28 どきどきの・・・ 1ページ目
ようやくあらすじのお話が始まります。(・・・本編?)
みなさんお久しぶりです!フィーネリオンです。
今日からアスラさんのお家に引越しです。
私の実家から荷物が届くので、朝からアスラさん達が住んでいたお家に来ていますよ。
「広いお家ですね!2階建てだなんて驚きです!」
「えぇ、精霊様の契約者にどういった方が選ばれるのか分からない内に建てられたようです。」
帝都に「庭付き一戸建て」(しかも2階建て)を持つなんて、平民には夢のようなお話です。
・・・アスラさんからしたらランクダウンになるのかも知れませんが、私は大満足ですよ!
「しかも、家具類はお義父さんが準備して下さったので、今日は私の荷物待ちなっているのが申し訳ないくらいです。」
「いえ、両親で楽しそうにしていましたから、フィーナは気にしないで下さい。
・・・むしろ、今は現実を見た方が良いかもしれませんね。」
・・・そうなのです。お家の補修と同時進行で家具の入れ替えもして頂いたので、建物の中はとても素敵な内装になっています。
お義父さん、私達が「貴族」の括りに入ったから頑張ってしまったのですね。ギースさんもお止しなかったのでしょう、誰が見ても高級そうな家具がこのお家に設置してあります。
そうなのです、このビックリするような高級家具が普通のお家に設置してある現状が、私達の悩みなのです。
「・・・父上も悪気があるわけではないのです。・・・多分。」
アスラさんが言います。
「大丈夫です。分かっていますよ。こんなに良くして頂いたのですから、頑張って維持していきましょうね!」
私も意気込みます。
「ふかふか~~。」
ソールさんによってソファーの上に置いてあったクッションが既に1つ犠牲となっていますが、アスラさんと私は見てませんよ。
先日、お城に行った時にアスラさんと同じ「契約者」であるリンカーラさんとローラントさんにお会いしました。
最初から契約者である3人が帝都に帰ってきて、全員が揃った時に宰相さまとお会いする予定だった様です。
その際に私達がいなくても良いように采配する予定だったみたいなのですが、宰相さまは私達が付いて来てしまったので驚いていました。
その際、何度もリンカーラさんに確認していましたから、本当に驚いていたのでしょう。
リンカーラさんは辺境伯である「サイジェル家」の跡取りだった様です。今回の事で弟さまに家督の引き継ぎをして「精霊さまと契約」をしたそうです。最初「リンカーラさま」とお呼びしたら「普通に呼んで欲しい」と言われたので遠慮なく「リンカーラさん」と呼ばせて頂いています。
そんなリンカーラさんは、キリッとした大人の女性です。アスラさんには「そのままで良いですよ。」と言われますが、私はリンカーラさんみたいになりたいです。
そんなリンカーラさんの伴侶として選ばれたのが「キール」さんです。
どうやらお2人は「幼馴染」らしくお互いにとても馴染み深い相手みたいです。辺境伯領出身の貴族さまで、アスラさんともお知り合いみたいです。
リンカーラさんと契約をした精霊さまは「リープ」さんと言って可愛らしい女の子です。
「よろしくでしゅの。」と言われた時、「地上に天使が現れた!」と本気で思いましたからね。ソールさんが「めーーーっ!」と声を上げていましたが、どうしたのでしょう?ソールさんも可愛らしいですよ?
もう一人の契約者「ローラントさん」は大きなヒトです。アスラさんも大きいのですが、ローラントさんは体格が良いので圧迫感があります。・・・・あれ?お兄ちゃんと同じくらいの年齢ってアスラさんが言っていたような気がしたのですが?どう見てもアスラさんと同じくらいに見えます。困惑にアスラさんを見てしまったのは仕方がないですよね?
不思議な事に私の事を知っていましたが、冒険者さんとして商業都市にも何度か来ていたみたいです。
ローラントさんの伴侶として選ばれたのが「アメリアさん」です。
東の果樹農園からいらっしゃったみたいで、私と同じ「平民」さんです。
同じ平民出身だからなのか、とても仲良くなりました。ローラントさんも平民出身みたいなので、仲良くできそうです。
ローラントさんと契約した精霊さまは「ステイ」さんと言って賢そうな男の子です。
私の所にあいさつに来た時にソールさんが私の前に立っていましたが、ステイさんは気にしないのかそのまま「よろしくおねがいします。」と言ってローラントさんとアメリアさんの所に戻って行きました。
・・・クールな子ですね。
アスラさんは、リンカーラさんとローラントさんから「犯罪だ!」と言われていましたがどうしたのでしょう?
皇家の皆さんともお会いしました。
私の中では「皇族」ってキラキラしていると(勝手に)思っていたのですが、やっぱり合っていました。
顔面偏差値の高さは異常です。何だか神々しくて、近寄り辛い雰囲気が出ていました。
私達を見た皇帝陛下が、私達に言った「その者達は誰だ?」の一言にその場にいた人達が凍りつきました。
隣にいらした皇妃さまと宰相さまが説明してようやく思い出したのか「そうだったな。」と言っていましたが、絶対に私達の事を忘れていたハズです。
・・・・アレですね、こちらでは恐れ多い立場にいらっしゃる皇帝陛下ですが「思い立ったら先に行動。」が座右の銘みたいな、いわゆる「脳筋(?)」っていう感じの方でした。見た目が良いだけに本当に残念です。
宰相さまには申し訳ないのですが、この国の運命は宰相さまの(皇帝陛下操縦の)腕に掛かっていると言っても過言ではないと思いました。宰相さまは頻りに「胃」の辺りを抑えていたので、後日(アスラさん名義で)胃薬を送らせて頂きましたが、皇太子さまが後を継いだらもっと楽になるはず。その日までは元気に政務をして欲しいのです。頑張って下さい!
そんな皇帝陛下を支える皇妃様がエルリーゼさまです。
「公爵家」出身の皇妃様はとても綺麗な方でした。開口一番に私達に謝罪と労いの言葉を頂いたのですが、その言葉の間に夫である皇帝陛下への罵りが入っていたのは気のせいだと思いたい。
まわりの侍女さんや騎士さん達も気にしていないようだったので、こちらでは通常の事なのでしょうか?
その他にも、今回は皇妃さまのお子様である3人の皇子さまと紅一点の皇女さまとお会いしました。
側室の皆さんは人数が人数ですし、そのお子様たちはこの先成人を迎えたら皇族としてではなく臣下となります。なので、その時は「皇室ご一家」の皆さんと顔を合わせたのです。
皇太子殿下はジュリアンさまと言います。皇太子殿下はお母さんである皇妃さまに良く似ているのか、雰囲気も相まって(前世での)ゲームの重要登場人物で登場しそうです。強いて言うなら、最後の方で「えっ!この人がラスボスなの!?」と言えそうな立ち位置が似合う方です。
2番目の皇子様はヨシュアさまと言います。黒い髪以外はご両親の良い所取りで華やかな印象です。皇位継承権は放棄しているみたいで、普段は魔術師の塔にいらっしゃるようです。
驚いたのはラヴィアーネさま(商業都市の領主さまの令嬢)の魔法調節訓練を担当していらっしゃるようです。黒い髪の毛は前世以来久し振りなので、懐かしく思いました。
3番目の皇子様はサミュエルさまと言います。兄妹は次兄さまを除いて皆さん「銀の髪」です。皇妃さまを除くと瞳の色は皆さん「緑色」となっているので、皇族の方は「緑色」の瞳になるのかしら?
とても朗らかな方ですが、お腹の中では何を考えているのかさっぱり分からない方です。皇太子殿下の事を尊敬しているようで、良く話しかけていたのが印象に残りました。・・・もしかしてブラコンですか?
皇女様がクレアさまと言います。皇妃さまのお子様の中で唯一の女の子と言う事もあり、とても可愛がられているようです。今は3番目の皇子と一緒に帝都の学院に通っているようです。私達にも話しかけて来たのですが、後ろにいた侍女さんはあまり良い顔をしていませんでした。
・・・本当は皆さん「長い」お名前でしたが、アメリアさんや私が呼びやすいように自己紹介をして下さったようです。長いお名前は、一度聞いたくらいでは憶えられる気がしません。貴族年鑑を擦り切れるほど読んで憶えても口で発音できない名前は問題です。
私がホッと安堵のため息を付いたら、隣のアメリアさんの方からも同じように安堵する声が聞こえたのでお互いに笑ってしまいました。
その時に私達の「後見人」として各侯爵さま方が私達3組それぞれに付きました。
リンカーラさんはご実家の「サイジェル辺境伯」が後見人となり、ローラントさんは西の工業都市を治めている「トライデント候爵」が後見人となりました。アスラさんは伯父さんである「スターリング候爵」が後見人でした。
驚いたのはローラントさんです。ご実家が工業都市の「鍛冶師ギルド」のギルド長さんのお家で、そちらの6男だそうです。
ローラントさんが工業都市出身という縁があって、トライデント候が後見人に名乗りしたそうです。
東の農耕地帯を治めている「ダルファン候」と南の港湾都市を治めている「スレイプニル候」のお2人も後見を名乗り出て下さったようですが、先の3名が「身内ですし。」と言ってゴリ押ししたようだと後からアスラさんに聞きました。
その後は特に何も無く「顔合わせ」が終了しました。
その日はアスラさんのご実家に戻って次の日にアスラさんのお家に行こうとしたのですが、義両親に「あちらの家に家具が入っていないから、移動するのは後1週間待って欲しい。」と告げられて今日になったのです。
何だかんだで1月中はアスラさんのご実家にお世話になりました。
2月の初めに学園などの教育機関の入学式が行われるので道路は移動の馬車が増えます。なので、2月5日の今日ようやくこちらに引越しです。
お母さんに立て続けに2通の手紙を送ってしまいましたが「元気そうで良かった。荷物の事は任せて。」と言う返事が来たので大丈夫だと思います。
一緒に兄妹からの手紙も入っていて懐かしく思いました。ただ、弟のスバル君からの手紙が「いつ帰ってくるの?」とか「待ってる。」とか、少し危ない内容だったのでお姉ちゃんは心配です。
「お姉ちゃんは帝都で頑張るからね!スバル君もお家の事お願いね!」としか返事が書けませんでした。
その後も手紙は来ているのですが、返事は同じような事を書いています。
前世の私の記憶を頼りに返事を書きたいのですが、「ムリ」という言葉しか思い浮かびません。どうすればいいのでしょう・・・。
・・・スバル君も新学期も迎えたのだから、健全な学生生活を送れれば良いと思うのです。変な方に進まない事をお姉ちゃんは望みますよ。
「フィーネリオンさんのお宅はこちらで合っていますか?」
アスラさんと一通りお家の中を確認していたら玄関の方から声が聞こえます。
「荷物が届いたようですね」
アスラさんと玄関に向かいます。
「ごくろうさまでした」
荷物配送の皆さんを見送って、改めて自分の荷物を確認します。
・・・何か増えているような気がしますが、家具類は入っていないので気のせいでしょう。
「荷物を部屋まで運びましょう。フィーナは階段を上って左側の部屋を使って下さい。」
そう言ってアスラさんは私の荷物を運んでいきます。
「えっ!そのお部屋はアスラさんが使ってください。私は右側のお部屋で大丈夫ですよ!」
私も荷物を持ってアスラさんの後を付いて行きますが、アスラさんは私の荷物を左側の大きな部屋に運んで行きます。
「私はそれほど荷物がありませんし、フィーナに使って貰った方が良いと思うのです。
・・・私達はこの家を持て余してしまいましたから、広い部屋はフィーナに使って欲しいのです。」
アスラさんは気まずそうに私に行ってきました。
・・・あぁ、そうでしたね。
お義母さん達に「『前の状態に戻った』と私達が判断した場合、即刻屋敷に連れ戻します。」と言われていますからね。
完璧なメイドさんによるお世話は人をダメにしますからね。私はもう一歩で抜け出せなくなってしまう所でした。なので、アスラさんは心配なのかもしれません。
こちらのお家、前世的に言うならば[4LDK]の広さがあります。
私達が1部屋ずつ使っても1部屋余るので、1部屋はどう使うか考え中です。
私が階段を上って左側、アスラさんが右側、ソールさんが真ん中の部屋を使います。各部屋にベットと机・椅子、クローゼット・収納棚が設置されていて、スグに使えるようになっていました。
ただ、私に割り振られた部屋は他の部屋にはない収納部屋と軽く作業のできるスペースがあります、この部屋は「主寝室」と呼ばれる所ではないかと私は思っているのですが、どうなのでしょう?
私の荷物を部屋に運び終わった頃に義両親からの荷物が葛篭6荷届きました。アスラさんも知らされていなかったようで「何でしょうね?」と言いながら葛篭を開けてみたら大量の衣服が出てきました。
アスラさんが1荷開けた時に「もしかして」と思って1階の使われていない部屋で他の葛篭を開けてみたところ、私達の服がたくさん入っていました。下着類から普段着、外出用のコートまで幅広く入っていたのにはアスラさんも私も驚きました。
他にリネン類も入っていて、義両親さまには頭が上がりません。
「こんなにたくさん!」
私が思わず声を出します。
「おとしゃん、そーる『これ』にはいりたい!」
ソールさんは衣類が入っていた葛篭が気に入ったのか、アスラさんに催促しています。
「・・・すみません。こちらは確実に母上からだと思います。返送出来るか確認してきます。」
アスラさんはソールさんを抱えたまま室外に出ようとします。
「アスラさん!少し待ってください!」
私の呼びかけにアスラさんは振り返ります。
「少し量は多いですが、まだ暫くの間、肌寒い日が続きます。着る物は有って困る物ではありません。折角ですし、お義母さんのお気持ちだと受け取りましょう?
こういった物を揃えるのにはお金が掛かりますから、今年1年、衣装を買う事が無いだけで私はだいぶ楽になるので嬉しいです。」
私が思った事をアスラさんに伝えます。
私の持ってきた衣服はお家で着る服としては問題がありませんが、アスラさんのお家やチョッとしたお呼ばれには向いていない物が多いので本当に助かります。
「フィーナが良いのであれば良いのですが・・・。それならば荷物を部屋に運びましょう。」
アスラさんは、抱えていたソールさんを葛篭の上に乗せて部屋に運んで行きます。
・・・この葛篭、結構重いのですが?
私も運ぼうと葛篭を持ち上げようとしたのですが、階段を下りてきたアスラさんによって葛篭は没収されてしまいました。「フィーナはリネン類をお願いします。」とリネン類の入っていた葛篭を任されたので、タオル類を1階の納戸に片づけて行きます。
シーツ類は2階の納戸に仕舞おうと、横に分けて行きます。季節物の衣服も納戸に仕舞えば良いかな?と思いながら私は任務を遂行しました。
・・・ただ、私が気になったのは私の服が入っていた葛篭です。服と下着類が分けてあったのは分かるのですが、服と下着類の他に何か入っていたのです。私の第6感が危険を知らせます。
後で1人の時にでも開けてみようと思いますが、暫くは葛篭の底に眠っていて貰いましょう。




