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155 ぴょこぴょこぴょこ 3ページ目




「・・・おかしゃん。そーるにいうことはないでしか?」

「えぇっと・・・?」

めずらしく朝早くに起きてきたソールさんにゴロ寝スペースに呼ばれた私は、ソールさんにムイッと質問されています。ソールさんはまだお着替えも終わっていないので、着ぐるみを着ている状態です。



ソールさんは後ろの髪の毛にちょっと凄い寝癖が付いていますが、プックリと両頬を膨らませながらゴロ寝スペースのラグをペシペシと叩いている姿がとても可愛らしいです。ソールさんが起きてきて直ぐの行動にビックリしていますが、そろそろパンが焼き上がるので台所に戻っても大丈夫でしょうか?



「ソール、着替えてきなさい。」

お外から帰ってきたアスラさんがソールさんにこう言いますが、ソールさんはアスラさんに対しても「おとしゃんもでしよ!」と言ってペシペシとラグを叩きます。



「ソールさん、パンが焦げてしまうので、私は戻っても大丈夫ですか?」

「むっ!それはたいへんでしよ!」

私の言葉に対してソールさんはびっくりしたように「だいじょぶでし!」と言ってくれたので私は台所に戻りました。オーブンを開けて確認しましたが、パンは無事でした。


オーブンからパンを出している時、アスラさんは引き続きソールさんの相手をするのかなとゴロ寝スペースを見ると、ペシペシと攻撃を受けたアスラさんは強硬手段に出ました。何と、アスラさんはひょいとソールさんを抱えて2階へと歩みを進めたのです。


「そーるのはなしをきくでしよ~~~~!」

アスラさんに抱えられたソールさんはそう言っていましたが、無情にもアスラさんによって2階へと運ばれて行きましたよ。

パタパタと手を振っていたソールさんに、私もしっかりと手を振らせていただきました。



・・・着ぐるのお尻にシッポを付けても可愛いかも知れませんね。






「おはようでしゅの~。」


「おはよう・・・、ございます。」


リープさんとステイさんがお着替えを終えて、リビングに出てきました。ステイさんはまだ眠たいのか、目を擦りながらあいさつをしてきます。


お顔を洗いに行くリープさんの髪の毛は、昨日の夜にみつあみにした髪の毛を縛っていたリボンが絡まっていて凄いことになっていました。その見事な絡まり具合に思わず2度見・・・、いえ3回目でマジマジと見てしまいましたよ。




リンカーラさんに「朝は凄い事になる」と聞いていましたが、こんなに凄い髪型(?)は初めて見ました!






・・・ティアちゃん、上には上がいるものですね。私たちの苦労は、まだまだ序の口だったみたいですよ。




朝食の前にリープさんの髪の毛からリボンを外すのに半刻くらい掛かってしまいましたが、その間ソールさんとステイさんの相手をアスラさんがしていてくれたので、とても助かりました。・・・ソールさんは相変わらずペシペシとアスラさんのお膝を叩いていました。ナゼかステイさんもウンウンと頷いていますが、本当にどうしたのでしょう?






今日もアスラさんはお仕事です。アスラさんは朝食を食べた後に身支度を済ませ、出発の時刻ギリギリまでソールさん達の相手をしてくれました。


それもあってかアスラさんの出発の時には、ソールさん達が元気に「がんばるでしよ~」「いってらっしゃいでしゅの~」「がんばって」とお見送りしてくれました。


・・・アスラさんの着ていた制服が少し(と思いたい)ヨレヨレでしたが、今日は第5部隊の皆さんと騎獣に乗って帝都周辺の見回りと言っていたので、問題なしですよね・・・?

昼食は立ち寄り予定の集落でとる事になっているみたいなので、休憩中に食べられるようにお菓子を包んだものを渡しました。

包んだのがショコラだったのでソールさん達が反応しましたが、ソールさん達のおやつは別に準備しているので、見逃してください。







「さて!これからお菓子作りを始めましょうか!」


アスラさんを見送ったソールさん達が、チラチラと私を見ながら雪の降り続いているお外を見ていたので、私は「お外には行きませんよ」の意思表示をします。ただ、私のこの言葉に対してリープさんはパッと「はいでしゅの!」と私の方に駆け寄ってきました。




ソールさんとステイさんはちょっぴりガッカリした様に私を見てきましたが、もっさもっさと降り続けている雪は結構積もっていて、アスラさんが起きてから雪かきをしてくれたのが嘘のようです。




この一月、帝都ではほぼ毎日雪が降り続いています。初めの頃は物珍しさから外に出ているヒトもいたのですが、こうも毎日降り続けていると転倒事故や馬車の事故も多くなっていると聞きます。それと、雪かきに追われたりして日常生活に支障が出ているのです。


帝都内にある兵士団でも雪かきに人手がとられたりしているみたいですし、冒険者さん達への依頼に「雪かき」がある事をローラントさんに聞いた時には、本当にビックリしました。騎士団でも貴族街中心に雪かきの依頼が入っているみたいです。騎士様に雪かきを頼める帝国は平和なのかもしれません。




・・・まぁ、雪かきは大変ですからね。依頼を出したくなる気持ちは良く分かります。でも、騎士さま達のお仕事の振り幅が広すぎだと思うのは、私だけなのでしょうか?






このお家も、玄関から門の間に急遽「熱射石」が敷かれました。熱射石は港湾都市付近にある鉱山から取れる鉱石を加工して作られる魔道具なんです。こちらの熱射石は、元々雪の多い辺境伯領に向けて作成されている魔道具なんだそうです。

今年の異常な雪の量に帝都でも使用する所が増えているみたいで、皇城周辺と中央広場から各方面へと伸びる路面がこの熱射石に変わったとアスラさんから聞きました。魔道具なので使用者の登録をしないといけないのかと思ったのですが、設置するだけで良い魔道具なんだそうです。この熱射石は大気中に漂う魔力を取り込む事で半永久的に一定の条件下で使用できる様になっていると、設置してくれた業者さんが教えてくれました。

お手入れをきちんとしていればずっと使えるのは、とてもコスパが良いのでは無いかと思うのですが、どうなのでしょう?



熱射石の値段と、帝国内の環境整備の予算が分からないので、良く分かりませんけど。



でも、細い路地とかは路面の交換が大変な事もあって、熱射石への交換は行われてはいないみたいです。それでも、1日4回、魔術師の塔から派遣される火の魔法使いさまが路上の雪を溶かしてくれているので、雪かきで集めた雪はお家の敷地の外に出す様に指示が来ています。




このお家もヴァレンタ家で熱射石を導入する際に、一緒に設置して頂きました。一緒に裏口から井戸までの間にも敷いて頂けたので、水くみが安全になりましたよ。


・・・ただ、このお家は庭があります。こちらは雪かきが必要なので、アスラさんが毎日雪かきをしてくれています。まぁ、熱射石の上に雪を載せると時間は掛かりますが溶けていくので、アスラさんのいない日中は私が出来る範囲で雪かきをしています。それと、ソールさんが(どうしても)お外で遊びたい時用に全部の雪かきはしていないので、そこまで大変ではありません。


ですが、私自身が寒さに強い訳ではありません。私がお外に出るのには、完全防寒装備が必要になるのです。私の完全防寒装備はアスラさんが心配するほど着込むので、なかなか他所様にお見せできない姿となっています。ソールさん1人なら何とかなるのですが、ソールさん達3人と雪遊びをするのには向いていない格好なのです。なので、お外で遊ぶのは本当に勘弁して下さい!






「さぁ!皆さん、手を洗って準備が出来たら、美味しいお菓子を作りますよ~。」


ソールさん達が安全にお菓子作り出来る様にと、折りたたみの机を出して声を掛けます。むいむいと名残惜しそうにお外を見ていたソールさんとステイさんも私の決意の固さをを理解したのか、手を洗いに窓から離れました。




・・・皆さんキンキンに冷えた窓にピッタリとおでこを付けていましたからね。少し暖炉に近い所に机を準備しましょうか。









ソールの着ぐるみにシッポは付きませんでした。(寝づらくて)


アスライールが休憩中に出したお菓子は、第5部隊の隊員によって綺麗に食されました。

第5部隊のメンバーからは「そろそろお返しをしないといけない」と思われていたり。


ソール達が作ったお菓子は、それぞれが持ち帰って各々の家で夕食時に食べられています。

リープが作ったお菓子にキールが感動していたのでリンカーラも「作ってみようかな?」と思って挑戦したけれど、そこで悲劇が起こるとは誰も思わなかった。




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