29 どきどきの・・・ 2ページ目
「とりあえず服や小物類を各自整理しましょう。」
そう言ってアスラさんと私は荷解きをしていきます。ソールさんは荷解きを出来ないので私がソールさんの荷解きをしていましが、隣のアスラさんの部屋の方から「バキッ!」「ドカッ」って言う不穏な音が聞こえて来たので心配になってソッと覗いて見たら事件が起きていました。
アスラさんクロゼットの収納力を力技で広げようとすると、一気に御実家に送還となりますよ?その扉、傾いているようですがキチンと閉まりますか?
私の視線に気付いたアスラさんが困ったようにクロゼットの扉を押さえています。・・・・確か、外の物置に日曜大工に使えそうな工具が入っていた気がするので、先にクロゼットの扉を直しましょうか。
「・・・すみませんフィーナ。」
アスラさんが申し訳なさそうに私の指示に従って衣服類を片付けて行きます。
「大丈夫ですよ。クロゼットの扉も元に戻りましたし、頑張りましょう!」
私の言葉にアスラさんが申し訳なさそうにしています。クロゼットの事は予想外でしたが、収納に関してはは想定の範囲内でした。アスラさんのご実家の「優秀」なメイドさんがいたら、片付け方なんて分からなくなってしまいますよね。
・・・アレですね。アスラさんは「貴族」として生活していましたから、食事の時や普段の生活時の所作はとても綺麗です。こういった事はいきなり出来る事ではありませんし、アスラさんは今までこういった事とは無縁の生活を送っていたのですから仕方がありませんよ。
「これから暖かくなりますから、これから着ない厚手の物やコート類はお部屋のクロゼットに仕舞わないで下さい。納戸に仕舞っておきましょう。」
私の部屋は収納が大きいのでそのまま仕舞えるので大丈夫なのですが、アスラさんとソールさんのお部屋は備え付けのクロゼットくらいしか衣類を仕舞える所が無いので、納戸に季節物の服を置くようにしないと洋服でお部屋が溢れかえってしまいます。とりあえず、寒い時に着る服は葛篭から出さないでおきましょう。そのまま仕舞えるので葛篭は便利です。中身を出してしまった葛篭は違う物を入れておきましょう。
せっせと荷物を仕分けて行きます。
アスラさんはお仕事の都合上お休みが今日1日だけなので、出来なかった事は少しずつ片付ければ大丈夫でしょう。
アスラさんと私が片付けをしている間、ソールさんは葛篭が気に入ったのか蓋を外した葛篭に入って楽しそうにしています。
「だいぶ片付きましたね、この辺で一休みしませんか?」
アスラさんは衣類が落ち着いたので小物類に手を出そうとしていましたが、私のこの言葉に「良いですね。」と言って1階に下りました。
今日のお昼はお屋敷の料理人さんが作った物があるので、そちらを食べます。
「そうでした、ご近所さんへのあいさつをしようと思うのですがどうしましょう?」
少し遅めの昼食となりましたが、引越しをして来たとなればご近所さんへのあいさつは欠かせません。アスラさんはこちらにずっと住んでいましたが、私はこちらに越してきた形となります。どうするのかをアスラさんに聞いておかなくては!と思っていたのです。
「そうですね、昼食を終えて一息ついた頃に伺ってみますか?」
アスラさんも気にしていたのか、あいさつは今日行く事になりました。
「アスラさん、以前はどちらのお宅にあいさつをしたのですか?」
食事が終わってからアスラさんに聞いてみます。
「すみません。この家に入る時、必要な手続きはギースに任せてしまったので良く分からないのです。」
アスラさんは申し訳なさそうに返事をして下さいますが、問題ありません!これも想定の内です。
「では、ギースさんから預かったこちらの手紙を開けてみましょう!」
じゃーん!と言ってギースさんから「困った事があったら開封して下さい。」と言われて渡された手紙をアスラさんに渡します。
「ギースからですか?」
アスラさんは手紙の中身を確認します。
アスラさんが封筒を開けて中を確認している間に、使った食器を片付けて行きます。「そーるも!」と言ってソールさんも片付けるのを手伝ってくれましたから、あっという間に片付けが終わりました。
「ありがとうございます。」とソールさんに言ってアスラさんの所に一緒に戻りましたが、ご飯を食べてお腹がいっぱいになったのかソールさんは眠たそうです。
「前回はこの家の両隣り3軒先までと前の2軒に挨拶に行ったようです。今回はそちらの8軒と家の後ろ3軒に挨拶した方が良いだろう。と書いてありました。
折角ですから、商店街の方まで足を延ばして何処か見て回りますか?」
アスラさんがギースさんからの手紙を読んで私に提案して来ます。
「お出かけですか!良いですね。行きましょう!」
ちょっぴり片付けに飽きていた私が、このお誘いを断るハズがありません。
「帝都は広いので一気に案内は出来ませんが、近くの商店街はこれから先も利用するようになります。
では、外出の準備をしたら行きましょうか。」
今日は朝から動き通しだったので着替えた方が良いかもしれませんね。
「そーる、ねむい・・・。」
目を擦りながらアスラさんに言っています。
「ソール、取りあえず着替えよう。後は寝ていても良いから。」
アスラさんはそう言ってソールさんを抱えて部屋に向かいます。
「アスラさん。」
私の呼びかけにアスラさんが「どうしました?」と振り返りました。
「お部屋の前に籠を置いておいたので、着替えた洋服はその籠に入れて下さい。後で私が回収して洗濯します。」
アスラさんは私が言った事がいまいち理解できなかったのか「?」と首を傾げてしまいましたが、スグに「分かりました」と言って階段を上がっていきます。
私も着替える為にお部屋に行きましたが・・・・。そうでした、ソールさんとアスラさんの荷物の片付けを重点的にしていたので、私の荷物は来た時のままの状態でした。
・・・まぁ、私は明日も時間がありますからその時に少しずつ片していきましょう。
義母さんからの荷物は手を付けないで自分の荷物から着替えを出します。
姿見(全身が見れる鏡ですよ!)で全身のチェックと髪型の確認をして1階に下ります。階段の所でアスラさんとソールさんが部屋から出て来たのが見えました。
「ソールのクロゼットが使いやすく仕分けられていたのに感動しました。」
アスラさんはそう言って私の仕事を褒めてくれます。
「そう言って貰えると、ヤル気が出てきます!頑張りますね!」
私がそう言ってアスラさんに抱えられているソールさんを見ます。
「ずっと動いていたからでしょう、昼食で満足して眠ってしまったようです。」
スヤスヤと眠るお顔と違って、もぞもぞと動いているソールさんは寝心地が悪そうです。
馬車に乗っていた時も良く眠っていましたがここまで激しかったかと言われると、そうでも無かったように思います。
「ソールさんは夜に1人で眠れるのでしょうか?」
心配になった私がアスラさんに言います。アスラさんも同じ事を心配していたのかソールさんを見ます。
「あちらの家にいた時は私と一緒でしたから・・・。
ソールも城にいた時は個室だった様ですが、その時の状態を私は分からないのです。今日から暫くは1人で眠れるのか様子を見てみましょう。ソールが1人では眠れそうにないようなら、私の所で一緒に寝るようにします。」
お口をムグムグしながらソールさんは眠っています。手もニギニギしているので何か捕まえようとしているのでしょうか?ご近所さんに配ろうと思って持って来た「布巾セット」を1つ持たせてみました。暫くはニギニギしていましたが何か納得したのでしょう、ソールさんは大人しくなりました。
「フィーナ、それは?」
アスラさんは、私が持っているバスケットに入っている「布巾セット」が気になったのか聞いてきました。
「これですか?引越し先の方に配ろうと思っていた「布巾セット」です。
商業都市では引越しをする時や、引越し先のご近所さんにあいさつに行く時に何か粗品的な物を配るのですが・・・。もしかして帝都では、あまりこういった事はしないのでしょうか?
帝都でも同じように考えていたのですが、どうなのでしょう?止めた方が良いですか?」
何でしょう、一気に不安になってきました。
「いえ、大丈夫ですよ。商業都市から来たフィーナが一緒に配るのです、何の問題もありません。
ですが、ソールが握っているこの布巾はどうしましょう?」
アスラさんがこう言ってくれたので、私は配りますよ!
「こちらで何軒分配るのか分からなかったので、配る用の布巾セットはたくさん準備して来たので大丈夫です。
布巾は何枚あっても良いですからね。」
お母さんと何が良いのか10分くらい話し合って、目に付いた布巾セットを選んだなんて言えません。
「なるほど、では行きましょうか。」
帝都に来て1月。ようやく帝都散策ですよ!




