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26 おかしなおかしな  5ページ目


すみません。今回の話は前回からの続きになっているので、前話の最後の方を読んでいないと話の流れが分からなくなります。「あれ?」っと思ったらぜひ前話へ!







「先程フィーナが言った、ソールのリューイ殿に対する反応は正しいのです。

フィーナがリューイ殿を信頼しているのは、見ていれば私にも分かります。フィーナが信頼しているリューイ殿だから、ソールはリューイ殿に懐いたのです。」



・・・?



「すみません。どう言う意味でしょう?」

アスラさんはソールさんがお兄ちゃんに懐いている理由を私に説明しているみたいすが、私には言っている意味がサッパリ分かりません。



「私達『ヒト』族は、言葉を使い相手と意思疎通ができます。ですが『精霊』であるソール達は言葉を発する事無く相手と会話をします。・・・ソール達は言葉を発する事を最近憶えたのです。」



その説明に困惑しながらアスラさんの方を見ると、その膝の上で「むいっ!」とキリリとしたお顔でソールさんが私を見ています。

「凄いですねぇ!」そう言ってソールさんを撫でますが、私は困惑したままの状態なので顔はアスラさんに説明を促します。



「私も初めの頃のソール達を知りませんので良く分からないのですが、皇妃様と宰相閣下からのお話では『直接頭の中に声が響く感じ』だったようです。

それは私達『ヒト』族には大きな負担となるので、ソール達は言葉を発する事を覚えて行ったようです。

その上で、ソール達が好ましいと思う人物が『信頼を寄せている人物』にも話しかけるようになったようなのです。


フィーナには分かり辛いかも知れませんが・・・。ソールは警戒心が強いので、初めて会う人物には懐く事が有りませんでした。私の家族でも今の状態にまで慣れるのに時間が掛かりました。

ですので初めてフィーナのご家族とお会いした時のソールの接し方に、私が驚いたくらいです。」



・・・テレパシー的な?感じだったのでしょうか?



・・・今も可愛らしいですが、最初にお会いした時のソールさんはとても可愛らしかったですよ?

私の家族は「子供好き」ですからね。特に小さい子には優しくしますよ?

お父さんなんかは嬉々としてお菓子を出しますからね。



「なるほど。ですが、その感じで行くと、ソールさんには私達の『思っている事』が分かってしまうのですね?」

私に撫でられるがままの状態で居たソールさんが「みゅ?」っと声を出します。



「そーるね、たくしゃん『きこえる』けれど『はっきり』きこえるのは『おおくない』の。」

「んとね。」とか「えとね。」って言いながらソールさんが教えてくれます。



「他の精霊様達も同じような事を言っていましたので、間違いは無いはずです。」

アスラさんもソールさんの言葉を肯定します。



「つまり、雑念みたいな感じの想いはソールさん達には『言葉として』認識されないのでしょうか?」


「えぇ。そのようです。帝都に人が溢れた時は、その雑念が『言葉』として直接ソール達の所に行ってしまったのではないかと宰相閣下と魔術師長は考えた様なのです。」

私の疑問はアスラさんによって理解できました。大きな声で無くても、直ぐ近くでたくさんの人たちが話をしている声を聞き続けていたら疲れてしまいますよね・・・。



「あのね、あのね!そーるね、おとしゃんがおかしゃんを『しゅき』なのはしってるけ「ソール!!!」・・・むぎゅぅ!」



!!!



私に撫でられ続けていたソールさんの爆弾発言(本日2回目)にアスラさんが慌てます。









ソールさんの頭に額を付けて項垂れているアスラさんが目の前にいらっしゃいます。



「・・・・聞いてしまいましたよね・・・・・。」

「むーーー!」

「むーーーーー!」


「えぇっと・・・・。はい。聞きました。」


アスラさんは私の返事を聞いて、ますます項垂れてしまいました。


・・・アスラさん、ソールさんの呼吸が出来なくなっていますよ?そろそろ、その手を外してあげて下さい。ソールさんも必死にアスラさんの手を自分の口から外そうと頑張っていますよ、もう許してあげて欲しいです。


・・・ほら、先程までは静かでしたが、周囲にプチ台風が発生してきましたよ?


ソールさんの口を塞いでいるアスラさんの手に触れたら、アスラさんが顔を上げて私を見ます。




「アスラさん。そろそろ手を外さないと、ソールさんが息を出来ませんよ?」

私がそう言うと、アスラさんはソールさんの状態が分かったのかソールさんを解放します。

ソールさんはアスラさんから解放されると同時にアスラさんの膝の上から下りて私の方に抱き付いてきました。



ソールさんは「ふぇ~~。」と言って手を伸ばしてきたので、今は私の膝の上に座っています。



「ソールさん、今のはソールさんが悪いのですよ?」

「みゅっ!?」

ソールさんが私の膝の上に来たので、私はソールさんを摑まえて叱ります。



「ソールさん、良いですか?

私達『ヒト』は言葉を発しないと相手に想いが伝わりません。

精霊さまであるソールさんからしたらそれは、なんて『不便』な事なのかと思うかもしれませんが、私達は、大好きな人や大切な人と言った『想う人』に掛ける言葉に、心を重ねて想いを伝える事で相手に自分の『想い』を伝える事が出来ます。


確かに、周りには嫌な人、嫌いな人もいますよ?ですが、ふと交わした言葉がきっかけになってお互いが分かりあって仲良くなる時があります。そうなった時、私は『幸せ』だと思うのです。



ですがその人が大切に想っている事を、他の人がその相手に言うのは間違いだと私は思います。「みゅっ?」


例えば、私が『ソールさんを好き』と思っていても、ソールさんがその事を違う『誰か』から聞いた時に私がどれだけ『ソールさんの事を想っている』かを信じる事が出来ますか?「にゅぅ~。」


ソールさん、良いですか?私はアスラさんが『私を好き』だと言う事を、アスラさんからではなくソールさんから聞きました。



・・・この場にアスラさんがいらっしゃるので、私は確認します!アスラさん、否定するならば今のうちですよ!



どうやら、アスラさんは私の事が好きみたいですね!どうしましょう、奇遇な事に私もアスラさんの事が大好きです!私達両想いみたいですよ!良かったですね!



さあ!アスラさん、今否定しなければ明日、私が屋敷中に『アスラさんと私は両想いなんですよ!』って言いながら走り回りますよ!」


最後の方、私は自棄になってアスラさんに聞きます。



「いえ、間違いありません。嬉しいです。後、屋敷の中を走るのは危険ですからやめて頂きたいです。」



走る所以外、否定なさらない!



「ふえぇ~~。」

私の動揺がソールさんに伝わってしまったのか、ソールさんが泣き出してしまいました。



「おとしゃん、ごめんなしゃい・・・・。」


「分かってくれたなら、良い。大丈夫だ。」

ソールさんの謝罪に私は驚きましたが、私のお話で理解して貰えたのでしょうか?

アスラさんが納得しているので、これ以上私からは言う事はありません。



「フィーナ、私から言わせて頂くと今回の事は『私個人』としてはソールの功績として称えたい位です。」


「ふぇっ!」

まさかのアスラさんからの言葉に私が驚きます。



「フィーナには言っていなかったので知らなかったと思うのですが、フィーナと私は『8歳』と言う歳の差があります。「ふぁっ!?」私からすれば『年下の可愛らしい妻を迎えた』と言えるのですが、フィーナからしたらどうなのでしょうか?

それを考えたらフィーナに『私の事をどう思っているのか』なんて恐ろしくて私には聞く事は出来ませんでした。

今回ソールがフィーナに私の事をどう思っているのか聞いてくれなければ、私は『フィーナが私の事をどう思っているのか』をこんなに早く知る事が出来ませんでした。ですので今回ソールの言葉で思いがけずフィーナが私をどう思っているのか聞く事が出来て、私は本当に嬉しいのです。」



アスラさんからのカミングアウトに私は驚きます。



・・・え、待って下さい。アスラさん、今『25歳』なのですか!?


・・・あぁ、そう言えば16歳で騎士学校を卒業して、その後17歳から4年間辺境伯領に行っていたって言っていましたね。その後2年半くらい放浪して・・・・?いえ、違います。お触れが出た時が帝都帰還の年でしたね。


私は頭の中で年齢の計算をはじめました。




そんな私の様子を見たアスラさんが「・・・やはり、年上の私はフィーナには受け入れて頂けませんか・・・?」と言います。


アスラさんがその様な事を言って悲しそうに肩を落としたので、心なしか、ソールさんの背中も悲しそうに見えるのは私の気のせいでは無いと思います。



「いえ!そうでは無くてですね、アスラさんが年齢の割に『若く』見えるので驚いたのです。」

私はそう言ってアスラさんの手を握ります。誤魔化されてください!



「そうですか?それはきっと・・・。」

そう言って、アスラさんは何か思い出したかのように私を見ます。





「・・・・私は、フィーナに『言わなくてはいけない事』がある事を忘れていました。」


「どうしました?もう、何でもドンと来い!なテンションですよ!」


ただいま、夜の23刻を過ぎています。こちらの世界での「平民」さんはとっくに眠っている時間です。




そんな中、アスラさんが言い辛そうに私に言います。



「私達『契約者』は精霊と文字の通り契約をするのですが、ソールが私とした契や「ちょっと待って下さい!」


アスラさん、確かに私は「なんでもドンと来い!」何て言いましたが、限度がありますよ?「今日が終わろうとしている今」なにか爆弾を落とそうとしませんでしたか?


「フィーナ?」


アスラさんは言おうとしている内容の重要性を考えたのかしら?

・・・・っく!こちらを窺い見るお顔が眩しい!



「フィーナ?大丈夫ですか?」

心配そうなアスラさんに申し訳ないのですが、そんなお顔もイケメンです。ご馳走さまです。



「大丈夫です。ただ、アスラさんとソールさんの契約?ですか?私に言っても大丈夫なのですか?」



「えぇ、問題ありません。むしろ、フィーナには言っておかないといけない事なのです。


・・・私達『契約者』が精霊様と結んだ契約は『一緒に居る事』です。


他にも幾つかあるのですが、1番大きい『契約』の内容が『精霊様と一緒に居る事』となっています。それによって、私達はこれ以上歳を取りません。


いえっ、歳を取り数える事は出来るのですが、外見的に見た目は変わらなくなるそうです。」



・・・なるほど、アスラさんの見た目が若いのはキチンとした理由があるのですね。アスラさんの外見がこのまま変わらないのは、(私の)目の保養として大いに結構な事ですよ?特に問題はありませんね。



「あっ!そうなると、私の方が先に歳を取ってしまうのですね?」

私はソールさんと契約したわけではありませんからね。・・・そうなると今は良いのですが、将来的にアスラさんより私の見た目が年上になって、先に寿命で私が居なくなるのですね・・・。何だか寂しいです・・・。



「・・・いえ、そうならない様にフィーナと『婚姻』したのです。


確かにフィーナはソールとの契約は行っていないのですが、私との『婚姻』と言う『誓約』がソールとの『契約』の方に係わって来るのでフィーナも外見的には変化しなくなる筈です。・・・確信が無いので推定でしかお話しできないのですが・・・。


私以外の2人も『伴侶』として選ばれた方と帝都に戻って来たのですが2人は『結婚』での帰還でした。

フィーナにはこの説明をしないで婚姻を申し込んでしまったので、もしかしたら私はフィーナに対して申し訳ない事をしてしまったのではないかと思ったのです。」

アスラさんは私の手首にはまっている腕輪を触りながら言いました。



大丈夫ですよアスラさん、私に婚姻を申し込んだ時のアスラさんは混乱状態だった事を憶えています。その時は「紳士」担当の意識さんは遠い宇宙に旅立っていましたからね、そこまで気が回らなかったのも知っています。大丈夫です、分かっていますよ。



「アスラさん、大丈夫です。他のお2組が『結婚』を選ばれたからって、『私達の選択』が間違いと考える方が『間違い』ですよ。

確かに『成長が止まる』と聞いて驚きましたが・・・、まぁ、良いではありませんか?その時は一緒に時間の使い方を考えましょう?それに、私達は私達で『婚姻』で良いのですよ。大丈夫です、直ぐに他のお2組も『婚姻』したくなりますって!」



私の膝の上に座っていたソールさんはいつの間にか眠ってしまったようです。膝の上で眠るソールさんは「ぷぅぷぅ」と可愛らしい寝息を立てて眠っています。寝息は可愛らしいのですが、物凄いヘッドバンキングしていますが大丈夫でしょうか。「舟をこぐ」なんて表現では表せない状態で、頭を私の胸に激しく打ち付けてきます。この頭突きは危ないです!


動きが激しくなって来たので、アスラさんと繋いでいた手を離してソールさんの動きを抑えようとします。


ソールさんの状態が激しくなって来たので、アスラさんによってソールさんが膝の上から降ろされます。

ソールさんは3人掛けのソファーに降ろされましたが、激しい!激しい動きですよ!普段のポヤポヤな動きが嘘みたいな俊敏さです。


アスラさんがソールさんを抑えます。



「ソールさんもお休み(?)ですし、そろそろお部屋に帰りましょうか?」


「えぇ、そうですね。」



ソールさんの動きを見て、思わず笑ってしまいます。アスラさんも同じだったのか、笑っていました。



ソールさんを見ていた私にアスラさんが言います。



「フィーナが商業都市を出立する時に私に言ったでしょう?

『悩む事が出来た時にはお互いに話をして問題を解決するようにしたら良いだろう?』

『それでも駄目なら一晩眠ったら、朝起きた時に解決する。』とも言っていました。本当ですね、フィーナと話をしたら問題が解決しました。

やはり、私は難しく考え過ぎのようです。今回の事も最初からフィーナと話しをしていれば、こんなに悩む事も無かったのだと思うと本当に残念です。


私はフィーナの事が『好き』です。私と婚姻をしてくれて・・・、私達の『家族』になって貰えて嬉しいです。本当にありがとうございます。」


アスラさんがとてもスッキリしたお顔で私に言って来ました。



もっと違う言葉があったのかもしれませんが、「・・・こちらこそ、私を好きになって頂きありがとうございます。私もアスラさんが大好きです。」と私は返事をしましたが、本当はどう言った返事をすれば良かったのでしょう?


これまでの17年間、「異性」とのお付き合いはおろか、こちらには「恋愛相談」出来る友達も「グー〇ル先生」もいません。1番頼りにしている「前世の記憶」さんも就寝中なのか「答え」を教えてくれないのです。



「部屋に戻りましょう。」

そう言ってアスラさんは、ソールさんを抱きかかえている腕とは違う方の手を私に差し出して来ます。




アスラさんはどう思っているのか分かりませんが、「平民」である私が「貴族」であるアスラさんとこうして一緒に居る事がどれ程の「奇跡」なのか分かっていらっしゃるのでしょうか?


ソールさんがアスラさんをご自身の「契約者」に選ばれて、その方の「伴侶」として私が選ばれるなんて本当に「夢物語」みたいなお話ですからね?理解できていますか?



私は「アスラさんに付いて行く!」って決めて帝都に来たのですから、これから先もよろしくお願いしますね!・・・旦那さま!



私は、そう思いアスラさんの手を取ります。





「ソールさんは一体何と戦っているのでしょうか?」


「・・今度聞いてみます。・・・それと、『てんしょん』とは・・・」



私達はこんな会話をしながら部屋に戻るのです。









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