157 ごりごりごり 1ページ目
「ぴぇ~!なんででしか!そーるも、いっしょにいくでしよ~!」
みなさんおはようございます。今日は9月の最終日。明日からは10月となり、楽しい楽しいお仕事が始まります。臨時収入、ゲットですよ!そんな中、明日から別行動となるソールさんは絶賛アスラさんに纏わり付いています。今は最終段階の「泣き落とし」へと突入しました。
「ソール、フィーナは遊びに行く訳では無いのですよ」
「ぴゃ~~~」
「私だって、出来る事なら行かせたくありませんし、行きたくもないです」
「そーるも~~~!」
「ですが、仕事なのです。分かりますよね?」
「い~~~にゃ~~~~!」
こんなやり取りが延々と行われているのですが、チョイチョイとアスラさんの本音らしき物が聞こえています。
アスラさんは折角のお休みなのに、ソールさんが朝からずっとこんな感じなのでお買い物にも行けません。アスラさんのシャツもソールさんに引っ張られたりギュムギュムと握られたりしているので、ヨレヨレに磨きが掛かってきましたよ。
それと、ソールさんは見ていてこちらがビックリするくらいにグニャグニャとアスラさんに纏わり付いているのですが、どうなっているのでしょう?私はそこまで柔軟性が無いので羨ましく思ってしまいます。
「うぅ、どうしてでしか?どうして、そーるだけ、いっしょじゃないでしか!」
ソールさんはアスラさんをペシペシと叩いていますが、ソファーに座っているアスラさんの背後に回りたいのかグリグリと隙間に入り込もうとしています。アスラさんがちょっぴり鬱陶しそうにしていますが、それでもソールさんは諦めません。
アスラさんもグリグリと隙間に入り込もうとしているソールさんに「ソール、落ち着きなさい」と声を掛けていますが、隙間に入り込む事に夢中なソールさんは一生懸命に「むぎゅぎゅ」と進入を進めます。
「アスラさん。明日、ソールさんを連れて行っては何か問題があるのですか?」
「いえ、業務中に大人しくしているのなら、問題はありません」
ソールさんのあまりの様子に「可愛そうかな?」と思っての言葉だったのですが、アスラさんからは「そんな事は無い」とお返事を頂きました。
「それなら、ソールさんも一緒に連れて行ってはいかがでしょう?」
「本来ならそれが1番良いのですが、そうなるとソールの相手をするヒトが必要になります。皇城で預かって頂くのには申請が必要になりますし、騎士団内でソールを見ていて貰うにはソールに割ける人員がいるか確認しないといけません」
「むぐぐ・・・」
私とアスラさんの会話中もソールさんは諦めません。何が何でもアスラさんの背後を取りたいと願うその姿はとても力強く、片足は虚空を蹴っているかの如く上にあがっていますが、見事な横ブリッジ(?)スタイルです。・・・ソールさん、さすがにその体勢は辛くないですか?
「私の傍にいて貰えたら、何とかなりませんかね?」
「・・・書類がかなりの枚数あると聞いているので、ソールを見ながら作業をするのは大変かなと思います。2、3日、せめて明日になって、書類の状態を見てから決めた方が良いかと思うのですが?」
「ぐにゅにゅ・・・」
アスラさんの言うとおり、どのくらいのお仕事があるのか分からない内に(ソールさんのお世話という)仕事を増やすのは、あまり得策ではありませんね。
「それに、せっかくゼーセス兄上がソールの相手をする時間を作ってくれたのです。断る「ぜーせす!」は・・・。・・・そうです。ゼーセス兄上が明日から3日間、ソールの相手をしてくる予定でした」
ソールさんはゼーセス義兄さんの名前を聞いたとたんに、アスラさんとソファの間に半分入れていた頭をスポッと抜くと、先程までのご機嫌斜めはどこに行ったのか「ぜーせすといっしょでしか!」と言って、パァ~とニコニコ笑顔になりました。ソールさんはゼーセス義兄さんが本当に大好きですね。でも、ソールさんの髪の毛はスゴい事になっています。
アスラさんはそんなソールさんに引いています。ソールさんの髪の毛は柔らかいので、整えるのには櫛を持ってきた方が良いですね。
そうそう、普段は帝都のお屋敷とご領地を往復しているゼーセス義兄さんですが、本来なら今の時期もお仕事でご領地との往復があるハズだったのです。でも、今年は雪が降り続いている事もあって重要なやり取り以外は違う方が行っているみたいです。通信用の魔石もありますからね。問題は無いのかも知れません。
今、ご領地にはローランさまとアコライトさまが居るので、余程の事が起きない限りはお義父さんとお義母さんがご領地に呼ばれる事は無いと思っています。コルネリウス義兄さんはお義母さんにみっちりと夜会の予定を組まれていたので、きっと年が明けるまでご領地に戻る事は無いのでは?と思っています。
先日お会いした時「帰りたい・・・」と言って、ソールさんの頭を撫でていました。そんなコルネリウス義兄さんにソールさんはオロオロとしながら「おぅ~~」と言っていました。その後にソールさんが何とも言えないお顔でお義母さんに「めなのよ」と言っていたので、少しだけ改善されたみたいなのですが、アシュトンさんも「新しい奥方様を早く迎えないと」と言っていたので、本当に改善されたのかはナゾです。
いつも穏やかなコルネリウス義兄さんの目がちょっぴり虚ろだったのが心配です。
「ぜーせすといっしょに、そーる、あそぶでし!」
両手を挙げてニコニコ笑顔でソールさんはアスラさんに言っていますが、アスラさんはソールさんの様子に引いています。ドン引きです。
ソールさんはアスラさんの様子に気付いていないのか「よいしょ」とソファから下りて明日の準備を始めました。
何度でも言いますが、アスラさんはソールさんにドン引きしています。
「ソールさんの機嫌が直って、良かったですね」
ガラリと変わったソールさんの様子に私もこう言いましたが、・・・そんなお顔のアスラさんを初めて見ましたよ。
「アスラさん、私も明日に必要な物を準備しようと思うのですが、筆記用具以外に持って行った方が良い物とかありますか?」
「そうですね、騎士団とはいえ、書類作成に必要な物は大抵揃っていると思います。ですが、筆記用具などはフィーナも使いやすい物の方が良いでしょうから、明日持って行ったほうがいいかもしれません」
ジッとソールさんを見つめていたアスラさんに明日必要な物を聞いたのですが、事務用品はヒトによって使う物も違いますし、私が実家にいた時に使っていた事務用品もこっちに持って来ていたと思うので、明日はソレを持って行きましょうか。あと、膝掛けとか。
確か、部屋の中に備え付けの納戸の中に入れていたはずなので、ちょっと確認してきますかね。
・・・ソールさんの髪型を直すのは、後回しでも大丈夫ですかね?
ソールがアスライールの背後に入り込もうとしている時、アスライールは少しずつ前にずれていたのですが、ソールの体勢がデタラメだったので、危なくないように少しだけの移動で様子を見ていました。
アスライールは本人も気付かないくらいドン引きしてしまったのですが、ウキウキ気分だったソールはアスライールの内心に気付きませんでした。気付いていたら、ソール自身、自分の行動が恥ずかしくてクッションに埋もれてしばらく出てこられなかった。
コルネリウスは帝都に来てから夜会尽くしの為、ソールと遊べるゼーセスが少しだけ羨ましくなった。自分も子供達と遊びたい。・・・でも、1番羨ましいのは、夜会と縁の無いアスライール。
ゼーセスはコルネリウスの状態を見ているので「次は自分」と密かに怯えていたり。でも、ゼーセスは9月いっぱいは夜会に出ていたので、マゼンタによって10月の上旬くらいまでは自由にさせる予定(は未定)
ソールの髪の毛は、フィーネリオンが準備を終えてから無事に整えられました。




