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サラッと残酷発言が出てきますのでお気を付け下さい。
「・・・世の中には『箱入り娘』と言われ、それは大切に育てられる令嬢がいると聞きますが・・・。」
神妙なお顔でアスラさんがこう言います。
「・・・そのご令嬢は、結婚出来ないのでしょうか?」
「いえ、良い所に嫁がせる為に育てられる令嬢の事を『例える』言葉で、実際は皆様どちらかのお屋敷に嫁いで行きます。・・・フィーナの様に婚約をしていなくても、年頃になれば自然と嫁ぎ先が見つかると聞いているのですが・・・。」
「・・・デスヨネー。」
アスラさんと私の「一般的箱入り娘」議談が終了しました。
「・・・商業都市に居住を構える方の婚約の基準が、私には分からないのですが・・・。
私から見たら、フィーナは『とても良い妻』になると思います。なので、本当に私で良いのかと思ったのですが・・・。良かった、ご両親の思惑がどうだったのかは分かりませんが、私の『伴侶』としてこの場に居てくれるのが嬉しいです。」
「アスラさんは私を物凄く褒めていますが、それ以上褒めても何も出ませんよ。でも、そう言って貰えると私も嬉しいです。」
アスラさんは手を繋ぐのが好きなのか、私の手を握っています。私の顔は赤くなっていると思うので、顔を隠すのに手を使いたいので離して欲しいです。・・・切実に!
「ねえねえ、あれなぁに~。」
・・・ソールさんグッジョブです!
「あぁ。旅の一座ですね。皇帝陛下の御子様がお生まれになった事で、城下でお祝いが行われるみたいなので、帝都に向かっているのでしょう。」
「旅の一座!興行が行われるのですね!」
アスラさんが窓の外を見て答えます。私も窓の外を見て旅の一座に向かって手を振りました。ソールさんも私のマネをして手を振ったら、あちらからも手を振り返されたのでソールさんは嬉しそうです。
たくさんのルシェに牽かれている馬車はかなりたくさんの数があって、規模の大きい一座なんだと思われます。帝都ではお祭りが開かれるのでしょう。これは、アスラさんに早速の提案をしなくてはいけませんね!
風も冷たくなって来たので窓を閉めようとした時にドアがノックされました。
「どうしました。何かありましたか?」
アスラさんが扉に向かって声を掛けます。
「斜向かいの部屋の者です。少し良いですか?」
私とアスラさんは顔を見合せます。何せ、この馬車には知人と呼べる人物は乗っていないはずですから。
「あぁ!怪しい物ではありません!ただ、オーレの実は食べられるだろうか聞きに来たのです。」
お母さんに「『怪しい物では~』から始まる時は、充分に考えなさい!」と小さい時から教えられている私には、問題無い事でした。
「うわぁ!オーレの実ですか!私、果物は大好きなんです~。」
果物好きの私には余裕の対応でした!
「!っえっ、えぇ。たくさん有るので皆さんに配っているのです。」
扉を開けて通路を見てみると、外に居たのは身なりの良い小父さまでした。その手にオーレの実をたくさん持っていたので、他の方の所にも配っているのでしょうか?傍にはこの馬車の護衛として乗っている冒険者の方もいたので、この方は大丈夫な方です。お2人とも驚いた顔をしていらっしゃるのですが、どうしたのでしょう?
オーレの実は、そのままオレンジです。商業都市から東に進むと果樹園を営んでいる集落があるので、商業都市でのオーレの実はとても身近な果物です。
「お土産用に買ったのですが、何ぶんたくさん有りすぎて困ってしまったのです。それで、差し支えなければ皆さんに配っても良いかと護衛の方に聞いたら『他のお客様に無理強いしなければ良い』と承諾を頂いたので、こうして配っているのです。」
商業都市では、お土産用に色々な物を選ぶ事が出来ますからね。宝石類も良いのですが、帝都に向かうのであれば果物類も喜ばれるお土産です。
「お土産用の果物類は1つの種類がたくさん入っていますからね~、配送を頼めるお店もありますよ。」
「!そうなのですか!?・・・そう言ったお店が有るのを知っていたら良かったのですが・・・」
小父さまは驚いたようにしています。
「最近は帝都へ帰る旅行者の方や、贈答用に果物を送る方もいるみたいですから、各お店に掛かっている商業ギルドの看板の下に『チーラ』(鳥)の絵が描いてある所は配送も行っていますよ。手数料は掛かりますが、大きなお買い物の時には便利だと思います。」
「なるほど・・・」って小父さんは言いましたが、配送については大きな宣伝をしていないので確かに分かり辛いですよね。この帝国領では、自分が買った商品は自分で持ち帰るのが一般的な考えですからね。商業都市でもお店の人は聞かれないと答えないし、知らない人の方が多いと思う。
「良い事を聞きました。良かったら『御家族』で食べて下さい。」
そう言われて、自分が抱えていたオーレの実を私に渡してきました。・・・って!
「お・・多いですよ!こんなにたくさん食べきれません!」
たくさんのオーレの実を渡されて、私の腕には抱えきれず返そうとしたのですが
「とてもいい情報を教えてくれた御夫人への感謝の気持ちです。受け取って下さい。」
小父さまはそう言って馬車の護衛の方と帰って行きました。
・・・あれ?もしかしたら、ここが最後だったのでしょうか?
「・・・・フィーナ?」
首を傾げていた私の背後から、少し低めの声でアスラさんが私を呼びます。
みなさん!大変です!良く分かりませんが、アスラさんが不機嫌です!
「・・・なぜ、私が怒っているのか分かりますか?」
アスラさんが怒っている理由ですか・・・?
「・・・たべき「違います。」」
「オー「違います。」」
・・・・・
暫し2人で見つめ合います。
「!もしかして、オーレの実はき「違います。」」
「はぁ・・・」と溜め息を付いたアスラさんは、「何故そう考えるのですか・・・」と続けます。
「良く考えてみて下さい。ここは、確かに個室とはなっていますが、外とは隔離されています。あまり無防備に扉を開けないで下さい、襲撃者や物取りだったらどうするのですか!」
「目が覚める」ってこういう事なのかもしれません。そうです、この状態が今までの家族で起きたなら、お父さんかお兄ちゃんが対応していました。今はアスラさんとソールさんとの3人です。私のせいでお2人に何かあったら、迷惑を掛けてしまします・・・。
「確かにこの馬車は個室で、護衛もいて安心です。今の方も悪気は無かったのだと思うのですが、少し不用心ですよ。」
・・・ごもっともです。アスラさんは私が状況を理解できたのが分かったのか、雰囲気が柔らかくなりました。
「今回は大丈夫でしたが、次が大丈夫だとは思わないでくださいね?ドアがノックされてもフィーナは開けないで下さい。」
・・・アスラさんが心配してくれているのが伝わります。・・・そう・・・、お腹が締め付けられているように苦しく・・・。
「アスラさん・・・、ソールさんが抱き付いて来てくれるのは嬉しいのですが・・・、少し、お腹が苦しい、です・・・。」
私がアスラさんに怒られていると思ったのか、私のお腹にしがみ付いているソールさんの力強さで違う世界が見えてしまいそうです・・・。
「!っソール!直ぐに離れなさい!」
「やっ!!」
「いいですか?「あい?」アスラさんは、私を怒っていたのでは無くて『叱って』いたのです。「う?」アスラさんは、私が不注意に扉を開けたのが『あぶないよ』って教えてくれていたのです。ただ怒っていたのではありませんよ?」「むぅ?」
ソールさんの相槌を打っている姿は可愛らしいのですが、これで納得できるかな?・・・無理っぽい?
無事に生還できました!ソールさんは私が「怒られている」と思ってしがみ付いてきたみたいですが、そうでは無い事を伝えると手の力が緩みました。ソールさんは、今はアスラさんの膝の上で私のお話を聞いています。
・・・ソールさんがアスラさんに「確保」されているように見えるのは、気のせいですよね?
「・・・大丈夫ですか?」
心配そうにアスラさんは私に聞いてきます
「一番下の弟が同じようにくっ付いていたので、大丈夫です。慣れっこですよ。」
下の弟は、私と8歳離れています。年が離れているせいか、家族みんなが可愛がっていました。よく私の後ろをくっ付いて来ていたので、たくさん一緒に遊びましたよ。・・・元気にしているでしょうか。
それでもアスラさんは心配なのか、私の手を取って何か言葉を紡ぎます。
「?・・・あれ?」
「痛む所はありませんか?」
アスラさんが私に言います。
「・・・ありません。」
「よかった。」
私の言葉にホッとした様にアスラさんが言います。
「回復魔法・・・?」
「?回復・・?私が使えるのは『治療魔法』です。私は『水』の属性魔法が使えますので、ある程度の治療でしたら行えます。」
・・・「パラディン」きたーーー!
前世の私的に言えば、ソロ活動をする人が選ぶ職業じゃないですか!騎士でありながら回復魔法を使うとか、(作品によっては性能にバラつきが有るけれど!)レア職業ですよ!
「騎士ですからあまり大きな治療は出来ないのですが、簡単な傷や怪我くらいならば治せますので言って下さい。」
・・・アスラさん、「水」属性だなんて帝国では珍しい属性をお持ちなのですね・・・。私、お母さん以外では初めてお会いしましたよ?
そう、帝国は「火」属性のヒトが比較的多いみたいです。「風」とか「土」の属性を持つヒトは、神聖王国とも同じくらいみたいですが・・・。神聖王国では全ての属性が変わらないくらいいるそうです。だけど、「水」の属性を持つ人は国で「管理」されているって言ってました。共和国の方では、魔法自体あまり使われていないようですが、それでも「水」属性の人は「違う所」で別に扱われていると聞きますよ。
「帝国では『水』属性でも職業を自由に選べるので良いですよね。」
「?・・えぇ、そうですね。ありがたい事です。・・・どなたか、身近に『水』属性の型がいらっしゃるのですね。」
アスラさんには私の言いたい事が分かったようです。
「ですが、あまり『水』属性の方の事を他の人には言わない方がいいです。・・・誰が聞いているのか分かりませんからね。」
?
「5歳の時の魔力測定の時に『魔法属性』を測っても、余程の事が無ければ測定の内容は家族にしか伝えられません。なぜだか分かりますか?」
・・・・・?
「?どうなのでしょう・・・。私にはよく分かりません。」
私には、考えても分かりませんでした。
「あぁ!責めているのではありません。違うのです。子供が1人でいたら攫われてしまうでしょう?5歳の子供の測定です、珍しい属性を持っているならば尚更身の回りに気を付けないといけません。特に、『水』属性は『隣国に高く売れる』そうです。なので、測定の時に他の属性との扱いが区別されているのですよ。
・・・帝国では『水』属性は自由に生活できますが、『いざという時には帝国への招集に応じるように』と言われています。」
!!!・・・何と言う事でしょう!「水」属性はレアだなぁ・・・。何て軽く思っていたのですが、そんな事は無くて普通にいるみたいです。
それにしても、「水」属性の人気っぷりに驚きます。「高く売れる」とか、軽く人身売買ですよね?犯罪なので、騎士さま方と兵士の皆さん、頑張って取り締まって下さいよ!お母さんとか、他のヒトの為にもよろしくお願いします!
少し慌ててアスラさんが説明してくれましたが、言われた内容は知らない方が良かった気がします。
・・・だけど、「なるほど、そう言う事だったのですね」と納得できたのは、1番仲の良かったケイトの属性を私は知らないのです。今までは気にしませんでしたが、今回このお話を聞いて納得できました。だって、御領主さまのご子息さまの3つの属性も分かりません、令嬢さまの「闇」と「氷」以外も分かりません。身内の属性か、成人している大人の属性くらいしか私は知りませんでした。意外と世間はうまく出来ているものですね。
「結婚した時に伴侶となった相手に伝える人もいますが、相手以外には「水」以外の属性を伝えるようですよ。」
アスラさんは、サラリと私に言いましたが・・・?
「・・・もしや、国家機密ですか!」
「はははっ。フィーナは本当に面白いですね。
私は『騎士』です。自分の身は自分で守れる自信があります。・・・ですが、フィーナは違う。私が傍に居る時には守る事が出来ますが、私に対しての人質として扱われる時があるかもしれません。そうなった時に対応できるように、教えておいた方が良いかなと思ったのですよ。・・・まぁ、ソールがいますからそう言った事は無いと思いますが。」
「あいっ!」
アスラさんの膝の上でソールさんが両手をあげています。・・・なんてやる気に満ちたお返事でしょう。
ですが・・・、あれ?違うの?結構本気だったのですが・・・。
「『水』属性が必ずしも『強い』癒しの魔法を使えるわけではありませんよ。幼い時から訓練をしない限りは、せいぜいが『切り傷を治す』くらいです。なので、成人している『水』属性にはそこまで誘拐の危険はありません。」
私の想像していた感じとは大分違いました。
確かに前世の私が育てていた「パラディン」の回復魔法はそこそこの性能でしたからね。終盤には強力な回復アイテムと回復魔法を併用していました。それに、違う職業と兼用で育てていた気がします。
世の中は本当に上手に回っているようです。
アスラさんとの「水属性」議談はこうして終わりました。
「水」の上位である「氷」になると「攻撃」魔法としての利用が多くなるので、「水」か「氷」かの判断は結構重要。(誘拐する方にも)




