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22 おかしなおかしな  1ページ目


帝都編です。








みなさんこんにちは!帝都に着いて「お上りさん」気分のフィーネリオンです!




と言いたかったのですが・・・









御者さんと馬車の護衛をして下さっていた皆さんに挨拶をして馬車から下りたのですが、帝都の馬車発着場は凄い数の人で溢れています。


前世の私は「通勤ラッシュ」とか「満員電車」は体験した事が無かったのですが、まさかこちらの世界で人の波に(物理的に)流されそうになるとは思いませんでした。今もアスラさんに庇われていなかったら、何処までも流されそうです。

人の波に流されそうになった私を慌てて引き寄せてくれたアスラさんには申し訳ないのですが、その時のアスラさんのビックリしたお顔が可愛らしくて仕方がありません。




「フィーナ、少し提案なのですが良いですか?」

私を(人波から)庇いながら、馬車の発着場内を見ていたアスラさんが私に声を掛けます。



「なんでしょう?」

周りの光景に興味津々なソールさんを抱きかかえているので、ソールさんが落ちないかハラハラしながら答えます。



「ここから『帝都循環』の馬車に乗って宿のある地区まで行こうと思ったのですが、どうやら此処からその馬車に乗ろうとすると待ち時間が長そうです。少し離れた所に別の馬車が停車する場所があるのですが・・・、どうしますか?こちらで馬車を待って・・・・・」



?馬車がとまっている広場を見ているアスラさんの言葉が止まりました。どうしたのでしょう?



「?どうなさいました?」

アスラさんの見ている方を私も見ていますが、人の壁が視界を覆っているのでこの先に何があるのか分かりません。

・・・・17歳の私には「まだ」縦に伸び代があるハズなのです!負けません!




「・・・実家の馬車が見えます。」


アスラさんはその様な事を仰っていますが、幻でも見ているのでしょう。



だって、私達は・・・、アスラさんは「今日、帝都に着く」事をお家の人には伝えていないハズですから!




「・・・いや、見間違いか・・・?」

アスラさんは視線を逸らして、そう言いました。




ですよね!


そうですよね!


私もそう思います!さあ!まだ見ぬ「宿」に向かいましょう!







私達は、とりあえず離れた所にある停留所に向かおうとしたのです。


私達が振り向いた目の前に、ナゼか前世の私が夢見て現世の私でもブレない「理想の執事さま」がいらっしゃいます。




「アスライール様。」



・・・・アスラさん、呼ばれていますよ?お知り合いですか?



「ギース!どうして此処に?」

アスラさんは余程驚いたのか、動きが止まりました。



「お待たせして申し訳ございませんでした。

私共は旦那様の『迎えに行った方が良いだろう。』との言葉で、こちらにお迎えに参りました。アスライール様、無事のご到着、お疲れさまです。」


そう言って素敵執事さんはアスラさんが持っていたトランクを持とうとしたのですが、私の方を見て「失礼します」と言って私が持っていたトランクとアスラさんが持っていた私の荷物が入った大きい方のトランクをサッと持って馬車に向かって行きました。



・・・・え?



「・・・・伯父上か・・?」

アスラさんのポツリと呟いた言葉は私の耳にも届きましたよ!



アスラさん?何かご存知ですね?










・・・・・結局(私の荷物と言う「物質」を盾に)素敵執事さんに促されてとても立派な馬車に乗ってしまいました・・・。



「ふかふか~~。」

「モフモフ~~」


・・・天使のように無邪気に馬車の座面に使われているソファーとクッションで戯れているソールさんには申し訳ないのですが、私は「これから戦場に向かう兵士の気持ち」でこの場所に居るので良く分からないくらい豪華なこの馬車が恐ろしくて仕方がありません・・・。



「すみませんフィーナ。確かな事では無いのですが、もしかしたら伯父上が手を回している可能性があります。」

私の状態が(イロイロと)おかしいと思ったのか、アスラさんが静かに言いました。



「?おじさん・・・?ですか?」




「・・・・・もしかして、お気付きになりませんでしたか・・・?」

私が首を傾げた事に違和感を覚えたのでしょう、アスラさんがそんな事を仰っています。



「すみません、ご家族の方は皆さんご存じだった様なのでフィーナも理解しているものだと思っていました!」

アスラさんは私の反応がいまいちだったのにも拘らず何かを確信したようです。



「商業都市を出発する日の朝、領主館に行きましたよね?」

確認するようにアスラさんが私に言います。


「はい。『婚姻』の書類を出す為に行きました。」

私は答えます。



その間も馬車は動き続けていて、窓(ガラスが入っている!)の外は大きなお屋敷が目に入ります。

「敵地」はもうスグの場所でしょうか?



「その時に、『証人』になった方が私の『伯父』です。」


アスラさんは、私の中で最大級の爆弾を落として下さいやがりました。



「アスラさん!『証人』になった方は、領主さまですよ!?スターリング侯爵さまですよ!?頭、大丈夫ですか!」

アスラさんの手を握って意識を回復させようとします。ソールさんがビックリしたようにこちらを見ていますが、気にしている場合ではありません。



・・・・そう言われてみれば、私の腕輪をお母さんとお兄ちゃんは見ていたような気がします。

お父さんもこの腕輪を見て静かになりました・・・。



「・・・アスラさん。もしかして、私。・・・とても大変な事を『やらかして』しまったのでしょうか?」

アスラさんの手を握ったまま私はうな垂れるように座り込んでしまいました。



「・・・・いえ、明らかに私の説明不足です。フィーナが此処まで『気付いていない』事に気付けませんでしたから・・・。」


「おかしゃん・・・。」

ソールさんがクッションを抱えて心配そうにこちらを見ています。



・・・ソールさん、多分そのクッションは「高級品」ですよね?職人さんが一針一針丁寧に仕上げた逸品だったと思うのです。



どうして中から羽が出てきているのでしょう?飾り糸や装飾の紐が取れかかっていますよ?




「・・・どうしましょう?せっかく『騎士』になったアスラさんが「平民の小娘を連れて帰った」となると、ご両親はとてもがっかりするのではないのでしょうか?」



「・・・・どうして『そう』思われたのですか?」

アスラさんが言います。



「・・・?侯爵様である伯父さまがいらっしゃって、その方にお仕え出来る『家格』を目指しての『騎士』では無いのですか?『騎士』であれば、功績があれば良い身分の『お嬢様』とご結婚出来ますし?伯父さまに近づく一歩になりますよ?」


・・・何日か前にもこんな話し合いをしたような気がします。



「・・・なるほど。フィーナの考えている事は『物凄い近道』に見えて実は『物凄い遠回り』ですよ?確かに功績を建てて良い身分の御令嬢を迎えたとします。ですが、『良い身分』が何処まで適応されるのか分かりませんし、場合によっては我が家よりも『下の身分』の御令嬢との縁談になる事もあります。」



「???すみません、アスラさんのお家が『伯爵位』と言う事は分かっているのですが、『家格』がどれ程の場所に居るのか教えて頂けますか?」


「・・・ふむ。・・・1番分かりやすいのは、私の『伯父上』は『侯爵』です。『伯父上』は父の兄君で『商業都市』の『領主』をしています。私の父は伯父上と『2人』兄弟ですので『領地』経営を兄である伯父上が、帝都での『政務』を弟である父が行っているのです。・・・・なので、『ヴァレンタ家』は現在『スターリング侯爵家』の『唯一の分家』となります。その他にも『分家』はありますが、それ程大きな発言力はありませんので気にしなくても大丈夫です。」


アスラさんがイロイロ説明していますが。



・・・夢であって欲しかった・・・。



アスラさんのお家は「本家筋」の「直系」なのですね・・・。



それって、「スターリング侯爵家」のページから後1ページ捲ったら出てくるお家じゃないですか。

・・・すみません。本当にすみません。「貴族年鑑」(毎年のベストセラー)は「一応」見ているのですが、王家との繋がりくらいしか見ないで後はサラッと見るくらいでそれほど覚えなかったのです。

だって!お家がずっと続いているのは「侯爵家」より上の貴族くらいなのですもの!「侯爵家」より下なんて、覚えた次の年に無くなっている時もありますからね!私は無駄な努力はしません!


なので、学院とかの試験で出てくる「過去」のお家はバッチリ憶えましたが、「現在」のお家はかなり怪しいのです。



「確かに時代によっては『侯爵家』より下の家は動きがありますので覚えるのが大変だったようですが、ここ最近は大きな不祥事が無い限りは『家格』に変化はありませんよ?」



・・・・・そうなのですか・・・。



「・・・フィーナ。私の家には既に『跡取り』である兄上がいますし、大分前に子供も生まれて今は2人います。2番目の兄上もいますし、私は気楽な3男です。フィーナも言っていましたが、両親の後継ぎはしっかりと居ますし、その補佐の出来る人物も居ます。私はこれまで結構自由にしていましたから、私が好きなように動いたとしても私の行動に対して両親は気にしないと思うのです。


私は、確かに『騎士』ですが『貴族』でもあります。ですが『貴族』のままでいたらフィーナや御家族の皆さんとお会いする事は無かったと思います。『騎士』としてフィーナ達と出会えたのです。それならば、私は『騎士』のままでいたいと思うのです。


ですから、私は『貴族』に『戻れ』と言われても戻る事は無いと『フィーナ』に誓えますよ。」



・・・・これだからイケメンさまは!



先程までは「私が」アスラさんの手を握っていたのですが、いつの間にか逆に「アスラさんが」私の手を握っているから不思議ですよね。


ソールさん、危ないからこちらに来てはいけませんよ?良いですか?馬車が止まったら立ち上がるのですよ?帝都に着くまで何回も危ない目に遭いましたよね?


えぇ、安心して下さい。大丈夫です。私の顔が赤いのはアスラさんのせいですよ。





「・・・・アスラさん、もうそろそろ手を離しても大丈夫・・ですヨ?」

そろそろ私の心臓が限界です。



「遠慮します。」



・・・・・・




・・・・・・・・・




とても素晴らしい笑顔でアスラさんは私の「提案」を却下して来ました。


「そーるも!」と言ってアスラさんの膝の上からソールさんが手を伸ばします。



「えぇっと・・・?」

困惑に返事がおかしくなります。




「せっかくフィーナの方から手を伸ばして貰えたのです。なので、屋敷に着くまではこのままでいましょう?」

「あいっ!」


・・・アスラさんは何だかよく分からない理屈を言っていますが、それに同調している(ように見えて仲間に入りたい)ソールさんがニコニコしながら手を伸ばしています。ソールさんの手はアスラさんと私が手を繋いでいる所には長さが足りないので、伸ばしているだけの状態ですが楽しそうなので良いのかな?


私とアスラさんはソールさんの状態を見て思わず笑ってしまいました。


ソールさんは「???」状態でしたが笑っているアスラさんを見て嬉しそうなので良いのでしょう。




「そろそろ屋敷に着きますね。」

窓の外を見たアスラさんがそう言います。





「・・・・・・大将戦ですね!」

私は気合を入れています。



「?・・・。あぁ、フィーナはそのままで大丈夫ですよ。保証します。」

アスラさんはそう言ってのんびりとしています。



私もそうでしたが・・・、アスラさん、そんな気楽に居られるのは「御自身の」実家だからですよ?







馬車が止まりました。


馬車を降りたら戦場ですね!がんばりますよ!















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