23 おかしなおかしな 2ページ目
ミナサマ、ゴキゲンヨウ!絶賛困惑中のフィーネリオンです。
このお屋敷(豪邸です!)に着いてからは怒涛の「メイドさんアタック」の連続でグッタリ気味です。
お屋敷に入って途中からアスラさんと「隔離」されて何処か違う場所に放り出されるのかと思ってみたら、そんな事はされませんでした。確かに「隔離」はされましたが、アスラさんの(ソールさんも一緒でした)「隣」のお部屋でした。
こちらのお部屋に到着するまで結構歩いたのですが、これは「普通」なのでしょうか?アスラさん、家庭内でハブられているのですか?涙が出てきそうになるので「私から」は聞きませんよ?
お部屋に入って「ただいま入浴の準備を整えていますので、お待ちください。」とお茶の準備が(ナゼか)されていたので(気の抜けない)ティータイムが始まったのです。
一息付いて「お部屋にお風呂があるのですね・・・。」なんて思いましたが、私の座っている場所からは大きな窓から見事なお庭が見えますよ。「THE 貴族!」なこの光景は「実は有名な作家の絵画何ですよ。」と言われた方が私の心臓に優しいと思います。
・・・ですが、さすが貴族さまです。使用されている食器も茶葉も、出されたお菓子も「高級品」と言える代物です。感激に、美味しく頂いてしまいました。
・・・私は「出された物は、美味しく頂く」派なのですよ。
「入浴の準備が整いました。」と声を掛けられなければ、きっと「もう一杯」お茶を飲んでいたと思います。私がお茶を堪能していたので、お風呂の準備をしていたメイドさんを待たせてしまいました。美味しすぎるお茶とお菓子は、ヒトをルーズにしてしまいますね。
・・・・入浴に関してはナニも聞かないで下さい。私の精神衛生上、言葉には出来ません。
フラフラの状態でお風呂から出たら、いつの間にか私の周りは「メイドさんバリアー」状態で「5人」のメイドさんに囲まれていました。
・・・・お風呂に行く前は「2人」でしたよね?お2人とも、いつの間に「分身の術」が使えるようになったのですか?
・・・・え?これから一体何が始まるのですか!?そんな、皆さんにじり寄らないで下さい!落ち着いて!
助けて!アスラさん!メイドさんに襲われてしまいます!!
大きな抵抗も出来ずにあれよあれよとベットに横にされると、体に「香油」(とても良い香りがします)を塗り込まれ全身をマッサージされました。後から見たら、一緒に爪の手入れがされていました。
次に、薄い若葉色のドレス(!)を「装着」させられうっすらと化粧を施されます。
・・・もうね、鏡に映っているのは「別人」じゃないかと思います。
メイドさんが髪の毛にツヤを出す為のブラッシングをしているのですが、何だか勘違いしそうです。
・・・・私、フィーネリオンの御先祖様は何処まで遡っても「平民」ですからね!
本来ならば、こんな扱いは受けられない身分なんですよ?
頑張って!私の「平常心」!
ここまでの一連の作業が、流れる水のように行われています。・・・・メイドさんって凄い職業ですね。
何も抵抗できていないこの状態が「お嬢様」の日常に組み込まれているならば、私は「一生」平民のままで良いと思います。
「終わりました。」若いメイドさんがそう言って部屋の壁際に下がっていきます。
私の傍には最初にこの部屋に案内された時から居るメイドさんが居ます。
「もう少ししましたら、御当主様と奥方様のいらっしゃるサロンに向かう様になります。お時間になりましたら迎えがきますので、どうぞそれまではお寛ぎ下さい。」
メイドさんはとても見事な「お辞儀」をして私の「胃」が一気に痛む内容の台詞を仰いました。
・・・・お茶はとても美味しかったのですが、先程の様には口にできませんでした。
こんなに「上等な」ドレスなんて、この17年間1度も着た事がありませんからね!何か粗相をして汚してしまったら、私には弁償出来ない代物ですよ?こんなに美味しいお菓子を残す事にも心が痛みます。
・・・・結局、出された物は「美味しく」食べてしまえる私が恐ろしい。
「私を食べて!」「私を飲んで!」って目の前に並べられた「お菓子」と「紅茶」から聞こえてくるのですよ?手を伸ばさない訳が無いですよ!「私も!」「私も!」って聞こえてくるので、気が付いたら「完食」してしまうという結果になったのです。
・・・まぁ良いでしょう。「昼食がまだだったのよ?」っていう言葉を免罪符にしてしまいますよ。
「お迎えの方がいらっしゃいました。」
若いメイドさんが私に「給仕」していたメイドさんに声を掛けます。
・・・思えば、この頃が私の「緊張」のピークだったのかと思います。
「お待たせしました。」
私を迎えに来てくれたのはアスラさんでした。一気に肩の力が抜けます。
「ソールさんはどうしたのですか?」
アスラさんといつも一緒にいたソールさんが見あたりません。
「両親の所にいますよ。・・・それにしても、良く似合っています。」
なるほど、ソールさんはアスラさんの御両親の所にいらっしゃるのですね。サラッと私の事も褒めて下さいましたが、ジャケット姿のアスラさんもとてもお似合いです。
「ありがとうございます!何だか良く分からない内にこの姿になってしまったので、少し照れてしまいます。・・・アスラさんも、とてもよくお似合いですよ!『何処かの国の王子さま』と言われたら納得できるレベルです!」
私は、お会いした時から思っていた事を含めてアスラさんにお礼を言います。
「ありがとうございます。両親の居るサロンに向かいましょう。」
アスラさんがそう言って私に手を差し出す様は、まさに「王子さま」ですよ。
「行ってらっしゃいませ。」
私達はメイドさん達にそう言われて、部屋を出発したのです。
「フィーナ。先程は訊きそびれてしまったのですが、『れべる』とはどういった意味なのですか?」
私をエスコートしながらアスラさんが聞いてきました。
「『レベル』ですか?『水準』とかそんな感じで使っています。」
そんな感じだったと思うのですよ。
日常で普通に使っている「英語」は前世の記憶の中から「ポロリ」と出てきてしまうのです。お兄ちゃん達は「完全スル―」状態だったので気にしていなかったのですが、他の皆さんからは気になるようですね。
「すみません。色々聞いて気に障ってしまいましたか?」
急に黙った私が「気分を悪くした」と思ったアスラさんが謝罪して来ました。
「いえいえ!こちらこそ気を使って頂きありがとうございます。私、考え込んでしまうと黙ってしまうみたいで、時々こんな感じになる事がありますから気にしないで下さい。」
私の方が、逆に申し訳ないですよ。
「いや、だがしかし!」とか「いえいえ!」とか言って2人で謝りながら進んでいく様子は不思議な光景だったと思いますが、私達の先導をしているアスラさんの侍従さんも後ろを付いてきているメイドさんも「優しく」見守っていてくれたようです。
そして、しばらく歩いて問題の場所に到着しました。
侍従さんが扉の前に居る従僕さん(?)に私達の到着を伝えると「中へどうぞお入り下さい。」と扉を開けてくれました。
「・・・扉よ、重くなれ!」と念じてみましたが、私の想いは無情にも裏切られ、従僕さんの手によって扉は軽く開かれます。
「中には両親たち以外はいませんから、安心して下さい。」
アスラさんはそんな事を言っていますが、尚更気を抜けません!
室内に入って、少し奥まった所から「ぴぎゃ~!」って言う声が聞こえます。
私はアスラさんの方を見ましたが、「どうしたんだろう?」みたいな感じで首を傾げています。
「ソールさんが泣いている様に聞こえるのですが?」
私はアスラさんに言います。
アスラさんも「そうみたいですね。」と困ったように言います。
「おとしゃーーーーん!」
アスラさんを見つけて安心したのか、ソールさんが物凄い勢いで走ってきます。
ソールさんは、こちらに駆け寄ってくる途中で隣にいる私に気が付いたのか「あれ??」みたいな感じで私を見てスピードが落ちて行きます。
「おかしゃん?」
アスラさんに抱き抱えられたソールさんが私に声を掛けてきました。
「そうですよ。『お母さん』ですよ?」
私が答えると、ソールさんは「おかしゃん!」と言って(ナゼか)拍手しました。ソールさんは先程まであんなに泣いていたのに、今は御機嫌らしくニコニコしています。
「はじめまして、アスライールの父のカーマインです。こちらが妻のマゼンタ。フィーネリオン嬢、ようこそ我が家に「あらあら~。実際に見ると、やっぱり可愛らしいわ~。」
ソールさんがこちらに来たので、アスラさんの御両親もこちらに来ました。
「こら、マゼンタ。私が挨拶しているのに割り込まないでくれ。」
「だって、貴方のお話は長くなるでしょう?」
アスラさんのご両親は仲が良いようです。
「はじめまして。フィーネリオンです。急な訪問となりましたが「あらまあ!声も可愛らしいのね!」
私の自己紹介はアスラさんのお母様によって遮られます。
私が(心痛によって)吐血しそうなのでこの場から今すぐ立ち去りたいのですが、ダメでしょうか?
そっとアスラさんを見ます。アスラさんも私を見ていたようで、御自身の両親の方を見て「フィーナが呆れてしまいますよ。落ち着いて下さい。」と言って2人を落ち着かせました。
「フィーネリオン嬢、すまないね。商業都市に居る兄上から連絡を貰った時は『まさか!』と思ったが、一緒に添えられた『婚姻証明書』を見てマゼンタと『夢ではないのか!?』と確認し合ったくらいなのだよ。」
「そうなのよ!確かに私達もこの子の好きな様にさせていたけれど・・・。騎士学校を卒業して辺境伯領駐留に行って、その帰ってくる予定の年から2年半くらい行方不明になって・・・。
帰ってきたら『精霊様の契約者』に選ばれて。もう私達には何が何だか、訳が分からない状態になってしまったのよ。」
お2人の仰る事は「ごもっとも!」と私も同意いたします。
私の隣に座っているアスラさんは気まずいのか、紅茶に口を付けて少し斜めの方を見ています。
その後、アスラさんが「もう、勘弁して下さい!」と言うまでご両親さまの「口撃」は続きました。
ソールさんも私とアスラさんの間に座ってお話を聞いた居たのですが、途中から飽きてしまったのかスヤスヤと眠ってしまいました。




