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おはようございます!みなさん。フィーネリオンです!
昨日は「ちょっとした」ハプニングがありましたが、その後は滞りなく一昨日と同じように夜を過ごしました。夕食の時に食べようと思っていた干し肉は、アスラさんによって宣言通り没収されてしまいましたよ。
その代わりに、お肉を焼いた物とスープとパンという素敵夕食を馬車にいながら堪能できました。
その後は「さて寝ましょうか!」となった時にソールさんがコソッと上のベットに上ろうとしていた所をアスラさんによって阻まれていましたが、アスラさんからソールさんに上のベットを使用する最後のチャンスが昨夜与えられていました・・・。
「ふえぇ~~!にゃんで~~!」
ソールさんは今朝も元気にソファーとソファーとの間から「おはよう!」の状態です。
「残念でしたね・・・」
アスラさんは既に笑いを堪える気が無いのか、「残念、本当に残念でしたね」と言ってソールさんから毛布を剥がしています。
「ソール、今日の夜も下のソファーに決まりですね。」
「い~~や~~~!」
ソールさんは必死の抵抗で、毛布を畳んでいるアスラさんの足にしがみ付いています。私は帝都の魔道具屋さん巡りを固く心に誓いました!
「アスラさん、ソールさんおはようございます。」
私が挨拶をすると、アスラさんからは「おはようございます、フィーナ」と返ってきました。ソールさんからも「・・・おはよ!」って返事がきましたよ。今日もソファーから落ちていたのが恥ずかしかったのですよね。
「今日は天気が良くないみたいです。少し肌寒いので、上に羽織る物があると良いかもしれません。」
アスラさんがそう言ってソールさんを抱えて部屋から出ました。確かに今日は寒いような気がします。
「明日の昼頃には帝都に着きます。そうしたら、まず私の実家に行きましょう。」
・・・
・・・・幻聴が聞こえた気がします。
アスラさんや、帝都に着いてスグの「旦那さまの実家」はハードルが高いと思いませんか?いえ、「高すぎる」ですね。間違えました、すみません。
朝食中にアスラさんによって落とされた爆弾発言に、思わず私はアスラさんを凝視してしまいました。
「あぁ、家族には商業都市に出発する前に、帝都に戻ったら家に寄る事を伝えてありますから問題はありませんよ。」
アスラさんはサラリとこう言いますが・・・。
・・・問題はソコじゃ無いですよね!声を大にして言いたい!せめて、ホテル!・・・いえ、こちらでは「宿」ですね!明日は当日宿泊でとりあえず1泊しましょう!それで「心」と「体」の身支度をさせて下さい!
「いきなりご家族の方も知らない方をアスラさんが連れて帰ったら、ご家族の皆さんは驚かれると思うのですが?」
私は直接交渉が苦手な女、フィーネリオン。アスラさんには遠まわりでも良いから気付いて欲しい。
アスラさんとソールさん「お2人」で帰ってくるだろうと思っているご家族に「5日前に初対面のアスラさんと婚姻届を出したフィーネリオンです」って言う事が、どれだけ勇気のいる事なのかを!せめて事前打ち合わせをしましょうよ!ね!?
「あぁ、そうですね。明日の昼頃に帝都に着く事は知らないと思うので、家に馬車の手配をしないといけませんね。」
アスラさんはのんびりとそんな事を言っていますが、違います。
・・・心配する所は、ソコじゃない!声を大にして言いたい!重要な事なので何回でも言いたい!
私と貴方は「初めてお会いしてから、今日が4日目ですよ」って事を!そして、アスラさんの親御さんは「私の存在なんて霞ほども認知していない」って事を!
アスラさんのご家族に『貴族である我が家の息子と、平民の小娘の結婚だなんて!私達は認めませんよ!』って言われる可能性しか私には思いつきません。・・・そうそう、『身分の釣り合った貴族の令嬢をお嫁さんに迎えるので、平民の小娘はとっとと帰りなさい!』とかもあり得ますね。
・・・宰相さまからのお手紙があるので、大丈夫だとは思うのですが・・・。
考えれば考えるほどイロイロな「可能性」が出てくるのですが、貴族さまでいらっしゃるアスラさんにはこの辺は考えが付かないのでしょうか?
ご自身のお家の「家格」を上げる為に「帝国騎士」になったのでしょう?いきなり「婚姻しました!お相手は平民の娘です」って連れて来られたら、そのままお家から放り出されると思うのです・・・。
食べる手を止めている私に気が付いたのか「どうしました?」と言って、アスラさんが私を見ています。
・・・「腹をくくる」ってこういう時に使うのですかね・・・。
「・・・アスラさんのご家族の皆さんとお会いするならば、せめて身だしなみを整えたい・・・です。」
アスラさんを見ながら言うのは心が痛いので、視線を外してしまいました。
アスラさんには、前世の私から変わらず今の私に根付いている「空気を読んで!」と言う想いが全く通じません。今でもようやく絞り出した私の要望を聞いて「そうだった!」みたいなお顔をしていますからね。
あれ?アスラさん?初めてお会いする人や、知らない人と会う時には「最低限の身嗜みに気を付けて下さい」って小さい時に教わりませんでしたか?私はお母さんにコンコンと注意されましたよ?
・・・ほら、貴族さまはそう言うのに厳しいイメージしか浮かびませんよ?私の「我がまま」扱いでも良いから、お宿に1泊したいです。
「?おかしゃん、どうしたの?」
視線をアスラさんから外しての提案は、ソールさんの方を向いての提案になってしまったのでソールさんは「???」状態です。
「・・・そうですねフィーナ、すみませんでした。明日は何処かに宿をとって1泊してから私の実家に行きましょう。」
不思議そうに私を見ているソールさんと「一般的な訪問の礼儀」を思い出したアスラさんの謝罪を受けて、明日は帝都のお宿に宿泊です!
楽しみです!
「先程は本当にすみませんでした。」
隣に座っているアスラさんからの謝罪に、一瞬「?」となりましたが、すぐに言っている事が「ナニ」についての謝罪なのかに気が付いたので「大丈夫ですよ」と答えました。私は気遣いのできる女ですからね!
「・・・アスラさんが、あのまま実家に!って言っていたら、私は帝都に付いたら公衆浴場を探そうと思いましたからね!宿泊になって良かったと思います。」
さすがに馬車に乗っている3日間、お風呂に入っていないのでサッとお風呂には入りたかったのです。
「!・・・良かった!そうならなくて、本当に良かった・・・。」
良く分かりませんが、アスラさんは公衆浴場とか使うの反対派ですか?私、自分のお家にもお風呂がありますけど、結構好きで公衆浴場も利用していたのですが・・・?
「商業都市での公衆浴場がどういう所だったのか存じ上げませんが、帝都では公衆浴場を利用する時はとても気を使います。
皇族や貴族は例外になりますが、帝都では住んでいる所に浴場を付けていない住人が多いのです。最近建てられた家や集合住宅などは住人用に設備を整える場合もありますが、それもここ最近の話です。
公衆浴場はそういった設備の無い住宅に住んでいる平民や労働者の為に設置されているのですが、ここ最近は帝都の治安も悪くなっていますのでそう言った人達でも公衆浴場の利用を控えるようになって来ている様なのです。
特に女性の利用する時間は兵士団も警備に来るようになっているので、女性は公衆浴場を利用するのを躊躇うようになったと聞きます。」
「・・・?帝都の浴場は時間切り替え式なのですか?商業都市では、男性と女性それぞれ別の浴室がありますよ?」
「そうなのですか?それならば安心ですね。帝都でもその様になればいいのですが・・・。」
「そうなると、お金が掛かりますからねぇ・・・。」
私にもこれは分かりましたよ。
衝撃です!帝都では「時間切り替わり式」の利用法なのですね!商業都市では「男女別の浴槽」だったので、そのつもりで利用しようと思っていましたよ。時間切り替わり式の公衆浴場となると、確かに心配になりますよね。すみませんでした。
「宿は浴室が使える所が良いですね。帝都に着いたら探してみましょう。」
アスラさんがそう言ってくれたので、帝都での事はアスラさんにお任せします。私は帝都には初めて行くので、私は完全に「お上りさん」状態となります。それでも、楽しみです!
朝食中は窓を開けていたのですが、お昼の休憩の時に途中で雨が降ってきたので今は窓を閉めています。窓と言っても「窓ガラス」は入っていないので(ガラスが高級品)窓板で閉じている状態となり、個室の中は閉塞感があります。
退屈を紛らわす為に日用品を詰めてきたトランクを開けてみたのですが、ちょうど刺繍用品が入っていたので私は時間潰しに刺繍をする事にしました。アスラさんは馬車の入口に乗車客ならば好きに読める本が置いてあるのでその本を借りてきたようです。ソールさんも最初は絵本を読んでいたのでとても静かでした。
ですが今のソールさんは既に暇を持て余していて、ソファーの上をコロコロと転がっています。そんな姿も見ているのはとても可愛らしいのですが、ソファーから転がり落ちるのではないかと内心ハラハラしています。
アスラさんも最初は座らせようとしていましたが、敵は手強かったのです。あろう事か「泣き落とし」と言う技を使ってきました。
この馬車の旅でアスラさんのソールさんに対する1番の悩みは「ソールさんの暇な時間の潰し方」がなかなか見つけられない事。でしょうか?
がんばって!お父さん!
個人の家にお風呂を付けるとなると「水の確保」と「火の管理」が必要となります。今までは一般の家では水浴びが主流でしたが、4年前の騒動の時に個人宅にお風呂を付ける事が見直されて、今では個人のお家にも普及し始めているようです。




