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ようやく一段落つきました!
こんばんは、みなさん!
ラスボス(お父さん)の居るお部屋の前に来ている勇者パーティーのリーダー、フィーネリオンです。
私とお母さんとお兄ちゃんは今、扉の前で中の様子を窺いつつ廊下に待機しています。アスラさんは、私達がどう出るのか様子を見ているようです。
ソールさんは・・・、特に何も考えていないのか、お兄ちゃんの事を見ています。・・・なんで?
「ここのお部屋は、まぉゲフン!お父さんのお部屋なのです。私達が唯一、手を出せない場所となっていて、ここから先に進むと何が起きるか分かりません。私達には理解できない未知の領域が広がっていると言えます。」
「なるほど・・・・。」
「なので、一旦ひき「フィーナ。」はい、逝ってきます。」
私のお話を聞いて神妙に頷いたアスラさんに、一旦退却を提案しようとしたらお母さんによって戦場に戻されました。このパーティーの僧侶(お母さん)はパワーバランスでは1番上なんですよ。
トントン
・・・・。
・・・・。
あれ?
後ろに居るお母さんとお兄ちゃんの方を見ても、不思議そうにこちらを見ています。
トントントントントントン・・・・・。
「フィーナかい?・・・入っても良いよ。」
中からお父さんの声が聞こえました。一体、どういう判断なのでしょう?気になります。
・・・・・・てっ!えっ!私1人ですか!
「あなた。どうしたのですか?」
扉の向こうにお母さんが声をかけます。
「ネリア。・・・少し、フィーナと話をさせておくれ。」
部屋の中からお父さんの声がします。
えっ!本当に、まさかの私1人での突入ですか!?
なんて事でしょう!ラスボスの間に1人で突入だなんて、前世で人気だった国民的RPGの1作目と同じ状況ですよ・・・!(前世で居た猛者達は、他のゲームでせっかくいるパーティーをイロイロな方法で外す人もいますが、私はパーティーメンバーと一緒に戦いたい人だったのでそんな事はしませんでしたよ。仲間、大事!)
ここに今居るみんなとは、一緒のパーティーだったのにこの疎外感・・・。心配そうに私を見てくれているのは、アスラさんだけですよ。・・・お兄ちゃん!あからさまにホッとしないで!
・・・よし!女は度胸!ですよ!
「・・・入りますよ~。」
何が起きるか分からないので、ソッと扉を開けます。
扉を開けた先は、お父さんの個人部屋となっています。
壁には一面、大小様々な人物画が掛けてあります。新しい作品や、お気に入りの絵・・・お父さん個人の趣味で掛けてあるので、私が見た事のない物もあったりします。
お父さんの使っている机はとても重厚なもので、代々の家主が使っている物になります。その後ろにある書架には日々の日記が書かれた物が入っています。
そんな中、私は部屋の中央に置かれたソファーにお父さんと並んで座っています。
空気が重いです。普段はあんなにユルユルなお父さんが、こんなにシオシオとしているなんて・・・。
「フィーナは・・・、」
「!はいぃ!?」
おぉっと、急に言葉を発したお父さんに対して、驚きのあまりにか変な声が出ました。
「フィーナは、本当に良いのかい?私達に構わないで、好きなようにこの先の人生を選んでも良いんだよ?」
「お父さん・・・。」
もう1度言い直してくれたお父さんは、私に対してこう言ってきました。
「今回の話を断ってしまうと、確かに私達は此処には住み辛くなるかもしれない。だけど、なにも住む場所は此処だけではない。此処から離れた場所でも生活していけるだろう?今、働いている従業員には少しでも多くの給金を渡して、この後に働く所を探してやる事も出来る。
・・・もしも、それでも駄目な時には共和国に・・・、ダメだ少し物騒すぎる・・・。神聖国の方に行っても良いのだし・・・。最悪、大陸の方に・・・。」
お父さん、イロイロ考えていたのですね・・・。そうですよね。お父さんには、私達にドッキリを仕掛ける方の考えは無いですもんね。
・・・いつも、仕掛けられる方でしたよね。
「だから、皇帝陛下だか宰相閣下からの令状なんて無視して良いんだよ?騎士殿とのけ・・結婚・・だなんて・・・、しかも『契約』結婚だなんて・・・!望まない結婚なんて、お父さんはしなくてもいいと思うんだよ・・・?」
!!
えっ!!?
今、軽く聞き流してしまう所でしたが、まさかの大陸への出奔ルートを提案してきましたよ!この人!
これは、今言わないと大変な事になりそうです!
「お父さん!私、騎士さまと、・・・アスラさんと『婚姻』することにしたのだけ・・れ・・・・ど?」
私の言った事が、お父さんには余程驚愕的な内容だったのか「不思議な生き物を見る目」で私を見かえしています。
・・・・あれ?私、さっきもこんな目で見られましたよ?デジャヴ?
「・・・ふぃーな。それ、どういうこと?」
何だか、虚ろな様子でお父さんが私に聞いてきました。
「え?だから、アスラさ「そのけいいは?」・・・?お話をしていたら、とても良い方ですし?「それで?」一緒に過ごしていたら楽しいかなぁ・・・って思ったのです。」「なるほど・・・。」
私の話を聞いて、お父さんは少し考えて言いました。・・・ちょっぴり怖いです。
「フィーナ、良く聞いてくれ。
『話をして良い人』と判断したのは、今日初めて会って会話をした人だからそう感じてしまったんだね。『一緒に過ごしていて楽しい』と言うのは、私達家族と一緒に過ごしていても楽しいだろう?どうして急に出てきた男を、そんな『特別』みたいな感じにに思ってしまったんだい?」
・・・・あれ?「婚姻」を結んだら、その伴侶は「家族」扱いじゃなかったっけ?良いんだよね?
「?お父さん、口約束ですが、私とアスラさんとで『婚姻承諾』をしてしまったから、私とアスラさんは『夫婦』ですよ?ね?」
お父さんに、左手にはめている腕輪(こちらでは、結婚するとお揃いの腕輪を付けます。)を見せて言いました。
お父さんとお母さんもお揃いでべっ甲の腕輪を付けています。結婚年数を重ねてお互い記念日とかに腕輪を贈り合ったり、腕輪用の装飾品を贈ったりするのが最近のブームなんです。
「っな!これは・・・!」
私の腕にはまっている腕輪は、アスラさんが付けていた腕輪のうちの1本です。(同じものを2本付けていたのですが、どうしてなのでしょう?)
お父さんは、食い入るように私の腕にはまっている腕輪を見ています。
・・・確かに、銀で出来た高級そうな腕輪ですからね、お父さんの興味を引くのかもしれません。
「・・・『ヴァレンタ家』の家紋・・!・・・・どうして!?」
「?アスラさんのお名前がそんな感じでしたよ?」
私の答えにお父さんは驚愕の目を向けますが、すぐに下を向いてしまいました。
・・・あれ?アスラさんのお家は良い所なのですか?「貴族さま」だとは思っていたのです!騎士学校はお金が掛かるので、ある程度の資金が無いと騎士学校には入れませんからね。騎士になって箔を付けてお家の格を上げたい下流貴族なのかもしれません。
「・・・そうか、『ヴァレンタ家』か。
・・・そうか、・・・フィーナ。私は、嫌だけどこの結婚を認めよう。・・・そうだね、とても嫌だけど、そろそろフィーナの出立の準備をしようか。・・・あぁ、嫌だなぁ。」
お父さん、お口に出してはいけない「本音」が混じっていますよ!
急に態度を変えたお父さんに私はビックリしてしまいましたが、まぁ、ラスボスであるお父さんの許可が出たので良しとしましょう!
私は早急にこの部屋から出たい!
・・・この、家族が集合している時の絵や、いつの間にか描かれている私達の生まれた時からの絵が大量にある部屋から!・・・見た事が無いのが増えているし!どうなっているのよ!
(いつの間にか知らない絵が増えているので、いつ描かれているのかは誰にも分からないのです!)
あの書架にお店の営業日誌として入っているお父さんの日記も、お店の事では無く私達兄妹の事で埋まっているのを私とお兄ちゃんは知っています・・・。兄妹それぞれの分がありますからね・・・。
お店の営業日誌としては「ついで」くらいの内容が書かれていましたよ。
小さい時にお家を探検していて、お兄ちゃんと一緒にココに忍び込んだ時は本当に怖かった!
たぶん、2人とも半泣きだったと思う。
それ以来、ここは私とお兄ちゃんには『悪魔の部屋』と認識されているのです。
妹や弟は近付けさせませんでしたよ!
「心配をかけたね。」
そう言ってお部屋の外に居た、私の「元」パーティーメンバーにお父さんが声を掛けます。
お母さんが、安心したようにお父さんに近付きます。
「良かった。きちんと出てきてくれて・・・。」
「!いっ!!!」
にこやかにお母さんがお父さんの足を踏んでいます。
「私達が、一体どれだけ心配したと思っているの?
しかも、騎士様と2人きり?にした時よりも、あなたと2人きりにした時の方が心配ってどういう事なのかしら?・・・しかも、この部屋で2人きりになるなんて!」
「い・・・、いや・・・、だがね・・・?」
あぁ!お母さん!この部屋の危険性を知っていたのですね!
ギリギリ・・・と、お母さんがお父さんの足を踏んでいます。・・・それ、体重掛けて踏んでいますよね?お父さんの足の骨、大丈夫ですか・・・?
・・・まぁ、お母さんは「治療魔法」を使えるので、良しとしておきましょうか。
私の心は痛恨の一撃を受けているので、ソールさんで癒しを・・・。
・・・?なんで、お兄ちゃんとソールさんはそんなに「仲良しさん」なのですか?
ソールさんはお兄ちゃんと手を繋いで、一緒に教材用として発注を受けた「世界地図」(超高級品)を見ながらほのぼのとしています。
・・・・・・・・羨ましくなんて、無いんだからね!
2人の仲睦まじい姿を見て、激しい嫉妬心が芽生えそうです!
「そーるもあそこに、はいれるでしか?」
お兄ちゃんの手を引いてソールさんが指差す先は・・・。
・・・
・・・
「・・・・・・・・・あそこは父さんの部屋だから、父さんの許可が無いと入れない、んだよ・・・?」
お兄ちゃん、声が震えていますよ・・・。
「どうしてでしか?」
あぁっ!ソールさん、その反対側のお部屋に興味を持って!お願いします!
「だめでしか?」
「ソール、あまりリューイ殿に無理を言わないでください。すみません、リューイ殿。」
がっつりと「悪魔の部屋」に興味を持ってしまったソールさんをアスラさんが諌めます。イケメンだ!
そんな中で、お父さんが「・・・騎士殿、すこしお話したい事があるのだが」何て話し掛けます。
やめて!アスラさんをその部屋に連れていかないで!
・・・何と言う事でしょう!私の思いは裏切られ、ソールさんを止められる唯一と言っても良いアスラさんを、お父さんがその扉の向こうに連れて行ってしまいました。
・・・あぁっ!ソールさん!後を付いて行ってはダメです!
お兄ちゃん!どうして手を離してしまったのですか!?
・・・その後、アスラさんとソールさんのお姿を見たのは次の日の朝でした。
その部屋から出てきて「とても良い父君ですね」とアスラさんが仰ったのには、自分の耳を疑いました。たまたま通りかかったお兄ちゃんもそのまま立ち止まってしまいましたよ。ソールさんもあのお部屋が気に入ったようで「またいきたいでし」とニコニコ笑顔で言っていました。
・・・・お父さん、どんな洗脳術を使ったのか教えて欲しいです。相手は貴族さまですよ?きちんと解術しないといけないので、是非とも教えて欲しいです。
あの後、お父さんがアスラさんとソールさんを「悪魔の部屋」に拘束してしまってので、私達はとりあえず帝都で滞在できるくらいの荷物を(超特急で)纏めました。そして、住む場所が決まったら他の荷物を送って貰うようにお母さんと話をしました。
私が使っていた部屋はすぐ下の妹のニアちゃん(学院から帰ってきていた)が使えるようにして、私が残した物でニアちゃんが使わない物は捨てて欲しいと伝えました。・・・ニアちゃんには大変な思いをさせてしまうかもしれませんが、「結婚は勝ち取るものだよ!」ってアドバイスしたら「私の結婚は、まだ先ですから」ってクールに返されました。
お姉ちゃんは二アちゃんの結婚の報告を本気で待っているからね!
下の弟妹達は学園で新入生を迎えるための準備を行う宿泊学習(って言う名目の体験学習が行われる)に行っていてお家に居なかったので、帰ってきた時に渡して貰う為の手紙を書いてお母さんに渡しました。
次の日、朝からニリアさんの所に挨拶に行ったり、ケイトの所に行って「結婚して帝都に行く事になった」と伝えたのですが、ケイトに「帝都に行っても変な事とかしないでよね!」って言われました。ケイトは私の事を本当にどう思っているのでしょう?
その後、昨日揃えられなかった物を買いに行ったり、お世話になった人たちに挨拶しに行ったりしました。
あっ。お父さんは、きちんと「婚姻証明書」に署名をしてくれましたよ!
立会人は、なんと!領主さまでした!お父さん本気で嫌がっていましたが、宰相さんからの令状があって本当に良かった!
アスラさん、ソールさん。これからよろしくお願いします!
ようやく帝都に向けて旅立ちます。




