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16 はじめての・・・  4ページ目







「・・・とりあえず、着替えます。」

私は気持ちを切り替えて、アスラさんにそう言います。




個室に入って改めて室内の状態を見てみると、衣服類や小物類の散乱が中心でした。なので、サッとトランクに衣服類と小物類をしまいます。アスラさんとソールさんの荷物は、私の荷物に比べるとそこまで多くないのでスグに片づけが終わりますよ。


アスラさんにお借りした外套は、ドアに付いているフックに掛けてササッと着替えました。



明日も使う小物類は小さいトランクに纏めて入れて、明日着る洋服は着替える時に困らない様に準備しておきます。今夜使うベットは私達が座っていた個室のソファと、上に簡易型のベットがあるのでそちらを使います。(折りたたみ?式のベットなので使わない時には壁に付けた状態で畳んで置けるので、省スペースベットみたいな感じです。)


・・・是非とも上のベットを使ってみたいですね!



トランクを足元のソファーとの間に置いて、室内と自分の格好を確認して外に居るアスラさん達に声を掛けました。






「・・・・」



どうしたのでしょう?個室に入ってから、アスラさんは無言です。ソールさんは上の段のベットが気になるのか、アスラさんの膝の上からずっと見ています。・・・そこは私が使うので、ソールさんはソファーのベットですよ?



「あしゅらいーる。そーるあそこがいい。」


「えぇ。分かりました。」



そう言って、アスラさんがソールさんを上のベットにショートカット(はしごを使わない)で乗せます。



「あぁ!」


「どうしました!何かありましたか?」

私の声にアスラさんが反応しました。そう言って私を案じてくれていますが、そうじゃないのです!



上のベットからこちらを見ているソールさんが「?」と言う表情で見ていますが、「そこは私が使おうとしていたベットです」何て決して言えない。



「・・・何でもないのです。ただ・・・、ソールさんがその高さから落ちたら怪我をしてしまうのではないかと思ったのです・・・。」


私の前世は日本人です。「本音」と「建前」を使い分ける前世では、直接交渉なんて滅多に(お小遣い交渉は本気でしましたよ)しなかったので現世での交渉が少し回りくどくなってしまうのです。



「・・・確かに、言われてみればそうですね・・・。」

アスラさんはソールさんを見ています。



「そーる、ここがいいでし!」



→ ソールさん必死の抵抗!

→ ソールさんは毛布に包まった!ソールさんは毛布に包まったままこちらを見ている!

→ ソールさんは(可愛く)威嚇している!


→ フィーネリオンは(心に)998 のダメージを受けた!フィーネリオンは瀕死だ!


→ アスラさんは平気のようだ。アスラさんはそのままソールさんをソファーに降ろした!


→ ソールさんは衝撃を受けている!


→ フィーネリオンは悶えている!





「やっ!そーるあっちがいい!」

「落ちたら怪我をするかもしれないだろう?」



お2人のやり取りに心が激しく揺さぶられます!



反対側のソファーに座ってこのやり取りを見ていたのですが、「ムービー撮影できるカメラ」はどこに行ったら購入できるのでしょう?前世の私は、そう言った機器は出来上がった状態の物を使っていたので作り方が分かりません。「前世の私は工業系に進めば良かったのに・・・」と遅まきながら考えてしまいます・・・。・・・唸れ!私の前世の記憶!



「落ちたら危ないだろう?」

「おちないもん!」



このやり取りが一晩続いても、私はこの光景を見続けられる自信があります。

記憶を呼び起こす事に集中できないので、既に中断してしまいましたよ。






「・・・そう思うでしょう?フィーナ?」


ふぇ!?



「ソールがベットから落ちたら危ないと思いますよね?」

「だいじょぶだもん!」



一生懸命脳内保存をしていたら、アスラさんに声を掛けられました。



「え?・・・えぇ。転がって落ちたら大変なので、ソールさんは下のソファーで寝る方が良いと思いますよ?」


「ぴゃっ!!」

私に反対されないと思っていたのか、ソールさんは私の返事にビックリしていました。


「私が上のベットを使いますから、アスラさんとソールさんが下のソファーを使って下さい。」

続いたこの言葉にアスラさんも驚いたようですが、納得したようで「そうですね」と言ってくれました。



「そーる、そっちがよかった・・・。」

毛布に包まっているソールさんはしょんぼりとしたようにアスラさんに訴えます。その姿が可愛過ぎて私にはツライです・・・。



「では、今晩ソファーから落ちないで眠れたなら、明日は上のベットをソールが使う事にしましょう。」


アスラさんがソールさんに交渉します。



「それでどうですか?」

「あいっ!」

ソールさんはとても良いお返事で、アスラさんに同意しました。



「では、今日は私とソールが下のソファー、フィーナが上のベットを使う事に問題はありませんね?」「あいっ!」

ソールさんは、まるでアスラさんの部下であるかのように返事をしています。



私は、このやり取りを思い出しながら眠りに着きましょう。

えぇ、とても幸せな夢が見られそうですよ。



アスラさんが荷物の入ったトランクを窓際では無く出入り口のドア側に寄せて、窓の所に明りを小さく絞ったランプを置きます。



「あしゅらいーる?どうしたの?」

ソールさんも気になったのかアスラさんに聞いています。



「こうして置けば、何かあっても扉は直ぐに開きませんからね。侵入者対策に出入り口を塞ぐためにこうして置くのですよ。」



・・・なるほど、上のベットで毛布を広げていた私も納得しました。



「おやすみなさい、でし!」

ソールさんが毛布に包まって眠る体勢になったようです。



「ソールさん、おやすみなさい。アスラさんも、今日はお疲れさまでした。良い夢を。」


「えぇ。フィーナも良い夢を。ソールもおやすみ。」



ソールさんに「おやすみなさい」を言って、アスラさんに声を掛けます。

アスラさんも今日は朝から荷物を運んだり家で大変でしたからね。家で揃えられなかった物を買いに行くのに付き添って貰ったので、馬車に乗るまで動きっぱなしでしたから。お疲れさまでした。




遠くで『ぽふん』って音が聞こえましたが、昨日からの疲れからか私はそのまま眠ってしまいました。









「ふぇえ~~?」



・・・何でしょう?可愛らしい声が聞こえます。いつもと違う寝台で眠ったせいか、少し体の節々がパキパキします。

目を開いて視界が馴染んでから声のした所を見降ろしたのですが・・・。



「なんで~~?」

ソールさんは今の状況が理解できないのか、毛布に包まったままの状態でした。

どうやらソールさんは夜の内にソファーから落ちて、ソファーとソファーの間の足元にすっぽりと収まっていたようです。



「ソール、今夜も下のソファーで決定ですね。」



アスラさんは「残念でしたね」と言っていますが、声が震えていますよ。ソールさんから足に攻撃を受けながら言っている姿は、「お父さん」みたいな感じになっています。イケメンなお父さんで良かったですね、ソールさん。



「ふふふっ。アスラさんにソールさん、おはようございます。今日も元気ですね。」

思わず私も笑ってしまいましたが、この状況は見ていて楽しいのでここからずっと見ていたい。



「フィーナ、おはようございます。今日も外は良い天気ですよ。」

「・・・おはよ、でし。」



あらら、ソールさんは少しご機嫌斜めみたいですね。



「・・・すみません、フィーナ。ソールも恥ずかしかったのだろう?」


ソールさんはアスラさんの足にしがみ付きながら「ちがうでし」って言っていますが、そんなお姿も可愛らしいですよ。




「フィーナの荷物ですが、こちらのソファーに置きますのでどうぞ先に着替えてください。」



アスラさんがソールさんを抱き上げて外に出ます。やっぱり、このままの格好はダメみたいですね。




私達の荷物は、トランク4個です。1番大きい臙脂色のトランクは私の荷物が入っていて1番重い荷物です。1番小さい焦げ茶のトランクに昨日の夜に食べたご飯と今日の朝に食べようと思っていたご飯が入っていますが、今はオーレの実がたくさん入っています。

もう1つは焦げ茶色のトランク。こちらには普段使いの小物を入れてきました。後1つの栗色のトランクにアスラさんが持っていた荷物や着替えを入れてきたのです。昨日の惨状は荷物の事を伝えていなかったから、アスラさんには分からなかったのであの状態だったのかもしれません。










「フィーナ、出発まではまだ時間があるようです。少し外に出て見ませんか?」

アスラさん達も着替えが終わって、朝食を食べている時にアスラさんが外出を提案してきました。どうやら私が着替えていた時に、近くにいた馬車の護衛さんに聞いたみたいです。



「そうなのですか?出てみましょう!楽しみです。」

町の外なんて滅多な事が無ければ出る機会はありません。



「そーるも!」

クルの実入りのパンを頬張っていたソールさんは一生懸命パンを食べています。




食事が終わったら外に出ましょう。









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