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15 はじめての・・・  3ページ目







カランカラン・・・



ちょうどお話が途切れた時に、個室の中に鐘の音が響きました。



「にゅ?なぁに?」

ソールさんは音のした方を見ながら、アスラさんに聞いています。



「今日はここで野営になるみたいですね。」




へぇ~。




「『鐘が2回鳴ったら休憩。夜ならばその場で野営』と、こちらの案内状に書いてありますよ。」

感心したようにアスラさんのお話を聞いていたら、アスラさんが個室に置いてあった案内状を見せてくれました。



ふむふむ・・・


・ 移動中に気分が悪くなった方は個室内のベルを鳴らして下さい。馭者が部屋に向かいます。


・ 馬車が揺れますので、移動中はなるべく個室に居るようお願いします。


・ 乗客同士の喧嘩は行わないで下さい。喧嘩の程度によっては馬車から強制的に下車させて頂きます。


・ 鐘の音が2回聞こえたら休憩となります。休憩は1日に3回取ります。1度目が朝食、2度目が昼食、3度目が夕食となりそのまま野営となります。

 ※ 休憩の際、外に出る時には出入り口の護衛に声を掛けるようにお願いします。護衛の確認で馬車が出発するので護衛が把握していない状態で出発した場合、こちらに非は無いと判断いたします。また、夜の外出は控えて下さい。何かあった場合、自己責任となります。


・ 飛行型の魔獣・魔物などが侵入する場合がありますので、夜は個室の窓を閉めるようにして下さい。


・ 魔獣・魔物が出た場合、戦える方には応援を頼む事がありますので宜しくお願いします。




・・・なるほど「魔獣」「魔物」関係以外は、前世の夜間バスとかと一緒ですね。



この世界には魔獣や魔物がいます。魔獣は良く出現しますが、魔物は魔獣とは違って遭遇率は少ないのです。


商業都市でも、寒くなる前辺りに魔獣による被害が頻繁に出るそうです。兵士団の詰め所が商業都市に入る為の門の所や大通りにあるのは防犯の為でもあるのですが、こう言った魔獣対策も兼ねているからだと聞いた事があります。最悪の場合「北区」には武器を扱う人が集まるので、兵士団の皆さんと一緒に戦っているそうですよ。なので商業都市では余程の事がなければ「緊急事態」を知らせる警報が鳴りませんでした。


ただし、魔物は別です。魔物は気紛れで助けてくれる場合もあるそうですが、大半は戦う事が大好きな魔物です。遭遇しているのがどちらなのかを見分けられるなら良いのですが、大抵は見分けられないので魔物とは自分1人だけの時に遭遇したならば「戦わずに逃げろ」と教えられます。基本的に人の居る町などには出てこないので、会わない人の方が多いですけどね。




馬車の案内を読んでいたら、ドアをノックする音が聞こえました。



「はい。どうしました?」

アスラさんが答えます。



「馬車の馭者です。今日はここで野営となります。食べる物など準備が無いのでしたら、お出しする準備がありますがどうしますか?」



なるほど、ご飯も準備してくれるのですね!これは確かに便利かも!



「どう言った物が有るのですか?」



「今日はパンとスープ、後は干し肉と果物になります。」



アスラさんと御者さんの会話が続いています。

準備されるご飯の内容は、日持ちのする物が中心なのですね。




「アスラさん。・・・実は、明日の朝位までのご飯はあるのです。」



「それは・・・!では、今夜の食事は断りますか?」

私の言葉にアスラさんがこちらを向きました。



「スープは頂いても良いかな?と思うのですが、どうでしょう?」

何か飲み物はあってもいいと思うのです。



「では、馭者殿。今日はスープを3人分頂きたい。」

「わかりました。お持ちしますので、お待ち下さい。」


アスラさんが御者さんと話をしている間、私は持ってきたトランクの小さい方を私の隣に載せて開きます。



少しして馭者さんがスープを持って来たので、個室の中央に備え付けのテーブルを出して夜ご飯の準備をします。



「お口に合えば良いのですが・・・。」


「夕食の準備をして頂いているなんて・・・、嬉しいです。」

「あい?」

アスラさんは馬車のご飯はあまり好きではないのでしょうか?隣に座るソールさんも不思議そうにアスラさんを見ています。


私が準備した食事は、馬車の中で食べれるようにと、サンドイッチとおにぎりです。さっき頂いたオーレの実と温かいスープがあるので、結構充実した夕食です。



「・・・こちらは、昨日も出して頂きましたよね?こちらは初めて見ますが、どのように食べるのでしょう?」

アスラさんは「サンドイッチ」と「おにぎり」を見て少し躊躇いがちに聞いてきました。



「あぁ!すみません。そうですよね。普通にお出ししてしまいましたが、そのまま手で持って食べて下さい。おしぼりはこちらにありますのでどうぞ使って下さい。」



「サンドイッチ」は昨日も出したので大丈夫そうでしたが、やっぱり「おにぎり」は未知の食べ物みたいでした。最初にお兄ちゃんに出した時も、お兄ちゃんは不安げに食べていましたからね。今では、立派に「ご飯」として食卓に出ていたので問題ないと思っていたのですが、初めての人はやっぱり衝撃を受けるみたいです。ニリアさんを巻き込んで定食屋さんで提供してもらっているので、商業都市の「東区」に住む人はご飯を食べるようになりましたよ。



恐る恐るおにぎりを食べているアスラさんですが、ソールさんもおにぎりに興味津津です。



「・・・不思議な食べ物ですね。初めて口にしました。」

「お口に合わないようでしたら、こちらの『サンドイッチ』を食べて下さい。」

アスラさんは手を拭きながら「おにぎり」の感想を伝えてくれます。


「いえ。口に合わないと言う訳では無くて、食べやすくて美味しいです。食感は不思議ですが、これは腹持ちが良さそうです。ぜひ、騎士団でも取り入れたいですね。」

アスラさんは、そう言ってソールさんにおにぎりを渡しています。



「お口に合ったようで良かったです。これは少し珍しくて、メイの実を炊いた物なんですよ。炊いた状態でも涼しい所でしたら1日くらいはそのまま保存がきくので、家では昼食の時にお店の従業員のみんなに配ったりしていました。中に入れる『具』を変えれば、色々な味が楽しめるので飽きませんよ?」



「メイの実!まさか、こんな食べ方があったのですね。驚きました。」



私もメイの実を見つけた時はビックリしました。メイの実はすり潰して、粉末状にした物が市場に出回っているので、私が初めてメイの実の粒状態を見た時は「お米!」って言っちゃいましたからね。見た目といい食感といい、前世で食べなれた「お米」でした。小さい時から食べていたパンが実は「米粉のパン」だったみたいです。

このメイの実が本当に便利で、パンはもちろん配分を変えれば麺類にもお菓子にも変身してしまう万能穀物なのです。・・・小麦粉の存在が見当たらないので、多分この「メイの実」が全ての主食を賄っているのではないかと思います。


「穀物の状態で欲しい」ってお父さんに言った時は、まさか私がお鍋で煮るとは思わなかったと思いますよ。私も最初は恐る恐る調理しましたからね(炊飯器が欲しい!って切実に思いました!)。最初に口に入れたお兄ちゃんは、本当に凄いと思いますよ!



「おいしい!」

ソールさんは、もきゅもきゅと食べています。チムリスみたいにお口いっぱいに頬張っているのが可愛らしいです。あ、お口の横にご飯粒が付いていますよ。



「えぇ、色々な食材が中に入っているのですね。これは焼いた魚でしょうか?これは食べる方も楽しいですね。」

アスラさんもソールさんもおにぎりが気に入ったようで良かったです。馭者さんに頂いたスープは少し大味な気もしましたが、おにぎりと一緒に食べたら気にならないくらいだったので良かったです。





食後にオーレの実を頂いて(甘くておいしかった!)スープの器を返して来たら、後は就寝の準備です。お水は貴重なので、持ってきたお水でタオルを濡らして顔を拭きます。



後は着替えるだけなのですが・・・。




「・・・・そうですよね、着替えるスペースなんてありませんよね。」

当たり前のように着替えようとしたのですが、ここは馬車の個室です。確かにドアで仕切られていますが、中はワンフロア状態です。



「私達が先に着替えますので、フィーナは少し出ていて下さい。着替え終わったら交代しましょう。」


あれ?アスラさんにしては珍しいです。「先にどうぞ」じゃないんですね?



「女性が着替える方が大変でしょうし、着替えた後に外で待たれる方が不用心です。

私の外套ですが無いよりはマシかと思いますので、身につけていて下さい。よろしくお願いします。」

アスラさんはそう言って扉に掛けていたアスラさんの外套を私に渡してきました。



・・・なるほど、確かに着替えは大変です。平民の女の人はブラウスとロングスカートの組み合わせで着ている人もいますが、大抵の人はしっかりした感じの生地を使ったクラシカルワンピースが多いです。前世的には「他所行きの綺麗目ワンピース(くるぶし丈)」みたいな感じです。一応ドレスもあるのですが、一般の人には手入れや保管が大変なのであまり持っている人はいません。貴族の人と関わらないのであれば、基本的に平民はそういった衣服で事足りてしまうのです。私は領主夫人くらいしかドレスを着ている人は見た事がありませんよ。(中央区の商人さんの奥さんの中にはドレスを着ている人がいるみたいなのですが、会う機会が無いので見た事がありませんでした)

そう考えると、男の人の衣服は前世と変わらない感じです。多少ファンタジー要素はありますが、大抵が前世に見ていた物と変わりません。

ただ、日本の「着物」はどこを探しても見つけられなかったので、日本文化は食事で補おうと思います。


前世の時と違って、ジャージとかスウェットはもちろん、パジャマに当たるような物はこの世界にはありません。夜は貫頭衣みたいな感じのワンピースが男女問わずで着られています。ずっとこの格好でゴロゴロしていたらお母さんに怒られたので、世間的にこの格好は「寝室限定」みたいです。



個室の外に出る時に、なぜかフードまでしっかりと被せて貰いました・・・。アスラさんは身長が大きいので、私がアスラさんの外套を着ると床に付いてしまいます。とりあえず床に外套が付かないように持ち上げていますが、どれくらいで着替えが終わるのでしょうか?のんびりと待ちましょう。







「お待たせしました。」そう言ってアスラさんが扉を開けました。



「?準備した夜着は着られませんでしたか?」

「いえ、私は旅装を解かせて頂いたので・・・。馬車での移動中はこのままで大丈夫です。」


先程よりかは身軽になったアスラさんですが、シャツとトラウザーズ姿と言う「平日の普段着」状態です。その腕に抱えられているソールさんは夜着に着替えているので、いつでも「おやすみなさい」が出来る状態でした。



???



「馬車に乗っている間は何か起きた時に対応できた方が良いと思っての格好ですので、フィーナは気にしないで下さい。」



なるほど!魔獣・魔物対策ですね。アスラさんは騎士さまですから、本当にいろいろな事に気を使いますね・・・。



扉を開けて貰ったので、着替える為に個室に入ります。



・・・・・




・・・?




・・・・何があったのですか!



なぜか、個室の中は局地的に嵐が来たかのような惨状でした!



個室に入ろうとした私の足が止まったのがソールさんには謎だったようで「どうしたの?」と聞いてきましが、アスラさんには私の足が止まった理由が分かったようです。アスラさんからは「すみません・・・」と謎の謝罪の言葉を頂きました。




・・・お2人は私が通路にいた時に、何と戦っていたのですか!








もうそろそろ、色々な物の名前を考えるのに限界が・・・

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