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125 さんにんあつまれば・・・






「本当に素敵!リンカーラさん、フィーナさん、ありがとうございます!」


みなさんこんにちは。先日帝都に帰ってきたアメリアさん達と一緒に、今日はリンカーラさんのお家にいつもの皆で集まっています。


ただ、アスラさんはお仕事があるので、お仕事上がりに参加となりますが・・・。




「実は、殆どの刺繍をフィーネリオン嬢が刺したんだ。だから、このテーブルクロスはフィーネリオン嬢の作品と行っても良いのだが・・・。」

「リンカーラさん、そんな事はありませんよ。四隅の大きな刺繍は大変だったと思います。リンカーラさん、本当にありがとうございます。」

「そうですよ。縁取りもリンカーラさんが刺したのです。そんな事を言わないで下さい。」

リンカーラさんの言葉に、アメリアさんはとても嬉しそうに言葉を返しています。アメリアさんのお隣では、ステイさんがテーブルクロスを一生懸命に見ていました。そんなステイさんを見ながら、ソールさんとリープさんはウンウンと可愛らしく頷いていましたよ。



ローラントさんとアメリアさんは工業都市の収穫祭を見てきたようで、私達にお土産を買ってきてくれたのです。包みを開けて取り出したのは、私とリンカーラさんで色違いの綺麗な飾りの付いたペーパーナイフです。キールさんが開けた包みからは、小ぶりの折りたたみナイフが出てきました。アスラさんへのお土産も同じ物なのでしょうか?キールさんの手のひらに収まっているそのナイフは、しっかりとした作りのようです。


「こんなに素敵なお土産をありがとうございます。」

「あぁ、本当に。ありがとう。」

「大事にしますね。」

私達のお礼の言葉に、アメリアさんはとても嬉しそうに「どういたしまして」と返してくれました。ローラントさんも「気に入ってくれたのなら良かった」と照れくさそうに言っています。



・・・ただ・・・。



「そーるのは?」

「りーぷもでしゅ。」

ローラントさんのお膝に手を置いて、左右から声を掛けているのはソールさんとリープさんです。目をキラキラと輝かせてローラントさんに声を掛けているので、ローラントさんは「うっ」と少し引いてしまいました。ステイさんがアメリアさんの所にいるので、ローラントさんの方に声を掛けているのでしょうか?


「あ・・・、あぁ。もちろん、2人にもあるぞ。」

ソールさんたちの言葉にアメリアさんと視線を合わせたローラントさんは不自然な程動揺していますが、ソールさんとリープさんにお菓子の包みを手渡します。



「むぅ・・・。」

「みゅぅ・・・。」

ソールさんとリープさんは、受け取った帝都で有名な焼き菓子専門店の包み紙を見て一気に静かになりました。ローラントさんとアメリアさんがその様子をジッと見ているのですが、どうしたのでしょう?



「ソールさん。ソールさんの大好きな焼き菓子がお土産ですよ!良かったですね。」

「・・・む。」

「リープ。この間『食べたい』と言っていた焼き菓子だ。良かったな。」

「・・・むぅ。」

私とリンカーラさんの言葉にお返事はあるのですが、お2人は焼き菓子の箱を見ながら「むぅ~~~」と言っています。このお店の焼き菓子は取っても美味しいので、いつものソールさんだったら箱を見るだけで大喜びのはずなのですが?


どうした事か、ソールさんとリープさんの2人は、焼き菓子の箱を待ったまま黙り込んでしまいました。お2人の様子に、ローラントさんとアメリアさんは困ったように「やっぱりな・・・」「ですよね」と言葉を交わし合っています。ソールさんたちの様子も気になるのですが、ローラントさん達の珍しい様子に思わずリンカーラさん達と顔を見合わせてしまいました。




「・・・いや、本当は違う物を買ってきたんだが、移動中の馬車の中で壊れちまったんだ。それで代わりになるような物を帰ってきてから探したんだけど、良いのが無くてな・・・。」

ローラントさんは困ったようにしながら説明してくれました。ローラントさんの言葉の後、アメリアさんはソールさんとリープさんに「ごめんね」と言います。

ローラントさんとアメリアさんの言葉を聞いたソールさんとリープさんは、正面にいるローラントさんとアメリアさんを見て、ご自分の手に持つお菓子の箱を見ます。それから、お隣に立つリープさんとソールさんと顔を見合わせます。


「いいのよ!そーる、おかしもすきでしよ!」

「いいでしゅのよ!りーぷ、おかしはだいしゅきでしゅのよ!」

お2人の高らかに放った言葉に、思わず笑ってしまいます。ローラントさんが「そうか!それなら良かった!」と言います。ソールさんとリープさんは早速箱を開けて焼き菓子を食べ始めていますが、食べ過ぎないように気を付けないといけませんね!



「なぁ~~~ぉ」

「どうした?ゴッツウェーノ?」

そうそう、こちらのお部屋にはもう1匹いるのです。先日の収穫祭でリンカーラさんが契約した獣魔のカリャンさんが、リンカーラさんのお膝の上にいたのです。

お名前はリンカーラさんが付けたようで、カリャンさん(雌)は「ゴッツウェーノ」さんとなったようです。あんなに可愛らしいカリャンさんなのに、何だか勇ましいお名前が付けられていた事に驚きました。お名前を決める際、どうやら2対1に分かれてしまったようなのですが、賛成多数でこちらのお名前になったようです。もちろん、反対したのはキールさんだったとラミィさんにお聞きしましたよ。

ゴッツ・・・、カリャンさんは2本のシッポをゆらゆらとさせながら、リンカーラさんのお膝の上にいたのですが、リンカーラさんのお膝から軽やかに降りてお部屋から出て行ってしまいました。


「大体この時刻になると、家の中を回っているみたいなんだ。特に問題もないから、好きな様にさせているんだよ。」

カリャンさんが消えた扉を見ていたら、リンカーラさんがそう言って来ました。



そう言われてみると、私と契約をしたファウラ(チーラさん)も朝と夕方にお家の中を飛んでいますね。お家の中を把握しようと飛んでいるのだと思っていましたが、もしかして「縄張りの確認」だったりするのでしょうか?ファウラはネコさんとも仲良くしているので、どうなのでしょう?


とても可愛らしい光景なので、今の所問題はないと思うのです。



「リンカーラさんも獣魔と契約したのですね。」

「・・・も?」

アメリアさんの言葉に、リンカーラさんは私を見て不思議そうに言葉を返します。


「えぇ。・・・ってもしかして、フィーナさんの所も何か獣魔を?」

アメリアさんが驚いたように私を見てきました。


「はい。この前の収穫祭の時に、チーラと契約しましたよ?アメリアさん、どうしたのですか?」

アメリアさんの様子に、思わず首を傾げてしまいます。


「わぁ!チーラですか!可愛いですよね。」

アメリアさんは、私の「チーラ」と聞いて「私も実家にいた時には、リリンの木に巣を作っていたチーラを見ていたの。とっても可愛いのよね」と言います。そうして、アメリアさんは困ったこうに頬に手を当てて「実は・・・」と話を切り出しました。



「・・・実は、トライデント候爵さまからフェンダの子供を1匹頂いたの。そのフェンダはローラントと契約したのだけれど、成長するととても大きくなると聞いて・・・。」

そう言ったアメリアさんは「少し怖いのよ」と言います。



「ネコさんくらい大きくなるのですか?そうなると大変かも知れませんね。」

「えっ!?」

ネコさんくらい大きくなるフェンダであればキチンとした躾をしないと危ないので、怖いですよね。そう思って言ったのですが、アメリアさんは何だか驚いたように私を見てきます。


「そうだね。ねこと同じ位の大きさになるのであれば、キチンとした調教が必要になるだろう。何人か良い調教師を知っているから、紹介しようか?」

「えぇっ!?」

リンカーラさんもアメリアさんの言葉を聞いて心配のようです。でも、アメリアさんはリンカーラさんの言葉にも驚いています。


「2人とも、何で騎獣前提の会話なんだ?後、アメリアも落ち着いてくれ。」

ローラントさんが「待った」と言って私達の会話に入ってきます。キールさんも驚いたように私たちを見ています。


「だって、アメリアさんが『大きくなる』って言ったので・・・。この辺で私の知る大きな生き物はネコさんなので、ネコさんの大きさかな?って思ったのです。」

「アメリア嬢がフィーネリオン嬢の言葉を否定しなかったから、その大きさになるのかと思ったんだが。・・・違うのかい?」

私とリンカーラさんはお互いに「あれ?」と首を傾げて説明していますが、ローラントさんは呆れたように「ネコは騎獣だろうよ。アメリアは獣魔って言っていただろう?」と言ってきました。リンカーラさんとお互いに顔を見合わせて「そうでしたね」「そうだったね」と言って笑ってしまいました。アメリアさんも「ビックリしましたよ」と言って笑ってくれたので、皆で笑ってしまいましたよ。



「アメリア、やっぱりフェンダが怖いんだろう?嫌だったのなら、言ってくれれば断ったのに。」

「トライデント候爵様のご厚意で譲ってくれたフェンダですもの、無下には出来ないわ。それに、その時は大丈夫だと思ったのよ。

・・・ただ、小さな時にフェンダに追い掛けられた記憶があって、どうしても『怖い』と思ってしまうみたい。暫く経ったら大丈夫だと思うから、安心して。」

ローラントさんの言葉に、アメリアさんは「ごめんね」と言います。




その後、お仕事上がりのアスラさんがやって来た時にこのお話が少しだけ上がったのですが、少しだけ生き生きとしたアスラさんが「フェンダはしっかりと躾ければ、とても優秀な補佐をしてくれますよ」とローラントさんに言っていました。

アスラさんのその珍しい様子にローラントさんが少しだけ引いていましたが、前世でも「番犬」として飼われていた犬も多かったと思うのです。前世の世界と比べると防犯の方法も違うのですが、獣魔や騎獣がいるお家の防犯率はとても高めです。アスラさんのお家周辺はルシェを飼っているお家が多いのですが、ネコさんがお家にいるようになってからは犯罪率が大きく下がったようです。前は引ったくりなんかも多少はあったようですが、今ではほとんど無いそうですよ。


貴族さま達のお屋敷には護衛のヒトもいますし、お屋敷自体に「監視」と「排除」の魔道具を使っているようなので、ご自分の力に余程の自信がないと忍び込まないそうです。



「ローラントさえ良ければ、騎士団でも訓練を行っていますから、参加してはいかがですか?」

「そうか・・・。行ってみようかな。」

アスラさんの勧誘にローラントさんも少しだけ乗り気のようです。子フェンダの内にしっかりとした躾を受ける事が出来れば、ヒトに飛び掛かる事もないでしょうから安心ですね。


そう言えば・・・。と、先程まで賑やかにしていたソールさんたちが気になったのですが、久し振りに3人集まったからでしょうか?とても嬉しそうに遊んでいたソールさんたちは、ステイさんを真ん中にして眠っていました。その様子に、リンカーラさんが「眠っている時は静かなんだよね」と言っていましたが、ラミィさんに上に掛ける毛布を準備して貰っていました。





それから暫く経ってからお家に帰ってきたのですが、お迎えのファウラは私達にスリスリと頬ずりをして満足げに「ピッ」「ピッ」と鳴いています。


週が明けると8月になります。収穫祭を終えた帝都は、一段と寒さが増してきました。そろそろ本格的に寒くなってくるので、風邪には気を付けないといけませんね。8月からは社交シーズンが始まるようで、お義母さんもご領地から帝都のお屋敷に戻ってきました。ゼーセス義兄さんと義祖父母であるローランさまとアコライトさまも一緒に帝都入りしていて、コルネリウス義兄さんは社交期間中ヒトが最も集まる10月にローランさまとアコライトさまと入れ替わりで帝都入りするそうです。ご領地に何かあったら大変なので、毎年この入れ替えなんだそうですよ。


明日晴れたら、納戸に入れてある毛布を干さないと!そう思いながら、夕食用にと作って置いたグラタンをオーブンへと入れました。












騎士団での訓練を受けた子フェンダは、とても優秀な「軍用犬」となりました。

一緒に訓練を受けたローラントは「思っていた訓練と何か違う」と言っていたようですが、ローラントの指示に忠実な子フェンダとなったので、アメリアとステイに対してもとても忠実な番犬となりました。


子フェンダ(雄)は「グアルド」と名付けられました。成長するとシェパードのような見た目になります。

ネコと初対面したグアルド(子フェンダ)は、少し固まった後にコロンとお腹を見せています。その様子を見たアメリアは「何だか、グアルドが可愛く見えるわ」と言ったようです。


リンカーラの名付けセンスはあまり良くなく、実家で飼っていたフェンダの名前はリンカーラ以外が考えた名前が採用されていました。今回はリープが賛成してくれたので2対1になりましたが、ラミィが参加していたらずっと平行線のやり取りが続きました。

リンカーラとリープのいない時、キールとラミィはゴッツウェーノを「ティティル」と呼んでいます。こちらの方が反応も良く、呼んだら近付いてくるので「ティティル」を名前と思っている節があったり。


チーラの名前を考える時、フィーネリオンは「ネコさんの時のような間違いは起こしませんよ!」と思いつつ「小鳥さんのお名前を考えましょう!」と何回目かの家族会議を開きました。

アスライールとソールによって「コトリ」と名付けられそうになったので、フィーネリオンは慌てて「ファウラ!ファウラなんてどうでしょう!」と名前の案を出していました。


これから年明けまで、ゼーセスのお見合いは続きます。


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