136 やさしさは、のその後で・・・
「リヒト殿、コレはどうだろう?」
「・・・リンカーラ様。良いとは思うのですが、もう少し装飾の少ない物の方が良いと思われます。」
「えっ、それじゃあ、こっちの方が良いですか?」
「アメンティナ様。その様な感じで、もう少し頑丈そうな物の方が良いかも知れませんね。」
「・・・フィーネリオン様。今は『家具』を選んでいるので、雑貨類はもう少しお待ち頂けますか?」
みなさんこんにちは。今日は、リンカーラさんとアメリアさん、リヒトさんと一緒に帝都の中央広場で行われている「蚤の市」に来ています。私は見ていたレターボックスをソッと元の位置に戻しましたよ。
「蚤の市」とは言っても、「フリーマーケット」みたいな感じの催し物なんですよ。実はこういった催しが「奇数月」に開かれている帝都では、こう言った所で家具類を格安で手に入れる事が出来るのです。
・・・ただ、私達がいるのは「お貴族さま専用」とまで言われている中央広場での蚤の市なので、並べられている家具類のお値段は他の地区で販売されている物よりも少々「お高め」です。今の時期にココで売られている家具は、社交期間に合わせて(お屋敷1件分の)模様替えをしたお貴族さまや、ご子息ご令嬢の成長と共に使われなくなった家具類なんだそうです。
お義母さんに聞いてみたら、お貴族さまの中には1シーズンでお屋敷の模様替えをしてしまう方もいらっしゃるみたいなんです。お部屋の絨毯からカーテン、チェストやソファーを新しい物と入れ替えるんだそうですよ。ヴァレンタ家のお屋敷でも、お客様を通すお部屋の何部屋かを模様替えしたみたいなのです。そう言えば、私がお屋敷でお気に入りだったソファーが(お屋敷での)私のお部屋に移動していましたね・・・。その1人掛けソファーは、とてもフカフカしていて良い座り心地なのですよ。
それでも、お貴族さまの「お屋敷1件丸ごとの模様替え」と言うのは珍しいみたいですよ。そういった模様替えはお屋敷のご当主さまが変わった時や、何か不幸が起きた時にそういった事が行われるみたいなのです。
・・・後は「見栄を張りたいから」とも言っていましたが、ご領地で「木工」や「細工」に力を入れているお貴族さまであれば、積極的に家具類を変えているみたいなのです。・・・売り込みは大切ですよね。
今日、私達が蚤の市に来ているのも、フォウル君とルカ君がお母さんと一緒に暮らすお家に入れる家具類を選ぶ為なのです。フォウル君達のお母さんの離縁が成立したとリンカーラさんの所に連絡が入ったのは、9月に入ってすぐの3日でした。その日、たまたまリンカーラさんのお家に私とアメリアさんがお邪魔していた事で、今日のお出掛けが決まったのです。
フォウル君達は「平民」なので、本当は南地区や東地区の蚤の市で家具を探すのが無難なのでしょうが、フォウル君達が「獣人」という事を踏まえて中央広場の蚤の市を選んだのです。候補の中には西地区も入っていたのですが、ローラントさんが「西地区の家具はアクが強いから、獣人には使いづらいかも知れない」と言っていました。
・・・最新の家具類は、工業都市から西地区に入ってきているんだそうです。でも、工業都市から来た「便利な仕様」が組み込まれている家具を使うとなると、その家具に付けられている魔石へ魔力を通さないといけない物が多いのです。魔力を放出できるヒトにとっては便利なのですが、魔力を放出できない獣人さんにとっては「使いづらい家具」と言っても良いのかも知れませんね。
・・・それと、獣人さんは基本的に力が強いですからね。「ヒト」向けの家具ではスグにボロボロになってしまいそうだと判断して、作りが頑丈な貴族向けの家具を選ぶ事にしたのです。今回、このお買い物でのお支払いは「元々言い出したのは、私だからね」と言ったリンカーラさん持ちとなっていて、私達では家具の相場が分からなかったので、リヒトさんに付いてきて貰っているのです。
・・・ちなみに、ニリアさんの所で使わなくなったベッドとダイニング一式(ダイニングテーブルと椅子4脚)を格安で譲って貰えたので、そちらは先に搬送して貰いました。カトラリー類は私の実家で揃えて送るようにしましたよ。お母さんが「頑張る!」と言っていたので、お父さんとの交渉をお願いします。
それとローラントさんがご実家に掛け合ってくれて、フォウル君とルカ君用にとローラントさんのお兄さん達が着なくなった衣服を譲って貰える事になりました。お兄さん達は「あげるよ」と言ってくれたみたいなのですが、お兄さん達の衣服にも「(布代という)元手」が掛かっているのでそう言う訳にはいきません。なので「1着、大銅貨5枚」で買い取る事にしたようです。・・・ただ、ローラントさんのご家族は「ヒト」なので、獣人さん達のサイズに直すのはフォウル君達のお母さんにお任せする事になってしまいますが、そこはアメリアさんのお祖母ちゃんが手伝ってくれるみたいです。
9月に入ってますます寒くなってきましたし、これから成長していくお2人ですから着る物はあった方が良いでしょう。ローラントさんのお母さんが若い時に着ていたブラウスやスカートをフォウル君達のお母さん用の衣服として一緒に入れてくれたようなので、ローラントさんを通してリンカーラさんがお礼の言葉を伝えていました。
お義母さんも綿の入ったケープをフォウル君達のお母さん用に準備してくれているので、そちらも一緒に送らせて貰いますよ!
私達は「地味目」で「装飾の少ない」頑丈な作りの家具を探しながら、「アレはどうでしょうか?」「コレなんか?」と家具を選んでいきます。買い取った家具は、一時的にローラントさんのお家に運んで貰うようにしていて、その後に生活ギルドに頼んでフォウル君達が住む事になるお家に運ぶようにしました。設置はアメリアさんのお兄さん達にお任せしますよ。
そんな中、驚くべきはリヒトさんです。各お屋敷から委任されている「販売人」さん相手にガンガン値引き交渉を行っていて、厚手の丈夫なカーテンをほぼ半額での交渉成立させた時、その背中に心の中で拍手を送ってしまいましたよ。
・・・え?今日のアスラさん達ですか?実は、8月からポツポツと貴族さま達が帝都に集まってきていると言う事もあって、普段は10日に行われている「ソールさん達の皇城訪問」を前倒しで今日(5日)行う事になったので、そちらに行っているのです。
・・・えぇ、見事に蚤の市の開催日と重なってしまったのですよ。
(超常識人)キールさんとは言いません。せめて(普通の常識人である)ローラントさんに一緒に来て欲しいと切実に訴えたのですが、この皇城訪問は「精霊殿との契約者か、その伴侶」の付き添いが絶対なんだそうです。初めは、アメリアさんが「私がステイ君と一緒に皇城に行くわ!」と言っていたのですが、皇城で行われている内容の1つに「皇族との会話」があると知り「ごめんなさい」と言ってローラントさんに任せたんだそうです。・・・私も、アメリアさんの気持ちは良く分かります。皇族の皆さんと触れ合うのはハードルが高すぎますよね?なので、私もソールさんの皇城訪問はアスラさんにお任せしていますよ。
アスラさんに相談した所「リヒトに相談してみましょう」と言ってくれて、そのままリヒトさんが付いてきてくれる事になったのです。
・・・その時に、「アスライール様に任せたらとんでもない買い物をしてしまいそうなので、おまかせください!」と力強い声が聞こえたのですが、リヒトさんの中のアスラさん像はどうなっているのでしょうか?是非とも語り合いたいですね。
必要な家具があらかた決まったので蚤の市を皆で見て回る事になったのですが、この中央広場の蚤の市で扱われている食器やカトラリー類は、流石「お貴族さま仕様」といった出で立ちの「繊細」で「華やかな装飾」の施された「壊れやすそうな」一品ばかりです。
・・・私が個人的に買って帰ったとしても、使う機会は無さそうですね・・・。そんな事を思いながらお店を覗きながら蚤の市を見て回ります。
リンカーラさんが天鵞絨の張られたランプを気に入ったのか、リヒトさんに値引き交渉をお願いしていました。アメリアさんもを気に入ったクッションのセットをリヒトさんに交渉して貰っていましたよ。私もリヒトさんにお願いしようと先程のレターボックスの所に戻ろうとしたのですが、不意に聞こえてきた「旦那さま、こちらはガーブ=アフローラ工房製の食器となっています。・・・いかがでしょうか?」と言う内容に驚いて、そちらを見てしまいました。
「うむ、とても良い物のようだな。・・・だが、私達が探している物とは少し違う物のようだ。」
「そうでしたかそうでしたか・・・。では、こちらなんてどうでしょう?こちらはガーブ=ハイリア工房製となっていまして、1年を通してご使用頂ける仕上がりになっております。それと、こちらはリッシュ=バイトナー工房製となっておりまして・・・。」
私の視線の先には、お店の販売人の方と若いご夫婦でしょうか?幼い子供を連れた貴族の方がいました。
「フィーネリオン様、どうかなさいましたか?」
私の様子に気が付いたリヒトさんが声を掛けてきました。
「・・・リヒトさん、帝都の蚤の市って凄いですね。今、ガーブ=アフローラ工房とガーブ=ハイリア工房、リッシュ=バイトナー工房の名前が出ていましたよ!帝都の蚤の市ではあんなに有名な工房製の食器類も売りに出されるのですね?」
「えっ!?・・・そういった工房で作られる貴族向けの食器には家紋が入っている事の方が多いので、こういった場所で販売する貴族はいらっしゃらないはずですが・・・。」
私の言葉に首を傾げたリヒトさんの言葉に、私も首を傾げます。
「工房で販売している物をそのまま使っていたとか?」
私とリヒトさんの会話を聞いたアメリアさんの言葉に、リンカーラさんが「それはあり得ないよ」と言って首を振ります。
「アメリア嬢。貴族は『見栄え』に拘る者が多いんだ。だから有名な工房で食器を揃えるのであれば、それぞれの家紋を入れる方が普通なんだよ。だから、食器類は工房で揃える事が多いんだ。」
「えぇ、そうなんです。だから、貴族は一度購入した食器類に関しては、その一族が続く限りはずっと使い続けます。なので、食器類を手放す時にはその工房に『処分』を依頼するか『割捨てる』かのどちらかなのですよ。」
そうですよね。平民の方でもそういった工房の食器を使うヒトはいますが、私達が今日いる場所は「お貴族さま向け」の蚤の市の会場ですもんね。リンカーラさんとリヒトさんの言葉に私とアメリアさんは「へぇ~」と感心してしまいました。
「まぁ、例外といえば『その家紋を入れるお金が無い』と言った事でしょうが・・・。」
「それならば、そもそも食器を買わないだろう?」
「えぇ。そうですよね・・・。」
リヒトさんとリンカーラさんの会話がドンドンと不穏になってきました。
「・・・もし、『もし』ですよ?万が一偽物という事は・・・?」
アメリアさんの言葉にお2人が会話を止めてアメリアさんを見ます。
「アメリアさん、帝国は法律で治められていています。帝国法の中で、偽物を販売するという事は『詐欺罪』という刑罰に当てはまりまして、コレがなかなかに厳しい刑罰なんです。お店を経営しているヒトであれば、商品を扱う時に『本物かどうか』と言うのは、一番気を付けないといけない事なのですよ。」
刑法で裁かれる事になってしまうと一気に信頼が無くなってしまうので、お店の経営が出来なくなってしまいますからね。実家でも仕入れの時には、一番に気を付けていましたよ。
「じゃぁ・・・。」
アメリアさんはお店の方をそっと見ます。あちらの方が扱っている物が「偽物」と決まった訳ではありません。そんなアメリアさんの様子を見たリンカーラさんは「ふむ」と少し考えたようにして、お店の方に向かって歩き始めました。私とアメリアさんは「えっ!」と声を出してしまいましたが、リンカーラさんは「確かめてこよう」と言ってズンズンと進んでいきます。
リヒトさんが「フィーネリオン様とアメンティナ様は、ここから動かないでお待ち下さい」と言ってその後を追い掛けていきました。アメリアさんは「大丈夫かしら・・・」と言いますが、私達はお2人を信じて待つ事にしましたよ。
・・・販売人さんと貴族の若いご夫婦との間にリンカーラさんが突撃しています。リンカーラさんの登場に販売人さんとご夫婦がそれぞれ驚いていますよ。
アレコレとリンカーラさんが販売人さんに聞いているみたいなのですが、その内容に販売人さんの顔色がドンドンと悪くなっています。野次馬さん達がお2人のやり取りに足を止めて、そのやり取りを見ていました。初めにお話を聞いていたご夫婦は、一歩下がってリンカーラさんと販売員さんのやり取りを見ていますね。
「・・・うん、あの食器類はやっぱり偽物だったよ。」
とても良いお顔のリンカーラさんとリヒトさんが事の顛末を教えてくれました。と言っても、私とアメリアさんはずっとその様子を見ていましたけどね。
でも、しっかりとお話を聞いてみたら、リンカーラさんの人脈の広さに私は驚きましたよ。それと言うのも、リンカーラさんは必死に説明している販売人さんの前でリッシュ=バイトナー工房の担当者の方と通信を始めたんだそうですよ。その通信相手の方もリンカーラさんからのお話に驚いたみたいで、すぐに帝都にある販売店の職人さんが中央広場の蚤の市に来たんだそうです。・・・それと、もうお1人。リヒトさんがガーブ=アフローラ工房の方に連絡を入れて確認を取ってたようで、こちらも販売店の「責任者」と名乗った方がお付きのヒトと騎士さまを連れて中央広場にやって来ましたよ。
リッシュ=バイトナー工房の職人さんとガーブ=アフローラ工房の責任者さんが「それぞれの工房製」と言われていた食器を精査している時の販売人さんのお顔は、「倒れてしまうのでは?」とこちらが心配になる位に真っ青になっていました。
「セルディス子爵。良く似せて作られてはいるのですが、私共の工房で作られる食器に付けられる刻印が付いていないので、こちらは私共の工房で作った物ではありません。」
そう言ったリッシュ=バイトナー工房の職人さんは、周囲にいる皆さんに見えるようにご自身が持ってきたリッシュ=バイトナー工房製の本物と並べて説明してくれました。リンカーラさん曰く、販売されていた方にはカップとソーサー裏の刻印が無かったそうです。あと、遠目から見ても色の発色が違いましたよ。
「リヒト殿、こちらも私共の扱っている物とは違うようです。」
ガーブ=アフローラ工房の責任者さんはお付きのヒトに目配せをして、リッシュ=バイトナー工房の職人さんと同じように周囲にいる皆さんにも見えるように販売されていた食器の隣りに全く「別物」と言っても良い、一揃えのカップとソーサーを並べました。周囲にいたヒト達はその違いに感嘆の声を上げていましたが、遠目から見ても私が良く見る一揃えに似ていましたよ?あれ?もしかして、私がお屋敷で愛用しているカップはとんでもない高級品でしたか?
そんな中、リンカーラさんの「他にも色々な工房名を出していたな」の言葉に、リッシュ=バイトナー工房の職人さんとガーブ=アフローラ工房の責任者さんは「そちらの工房の方も、誤解されないように確認を取った方がよろしいかも知れませんね」と言って商業ギルドに連絡をしてくれました。
椅子に凭れるように座っていた販売人さんのお顔はこちらからは見えなくなってしまいましたが、大丈夫なのでしょうか?そんな販売人さんは、騎士さまに連れられて会場を出て行きました。この騒ぎによって蚤の市の会場内は一時騒然としましたが、騎士さま達によって販売人さんの扱っていた商品が撤去されてしまった今では、何事も無かったかのように皆さんはお買い物を楽しんでいます。
「蚤の市は楽しかったですか?」
先に帰ってきていたアスラさんとソールさんに迎えられて、お家に入ります。
「はい!とても楽しかったです。」
私は色々な事を思いだしてそう答えました。私の様子にアスラさんが「それは良かったです」と言ってくれましたが、今度はアスラさんとソールさんも一緒に行きたいですね。
「おかしゃん、おかえりでし~!」
そう言って私に突撃して来ようとしたソールさんをアスラさんに止めて貰えましたが、アスラさんに確保されているソールさんはニコニコしながら「えへへ~」と笑っています。
「ソールさん、ただいまです。ソールさんも今日は楽しかったですか?」
「そーる、たのしかったでし!すていとりーぷもげんきだったでしよ!でも、じーくはぷんぷんされてたでし!」
「そうでしたか。ソールさんが楽しかったのでしたら良かったです。」
アスラさんに抱き抱えられたソールさんは全身で今日の事を教えてくれましたが、皇帝陛下は一体何をして怒られてしまったのでしょうか・・・。気になります・・・。
「そんなソールさんにお土産があるのです。」
「みゅっ!」
私の「お土産」と言う言葉にソールさんは反応してくれましたが、ソールさんは私がお家に入ってからずっと、私がの持っている包みに興味津々の様子でしたからね。
「ソールさんへのお土産は、こちらのレターボックスですよ。」
「・・・むぅ?」
私がテーブルの上で包みを開いてソールさんにそう言いましたが、ソールさんの反応はとても薄い物でした。
「こちらのレターボックスは、ソールさんがお手紙を書く時に使う便箋やペンを入れておく事が出来るのですよ。こちらの引き出しにはお手紙をしまっておく事も出来るので、読み返したい時にサッと取り出せますよ。」
「ふおぉ~~。」
私はレターボックスの引き出しを開けながらソールさんに「便利なのですよ!」と説明します。ソールさんの文通相手が今の所は「フローさん」お1人なので問題ないのですが、便箋を選ぶ事に並々ならぬ拘りを持つソールさんの「便箋コレクション」はとても大量なのです。ですが、こちらの居間に置いているソールさんの「お道具箱」には、そのソールさん厳選の便箋が(かなり)乱雑にしまわれているのです。
・・・シワシワの高級便箋ほど見ていて切なくなる物はありませんよ。
なので、蚤の市でこのレターボックスを見た時には、思わず「コレですよ!」と思い手に取ってしまったのです。
「ソールさん。こちらを使って、便箋の整理整頓をしてみましょうか!」
「・・・・う?」
私の言葉に首を傾げているソールさんはとても可愛らしいのです。きっと「整理整頓」なんて少し難しい言葉を使ってしまったので、混乱しているだけですよね?ソールさんはアスラさんと違ってお片付けできる子ですもの、このレターボックスだって使いこなせると思うのです!
「・・・そーる、がんばる~~~。」
そう言ったソールさんはアスラさんを見上げると、両手を挙げて「おとしゃんも~」と言っています。
「あ・・・あぁ・・・。」
何かを察したのでしょうか?アスラさんもソールさんに同意していますが、お返事に戸惑いが出ていますよ?
そんなアスラさんを見て、ファウラが「ピィッ!」と声援を送っています。
フィーネリオンの強い思いはソールに聞き届けられました。ソールは便箋の整理を次の日から始めます。
ヴァレンタ家の模様替え(家具の入れ替え)は季節毎に行っていますが、買い替えは滅多に行いません。その季節毎に使われる部屋が決まっていて、滅多な事が無いとその部屋以外が使われる事はありません。客間は大きく変えたりしませんが、小物類は宿泊する客人に合わせるので、こちらはあまり大きな変化はありません。でも、使っている物はとても良い品を使っています。
サロンに置いていた椅子がフィーネリオンの部屋に運ばれたのにはキチンとした理由があったりするのですが、最終的に「どうせなら、フィーナさんのお部屋のソファーセットと交換してしまいましょう!」とマゼンタが言った事で交換となりました。
フォウル達が住む予定の家にはリンカーラが修繕のヒトを向かわせているので、「間取り」と「必要な物」の把握が出来ました。真っ先に運び込まれたのは、ニリア達が送ったベッドとダイニング一式となったので、こちらはそれぞれのお部屋に設置されました。フィーネリオンが言っていなかった「布団」も付けてくれたので、フォウル達の睡眠は守られました。それでも、ドンドンと運び込まれる高級家具にヘストは驚き続けました。
リンカーラがリッシュ=バイトナー工房との連絡が付いた理由は、リッシュ=バイトナー工房の本店があるのが「辺境伯領」だったから。頭の「リッシュ」は、「貴族お抱え」の工房に付けられています。
ちなみに、リヒトがガーブ=アフローラ工房に連絡を入れた訳ではありません。リヒトから連絡を受けたギースからガーブ=アフローラ工房に連絡が行っています。上流貴族の家宰からの連絡があったので、ガーブ=アフローラ工房の責任者は騎士を連れて会場にやって来ました。
他の工房へは、ギルドからの依頼を受けた騎士が「こちらの工房で作られた物だとして売られていたのだが、こちらの工房で作った物で間違いは無いか?」と確認に回りました。
蚤の市で偽物の食器を売っていた販売員は、キチンとした「販売請負人」の資格を持っていたのですが、今回の事で剥奪されました。ちなみに、食器以外の家具類は貴族からの依頼品だった為、その家具類は貴族へ返却されました。
アスライールは「自分が家具を見てもどれが良いのかが分からない」と早々に見切りを付けていたので、フィーネリオンから相談を受けた時に「リヒトなら・・・」と思って連絡しました。でも、帰ってきたフィーネリオンが「リヒトさん、凄いんですよ!」とベタ褒めだったので、内心はとても複雑でした。
ソールは、お土産がお菓子じゃ無かった事にテンションを下げました。それでも、フローからの手紙をキチンとしまえるので、レターボックスは重宝してくれています。・・・でも、お土産はお菓子が良かった。
アスライールの机の中は、辛うじて「物が無くなる事なく見つけられる」状態。フィーネリオンには魔境状態。(怖くて)手が付けられません。




