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141 さみしさは・・・ 


大変お待たせ致しました。ブックマーク、評価、ありがとうございます。







「本当に、ありがとうございました。」

フォウル君がこう言ってペコリとお辞儀をします。お隣のルカ君もフォウル君に合わせて一緒にお辞儀をしています。




みなさんこんにちは。武術大会も無事に終わり、今日はフォウル君とルカ君が帝都を出発する日となりました。



今週の初めに、アスラさんからフォウル君とルカ君のお母さんが、騎士団の砦から商業都市に向けて出発する日を教えて貰いました。

フォウル君とルカ君のお母さんのいる砦は、民間の馬車を利用するとなると商業都市までの移動に片道5日くらい掛かるんだそうですが、今回は騎士さまと一緒の行動なので3日くらいの移動日数になるんだそうです。

アメリアさんのご実家は商業都市から3日位の所にあるそうで、アメリアさんのお兄さんは昨日お家を出たみたいです。「順調に進めれば明日には商業都市に着くみたいよ」とアメリアさんが教えてくれました。それと、アメリアさんのお兄さんが商業都市までお迎えに来てくれる事になっていたので、アメリアさんのお兄さんの所には砦からの手紙が届いたんだそうです。お兄さんからアメリアさんへの連絡の1番初めの会話が「騎士団からの手紙にビックリした!」と言う会話だったみたいなのですが、シュウ君とソウ君はその封筒に大興奮していたみたいですよ。

フォウル君とルカ君は、街道の見回りをする騎士さまと一緒に帝都を出発するので、1泊2日の工程で商業都市に向かうんだそうです。それでも1番初めに商業都市に到着するのは、帝都から出発するフォウル君達になるみたいなのです。商業都市に着いてからも騎士さま達には「街道の見回り」と言うお仕事があるので、フォウル君とルカ君には私の実家で待って貰うようにしました。

それと、ここ最近は雪も降っている事と「この3組が商業都市に着く時刻がバラバラになる可能性がある」という事もあって、お母さんが商業都市で1泊出来るようにお宿の手配をしてくれました。



お2人とのお別れはとても寂しいですが、フォウル君とルカ君はお母さんと一緒に暮らす事も出来ますし、ローラントさんも「あそこはのんびりしていて良い所だ」と言っていました。何よりも、アメリアさんのご家族が近くにいますからね。安心して見送る事が出来ます。





騎士さま達の準備が整い次第の出発という事で、馬車の周りにはたくさんの騎士さま達が準備の為に行き交っています。



「ふぉうる、るか・・・。」

今日は、皆でお2人の出発を見送ろうと騎士団に来ているのですが、ソールさん達はフォウル君とルカ君とのお別れが寂しいのでしょう。ソールさん達は「なかよく、でしよ!」「びょうきにきをつけましゅのよ」「けがに、きをつけて」とそれぞれがお2人に声を掛けています。

・・・ソールさん達それぞれが、アスラさん、キールさん、ローラントさんによって「飛び付き」防止の為に抱き抱えられている状態なのですが、馬車に乗っているフォウル君とルカ君との目線が同じ高さになったので、かえって良かったかも知れませんね。

フォウル君とルカ君も、ソールさん達に「仲良くしてくれて、ありがとう」と言っています。何だかんだで、ソールさんは9月に入ってから頻繁に騎士団に顔を出していましたよ。何回かリープさんとステイさんも遊びに行っていたみたいです。フォウル君とルカ君は、泣きそうなお顔で一所懸命笑ってくれています。





「お忙しい所すみません。」

そんな中、私は今回の見回りの隊を率いる第3師団第10部隊の副隊長であるアークさんに声を掛けます。アークさんは第10部隊の副隊長さんをしていて、今年の武術大会で第3師団の代表に選ばれた騎士さまなんです。今年の武術大会では、3位という結果も残している実力者さんなのですよ。

今回、皆さんの見回りは帝都から商業都市の先にある砦までと聞きました。その反対側の見回りは、辺境伯領に駐留している騎士さま達と国境砦に駐留している騎士さま達が行うんだそうです。他にも工業都市や港湾都市、農耕地帯方面へ向かう隊もいますよ。



「いえ、粗方の準備は終えていますので大丈夫ですよ。フロウズ子爵夫人、どうかなさいましたか?」

「それなら良かったです。こちらなんですが、ロッシュのケーキを作って来たので休憩の時に皆さんで食べて下さい。」

アークさんに持ってきたバスケットを渡したら、嬉しそうに「ありがとうございます」と言って貰えたので良かったです。あと、先にフォウル君達におやつを渡してしまったので、馬車の中でおやつを食べても良いのかを聞きました。アークさんは「大丈夫ですよ」と言ってくれたので、安心しました。

アークさんは受け取ったバスケットを馭者役の騎士さまに渡したので、私も「それでは・・・」と皆さんの所に戻ろうとしたのです。でも、アークさんが「そう言えば」と、私に声を掛けてきました。


「フロウズ子爵夫人。私達は、明日の昼頃に商業都市に入る予定なのですが、私達はフォウルとルカを連れての移動が出来ません。商業都市で2人を迎えに来てくれる方は、どなたなのでしょうか?」

「そうでした!えぇっと、フォウル君とルカ君のお迎えには、おにぃ・・・、兄が迎えに行く事になっているのですが、こちらの馬車が入る門はどちらですか?」


「迎えに来て下さるのは、フロウズ子爵夫人の兄君ですね。・・・因みに、どの様な方なのか伺ってもよろしいですか?それと、馬車が入るのは北門となるのですが、大丈夫でしょうか?」

「北門ですね。伝えておきます。兄の髪の色は亜麻色っぽい感じで、瞳の色は青色です。一応、身分証を持って行くと言っていたので、確認して頂ければと思います。」

皆さんの商業都市に入る門が思ってもいなかった北門だったので、ビックリしました。アークさんに確認して貰えて良かったです。

商業都市には4つの門があるのですが、それぞれの門を通れるヒトは決まっているのです。領主さまは全ての門を使えるのですが、貴族は北門と東門を利用するようになっています。平民は東門と南門の使用となっていて、冒険者の皆さんは東門と北門、それと西門も使えるのです。

この門の「使い分け」で、門での審査時の混雑が減ったみたいなのですが、人口比率の関係上、東門の混み具合は半端ありませんよ。


「身分証の提示は助かります。緊急時にはフロウズ殿に連絡を入れますので、その際はご容赦下さい。それと、砦からの騎士も同じ位の時刻に商業都市の北門に入る予定ですので、こちらもよろしくお願いします。」

「はい。ありがとうございます。毎日が寒くなっているので、皆さんも体調を崩さない様にお気を付けて下さい。」

フォウル君とルカ君のお迎えをしてくれるお兄ちゃんには、門の事を連絡しておかないといけませんね。アークさんに声を掛けて、アスラさん達の所に戻ります。







「リープ、離すんだ!」

「う・・・うぅ・・・。」

「りーぷ、なでなでしましゅのよ~。」

「ルカ君、本当にすみません!」


「そーるはふかふかするでし!」

「ソール、頼むから大人しくしてくれ。」


「ステイ。まさか・・・、あそこに混ざりたいのか?」

「・・・ん。」

「・・・勘弁してくれ・・・。」




・・・フォウル君達の所に戻ってきたのですが、何だかカオスな状態なのです。どうしたのでしょう。



「リープちゃんが、我慢できなかったみたい。」

私が戻ってきた事に気付いたアメリアさんが「すごかったのよ」と、頬に手を当てて感心したようにその時の様子を説明してくれました。



どうやら、キールさんに抱き抱えられていたリープさんの振り上げた小さな手がキールさんの顎に綺麗に入り、その事に驚いたキールさんの手が緩んだ瞬間にリープさんがルカ君に飛び付いたんだそうです。リープさんに飛び付かれたルカ君もこの行動に驚いたのか、リープさんに対して何の抵抗も出来なかったみたいです。

リープさんがフォウル君とルカ君のピコピコと動いていたお耳と、ユラユラと揺れていた尻尾に釘付けなのをリンカーラさんはとても良く理解していたみたいなのです。だからでしょう、今日のリープさんは騎士団に着く前からずっと、キールさんにしっかりと抱き抱えられていたのです。リープさんはフォウル君とルカ君(の尻尾とお耳)をずっと見ていましたもんね。抱き抱えられていたリープさんは、ずっと両手をワキワキとさせていましたよ。



・・・フォウル君とルカ君がリープさんに怯えていたように見えたのは、気のせいでは無かったと思うのです。お家で遊んでいた時にはそんな様子は無かったので、騎士団に戻ってから何かがあったのでしょうか?気になります。



「リープ、そろそろ出発だろうから、離しなさい!」

「やでしゅの~~!」

「うぅ・・・。」

リンカーラさんが言っているように、先程までたくさんいらした騎士さま達も、準備を終えた順に出発しています。


「りーぷ、ふかふかしましゅの!」

「う・・・、うぅ~~~!」

リープさんは、そう言ってますますルカ君に抱き付く力を強めているのですが、ルカ君は大丈夫でしょうか?


「リープ!「リンカーラさん。暖かくなったら、ルカ君とフォウル君の所に遊びに行きませんか?・・・良かったら、皆で!」

私達はアメリアさんの言葉に驚きましたが、リンカーラさんの「それは良いね」の言葉に頷きました。



「リープ。フォウル君とルカ君は、今日出発しないと母君を待たせてしまう事になってしまいます。母君とはずっと離れていたのですから、少しでも早くお会いできるようにしてあげたいとは思いませんか?」

「みゅ!」

キールさんの言葉に、ルカ君に抱き付いていたリープさんは驚いたようにルカ君を見ます。少し迷ったみたいでしたが、おずおずと「ごめんなしゃいでしゅの」と言って手を離します。



「ルカ、リープがすまないね。どこか、痛い所は無いか?今ならアスライールに治して貰えるから、言ってくれ。」

「だ、だいじょうぶ、です!」

ルカ君の返事に、リンカーラさんに「良い子だ」と頭を撫でます。


「フォウル君。これを、私の兄さんに渡して貰えますか?」

「はい。」

アメリアさんがそう言ってフォウル君に手紙を渡します。フォウル君がカバンにしっかりとしまったのを見て「お願いね」と言います。


それと同時に「そろそろ出立します」と騎士さまに声を掛けられたので、私達は馬車から少し離れた所から皆さんのお見送りしました。その時のソールさん達の盛大なお見送りに、アスラさん達が「あぁ・・・」と言っていましたが、リンカーラさんとローラントさんと一緒に「まぁ、あれくらいなら・・・」なんてお話ししていたのですが、どうしたのでしょう?







「おかしゃん。どれくらいしたらあったかくなるでしか?」

「・・・そうですねぇ。2ヶ月位後の1月頃ですかねぇ・・・?」

ソールさんが私にこう聞いてきたのですが、今はまだまだ寒い9月です。今年は思いも掛けない位に雪が降っているので、10月も油断が出来ませんね。今日の夜に予定のある皆さんとは現地解散となったので、お買い物をして帰る事になりました。


「ぴっ!?」

「それと、アスラさんのお休みが取れないといけませんねぇ。」

ソールさんはアスラさんに抱き抱えられているのですが、驚いたように私を見てきます。それでも、重要事項には「アスラさんのお休み」という物があります。今年の1月を思い返してみると、アスラさんは普通にお仕事をしていたので、有休を取って貰えれば大丈夫でしょうか?


「ぴっ!?」

「・・・まぁ、アスラさんがお留守番と言う事で、私とソールさんがフォウル君とルカ君に会いに行っても良いのですが・・・。」

でも、最悪「アスラさんはお留守番」と言う事も出来るでしょうか?



・・・もちろん、その時にはお屋敷の方にお世話になって貰いますが・・・。



「その時には、休暇が取れるよう隊長に掛け合います。」

「おとしゃん!がんばるでしよ!」

ふと見上げたら、アスラさんと目が合いました。アスラさんはキリッと「頑張ります」と言っていますが、本当に本当の最悪の場合には、ソールさんだけを皆さんに「めっ!めなのよ!」・・・おや?



「・・・ソールさん。急に大きな声を出して、どうしたのですか?」

フニフニとソールさんのほっぺを揉みますが、ソールさんは「めなのよ~~!」と言っています。





私とソールさんをアスラさんが微笑ましそうに見ていたのですが、プライバシーの問題はどちらに相談したら良いのでしょうかね?







騎士団に遊びに来ていたリープは、「破壊神」と呼ばれていたソールよりも上の「暴れん坊」でした。リープが問題を起こすたびにキールが騎士団に呼び出しを受けていました。

ただ、大人しかったステイも「ソールとリープに比べれば」と言うだけでした。それでも、ローラントを呼び出す程では無かったもよう。


ルカは自分よりも小さなリープに負けていたので、一生懸命体を動かして体を鍛える予定。フォウルはソールとステイの2人が相手なので、たくさんの絵本を読める様に「勉強をがんばろう」と思っています。


この日の夜には、少しだけ大きな夜会があるので現地解散でした。


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