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143 あたたかいところ 2ページ目






開いた本に書いてある字は、かろうじてボクにも読める所があったんだけど、書いてあった字の大半がボクの知っている字と違っていたんだ。


本を開いて固まってしまったボクにソール君は「だいじょぶでしか?」と言ってくれたんだけど、どうしたら良いのか分からなくなったボクは「ゴメンね・・・」と言って、ソファーに座っていたフィーネリオンさんに「書いてある字が読めません」と言ったんだ。そんなボクの言葉に、フィーネリオンさんは「えぇっ!」と驚いていた。


ソール君が読んで欲しかった本をフィーネリオンさんに読んで貰った後。おやつを食べたソール君とルカが昼寝をしている時に、フィーネリオンさんは紙とペンを持ってボクに「少し良いですか?」と聞いてきた。







「・・・とりあえず。フォウル君、こちらに私の言う文字を書いて貰っても良いですか?」

フィーネリオンさんは真っ白な紙(!)に線を引いて、ボクに一字ずつ字を書くように言ってきた。


「ここに『あ』を書いて下さい、次は『い』で・・・。」

フィーネリオンさんに指示されるままに3枚の紙に字を書いたんだけど、フィーネリオンさんは1字ずつ書くように言ってきた。この並び、何か意味があるのかなぁ?



「なるほど~・・・。なるほど~~。」

フィーネリオンさんの指示通りに字を書いたんだけど、ボクの字を見たフィーネリオンさんは「ほうほう・・・」と言いながら、何か考えているみたいだった。その後、紙から視線を上げたフィーネリオンさんは、ボクが字を書いた紙とは別の紙に線を引き始めたんだ。その様子に、ボクはどうしたら良いのか分からなくなったんだけど、線を引き終わったフィーネリオンさんは「学園でどういったお勉強をしたのですか?」って今までとは違った真剣そうな顔で聞いてきた。


ボク達の住んでいた所で「学園」と呼ばれていたのは、村長の家の隣にあった建物だ。その事をフィーネリオンさんに伝えたんだけど、フィーネリオンさんは「大丈夫ですよ~」って言って、夕食の準備を始めた。


・・・文字とか計算は村長に教えて貰っていたんだけど、何か問題があったのかなぁ・・・?あれ?ボク達獣人とヒトでは、使っている文字が違うだけだよね?その時のボクは、そんな風に軽く考えていた。



夜の6刻前に、夜から出勤のアスライールさんが起きてきたんだけど、その時にフィーネリオンさんはアスライールさんに何か言っていた。






「ルカ君もフォウル君と同じ文字を書くみたいなので、明日・・・、は私に用事があるから、明後日から文字のお勉強をしましょうか。」

夕食が終った後、フィーネリオンさんはボクとルカにこう言ってきた。ルカは不思議そうにフィーネリオンさんを見ていたんだけど、ソール君が「ふぉうる、るかとおんなじでし」と言っていたから、ボクも同じような顔でフィーネリオンさんを見ていたんだと思う。






フィーネリオンさんが出掛けた後にアスライールさんから手渡された3枚の紙には、ボクが読む事の出来なかった字が書いてあって、アスライールさんに「縁の色が違う2枚の紙の字を照らし合わせると、本が読めると思うのですが」といわれたから、ソール君が「よんで」と言ってきた本を開いて字を照らし合わせてみた。

アスライールさんに言われたように、本に書かれている字を2枚の紙に書いてある字を照らし合わせながら読んでいくと、確かに本が読めたんだ。紙の色の縁に色が付いているのは、「紙を見分ける為」なんだってアスライールさんが教えてくれた。

ボクが2日前に書いた字は、フィーネリオンさんには殆ど読めなかったみたいで、その日の夜にフィーネリオンさんがアスライールさんに頼んで、ボクと同じようにあの不思議な並びで字を書いて貰っていたみたいなんだ。




「ヒトの字の勉強、がんばります。この紙があれば、ボクにもヒトの字が読み書きできます。」

本が読めた事に感激したボクがアスライールさんにこう言ったら、アスライールさんは不思議そうにボクを見返してきたんだ。それに「あれ?」って思っていたら、アスライールさんから衝撃的な事を言われた。



「随分と癖の強い文字だったのでフィーナには読めなかったのかも知れませんが、フォウルとルカの書いている文字は、帝国で一般的に使われている文字ですよ?」

自分の書いた字とアスライールさんが書いてくれた字は、あんまり似ていなかったからアスライールさんにこう言われて、本当にビックリした。



帝都の屋敷で働いていた時と、騎士さま達の所にいた時には、字を書く事が無かったから気付かなかったんだけど・・・。ボクとルカ・・・。いや、ボク達のいた集落に住んでいる獣人は、殆ど全員が村長から字と計算を教えて貰っていた。だから、その全員が「村長のクセの強い字」を標準文字として教えて貰っていた事になる。



少しだけ衝撃を受けたボクは、「勉強、頑張ろう」と心に誓った。





ボクとルカは、その次の日から毎日2刻フィーネリオンさんから字を教わる事になった。ボクとルカは、フィーネリオンさんがボクとルカにノートとペンを準備してくれた事に驚いた。


家にいた時にも使った事の無い、真っ白なノート。ペンはペン先と軸が交換できるようになっていて、どちらかダメになった方を交換すればずっと使える様になっていた。木炭しか使った事が無かったボクとルカは、ペンの持ち方から教えて貰ったんだ。



初めの内は字の練習が中心だったんだけど、フィーネリオンさんは「簡単な計算も憶えた方が良いと思うのです」と言って、ボクとルカに計算も教えてくれた。



「フォウル君、ルカ君。字が読めるようになったら、たくさんこの本を読んで下さいね」

字の練習を始めて3日後、ボクとルカはフィーネリオンさんから「童話集」をそれぞれ1冊ずつ「どうぞ」って、手渡された。

ボクの住んでいた集落では、本がとても高価な物だった。村長の所に行かないと本を見る事は無かったし、本を読むには村長の許可が必要だったから、ボクは本を読んだ事が無かった。だから、本がたくさんあって、それを自由に見る事の出来るソール君がボクは羨ましかったんだ。

フィーネリオンさんから手渡された童話集には色の付いた絵が表紙に描いてあって、中にもたくさんの絵が入っていたから「大事に読まないと」って思った。



「フォウル君とルカ君。早速ですが、本の後ろに名前を書く所があるので、名前を書きましょうか。」

「えっ!」

だから、フィーネリオンさんがこう言ってきた時には本当に驚いた。フィーネリオンさんとソール君はボクとルカの反応に首を傾げているけれど、こんなに高い物を貰うのは気が引けてしまう。



「ふふふっ。フォウル君とルカ君用に買ってきた本だから、気にしないで下さい。これは、『先行投資』なのですよ。」

そう言って笑っているフィーネリオンさんに首を傾げてしまったボク達に、フィーネリオンさんが言葉を続けた。


「これは、フォウル君とルカ君がお母さんの待っているお家に帰った後の事になるのですが、フォウル君とルカ君には住んでいる所の皆さんに『標準文字』を教えて欲しいのです。

・・・ごめんなさい、今回のフォウル君とルカ君のお母さんを『例』にしますね。

フォウル君とルカ君のお母さんは、確かに文字を読めたのかも知れません。でも、お2人のお母さんの読めた文字はこちらの標準文字では無い文字でした。帝国国内で作成される書類の多くが、こちらの標準文字で作られているんです。標準文字は、帝国内であれば『読めない方が少ない』と言われている文字ですから、帝国内での契約時にはこの文字で書類を作る様になっているんですよ。

今回、お2人のお母さんは契約書に書いてあった文字が読めなかった上に、内容を理解できないまま署名してしまい、それによって不平等な契約が結ばれたみたいなのです。

何よりも質が悪いのは、相手の方はお母さんが文字を読めていなかった事を理解していたと言う事なのですよ。この事によってフォウル君とルカ君はお母さんと離ればなれになってしまったのですが、もし、この時にお母さんが標準文字が読めていたなら、こう言った事は起きなかったのでは無いかと思うのです。

フォウル君とルカ君が今まで使っていた文字を否定するわけではないのですが、この機会に『標準文字がある』という認識だけでも広めて欲しいのです。」

フィーネリオンさんは、そう言って「読めない書類を貰った時には、自分1人で考えないで周りのヒトを頼って下さいね」とボクとルカに言ってきた。



それから毎日、フィーネリオンさんはボクとルカに色々な事を教えてくれた。時々、ソール君が混ざったりしたんだけれど、ソール君は「がんばるでしよ~」とおやつを食べながら、ボクとルカを応援してくれていた。・・・計算を教えて貰っていた時、そんなソール君がちょっとだけ羨ましかった。



フィーネリオンさんとアスライールさんはボクの知らなかった「たくさんの事」を知っていて、ボクが不思議に思った事を聞くとキチンと教えてくれたし、その時に分からなかった事でも調べてくれたのか、後から「そう言えば、あの時の・・・」と教えてくれた。



ようやく、ソール君に絵本を読んであげられるくらいになった頃、アスライールさんの家に来た「凄いヒト達」によって、フィーネリオンさんとの約束が果たせなくなってしまったんだけど、騎士さまの所に戻った時、オリヴィアさんからボク達が住んでいた集落に「国から依頼を受けた獣人の学者を派遣して貰えるようになった」と聞いて、安心した。「獣人」にも学者さまがいるって聞いて驚いたんだけれど、本当に良かった。



その日からは、怒濤の毎日・・・。と言うわけでは無くて、アスライールさんの家では相変わらずの毎日を過ごせたし、ソール君の食べたがっていた「ぽっとぱい」は、とっても美味しかった。フィーネリオンさんは、ボク達がアスライールさんの家を出る日にお弁当も作ってくれたんだ。フィーネリオンさんの作る食事は、本当に美味しかった。


ボク達が違う土地に行く事になった時、アスライールさんが「どうぞ」と渡してくれたのは、ボクが欲しくて欲しくて父さんにおねだりしていた「辞書」だった。辞書は「とても高価な物」だと知ってからは口にしないようにしていたんだけど、アスライールさんは「分からない事が出てきた時に使って下さい」とボクとルカに1冊ずつ綺麗な辞書を渡してくれた。ボクは嬉しくて、ちょっとだけ泣きそうになった。







「美味しい~?大丈夫?食べられそう?」

ハッと顔を上げると、ルゥネリアさんが「お水は大丈夫?」って聞いてくれた。


「はい。とても美味しいです。」

水を貰う為にコップを上げた所で、「チリンチリン」とドアの開く音がした。


「いらっしゃいませ~~。って、リューイ「フォウル!ルカ!」・・・え?」


振り返ったボクは、リューイさんと一緒にいる久しぶりに見る母さんの姿に驚いた。最後に見た時よりも小さく感じるけれど、確かに母さんがそこにいた。


「かあさん!」

隣りに座っていたルカが母さんに向かって駆け出す。ボクも母さんの所に走った。


母さんに抱き付いたボクとルカが泣いちゃったんだけど、リューイさんが周りにいたヒトや獣人に「久し振りの再会なんですよ」と言ったら、周りの皆さんにボクとルカ、母さんは近くのテーブルに座らされて、何だか「たくさん食え!」「もっと食え!」「まだ食えるだろう!」とたくさんの食べ物がテーブルに並べられた。

ボク達が戸惑っていたら、獣人の一人が「折角母ちゃんに会えたんだ。食え!」と言ってグリグリと頭を撫でてきた。リューイさんが「皆の奢りみたいなので、遠慮しないで食べて下さい」と言って「からあげ」を食べ始めたから、ボク達も「ありがとうございます」と言って、お皿に載った料理を食べる事にしたんだ。






「ご馳走さまでした。」

「また来てね~~。」

ボク達が建物を出たのは、お昼の2刻になってからだった。


「今日は商業都市で1泊して貰うようになるんだけど、一旦、店に来て貰ってから宿に移動して貰おうと思うのですが、大丈夫ですか?」

リューイさんの言葉に首を傾げてしまった。


「アメンティナさんのお兄さんとの顔合わせを、今日した方が良いかな?と思うのですが、明日の方が良いですか?」

リューイさんの言葉に母さんは「大丈夫です。よろしくお願いします」と答えた。


アメンティナさん・・・、あの「凄いヒト達」の内の一人で、ボク達がお世話になるヒトの家族だ。何より、フィーネリオンさんが「お友達」って言っていたヒトだし、そのヒトのお兄さんだから、きっと大丈夫だと思う。

そう思いながらリューイさんの後ろをはぐれない様に歩いたんだけど、こんなに広い所を歩くのは初めてだったから回りをキョロキョロと見てしまった。

リューイさんは「そっか、そうだよね」と言ってボク達を案内してくれたのが、「商業都市内循環馬車」の乗り場だった。

他にもたくさんのヒトと獣人が馬車を待っているみたいで、リューイさんは「折角だから、西回りの馬車に乗ろうか」って言ってきた。そのリューイさんの言葉に付いていけないボク達は、ただただ「都会ってスゴいなぁ」って思ったんだ。この乗り合い馬車に乗って、イロイロな所を見たボク達は、商業都市の広さに驚いた。

・・・でも、何よりもこの乗り合い馬車が便利だと思ったんだ。住んでいた集落だったらなら、端から端まで簡単に行く事ができたけど、ここでは本当に大変だと思うんだ。だから、この乗り合い馬車は、本当に便利なんじゃないかと思った。



馬車の馭者が「東区、入り口に向かいます」って言った時に、リューイさんが「次で降ります。準備してください」って言ってきた。馬車を降りてリューイさんに連れられてきた所は、大きな店だった。


・・・そう言えば、フィーネリオンさんが「実家はお店なんですよ」って言っていたっけ・・・。





「あら、お帰りなさい。リューイ。ヘストさんが2階の応接間に来ているわ。」

とても立派な扉を通ってお店に入ったら、リューイさんに気付いたヒトが声を掛けてきた。


「ただ今、母さん。父さんはヘストさんの所にいるのかな?」

「えぇ、一緒にいるわ。後で飲み物を持って行くわね。」

リューイさんに声を掛けてきたのは、リューイさんのお母さんだった。リューイさんと話し終えた後、ボク達に「ゆっくりしていってね」と言ってくれた。





「はじめまして、ラルフです。」

リューイさんに連れられて入った部屋には、男のヒトが2人と、女のヒトが1人、男の子が2人いた。その内の1人が、僕達にあいさつをしてきた。リューイさんは部屋に入ってすぐに「また後で」と言って出て行ってしまった。


「はじめまして、ハスナマミ・グーカです。こっちは息子のフォウルとルカです。この度はご助力頂き、本当にありがとうございます。」

母さんがボクとルカの名前を言ってお辞儀をした時、ラルフさんは「良い子だね」と言って笑ってくれた。


「うん、フィーナから・・・。娘から話を聞いて心配だったけれど、元気そうで良かった。これから5年間は、私とジェイド殿が後見人となるから、何かあったら相談して欲しい。

そしてこちらにいるのが、ハスナマミさんがこれからお世話になるヘストさんだ。隣りにいるのが、奥さんのメレアーナさん。そして、息子さんであるシュウ君とソウ君だ。」

ラルフさんはそう言って、もう1人の男のヒトの家族を紹介してくれた。


「はじめまして、ラルフさんに紹介して貰ったヘストです。今回、ハスナマミさんにはウチの農園で働いて貰えるという事だったので、簡単な説明と雇用の説明をしたいと思うんだけど、大丈夫ですっぐ!」

ヘストさんがあいさつした後、母さんにたくさんの書類を見せながら説明しようとしたヘストさんの脇腹に、メレ・・・奥さんのヒジが入っていた。


「ほほほ・・・。ヘストったら、どうしたの?あっ。ハスナマミさん、メレアーナです。これから、よろしくお願いしますね。

フォウル君とルカ君も、困った事があったら何でも聞いてちょうだい!私に出来る事だったら、手伝うからね!シュウとソウもほら、あいさつは?」

メレアーナさんに促されたシュウ君とソウ君が「よろしくね」と言ってくれたので、ボクとルカも「よろしくお願いします」と答えた。


・・・ヘストさんはワキを擦りながら困ったようにしていたけれど、ラルフさんと顔を見合わせて笑ってた。



その後、リューイさんのお母さんがお茶を持ってきた所で、さっきのヘストさんの話に戻ったんだ。






「本当にありがとうございます。・・・何とお礼を言ったら良いのか・・・。」

たくさんの話を聞いた後、母さんはそう言って頭を下げた。


「ハスナマミさん。頭を上げて下さい。」

リューイさんのお母さん・・・、ネリアイールさんが母さんの傍に寄ってそう言った。


「私が不甲斐ないばかりに、こんなにたくさんの方に迷惑を掛けてしまったなんて・・・。」

「そんな事ありませんよ。ハスナマミさんはお子さんを守ろうとしただけですわ。その事について、誰が迷惑だなんて言うのでしょう?それと、これからのハスナマミさんは、フォウル君とルカ君との生活を第一に考えないと。ねっ!」

母さんの言葉に、ネリアイールさんはそう言ってラルフさんを見た。ラルフさんは「そうだとも」と言って頷いている。


「そうですよ。ハスナマミさん、これからなんですよ!」

そう言って立ち上がったメレアーナさんに驚いたけれど、メレアーナさんは両手を握って母さんとボク達を見てこう言ってきた。



「周りを巻き込んで不幸になるのは迷惑ですが、皆が幸せになるのでしたら、誰も文句は言いませんよ!

・・・ハスナマミさん、リリンはお好きですか?私は大好きです!私がこのヒトと結婚したのも、『リリン食べ放題』という事に惹かれてなんです!リリンです!リリンさえ・・・、いえ、もちろん家族も大事ですが、リリンを食べている時が本当に幸せだから、毎日が幸せなんです。」

力強く「ウチのリリンは美味しい!」と言っているメレアーナさんにボク達はポカンとしてしまったけれど、フィーネリオンさんも「アメリアさんのお家で作っているリリンはとっても美味しいのです」と言っていたから、本当に美味しいんだと思う。ヘストさんだけが「えっ!?」って言っているんだけど、メレアーナさんはヘストさんに力強く頷いて「いつも美味しいリリンをありがとう」と言っていた。



「そうだね。急には無理かも知れないけれど、ハスナマミさんも少しずつ『自分だけ』の幸せを見つけると良いかも知れないね。」

ラルフさんは、母さんにそう言って「もちろん、フォウル君とルカ君も」とボクとルカにも頷いてくれた。





宿に移動したその日の夕食の時、ヘストさん達に迷惑を掛けないようにと離れた席に座ったんだけど、ボク達を見つけたメレアーナさんが机をくっつけてきたから驚いた。

シュウ君とソウ君が「ステイとソール、知ってる?」って聞いてきて、ソール君とステイ君の事で話が続いた。シュウ君とソウ君はリープちゃんの事は知らなかったみたいなんだけど、リープちゃんとは会っていなかったのかな?



次の日の朝、商業都市を出発する時に、リューイさんが見送りに来てくれて驚いた。リューイさんは「何かあった時」用にと、便箋とお店の住所が書いてある封筒を何組か渡してくれた。





「あら。フォウル君とルカ君、そのマフラー素敵ね。」

メレアーナさんと母さんは、冬の間にやる事の話し合いをしていて、ボクとルカはシュウ君とソウ君と一緒に馬車から見える景色を見ていたんだ。休憩の時にメレアーナさんにそう言われて、ボクとルカは顔を見合わせた。



「フィーネリオンさんに頂いたんです。」

ボクの言葉に続いて、ルカは「手袋もあるよ」と言ってメレアーナさんに出して見せた。



『肉球が冷えたら、大変です!』

そう言って、急遽手袋の内側に綿を入れてくれたフィーネリオンさんなんだけど、「肉球」は魔獣とかの足の裏に付いている物で、ボク達の手のひらに付いているのは「掌球」って言うんだけど・・・。アスライールさんは、そんなフィーネリオンさんを優しく見ていたんだけど、もちろん知っていましたよね?

それと、外套も「フードを被ったら、お耳が窮屈ですよね!」と言って耳が窮屈じゃ無い形のフードを付けてくれたりと、本当にお世話になった。


「うわ!モコモコして暖かい!」

ルカの出した手袋にメレアーナさんは感激したみたいで、「帰ったらシュウとソウに作ってあげるね」と言っていた。


「フィーネリオンちゃんは手先が器用だね~。」

ヘストさんはそう言いながら、休ませていたルシェを馬車に繋いでいた。




それから2日掛けてヘストさん達の家のある集落に着いたんだけど、同じ「集落」でもこんなに違うのかと思うくらい、広い集落だった。


ボク達はそのままヘストさんの家に案内されたんだけど、広い家に驚いた。ヘストさんは「あんまり綺麗じゃ無いから、気にしないでくれると助かる」って言っていたけど、そんな事は無くて綺麗に片付いていた。

そこでヘストさんの家族の皆さんと顔を合わせる事になったんだけど、皆さんがボク達を普通に迎えてくれて驚いた。



・・・あれ?ヒトとボク達獣人って仲が悪いんだよね?思わずそう思っちゃったけれど、そこでヘストさんから思いも掛けない言葉を聞いた。



「帝都と一部の地域以外は、こんな感じだよ。この辺りは、そんなに仲が悪くないはずだから、普通にしてくれて大丈夫だ。」

ヘストさんの言葉に、ボク達は本当に驚いた。・・・そう言われてみれば、フィーネリオンさんは「商業都市では、フードを被らなくても大丈夫ですよ」って言われてたような・・・。


「村長さん達にはハスナマミさん達の事は伝えてあるけど、後で一緒に顔を出しに行こうか。」

ボクがフィーネリオンさんの言葉を思い返していた時にヘストさんのお父さんであるガストさんは母さんと色々な話をしていたみたいで、ガストさんに母さんが「よろしくお願いします」と言っていた。




その後、村長さんの所に行った帰りにボク達の新しい家に案内して貰ったんだ。ボク達が連れて来られた家は、部屋が3部屋あるしっかりとした作りの家だった。家の中の家具も驚くくらい立派な家具が使われていて、母さんが驚いていた。



「フォウル、ルカ。苦労を掛けさせてしまって、ゴメンね・・・。」

ヘストさんとガストさんが帰った後、母さんがボクとルカにこう言ってきて驚いたんだ。「そんなことない!」そう声に出そうとしたんだけど、ルカが急に泣き出した。


「そんなこと・・・、ない!・・・ボクは、兄ちゃんといっしょ、だったけど・・・。母さん、は、1人だった、でしょ!」

ルカの言葉に、ボクの目からも涙が出てきた。


「そうだよ!母さんの方が、大変、だったんでしょ!これからは、ボク達もいるから、安心して!」



母さんは、泣きながらボクとルカを抱きしめてくれた。「小さくなった」と感じたのは気のせいだったのか、やっぱり母さんの腕の中は広くて暖かかった。









ハスナマミも騎士団に保護された時に「文字の違い」を指摘されて驚きました。


アスライールがフォウルの書いた文字を読めたのは、騎士団にも似たような字を書くヒトがいたから。(騎士学校で文字の矯正が行われているけれど、走り書きにはクセが出やすいので書いた本人にしか読めない文字を書くヒトもいたり・・・)

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