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31 どきどきの・・・ 4ページ目









「・・・・・。」



「・・・・・。にゃ~・・・。」




・・・どうしましょう。


可愛らしい生き物が私の目の前にいます。




いつも通り「これから帰ります。」とアスラさんからの連絡が入ったので、夕食の準備をしていた私は仕上げの前まで調理を終えてアスラさんの帰りをソールさんと待っていました。


ただ、いつもと違っていたのは「家に着きました。外に出て来て貰っても良いですか?」と連絡が入った事でしょうか。

入り口の扉を開けたらソールさんが飛び出しましたが、「ぴぇ~~!」と言ってUターンしてきました。私が外に出てからもソールさんは玄関の扉からお顔を覗かせるだけで、そこから動く気配は有りません。ソールさんは私を悶えさせるつもりでしょうか?





「・・・フィーナ。無理はしなくても良いのですよ?」

ソールさんの様子を見てアスラさんはこう言っていますが、それはこの子に「とび付いても良い」って事ですか?


私もソールさんを見てからアスラさんの方を見ます。アスラさんは困ったように私を見ていますが、私は確認しなくてはいけません。



「アスラさん。この子に触っても大丈夫ですか?」

サイズが違うので驚いてしまいますが、アスラさんの騎獣は毛足の少し長いカリャンです。シッポも1本なので、前世での「猫」にとても近いです。(勝手にですが)とても親近感がわいてきました。



「えぇ。大丈夫です。」

アスラさんは私が騎獣を撫でやすいように「伏せ」の状態にして下さいましたが、もう、本当に「猫」と言っても良いその姿に私は歓喜で心打たれました。ゆらゆらと揺れるその尻尾が1本なのもこの子が「猫」と思える要因かな?と思います。



頭の上には手が届かないので、お鼻の上を撫でてみます。

そんな私の手の動きに合わせるように「にゃ~。」と鳴いていますが、大丈夫ですよね?



「・・・騎獣さんは、大人しい子ですね。」


私がそう言ってアスラさんの方を振り向くと、アスラさんは私の行動が余程意外だったのでしょう。

「えぇ。」と言って私を見ています。



「ふふっ。アスラさん驚きすぎですよ。こんなに大人しい子ですもの、私も安心して触れますよ?」


「いえ、本当にフィーナには驚かされます。」

そう言ってアスラさんは騎獣さんを「伏せ」の状態から「お座り?」の状態にします。



ですが、騎獣さんはしきりに私のにおいを嗅いでいます。どうしたのでしょうか?その様子に困惑してしまい、アスラさんを見ます。



「フィーナの事を憶えようとしているのでしょうか?私もこんな状態は初めてです。」

アスラさん自身が、困惑しています。


私の手は騎獣さんを撫でたくて仕方がないのですが、私を憶えようとしていらっしゃるのであればこの状態も甘んじて耐えましょう。


ひとしきり私のにおいを嗅いで満足したのか、騎獣さんは少し後ろに下がりました。



もう一撫で・・・



そう思って手を伸ばしましたが、その手が騎獣さんを撫でる事は出来ませんでした。


どういう訳か、私の手は騎獣さんのお口に入っています。時折ザリザリする物が手に当たりますが、どうやら私の手を舐めているようです。



「こ、こら!」

そう言ってアスラさんが騎獣さんから私の手を出そうとします。



「やーーーーーーーっ!!」

今まで、私の後ろで一部始終を見ていたソールさんが声を上げます。




「ふふっ。大丈夫ですよ。ほら。」

私はそう言って騎獣さんから手を引き抜きます。


「大丈夫ですか?念の為、見せて下さい。」

アスラさんは騎獣さんのヨダレ塗れの私の手を真剣に見ていますが、私はそんな様子が面白くなってきました。


「ふふふっ。アスラさん、ソールさん、本当に大丈夫ですよ。」

そう言って2人に手を開いたり握ったりして見せました。


「良かった、大丈夫そうですね。今までこんな事は無かったのですが、一体どうしたのでしょう?」

アスラさんは騎獣さんを見ながらそう言います。


騎獣さんもアスラさんが「怒っている」事を理解しているのか、「伏せ」の状態でこちらを伺っています。



何この子!可愛すぎです!



「アスラさん。この子をあまり怒らないで下さい。今回の事は私が悪かったのです。」

私の言葉にアスラさんが驚きます。


「いえ、この子達は『害意』に敏感です。ですがフィーナは始めから『好意』で接していましたから、フィーナは何も間違っていませんよ?」



アスラさんは私の溢れる「もふもふ愛」を感じ取っていてくれたのですね。




・・・何だか、少し恥ずかしいです。





「いえ、この子は本当に悪くないのです。ただ、私の手から『お魚』の匂いがするので『確認』していたのではないのでしょうか?昨日、アスラさんは『カリャン』の騎獣と言っていたのに、何も気にしないでお魚を調理していました。良く手を洗ったつもりだったのですが、まだ匂いがするのでしょうか?

・・・ね?やっぱり私の方が悪いです。」

私がそう言うと、アスラさんが「魚?」と言って私の手を見ます。



「えぇ。ほら、昨日、商店街の魚屋さんでお魚を買いましたよね?そのお魚です。あっ!今日の夕食は『お魚のマリネ』ですよ?」



昨日、商店街でのお買い物の時に「明日の夕食はお魚にしましょう!」と私はアスラさんに言いましたよ?

アスラさんも「いいですね。」って言ったではありませんか!



「魚・・・。」

そう言ってアスラさんは私の手と騎獣さんを交互に見ます。



「にゃ~~・・・。」

騎獣さんはそんなアスラさんを見て、まるで「ごめんなさい」と言っているかのように一鳴きしました。



ソールさんは私が無事なのが分かると、騎獣さんが怖いのかやっぱり後ろに下がってしまいます。



「ふふふっ。私は騎獣さんと一緒に暮らすの大丈夫ですよ?ソールさんはどうですか?」

ソールさんの傍に行って、ソールさんに目線を合わせて聞いてみます。騎獣さんはとても可愛らしいのですが、ソールさんが嫌がったら騎獣さんは騎士団の獣舎でお世話をして貰いましょう。



「そーる・・・、こわいけど・・・おかしゃんが『だいじょぶ』なら、『そーる』も、だいじょぶ!」

ソールさんは、恐る恐る騎獣さんに近付いて行きます。


騎獣さんもソールさんを見ていますが、近付いてきたソールさんが怖がらない様に体勢を「伏せ」の状態のままで待ってくれています。やっぱり、この子賢いですね。


ソールさんは騎獣さんの傍に寄ったけれど、どうしたらいいのか分からなくて目の前でピョコピョコしています。その後ろ姿が可愛らし過ぎて悶えそうです。


私は「えい。」とソールさんを抱えて一緒に騎獣さんを撫でます。


動物との触れ合いはソールさんには未知の体験だったのでしょう。とても嬉しそうに「もふもふ」と言いながら騎獣さんを撫でます。騎獣さんも嬉しいのか「ゴロゴロ」と喉を鳴らして私達に撫でられています。


そんな私達を見て、アスラさんはホッとしたような表情をしていました。








騎獣さんが個人のお家で暮らすにはたくさんの手続きする事があるみたいなので、暫くは騎士団の獣舎にいる事になるそうです。必要な書類はお城で揃えられるみたいなので、アスラさんは騎獣さんに乗って一旦騎士団に戻るそうです。


以前はこちらで一緒に居たのですが、アスラさんが1月中は帝都のご実家に居たので騎士団の獣舎に預けたみたいです。


ちなみに、昨日アスラさんが「チムリス購入」を許可してくれたので、今度アスラさんがお休みの時にお店を見に行く事になっています。今から楽しみで仕方がありません。


あと残念な事ですが、大きなチムリスは騎獣には向かないので「害獣」扱いの様です。

「騎獣のカリャンが嬉々として狩りをする」と、アスラさんは気まずそうに私に教えてくれました。

・・アスラさんの騎獣さんもカリャンタイプの騎獣ですものね。私のチムリスはケージ込みで購入をお願いしたいです。





アスラさんが騎獣さんを預ける為にお城に戻ってしまいましたが、料理は「仕上げ」前の状態なのでアスラさんが帰ってくるのをお家で待つ間にクッションカバーを作ろうと裁縫道具を出します。



「おかしゃん。なにするでしか?」

そう言ってソールさんは私のやろうとしている事に興味津々な様子で見ています。


「クッションカバーを作るのですよ。」


ソールさんは今もお気に入り(?)のクッションを抱え込んでアレコレしていますが、5つあったクッションの中で何故かあの1つが気に入ったようなのです。昨日からソファーに座る時はあのクッションを持つので、1つだけボロボロになっているのが目に付きます。



「ソールさんは何色が好きですか?」

そう言ってソールさんの前に何枚か生地を出します。


「にゅ?」

そう言ってソールさんは私を見ますが、どうしましょう。


「ソールさんの持っているクッションにカバーを付けて、『ソールさん専用』のクッションにしようかなと思うのです。」


私がソールさんにそう伝えると、「そーるの?」と聞き返してきます。


「えぇ。ソールさんはそのクッションがお気に入りの様なので、分かるようにカバーを作ろうと思うのです。」


昨日、クッションのあまりの状態にアスラさんが片付けようとしたら、ソールさんがとても嫌がったのでソファーに置いていますがやっぱり状態が状態なので目立ちます。


・・・そう。ソールさんが「もふもふ」しつくしたクッションを、どうにか再利用できないか考えた結果が「クッションカバーを作れば良いじゃないですか!」という考えになったわけです。



「そーるね。この『いろ』がしゅき。」

そう言ってソールさんが選んだのは「黄色」の生地でした。


「手芸用に」と黄色の生地が荷物の中に何枚かあったので、それらを使ってパッチワーク的なクッションカバーにしようと思います。


「差し色は緑か赤にしようかなぁ。」なんて考えながらクッションのサイズを測っていたら、「これから帰ります」とアスラさんから連絡が入ったのでキリの良い所で作業を止めて裁縫道具を仕舞います。

「今日はココまでです。続きは明日にしましょう。」とソールさんと夕食の準備に取り掛かりました。




アスラさんが以外とたくさんの書類を持って帰って来たので驚きました。



・・・考えてみたら「騎獣」は「自家用車」扱いになるのでしょうか?

ずいぶんと可愛らしい変化なので、全然気が付きませんでした。そうですよね、それならば入り口横のあの建物が「車庫」(騎獣さんのお家)になるのが分かる気がします。


ソールさんがアスラさんの持って来た書類に興味を持ってしまいましたが、アスラさんは上手くかわしています。



もうそろそろ夕食が出来るので、食事の準備をしながらそんな2人を見ています。













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