」

アメリアさんがパイをローラントさんに勧めます。ステイさんも黙々とパイを食べているのでお口にあったのでしょうか?ソールさんはパイを食べ終わっているので、クッキーに手を伸ばしています。



「うぅ・・・。」ローラントさんが躊躇いがちにパイを口にいれます。



何でしょう、このドキドキ感。・・・いえ、ときめいている訳ではありませんよ!

『お菓子類』を『甘い物』と関連付けて一括りにされるのは仕方が無いのです。そういった考えを持っている方の方が結構多くいます。

私が前世の記憶を思い出してから、初めてお菓子を口に入れた時の驚きが分かりますか?


普通の食事では思わなかったのですが「お菓子」を食べた時に「あれ?何かおかしいぞ?」と思うまでも無く、こちらのお菓子は「甘い」のです。


ニリアさんが焼き菓子を作ってくれている所を見て、使っている砂糖の量に驚いたのは良い思い出です。こちらの皆さんは「太め」の体型の方が目立っていたので、もしかしたら果物を食べる方が健康的に「糖分」を採れるのではないかと本気で考えました。


お菓子の甘さに「これはいけない!」と思って、お家で簡単に作れるお菓子を「おやつ用」に作り置きしました。ニアちゃんと私が2人居る時はクッキーを一緒に作ったりしたので、我が家では「お菓子」と言ったら「クッキー」を連想できるくらい浸透しています。



「うん!これなら食べれる!」

ローラントさんはそう言ってパイを食べて行きます。アメリアさんも「良かったね。」と言っていたので、これからは一緒にケーキとかも食べれますね。



不思議な事に、高級菓子である「プルミエール」の焼き菓子は甘さ控えめの優しい味です。


平民にとって甘いお菓子は毎日食べれる物ではないので、1つ1つが強い甘さになってしまうのは仕方が無いのかもしれませんが・・・

限度を超えた「甘さ」は、ヒトによっては気分が悪くなる時もあります。


ローラントさんはきっとそう言った分類に入っていたのでしょう。




ソールさんが私のパイを狙っていますが、大人な私はパイを切り分けてソールさんのお皿にのせます。

ソールさんが嬉しそうに「ありがと」と言って食べているので、私も自分の分を食べましょう。





「美味かった!」

ローラントさんがそう私に言います。


「えぇ。本当に!・・・このお菓子はどちらで買って来たのですか?家に買って帰ろうかなと思います。」

アメリアさんがそう言って持っていたカップをテーブルに置きます。ステイさんも満足したのかソールさんと一緒にクッションを抱えて眠っています。



「えぇっと?」アメリアさんとローラントさんにリリンパイは大好評だったようです。良かった。



「すみません。実はこのパイは私が作ったもので、買って来たのはリリンだけなのです。」

こんなに気に入って貰えたのならお土産用に作っても良いのですが、リリンを煮る所から始めないといけないので少し大変です。


「えぇ!手作りですか!凄く美味しかったです。」

「凄いな!」

お2人はそう言って私を褒めてくれるのですが、こちらの皆さんは少しの事でもとても良く褒めてくれます。

アスラさんも食事の時や、日常の事で「ありがとう」と良く言います。


「ありがとう」って言って貰えると「次も頑張ろう!」と思えるから不思議ですね。




私がお2人から「称賛」されているとアスラさんから『これから帰ります』と連絡が入ったので、アスラさんに『気を付けて帰ってきて下さい。あと、お客さまが来ていますよ。』と伝えました。





「長居する気は無かったのですが、結構な時間お邪魔していしまいました。すみません。」

お2人からこう言われましたが、引き止めたのは私です。


「良かったら夕食もどうですか?」と私が言うと。お2人は「また今度、改めて訪問します。」と帰る身支度を始めようとしたのですが、ちょうど立ち上がった所に「ただ今戻りました。」とアスラさんが帰宅しました。



「せっかくですから、やっぱり夕食を食べて行って下さい。」私はアスラさんの外套をコートハンガーに掛けながらお2人に言います。



ローラントさんとアメリアさんが苦笑いをしながら「いいえ。今日は長居してしまいましたから・・・。」と「また今度よろしく頼む。」と言っているのを、アスラさんは「?」といった感じで見ています。



「今日は世話になった。」

ローラントさんがステイさんを抱えて玄関を出ます。


「本当に楽しい1日でした。今度は是非私達の家に遊びに来て下さい。」

アメリアさんもそう言って一緒に出て行きます。


ステイさんは知らない所に来た事で疲れが溜まっていたのでしょう、今もまだぐっすりと眠っています。



「もし良かったら、皆さんで食べて下さい。」

そう言って、今日作っていた赤ベリーアのジャムとリリンのジャムをアメリアさんに渡します。

(ベリーアは赤色がイチゴ、黄色がサクランボ、青色がブルーベリーの様な味です。)


「焼いたパンに塗って食べたり、紅茶に入れて飲んで下さい。甘さは強くないと思うので、ローラントさんも食べれると思います。」





「ローラント達が来ていたのですね。」

皆さんを見送った後にアスラさんが言います。


「えぇ。本当はアスラさんに用事があったみたいなのです。」

夕食の準備をしながらアスラさんとお話をします。


お茶を出した時にアスラさんが居るのか聞いてきましたから「今日はお仕事に行っていますよ?」って伝えたら「そうか・・・。」って言っていましたし、アメリアさんも「残念でしたね。」とローラントさんに言っていましたから絶対にそうです。



「それは申し訳ない事をしました。今度会った時にでも聞いてみます。」


アスラさんは私にそう言って、暖炉前の「ごろ寝スペース」に居るソールさんを見ます。


ソールさんですが、眠っている時に何かを掴んでいると大人しく眠れる事が分かりました。先日完成したクッションカバーをソールさんお気に入り(?)のクッションに付けたら、大興奮してそのまま眠ってしまいました。

その時は特別何も思わなかったのですが、アスラさんに帰って来た時「静かですね。」と言われて「そう言われてみれば!」とその時に気付いたのです。

夜に1人では眠れないソールさんの為に、ただ今抱き枕を製作中です。



アスラさんにローラントさんの年齢を改めて聞いてしまったのは、悪気があった訳ではないのです。


「再確認」ですよ。













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